サロンを出た後、俺はナルメアセンサーをビンビンに働かせながら、もう一度リーシャの部屋の前までやって来た。
さっき来たときにはリーシャ居なかったけど・・・今度こそ居てくれないと困るよっ、マジで!
ナルメアも絶対俺のこと探してるだろうし、これ以上リーシャ捜索の為に廊下をウロチョロしてたら絶対にエンカウントしちゃうっ!それはマズイッ!!
あの状態のヤンデレに捕まったら、間違いなく○ぬ!
・・・あ、いや、でもなあ・・・俺もそれなりにレベル上がって来てるし、もしかしたらワンチャン勝てるかもしれねえぞ?
ちょっと脳内でシミュレートしてみるか。
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READY...
VSナルメア(病)
団長:『よし、まずはこれをくらえ!ミゼラブルミストッ!』
ナルメア:『効かないわ。』miss miss
団長:『何ッ!?どっちもよけられたッ!?』
団長:『ぐぅ、ま、まだだ!食らえ通常攻撃!!』
ナルメア:『』miss
団長:『無言で避けたぁぁぁっ!!』
ナルメア:『私のターンね。舞い散りなさい。胡蝶刃・源氏舞。』
団長:『あがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』ズシャッ!ズシャッ!ザシュッ!
あ、これダメだわ。
ちくしょう!なんだって俺がこんな目に合わなきゃいけねぇんだよぉ!
死にたくねぇよぉ・・・・頼む!神様仏様リーシャ様!!どうか居てください・・・居てください・・・居てくださいっ!!
―――俺は祈りながらドアノブに手をかけ、ゆっくり捻る。
そして、最後は思い切ってドアを開けた。
だが・・・
「・・・いない。」
どこにもいない。執務机にも、ベッドにも、椅子の上のバッグの中にも、どこを探しても居ない・・・
はぁッ!?もうマジで何なの?なんでこういう時に限っていないの?
もう・・・勘弁してくれよ・・・
「――――――ッ!!」
―――そう思って肩を落としたその瞬間、突然背後に気配を感じた。
まさか・・・ナルメア?
い、いやいやいや、ポジティブにいこう。うん、そうだ、これはきっとリーシャだ。そ、そ、そ、そうに違いねぇ!!
「・・・リーシャ?」
俺は後ろ向きのまま、震える声で問いかけた。すると・・・
「団長ちゃん、みぃつけた。」
「・・・・・」
はい終わった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!刺さないでっ!刺さないでっ!刺さないでぇぇぇぇぇぇっ!!」
「だ、団長さん、そんなに驚かないでください!今のは冗談です!私です!リーシャですよ!!」
その言葉でハッと振り返ると、確かにリーシャが立っていた。
「うおぉぉぉ!!てめぇ殺す気かコノヤロォォォ!!危うく漏らすところだったじゃねぇか!!」
「なに言ってるんですか。もう漏れてますよ。」
「なにッ!?」
気が付くと、俺のグラン周辺が大洪水だった。
「うわぁ!最悪だぁっ!」
やっちまったぁぁぁぁっ!女子の前で漏らすのはマジで人権失効だぞッ!!
「今、魔法で綺麗にしますから、じっとしててください。」
そう言うとリーシャは体の前に軽く手をかざし、小さく呪文を詠唱した。すると、たちまち彼女の手から淡い緑の光があふれだしてきて、俺のグランのあたりにまとわりつく。
「・・・ふう、これで良し。」
数秒後には、洪水は綺麗サッパリ消え去っていた。
・・・スゲぇ。そんな魔法あるんだ。
って、感心することじゃねえ!そもそもコイツがあんな恐ろしいこと言わなきゃよかっただけの話じゃねえか!!
「全く、洪水を何とかしてくれたのには感謝するが、もう二度とあんな馬鹿なことしないでくれよッ!!俺死ぬぞッ!!一撃が最大HPを軽く超えてるぞッ!!」
「ふふふ、すみません。まさかあんなに驚くとは思わなかったので。」
「思え!頼むからッ!!」
「分かりました。以後気をつけます。」
「ええい・・・まあいい。とりあえず、早くドアを閉めてくれ!」
「はい。」
―――バタン。
「よし!それでいい!!あと、ちゃんと鍵も掛けてッ!!」
「鍵?掛けちゃってもいいんですか?そうするとここ、密室になっちゃいますよ?」
なぜこっちを見てニヤニヤする!俺の命がかかってるんだぞ!
「いいに決まってんだろ!!奴に入ってこられたら一巻の終わりだ!!」
「分かりました。」
―――ガチャ。
「うーん、部屋の鍵だけじゃ心配だな。なんか他に、鎖とか南京錠とか無いのか?」
「ありますよ。」
「よし、それも使おう。ガッチガチに施錠するんだ。」
「えぇっ、良いんですか?」
だから、なぜこっちを見てそんなにニヤニヤするんだ!!俺は必死なんだぞ!!
「頼むから使ってくれ!もう二度と開かないぐらい厳重に施錠してくれッ!!」
「まあ、団長さんがそうおしゃるのでしたら・・・ふふふ」
なぜ笑ったッ!必死な俺がそんなに面白いか!?!?
「・・・・さてと。こんな感じでいかかでしょうか?外からはおろか、中からも開きませんよ。」
リーシャは机の脇から取り出した鎖と南京錠で手際よく扉をガッチガチに固めると、俺の方に向き直ってそう聞いてきた。
「うん、完璧だ。」
無数の鎖と南京錠で
よしッ!危機は回避したぜッ!!
「ふう。ようやく落ち着きましたね。ところで団長さん、今回は一体どういったご用件で?」
おっとそうだった!ナルメアから逃げることに夢中になりすぎて、うっかり忘れるところだった。
「ああ、実はな・・・」
「あっ、こんなところで立ち話もなんですから、どうぞソファの方へ。」
「えっ?、あ、おう。」
リーシャに促されるままに、俺はソファに座った。
「気分が落ち着くように、何か飲み物でも用意しますね。紅茶とかでいいですか?」
「ああ、ありがとう。」
なんだ?今日は妙に気が利くな・・・
いや、そんなことないか。リーシャは割といつもこんな感じだ。
こいつ乙女のクセして真面目だからなぁ~。こういう礼節をしっかり弁えてる所とか、ちょっと好感度上がるわ。
俺なんて、部屋に誰か来ても高確率でシカトだもんなぁ。会話しようと思っても話が続かないんだよね、すぐに話題が尽きちゃうし。
マジでコミュ障の悪い癖出てるわ。日常会話で話題を提供できないという悪い癖が。やばっ、今度から気をつけよ。
―――リーシャは部屋の隅の棚に置かれている花柄のティーセットを取り出すと、それを執務机の上に置き、せっせと紅茶を淹れ始めた。
それに伴って、疲弊した俺の耳に様々な音が聞こえてくる。
茶葉が缶の中を滑る乾いた音、続いてポットから湯の注がれる音・・・
こういう日常的な音は何だか安心するな。さっきまで緊張していた分、余計に癒し効果が高い。
・・・気の抜けた俺は、ふと目を瞑って深呼吸してみた。
―――ポチャン。
「・・・?」
なんか今、変な水音がしたような・・・
俺はパッと目を見開いて、リーシャの方を見遣る。彼女はちょうど二杯目のカップに紅茶を注いでいるところだった。
「おいリーシャ、今、紅茶に何か入れなかったか?」
「え?別に入れてませんけど・・・」
「そうか。」
「どうしたんですか団長さん?」
「いや、変な水音が聞こえたもんだからさ。」
「気のせいじゃないですか?きっと疲れてるんですよ。」
確かに、それはあるかもな。今日はいつにもまして事件が多かったし。
そうだ、今のは幻聴だ。きっと俺は疲れてるんだよ。
そもそも、リーシャが紅茶に何かを入れるったって、一体何を入れるってんだ?睡眠薬でも混ぜたってか?それこそ有り得ねえ。リーシャはそんなことする奴じゃない。
「さあ、紅茶が入りましたよ。どうぞ。」
「ありがと。いただきます。」
俺は、差し出されたティーカップを受け取った。