魔法少女リリカルなのは 魔法と未来を繋げる者たちの物語 作:ソーナ
~零夜side~
「───準備は出来たか?零夜」
「ええ」
それぞれ腰と背中に剣を吊るし五メートルほどの距離を撮って会話する。
場所は御前試合の決勝が行われるらしい折神家の敷地内。観戦所には多くの見物人がいる。
この敷地内には夜月と僕によって強固な防護フィールドが張り巡らされている。
僕と紫の間には審判を買ってくれた朱音さんがいる。
「それでは、これより天ノ宮零夜と折神紫による模擬戦を行います。勝敗はどちらかの戦闘不能。または戦闘続行不可能。もしくはどちらかのギブアップによって判定します。両者よろしいですね」
朱音さんの言葉に僕と紫は無言で頷く。
「それでは───両者構えを!」
紫は左腰から二刀の御刀を。僕は背中の鞘から相剣の双剣ではなく、片手剣。『黒聖』を。それぞれ、ほぼ同時に抜き放つ。
それと同時に紫には写しが。僕には黒衣のバリアジャケットが展開される。
「?二刀流では無いのか?」
訝しげに聞いてくる紫。その表情はポーカーフェイスであまり変わってないけど。
「ええ。最初は片手剣だけで」
最近強敵ばかりで二刀で戦っていたけど、今はまず最初は片手だけだ。
そう言うと、右手を前にし左足を後ろに下げる。構えは、剣の切っ先が上を向き斜め四十五度に剣を構えてる。
僕たちの準備が出来たのを確認した朱音さんは、右手を上げ。
「それでは───始めっ!」
宣言とともに勢いよく振り下ろした。
それと同時に僕は姿勢を低くして地を蹴り、瞬動で距離を詰め切りかかる。勢いよく『黒聖』を振り。
「「!」」
対する紫も必要最低限の動きだけで『黒聖』の振り下ろしを受け止めカウンターを繰り出す。
瞬時に下がり、カウンターを避け左足をバネにして横から連続攻撃を仕掛ける。
斬撃、刺突を交互に組み合わせ絶え間なく剣戟を紡ぐ。
「速い」
紫は流石の動体視力。救国の英雄の名は伊達じゃない。見事に反応し、打ち漏らさずに捌いてくる。
〈スター・スプラッシュ〉。〈カドラプル・ペイン〉。〈デットリー・シンズ〉。〈ホリゾンタル・スクエア〉。〈オーバーラジェーション〉。〈サベージ・フルクラム〉。細剣と片手剣のソードスキルを次々と行使する、絶え間ない連続攻撃。
それぞれ、7。4。7。4。10。3。と連撃のあるソードスキルだ。どれも威力や速度は高い。それを一つも残さずに捌くとはすごい技量だ。
互いによる、『技と駆け引き』の攻防戦。常に相手の動きを先読みすることが必要とされる。
両手や片手で『黒聖』を握り、振る。
あちこち動き、少しずつ速度が上がる。
「せあっ!」
「はあっ!」
互いの剣がぶつかる金属音が鳴り響き、高音質の響きが鳴る。
地面の砂利が小さく盛り上がりそこに
そのまま幾重にも斬り結び。
「───」
バックステップで下がり紫と距離を取った。
紫も追撃はせず、息を整える。
「さすが英雄・・・・・・。だから───!!」
息を整えつつ言い、左手をもうひとつの剣。『白庭』の柄をへと持っていき、握りしめ勢いよく抜き放つ。
「やっぱ
双剣を構え、笑って言う。
この戦いを笑わずにはいられない。待ち望んでた最強の剣士。
今僕の目の前にいるのは正真正銘の【英雄】。誰かを救い、助け、人が求め、世界が必要とした英雄。
ゆえに───
「紫、貴女を超えさせてもらう!!」
身体能力で更に強化し速度をあげる。
対する紫も、掛かってこい。とでも言うような表情をする。
「はああっ!」
そこからはさらに速度を上げ、威力を上げた。
連続で瞬動を行い周囲を駆け、連続で切り裂く。
「───」
紫はギリギリのところで避け直撃を避ける。
紫も迅移で僕の速度に追いついてくる。
あちこちに移動し、戦闘場所全体を。空間をフルに使っていく。
「せああっ!!」
「はあっ!」
闘気を声に出し互いの双剣をぶつけ合う。
そこに剣技だけではなく体術も組み合わせる。
「はああっ!!───
足祓いからのムーンソルト。そして左肘打ち。
基本魔力を込めて放つ技だが、今は魔力を込めず素で放つ。
「ぐっ!」
バランスを崩すが、紫はバク転して回避し距離を置く。
「逃がさないっ!」
追撃を仕掛けようとする。が、
「───っ!?」
紫の眼を視て瞬時に下がった。
「ほう。察知したか」
危なかった。
あのまま追撃していたら紫のカウンターを喰らっていた。
「今のを避けられたのは
「態と隙を作って飛び込んできた相手を斬る・・・・・・か」
「正解だ」
あのまま突っ込めば紫の策の餌食だった。恐らく起死回生の一手。奥の手の一つでもあったのだろう。
「は、はははっ・・・・・・!!あァー」
気怠い感じに双剣をブランとさせ、空を見上げる。
「あーぁあ・・・・・・───本気で行く」
「っ!!?来いっ!」
紫の言葉と同時に
〜零夜side out〜
〜Outer side〜
零夜と紫の剣がぶつかり合う前、観客席では関係者が観覧していた。
「夜月ちゃん、零夜くん勝てると思う?」
「うーん・・・・・・良くて五割かなぁ〜?」
「五割?」
「あー・・・・・・これ、身体強化の魔法だけでその他使わないからね。
雷天大壮は思考・反射速度を引き上げ雷速軌道を可能とする魔法だ。しかしこれを使えるのは零夜のみであり、零夜しか使えない。
「紫さんは私たちの何倍も剣を振るってきた。けど、零夜の師匠はあの
苦笑しながら告げる夜月の頭上には零夜の四人の姉である女神が描かれていた。
そんなこんなで会話していると、ついに零夜と紫の戦闘が始まった。
「あれ、なんで零夜くん二刀流じゃなくて一刀なんだろ?」
零夜の基本戦闘スタイルは二刀流による高速剣技戦闘だ。そのカレが二刀流ではなく一刀だというのにほとんどの人疑問符を浮かべた。
しかし。
「お兄ちゃん、今は軽くやるみたい」
「ええ。二刀流ではないのは一刀での戦闘経験を積むためでしょうね」
「零夜くんはいつも二刀ですからね」
零夜の家族である姉妹たちは違った。そしてそれは夜月もであり。
「―――」
真剣な眼差しで戦闘を見る。
眼前には高速で移動する二人。耳には金属の、剣が当たる金属音が鳴り響く。
「速い・・・・・・」
「私たちとしていたのは手を抜いていたいいますの・・・・・・」
零夜の速度を見て、零夜と剣を交えた獅童真希と此花寿々花がふと洩らした。
「お兄ちゃん・・・今連続で瞬動してる・・・・・・」
「ええ。連続での瞬動はかなり体力をつかうのですが・・・・・・」
「それほどまでに本気ということですわね」
「はい。現に、マスターは片手剣だけでも全く手を抜いてません」
「彼の年齢であの技量は正直バケモノ級なのだけどね」
零夜の姉妹である聖良たちは少し不安げな表情を浮かばせつつも、自分たちの大切な兄。家族である少年を見守る。
「あれ、零夜全然
「うん。最初の
「剣技は発動に特定の
「あれ?でも確か零夜、
「確かに?レイくんは出来るけど、今は―――」
夜月たちの視線の先では神速の境地に入ろうとしている速さで剣を交えてる二人がいた。
「彼はその余裕すら【
「今は、だと・・・・・・?」
「ええ。そして恐らくそろそろ―――」
夜月の言葉を裏付けるように、突如零夜が高笑いを発した。
『は、、はははっ・・・・・・!!あァー』
突然の零夜に全員(一部を除き)驚きの表情を出す。
やがて。
『あーぁあ・・・・・・───本気で行く』
その場全体を支配するかのような威圧感をその身から発し、二本目の長剣の柄に手を付け勢いよく振り抜いた。
それは零夜が本気の状態になった証拠であった。
「来た―――」
可視化してはいないが、夜月の瞳には零夜を包み込む緋色のオーラが見えた。それは彼の保護者にして姉。そして神話の主神たる太陽と豊穣を司る女神の神威。
自覚はしてないのだろう。彼を優しく包み込むようなオーラ。
「やっぱり・・・・・・ね」
夜月の呟きを聞き取れた者はいない。それほどまでに目の前の戦いに全員魅入られていた。
〜Outer side out〜
〜零夜side〜
背中に吊るしたもうひとつの長剣『白庭』の柄に左手を掛け、握りしめると同時に抜き放つ。
太陽の光に照らされて純白の華の画かれた刀身が現れる。
「さあ、行くよ『黒聖』『白庭』。全力全開で!!」
僕の言葉に応えたのか、両手の『黒聖』と『白庭』はキランッ!と陽の光を反射して答えた。
「はああああアッ!!」
気声を上げ右手を突き出し紫へと突進する。
「―――!」
受け止めようとする紫。しかし。
「なっ!?」
「はあっ!」
コンマ一秒。左上からの斜め切り追撃に目を見張る。下がろうとするがほんの一瞬。その一瞬が遅くなり。
「くっ―――!」
二撃目の斬撃が紫を切りつけた。
しかし当たる直前に刀使の能力が一つ。『金剛身』を紫は発動させ防いだ。
「ちぃッ───!」
舌打ちを漏らしつつも脚力強化で飛び上がり距離を取る。
「まさか『ダブル・サーキュラー』を見切られるとはね」
そう今放ったのはアインクラッド流二刀流ソードスキル『ダブル・サーキュラー』だ。初見でこれの対処は難しいはずなんだけど、紫は刀使という利点を使い一時的に防御力を上げる『金剛身』で塞いだ。
「単発は破れないか・・・・・なら、破れるまでぶち込む」
この戦いで攻撃や防御と言った戦闘系魔法は使えない。使えるのは身体強化などの補助系だ。ゆえに。
この場では各々の技術と技。そして駆け引きと先読みが必須となる。
すでに何合とも数え切れないほど剣を切り結んでる。
体術も組み合わせた剣術・体術複合でやってはいるが、さすがの一言に尽きる。
だから僕は
「───
「詠唱・・・・・・いや、祝詞だと?」
今の僕が出来る最高級の身体強化を発動。
「紫。これは貴女への敬意を称してだ」
目を閉じ双剣を地面に突き刺し詠う。
そして。
「いくよ───
終の言の葉を紡いだ。
足元に複雑怪奇な星型魔法陣が現れ、それは緋色に輝く。その光はお姉ちゃんの色だ。お姉ちゃんを表す緋色の輝き。
「───」
「紫、逝くよ?」
声に出さない驚きの紫に僕は目を開けて淡々と言う。
「───っ!!」
「───シューティングスター」
紫の反応出来ない速度で突進。紫の止まると同時にドウッ!と風が吹き荒れた。
「なっ・・・・・・!?なんだ今のは・・・・・・!」
「細剣突進ソードスキル『シューティングスター』」
恐る恐る背後を見てきた紫。
「これが今の僕の本気。紫。貴女に僕の全力をぶつける!」
「っ!」
そこから先は言葉を交わす必要はなかった。
緋色の閃光の軌跡を描き移動する。
瞬動と虚空瞬動を駆使し、ブーストをかける。
剣技連携に先読み、剣技増幅とうを行使。
けど、今の僕がこの状態。『天照の神星束』を維持できるのは後一分。つまり六十秒。この六十秒は一秒たりとも無駄にはできない。
「(思考を加速させろ。相手の挙動を。動きの一手一手を見ろ)」
カウンターを食らっても空中で体制を整え、背後の壁を足の力場にしさらに加速。
致命傷以外は最低限を防御。
「ヴォーパル・ストライクっ!!」
魔力の込めない剣技だけで放つ。
「!攻撃特化だと!?」
『ヴォーパル・ストライク』からの連携剣技。
「っ!な、なんて速さだ・・・・・・!」
「(あと四十五秒!)」
急制動して方向転換。
双剣を絶え間なく振るう。
「はああっ!!」
「せああっ!!」
もはや人智を超えた戦いとなる。
足払いを上に避け回転して切り払う。
目で追えない剣も多く勘で避ける。
視野を広く。状況を把握。
「「───っ!!!!」」
互いの衝突により同時に後ろに押し戻される。
「ぐはっ!」
「かハッ!」
「まだだ!!」
「こちらもだ!」
『白庭』を紫目掛けて投げつけ、それを追随するように駆け付ける。投げつけた『白庭』を紫は悠々に弾く。弾かれた『白庭』は空を舞う。
その間に接近し『黒聖』で切り結ぶ。
「ふっ!」
クルクルと回って落ちて来た『白庭』を左手で掴み振り下ろす。
「はぁっ!!」
土煙が巻き起こり視界が潰れる。
けどそれがどうした?基本魔法戦闘においてこんな目くらましなど序の口。そして、基本相手を視認しなければ放てない魔法に有効な土煙などの妨害に今更僕がどうのこうのする訳がない。
それは紫もだろう。熟練の剣士にとって土煙などの目潰しは意味をなさない。そしてそれは僕の知り合いでもあるシグナムや騎士シャッハ。ゼストさん達も同様。
そのまま土煙の中に突っ込み。
「───っ!」
「───しっ!」
剣戟の奏でる金属音だけが何をやってるのか周囲に伝える。その剣戟による剣風で土煙は晴れる。
「(あと三十・・・・・・!)」
残り制限三十秒。
ここで畳み掛ける。
「これで・・・・・・!」
双剣を構え、一瞬で懐に潜り。
「おおおおぉぉぉっ!!」
剣技連携を発動させる。
剣技連携の一番のメリットは、繋げる度にその次の剣技の威力と速度が増幅するという事だ。
ゆえに。
「っ────!」
片手剣のソードスキルと天陽流を左右交互に。そして二刀流を組み合わせて放つ。これだけで既に連撃数は十五連を超えている。
「(残り二十秒!)」
弾かれても大きくブレさえしなければ。
「幾らでも軌道修正できる!!!甘く見るな!!」
足裏に魔力で作った力場を簡易的に作り、虚空瞬動で爆発的に加速する。
「はあああああっ!!───スターバースト・ストリーム!!」
すでに連撃数は五十を超え、威力と速度は元の2.5倍近い勢いになっている。
「(残り十五秒!)」
アインクラッド流二刀流上位ソードスキル『スターバースト・ストリーム』を五秒も掛からずに全十六連撃を放ち。
「まだだ!おおぉぉっ!!───ジ・イクリプス!!」
さらなる二刀流最上位ソードスキル『ジ・イクリプス』を繰り出す。太陽コロナを彷彿させる勢いの全二十七連撃。
「(あと十秒!)おおおおぉぉぉっ!!」
舞い踊るように。全力で。全てをかけて。
一撃一撃を。
「(まだ。あと少し!)」
ラスト一撃その瞬間。
「───え・・・・・・?」
急に身体の力が抜けたような気がした。
それのせいなのか、その一撃の威力と速度は今までの物にならないほど遅く。
「せあああああっ!」
最後の突きを跳ね上げその空いたがら空きの腹部に紫の一撃が直撃した。それもこの上ないほどのクリーンヒットがだ。
「───!!かハッ!」
肺の中の空気が一気に吐き出される。
カウンターでヒットしたその一撃は背後の壁へと吹き飛ばされ、壁に直撃した。
そして。
「ハッ!───あ、天ノ宮零夜戦闘不能!よって勝者、折神紫!!」
審判である朱音さんのコールが響いたのだった。
~零夜side out〜
~Outer side~
「うそ・・・・・・零夜が負けた・・・・・・?」
「そんな・・・・・・」
零夜が負けたことに呆然とするなのはたち。
それは当然だ。彼女たちにとって天ノ宮零夜という人物は最強の剣士にして魔導士なのだ。いくら攻撃や防御魔法を使えない条件とはいえまさか負けるとは思わなかったのだ。
「お、お兄ちゃんが・・・・・・」
「れ、零夜くん・・・・・・」
家族である姉妹達。聖良と澪奈は唖然として吹き飛ばされた零夜を見る。
「やっぱり、条件付きの戦闘では零夜くんはキツイですかね」
「うーん。でも、なんか最後の攻撃零夜くんも予想外って顔していたね」
「マスターの魔力が底尽きかけてます。恐らく先程のは常時魔力を放出しているタイプの身体強化なのかと」
「・・・・・・紅葉ちゃんの言葉が正解よ」
夜月が紅葉の言葉を引き継いで言う。
「さっきのアレは普通の身体強化の数十倍から数百倍にまで上げる魔法。そして、あれはレイくんだけ使える最後の奥の手」
「?どういうこと?」
「アレはさっきみたいな戦闘に向いてない。本来の扱いは周囲の魔力残滓を吸収して放出っていう一種のエネルギー循環システムみたいな感じなの。けど、今のは魔法を全く使ってないから、レイくん自身の魔力を放出してそれを吸収っていう滅茶苦茶強引なやり方で発動させた」
夜月の言う通り零夜の『天照の神星束』は今のような戦闘には不向きだ。しかし何故零夜がそれを使用したのか。それを知っているのは夜月や凛華たち一部だけだ。
やがて零夜が吹き飛ばされたところから。
『ケホッ!コホッ!コホッ!あぁーーあ。負けちゃったかぁー』
「「「「「え!?」」」」」
その声音にその場の全員が驚く。
何故なら。
『いやー。まさかあそこで魔力不足で効果が切れるなんてなぁ・・・・・・。もうちょっと調整しないとダメだね』
その声は零夜が居る。場所から聞こえるのだから。
「ま、まさか・・・・・・!!?」
慌てる夜月たち。
その場の全員がその声の聞こえるところに視線を向けると、そこから。
『けど、いい戦いだったよ紫』
一人の少女が姿を現した。
両手に黒と白の双剣を携え、黒衣のバリアジャケットを羽織って。
『ん?あれ、みんなどうしたの?』
唖然としてる全員を見る少女。
やがて、自分の姿に気づき。
『あーー。なるほどね』
苦笑して納得する。
『えーと・・・・・・。ゴメン夜月、しばらくこの姿みたい。どうにかできる?』
その数秒後。
「「「「「どちら様ァァァァァァ!!!?!?」」」」」
その場にいた事情を知る人以外全員の悲鳴が響き渡ったのだった。
〜Outer side out〜