恋の訪れは猫とともに   作:プロッター

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Attack to Alice

 戦車の中は、暑い空気と、緊迫した空気で満たされている。草原とはいえ、凸凹した地形を進んでいるせいで、中はガタガタと揺れる。

 だがそんな空気にも、そんな振動にも気を取られず、メグミは前方にいる1輌の戦車をペリスコープ越しに見据えていた。

 その戦車の砲はこちらを指向してはいないが、間違いなくこちらの車輌の接近には気づいている。あの戦車の乗員が気付かないはずはない。

 限りなく漆黒に近い紺色の巡航戦車・A41センチュリオンに向けて、メグミの愛機である重戦車・M26パーシングが前進する。

 いや、正確に言えば、メグミ『たちの』パーシングだ。

 

『こちらアズミ、位置に着いたわ』

『こちらルミ、準備完了!』

 

 メグミの乗るパーシングの両脇にパーシングが並び、それぞれ位置をやや後ろにずらす。そして、無線からはおっとりした様子の女性の声と、それとは逆にはきはきした感じの女性の声が聞こえてきた。

 信頼を置いている仲間の声を聞いて、メグミはよし、と頷く。

 事前の打ち合わせは済んでいる。メグミの戦車の乗員たちの準備も整っていた。

 メグミは無線機をきゅっと握り、そしてスイッチを入れて交信を開始した。

 

「アズミ、ルミ!バミューダアタック、パターンDを仕掛けるわよ!」

『『了解!!』』

 

 メグミの指示の瞬間、操縦手の深江(ふかえ)が戦車の速度を上げる。脇に就くアズミとルミの戦車も同様に速度を上げて付いてくる。メグミの車輌だけがわずかに前に出ていて、それでも3輌は一定の速度を保ち、奇麗なV字形を描いていた。

 3輌のパーシングのエンジン音が上がり、さらに速度を上げたことで地面と履帯の擦れる音も大きくなった。例えセンチュリオンがこれまでこちらに気づいていなかったとしても、これで確実に向こうもこちらの存在に気づいたはずだ。

 そこでセンチュリオンは、すぐに旋回をしてこちらに砲身を向ける。その旋回スピードたるや他の戦車など比べ物にならないほど速くて、あのスピードを初めて見た新米隊員全員が唖然としたほどだ。

 あのセンチュリオンに乗っている操縦手、砲手、装填手、通信手は、桁外れなまでの才能の持ち主である。そんな彼女たちの上に立つ車長は、メグミが敬愛してやまない人物であり、まさに『天才』と称されるほどの実力者だ。

 しかもあのセンチュリオンの性能は、チーム内はおろか戦車道に参加可能な戦車の中でもずば抜けて高い。走攻守、三拍子揃っている。

 まさに完全無欠にして難攻不落のセンチュリオン。

 そのセンチュリオンに向けて、メグミたち3人のパーシングが突進する。敵がどれだけ強かろうと、メグミ、アズミ、ルミは臆さず、怯まず挑む。

 センチュリオンの砲身がメグミたちを仕留めようと、まるで引き絞られた弓のようにこちらを向いて固定される。センチュリオンに限った話ではないが、ああして砲身を向けられると言い知れぬ恐怖を覚える。

 

「今!」

 

 だがそんな恐怖になど屈さず、メグミが指示を出す。

 その瞬間、アズミとルミの戦車がほんの一瞬だけわずかに速度を落とす。メグミのパーシングだけは速度を落とさず、センチュリオンの左側にドリフト気味に回り込む。さらにアズミの戦車はメグミと同じ左へ、ルミの戦車は右へ回り、センチュリオンを3方向から回り込もうとする。

 このメグミたち3人のパーシングが繰り出す、動きがダイナミックで変則的かつ連携の取れた攻撃こそが『バミューダアタック』だ。その動きが読み辛いことから、戦っている相手は困惑しているうちに倒されてしまう。

 そしてこれは、メグミ、アズミ、ルミの3人の間で信頼関係が築けていなければ成り立たない技でもある。この『バミューダアタック』で多くの敵を屠ってきたことが、彼女たちの仲の良さの証明にもなる。

 3輌のパーシングの砲身は全てセンチュリオンに向けられている。この距離ならセンチュリオンでも十分撃破することが可能だ。それに3輌共がセンチュリオンを狙っているから、相手がどのパーシングを狙っていても残りの2輌で仕留められる。

 

 ただしそれは、目の前のセンチュリオンの乗員が()()()()の場合の話だ。

 そして今、そのセンチュリオンに乗っているのは普通の人()()()()

 

 まず最初にセンチュリオンは、まだ回り込もうとしているドリフト中のアズミのパーシングに向けて砲塔を回し冷静に狙撃して撃破。さらに砲塔の向きは固定したまま超信地旋回をして、本来の所定位置に着いたルミのパーシングの砲撃を躱す。そして砲塔をルミのパーシングに向けて回し、さらに超信地旋回をしてメグミのパーシングの砲撃を避けつつ、ルミのパーシングを撃破した。

 

「あ、ダメだわコレ」

 

 メグミが悟ったように呟いた直後、『ズバァン!!』という鋭い砲撃音、そしてメグミのパーシングは見事センチュリオンに撃ち抜かれてしまった。

 バミューダアタックは失敗し、3輌全てが返り討ちに遭ってしまった。

 

『試合終了、島田チームの勝利!』

 

 車内のスピーカーから審判役の隊員の声が聞こえて、メグミのパーシングの中の空気は緊迫したそれから一変、和やかな残念会ムードに包まれる。

 

「負けちゃいましたねぇ・・・」

「強いなー、隊長・・・」

 

 メグミに近い位置に着いていた砲手の平戸(ひらど)と装填手の対馬(つしま)が感心したように言葉を洩らす。まるで、あのセンチュリオンと実際に戦う前からその結果が分かっていたような口ぶりだ。

 2人の気持ちはメグミも分かる。『隊長』の強さは、彼女と出会って副官として傍について、共に戦ってきて嫌というほど思い知らされている。あの強さを前にしては、『勝てるだろう』という希望的観測さえもできない。

 

「今回は、行けると思ったんだけどね・・・」

 

 ただしメグミだけは、平戸達よりも残念がっていた。それは、『隊長』に勝とうという意思があったからで、自分たちに自信を持っていたからでもある。それは驕りや慢心とも違う、真っ直ぐな気持ちだ。

 だから、その自信が砕かれて、真っ直ぐな気持ちも実らなかったのが、メグミは残念だった。

 しかし、いつまでもくよくよ悩んでいるのは性に合わない。メグミは両手を叩き、乗員たちの気持ちを切り替えさせる。

 

「さ、反省会に行くわよ」

『はい!』

 

 メグミが告げると、乗員たちも今一度気を引き締めて返事をし、速やかに戦車の外に出る。

 社長であるメグミは一番最初に戦車から降りて、空を見上げる。白い雲が広がり、青く澄んだ空は夏の訪れを予感させる。

 その空ばかりに意識を向けはせず、メグミはほかの乗員、そして同じく戦車から降りたバミューダアタックの協力者であるアズミ、ルミと共に、反省会を行う会議室へと向かった。

 

 

 メグミは『大学選抜チーム』という戦車道の団体に所属している。この大学選抜チームは、全国各地の戦車乗りの中でも優れた人員を集めた、言わば戦車乗りのエリート集団だ。

 その大学選抜チームの中でのメグミは、副官としてチームを率い、1中隊を任されている。それはメグミの実力がエリートの集まりである大学選抜チームの中でも指折りというものであり、それはメグミにとっても密かな誇りだった。

 その副官はメグミのほかにも2人いて、それがアズミとルミ。彼女たちもまたメグミと同規模の中隊をそれぞれ率いている。

 メグミとアズミ、ルミの3人は『バミューダ3姉妹』とチーム内外から並び称されることが多々あり、彼女たちもそれについて不満はない。そして彼女たちがそう呼ばれているから、先ほどの練習試合でも行ったような3人の連携攻撃も『バミューダアタック』と呼ばれるようになった。

 そして、先ほどの練習試合でメグミたちと戦い驚異的な動きを見せたセンチュリオンの車長こそが、この大学選抜チームの頂点に立つ『隊長』。戦車道界隈ではしばしば『天才』と称され、忍者戦法と呼ばれる島田戦車道の後継者でもある人だ。

 

「隊長、お箸をどうぞ」

「あ、うん・・・・・・」

「隊長、お水をお持ちしました」

「ありがとう・・・」

「お手拭きをどうぞ、隊長」

「・・・・・・」

 

 その『隊長』は大学の敷地内にある食堂で、メグミ、アズミ、ルミの3人から甲斐甲斐しく(?)お世話をされていた。

 全国の大学から集められた大学選抜チームの練習試合の後ということもあって、食堂の中は普段よりも人が、特に女性が多い。

 その食堂で、3人を前にして戸惑いつつもやや不満げな表情をする『隊長』は、見た目は大学生どころか高校生にも見えないほど幼い。だがすらりと伸びる細い手足や白い肌、華奢な体躯は人形のようで、触れると壊れてしまいそうなほど儚い印象を抱かせる。彼女の着ている服もロリータチックなものだから、人形のようという比喩も間違いではない。

 しかし彼女こそが、13歳にして大学に飛び級し、練習試合でバミューダ3姉妹を返り討ちにしたセンチュリオンの車長、そして大学選抜チームの隊長である島田愛里寿だ。

 

「では、いただきます」

「「いただきまーす」」

「いただきます・・・」

 

 4人で挨拶をして、それぞれ食事を始める。

 席順は愛里寿の隣にメグミ、愛里寿の正面にルミ、ルミの隣でメグミの正面にはアズミが座っていた。いつもこの席順というわけではなく、毎回昼食の前に3人でじゃんけんをして誰がどの位置に座るのかを決めているのだが、その席順を決める『理由』も、そのじゃんけんをしていることも愛里寿本人は知る由もない。

 

「バミューダアタックも隊長には敵わないわね・・・」

「そうねぇ・・・何をやっても隊長、無傷で返り討ちにしてくるんだもの・・・」

 

 メグミとアズミは残念そうに告げる。バミューダアタックは、メグミたち3人が副官になってから編み出した連携攻撃でパターンがいくつもあり、状況に応じて使い分けている。

 だが、多くの敵を屠ってきたバミューダアタックさえも、愛里寿は無傷で躱し、逆に3人全員を返り討ちにしてしまう。どのパータンでやっても、愛里寿が見たことがないはずのパターンでも、愛里寿は焦らず冷静に対処するので打つ手がない。

 

「でも、連携攻撃のパターンも増えてるし、精度も上がってきてるし・・・十分強くなってると思うよ」

「本当ですか?ありがとうございます!」

 

 年相応とも言うべきか、若干舌足らずな感じのする愛里寿のフォローに、ルミは心底嬉しそうに反応して頭を下げる。

 今でこそ、愛里寿は幼さを感じさせるような話し方をしているが、戦車道の時間は今の口調とは正反対の話し方になる。

 

『状況開始』

『各車発砲、敵を殲滅しろ』

『かすり傷程度だ、気にする必要はない』

『敵が誰だろうと油断はするな、足元を掬われるぞ』

 

 話し方と同時に声質も変わるので、声が似ている別人が言っているんじゃないかと錯覚することもあるらしいが、紛うことなき同一人物である。

 大学選抜チームのジャケットを着た臨戦状態ともいえる愛里寿の声は、大の大人も怯むほどの威圧感がある。研ぎ澄まされた剣のような鋭さと硬さを兼ね添えている声は、下につく者を従わせるような重苦しさも感じさせる。

 だが今は、戦車道の話を少ししていたとはいえ昼食の時間である。愛里寿の纏う雰囲気も、着ている服も合わさって、幼い感じに戻っていた。

 そんな愛里寿は、甘口のカレーをスプーンで掬い、一口食べる。

 

「・・・・・・美味しい・・・」

 

 カレーの味が気に入ったようで、嬉しそうに小さく笑い告げる。

 それを見ていたメグミ、アズミ、ルミの3人は。

 

(((可愛いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!)))

 

 脳の中で黄色い絶叫を上げていた。しかし表面上は、それぞれが自分の料理を静かに食べつつ愛里寿の食べている様子をちらちらと窺う、という感じで。

 3人が先ほどのように甲斐甲斐しく世話をしていたのは、愛里寿のことを隊長と仰ぎ見て敬愛していると同時に、その可愛らしさのあまり溺愛しているからだ。

 溺愛、と言っても抱き締めたりシャワーを一緒に浴びたりと、目に見えるほどべたべたするというわけではない。先ほど席に着くように、(本人たちからすれば)さりげない気遣いをしたり、愛里寿の可愛らしい所作に心の中でだけ悶える程度だ。

 決して愛里寿に実害を加えるような真似はしないし、加えようものなら愛里寿の母親である島田流家元から何をされるか分かったものではないからだ。

 

(あ~可愛いなぁ隊長・・・カレーをあーんさせてあげたい・・・)

(満面の笑みじゃなくてちょっとだけ笑っているのが逆にグッドなのよねぇ)

(ああ・・・戦車道で疲れた心と体と脳が癒される・・・)

 

 だが、3人がこうして愛里寿の様子を見てほっこりした気持ちになるのも、仕方がないことなのかもしれない。

 何しろ愛里寿は儚げではあれどその容姿は愛らしく、成人を過ぎて一段階大人になったメグミたちからすれば、このぐらいの年頃の女の子は可愛らしく見えるものだ。

 それと、メグミたちが愛里寿に積極的に接しようとしている要因は他にもある。

 

「ところで、隊長?」

「あ、何・・・?」

「昨日は休日でしたけど、隊長は何をされていましたか?」

 

 アズミが問いかけると、愛里寿は『えっと・・・』と小さく呟いてから。

 

「戦車道の本を読んで・・・・・・勉強してた」

「あ、そうでしたか。隊長は勉強熱心ですね」

「そうかな・・・・・・いつもそうだし・・・」

 

 愛里寿の返答にアズミは刹那戸惑う様子を見せたが、すぐに持ち直していつものように愛里寿を褒める。だがその愛里寿の表情も少し硬い。

 アズミは、ただ愛里寿の私生活が気になって『休日何をしていたか』と質問したわけではない。

 愛里寿は飛び級してメグミたちと同じ大学生という身分ではあるものの、年齢はメグミたちとは離れている。だからこそ、常に周りには年上しかいないというこの状況で愛里寿は孤立感や疎外感を抱き、さらには年上に対する一種の畏怖のような気持ちさえも感じていることに、メグミたちは既に気付いていた。

 その愛里寿の中の不安を払拭するために、あえてアズミは先ほどのような雑談を愛里寿に持ち掛けたのである。その答えは年頃の女の子にしては硬すぎるものであったが、一応は反応を示してくれたので、これはチャンスでもある。

 

「隊長はお休みの日とかに、お出かけとかはしないんですか?」

 

 さりげなくルミが切り出して、メグミとアズミは心の中で『グッジョブ!!』と親指を立てる。

 

「うん、あんまり・・・・・・。勉強したり、録画したアニメを観たりしてるから・・・」

「そうですかぁ」

 

 すると愛里寿の表情が曇る。どうやら、自分の休日の過ごし方が少し周りと違うと気づいてしょげてしまったようだ。それにもちろんルミは気づいたのでフォローを入れる。

 

「あ、いえ、責めてるわけじゃないんですよ」

「ううん、大丈夫。それでみんなは、お休みの日は何してるの・・・?」

 

 そして今度は愛里寿が投げかけてきた質問にメグミ、アズミ、ルミの3人は頭の中で『キター!!』と叫ぶ。

 話の流れがこちらに向いてきた。これをきっかけに話を広げて、『休日に愛里寿と一緒にお出かけ』というひとまずの目標に繋げるのだ。

 メグミ、アズミ、ルミの3人は一瞬だけ視線を合わせて頷く。目には見えないバミューダアタックの始まりだ。

 まずはルミが先鋒を務める。

 

「私は、そうですね・・・よく街を歩きますね」

「街を?」

「はい、新しい発見が色々あって楽しいんですよ」

「そうなんだ・・・」

 

 ルミの休日は結構のんびりとした感じのもの。愛里寿の興味をある程度引くことはできたものの、そこまで食いつきはよくない。

 続いてアズミが畳みかける。

 

「私は大体お買い物、ショッピングです」

「ショッピング・・・」

「特に洋服ですね。メグミとルミも誘って、3人で一緒に行くこともあるんですよ」

「そうなんだ・・・なんか、楽しそう」

「良ければ今度、隊長もご一緒にどうですか?」

「うん、お母様が許してくれたら・・・」

 

 愛里寿はショッピングに興味を抱いたらしい。表情も先ほどと比べると少し明るくなってきている。そしてカレーを一口食べた。

 愛里寿がカレーに意識を向けている間に、アズミは勝ち誇ったかのような笑みを浮かべ、ルミは『ちっ』と愛里寿に聞こえない程度の大きさの舌打ちをして、アズミをジト目で見る。

 3人ともが愛里寿と休日にお出かけをすることを夢見てはいるが、その前段階、『誰が一番愛里寿の興味を引けるか』という面においてこの3人は競争している状態にある。だからルミも、アズミに対して苛立たし気な顔をしているのだ。勿論根っこからアズミのことを恨んでいるというわけではないのが分かっているので、メグミも仲裁はしない。

 ただ、アズミの『メグミとルミも誘って行くことある』という言葉は正しい。実際アズミはメグミとルミをよくショッピングに誘い、その目的はもっぱら洋服だ。

 

『2人とも素材は良いんだし、少しは気を遣いなさいな』

 

 その言葉と共にアズミは2人を買い物に誘い、服を薦めている。このバミューダ3姉妹の中で一番ファッションセンスがあるのは母校の影響もあってアズミだと、メグミもルミも認めている。

 ただ2人は、違和感のない服であればなんでもいいと思っているので、服装に対するこだわりはそこまでない。アズミの気遣い自体が嬉しいことは確かなのだが。

 

「メグミは、お休みの日ってどうしてるの?」

 

 愛里寿は最後に、メグミに聞いてみる。

 だが、アズミとルミは知っていた。メグミは基本休日は部屋でのんびりと過ごしていて、必需品の買い物とトレーニングジムへ行く時ぐらいしか外出しないと。およそ女性らしくはない休日ライフを過ごしているのだと、知っている。

 だから、せっかくいい感じになってきた話の流れをぶった切ってくれるなよ、とアズミとルミはメグミに向けて念を送る。

 しかしメグミは、なぜか得意げにふふんと笑っていた。

 それもそのはずで、メグミは昨日新しいことにチャレンジをしたのだ。そのチャレンジしたことを、メグミは明かす。

 

「私はですね、昨日は猫カフェに行ってきました」

 

 メグミの言葉に、アズミとルミの食指が動く。その顔はまさに『なんだと?』と、疑わしいものを見るそれをしていた。

 一方で愛里寿は猫カフェとはどんなものなのかがいまいちイメージできていないのか、小さく首を傾げる。

 

「猫、カフェ・・・?」

「平たく言うと、猫がいるカフェです。そこでお茶をしたりお菓子を食べたりしながら、猫と一緒に遊ぶことができるんです」

「へぇ・・・・・・」

 

 メグミの説明を聞いて、愛里寿は頭の中で自分なりに猫カフェのイメージをする。

 そして。

 

「楽しそう・・・行ってみたいな」

 

 アズミの時とは違って、明確に自分から『行ってみたい』と告げたのだ。その言葉にメグミは心の中でガッツポーズをとりながらも、あくまで表情は冷静に、その嬉しさを決して出さず、にこりと笑って愛里寿に優しく話す。

 

「いいですよ。今度、隊長の都合が合う日に一緒に行きましょうか?」

「うん・・・お母様にも相談してみる」

 

 さらっと一緒に行くことまで約束したメグミ。愛里寿の表情も大分柔らかくなっている。

 間違いなく、この話題のMVPはメグミだろう。

 その一方で、ルミは『よかったですね』と表向きは愛里寿が嬉しそうなのを素直に喜び、アズミは『私も今度行ってみようかしら?』と猫カフェに興味を示すような反応を見せる。

 だがメグミには見えていた。ルミは地団太を踏んでいて、アズミはハンカチを咥えて『きぃ~!』と悔しそうにしているのを。

 バミューダアタックという複雑な技を滞りなく繰り出せるほどの信頼関係を2人と築いているメグミは、その本当の気持ちが分かっているうえで『どうだ』と勝ち誇ったかのようなどや顔を浮かべて自分の唐揚げを1つ食べる。美味い。

 こうして愛里寿の興味を引くことに成功し、どうにか自分たちとの間にある見えない壁をある程度取り払うことにも成功した。やはり昨日、猫カフェに行ったのは正解だった。

 だが、メグミは自分が誘った以上、自分が愛里寿をリードしなければならないとも考えていた。

 だからもし、愛里寿と猫カフェに行くことが実現するのならば、その前にもう少し回数を重ねて猫との触れ合い方を学び、愛里寿に教えられるようになるべきだろう。

 昨日初めて行った時には、偶然にも桜雲という同じ大学の青年に会って教えてもらったので、多少触れ合い方も分かってはいるが、まだまだ完璧とは言い難い。

 教えるからには中途半端は嫌なので、今度はちゃんとネットや本などで調べてみようとメグミは思った。

 桜雲の連絡先を知っていれば桜雲に聞くという手も考えられたが、昨日初めて会っただけなので連絡先は知らない。大人しく自分の手で調べるか、とメグミは頭の中で考えた。

 

 

 講義も全て終わって、メグミは校門へと向かう。アズミとルミと一緒に帰ることもあるが、彼女たちもそれぞれ用事があるようで今日は一緒ではない。敬愛する愛里寿も車の送り迎えがあるので、メグミは自然と1人で帰ることになる。特に寂しくはないが。

 今日も疲れたな、夕飯はどうしようかな、と取り留めのないことを考えながら校門へ向かって歩いていると、メグミはある光景を目にした。

 

(あれって・・・・・・?)

 

 1人の青年が、植え込みの方を見ながらしゃがんでいた。そして、右手をその植え込みに向けて差し出している。

 そして、その青年にメグミは見覚えがあった。

 

「桜雲?」

 

 声をかけると、しゃがんでいた青年―――桜雲はメグミに気づき、びっくりしたような顔をする。だがすぐに、表情が柔らかくなる。

 

「メグミさん、こんにちは。そっか、同じ大学だったね」

「何してるの?そんなところで」

 

 昨日と同じく穏やかな口調で桜雲が挨拶をする。だが桜雲の様子が不審者のように見えなくもないので、メグミが当然の疑問を投げかける。

すると桜雲は、そっと植え込みの奥の方をそっと指差した。

 メグミが同じようにしゃがんで桜雲の指差した方を見ると、茶と白の大きな丸い毛の塊があった。いや、よく見ると薄黄色の目と、獣の耳のようなシルエットが見える。

 

「猫?」

「うん、野良猫」

 

 どうやら桜雲は、この茶白の野良猫を見つけて、気になってしゃがんでいたようだ。昨日猫好きと言っていたし、そうと分かれば納得だ。

 メグミも、改めてその猫に意識を向ける。新しくメグミという人間が視線を向けたことで、猫も若干警戒心を強めたらしく、目が見開かれている。

 

「でもこの子、野良のわりに人慣れしてるっぽいんだよね」

「そうなの?」

 

 桜雲がそう言いながら人差し指を向けると、茶白の猫は匂いを嗅ぐように鼻をちょっとだけ動かす。だが、昨日の猫カフェの時のように顔を擦りつけてきたりはしない。

 

「多分、近所の誰かが餌付けしてるんじゃないかな」

「分かるんだ」

 

 見通しているような桜雲の言葉に、メグミは感心する。

 

「本当の野良猫は、これだけ近づいたら逃げちゃうし」

「へぇ~・・・よく知ってるわね・・・」

「いやいや、こんなの役に立たないし」

 

 メグミの言葉に桜雲は苦笑して手を横に振る。

 そこでメグミも、試しにその茶白の猫に向けてそっと人差し指を向ける。桜雲と同じく、ちょっとだけ興味を示すだけなのだろうと思ったのだ。

 だがそのメグミの予想に反して、猫はその人差し指の匂いを嗅ぐと、のっそりと起き上がる。

 

「お?」

 

 そしてその茶白の猫は、昨日の猫カフェの猫のように、気持ちよさそうに指に、手に顔を擦り付けてきた。どうやら、もともとこの猫は人懐っこい性格だったらしい。

 

「あら・・・・・・」

 

 メグミは、指と手から伝わってくる猫の感触に思わず顔が綻ぶ。そしてちょっとだけ、猫の横顔をそっと撫でた。

 少しの間メグミが猫の横顔を撫でていると、茶白の猫は満足したのか植え込みの奥の方へと引っ込んでいった。

 

「可愛かった・・・」

 

 思わず本音がメグミの口から洩れる。

 桜雲はそのメグミの言葉を聞きながら立ち上がり、そして笑った。

 

「やっぱりメグミさん、猫に好かれやすいみたいだね」

「えー、そうかしら?」

「野良猫がああやって自分から近寄るんだもの。僕も猫は好きだけど、あそこまで近寄られたことはないし」

 

 桜雲の言葉にはあまり実感が持てないが、それでも悪い気はしない。

 ああいった小動物に好かれるのは稀な才能らしいし、メグミ自身も昨日のこともあって猫の魅力に気付き始めていたので、その猫から好かれるのはいい気分だ。

 

「帰ったら手を念入りに洗った方がいいよ。野良猫と触った後は特にね」

「うん、気を付ける」

 

 メグミもまた立ち上がって、そして成り行きで桜雲と一緒に途中まで帰ることになった。

 

「桜雲はいつもこの時間に?」

「ううん、いつもはサークルに参加してるから今日よりは遅いかな」

「何のサークル?」

「動物好きのサークル」

「あー、分かるかも」

 

 猫が好きだと言っていたし、サークルに入っているとすればその手のものかなとメグミは予想していた。

 

「メグミさんは何かサークルには?」

「私は入ってないなー・・・。戦車道で忙しいし」

「え、戦車道?」

 

 桜雲が驚いたように返す。確かに、メグミは自分が戦車道を嗜んでいるということは桜雲には話していなかった。

 

「そ、戦車道やってるの。大学選抜っていうチームでね」

「へぇ、あの戦車道を・・・すごいなぁ」

「あの、って・・・・・・戦車道を知ってるの?」

 

 戦車道は乙女の嗜みであり、良妻賢母を育て上げることを目的としているために男からすれば馴染みがない。だから男の間で戦車道の知名度はそれほどでもないが、桜雲の口ぶりでは戦車道を知っているようだ。

 

「おばあちゃんが昔、戦車道をやっててね。それで色々写真を見たり、話も聞いたことがあるんだ」

「へぇ、そうなんだ」

「ただ、僕にはできなそうだなって思う」

 

 あはは、と苦笑する桜雲。その言葉は、単に桜雲が男だから戦車道はできない、という意味だけではないとメグミは思う。

 

「僕って昔から『のんびりしてる』って言われてて、競争とか勝負とか苦手だし」

「あー、確かにそんな感じもするかな・・・」

 

 桜雲は自分で言ったように『のんびり屋』で、メグミも最初に会った時からそんなイメージを持っていた。こういうタイプの人は勝負事や競争事には向かないと思う。戦車道の世界だって厳しいし、仮に桜雲が女で戦車道ができたとしても、ついていくのはなかなか難しいだろう。

 

「だから僕からすれば、メグミさんはすごいと思うよ」

「え?」

「だって、あの戦車道をやってるんだもの」

 

 桜雲は祖母から戦車道の話を聞いている。だからその世界の厳しさも、多少なりとも理解しているのだろう。だから、その戦車道を歩むメグミのことがすごいと、桜雲は素直に称賛したのだ。

 

「・・・・・・そうかな」

「そうだよ、絶対」

 

 だがメグミも、桜雲の口調がのんびりとしたものであっても、真正面から褒められたことはそれほどない。しかも同年代の男からとなれば、そんな経験は無かった。だから無性に気恥ずかしくなってしまい、視線を逸らす。

 

「あっ、隊長」

「え」

 

 すると丁度、メグミの視線の先―――校門を出てすぐそばの場所にメグミが隊長と仰ぐ愛里寿を見つけた。どうやら帰りの車を待っているらしい。

 だが桜雲はその愛里寿の姿には気づかず、メグミが声を突然上げたので桜雲は少し驚いた。

 

「隊長?」

「ええ、あの子」

 

 そこでメグミが愛里寿を指差して、ようやく桜雲も状況を理解する。だが、また新たな疑問が生まれる。

 

「あの子が・・・戦車隊の?」

「そうよ。13歳だけど飛び級して大学生になった、大学選抜チームの島田愛里寿隊長よ」

「・・・・・・」

 

 飛び級なんて言葉は現実では聞いたこともなかったが、メグミが平然と言っているあたり恐らく全部本当のことなのだろう。

 メグミはその、人形のように華奢な雰囲気を持つ愛里寿に近づき、挨拶をした。

 

「隊長、お疲れ様です」

「あ、メグミ・・・お疲れ」

 

 メグミの方が年上のはずなのに、愛里寿には敬語で接している。やはり普段の戦車道で隊長とその部下として接しているからだろうか。

 だが、愛里寿はメグミに偶然挨拶をされたことに多少驚きはしたものの、すぐに小さく笑みを浮かべて挨拶を返す。その姿はどう見ても13歳の女の子で、こんな小さな子が大学選抜チームの隊長を?と桜雲は首を傾げる。

 メグミと一緒にいた、首を傾げる桜雲に気づいて愛里寿は『誰だろう?』といった表情になる。メグミもその愛里寿の表情の変化には気づいたので、桜雲と愛里寿の間に入って桜雲を紹介した。

 

「ああ、隊長。この人は桜雲、昨日行った猫カフェで知り合ったんです」

「そうなんだ・・・・・・」

「大丈夫。怖い人じゃありませんよ」

 

 愛里寿が初対面の男を相手に怯えた様子なので、メグミが紹介した後でフォローを入れる。

 桜雲も、これぐらいの歳の女の子は自分よりも歳の離れた大人―――特に男性相手には怯えてしまうものだということは、なんとなくだが分かっていた。

 だから桜雲は、少しでもその怯えを解くために、愛里寿と目の高さを合わせるように屈んでから挨拶をした。

 

「初めまして、島田さん。僕は桜雲周作、よろしくね」

「・・・・・・よろしく、お願いします」

 

 しかし愛里寿は、ぎこちない挨拶をして桜雲と目を合わせようとはせず、メグミの陰に隠れてしまう。それを見たメグミは少し困ったような笑みを浮かべ、桜雲も似たような顔になる。

 すると、シルバーの乗用車が3人の近くに停車した。その車を見た愛里寿は、『あ』と小さく声を洩らしてからメグミを見上げる。

 

「ごめん、迎えが来たから・・・」

「ああ、はい。それではまた明日」

「うん、また明日・・・・・・」

 

 そして愛里寿は、ドアを開けて後部座席に乗り込む。

 その直前で、愛里寿は桜雲に向けて小さく会釈をしたのを、桜雲とメグミは見逃さなかった。

 そして愛里寿がドアを閉めると、その乗用車は静かに走り出して、夕方の街へと走り去っていく。

 

「・・・ごめんね、桜雲」

「何が?」

「隊長、ちょっと人見知りなところがあるから・・・」

「ああ、やっぱり?でも大丈夫、気にしてないから」

 

 桜雲も正直、愛里寿を初めて見た時は活発そうだという印象は抱けず、むしろ物静かな感じがする子だと思った。最初の反応だって、仕方ないことだと思うから怒ったりなどしない。

 

「・・・・・・あ、そうだ」

「?」

 

 愛里寿と別れて2人で並んで歩き、少ししてからメグミが思い出したかのように手をポンと叩く。

 

「今度ね、都合があれば隊長と一緒に猫カフェに行こうと思ってるのよ」

「島田さんと?」

「ええ。隊長もやっぱり、戦車道の時間以外だと私たち年上に対してどこか一歩引いたような感じがしているから、仲良くなろうと思って」

 

 メグミが少し悲しそうに笑う。

 隊長という立場であれば、部下であるメグミたちにはあの試合中のような話し方をするが、それ以外ではやはりメグミたちとの間に壁があるような状態だ。

 それをどうにかするためにメグミが愛里寿を猫カフェに誘い、少しでも愛里寿との距離を詰めようとしていることを知ると、桜雲もうんと頷いた。

 

「いいと思うよ」

「ありがと。それでね・・・」

 

 そこでメグミが桜雲を見て、ちょっとだけ申し訳なさそうな表情をする。桜雲はその顔に『?』と疑問符を抱く。

 

「その猫カフェの下調べとかして、猫との触れ合い方も勉強して、ちゃんと隊長に教えられるようになりたいんだけど・・・」

 

 歩きながらメグミは少し前屈みになって、桜雲の顔を見上げる形になる。

 だが桜雲は、メグミの言葉で『もしや』という予想が頭によぎっていた。

 

「桜雲さえよければなんだけど・・・」

「?」

「いい感じの猫カフェとか、猫との触れ合い方とか教えてくれない?」

「・・・・・・」

 

 その予想は、的中した。

 だが桜雲は、そのメグミのお願いとも、お誘いともとれる言葉に心が大きく揺れてしまっていた。

 猫との触れ合い方を教えるということは、実際に猫カフェで教えることになるだろう。それはもちろん外出に当たる。下調べの意味もあるのならば、当然愛里寿はいないはずだ。よってそのレクチャーも、桜雲とメグミの2人だけということになる。

 それはつまり―――

 

「それだったら、ネットとかで調べた方が早いと思うけど・・・」

 

 だが桜雲の口から出てきたのは『建前』の言葉だ。

 しかし、実際ネットで調べた方が早いし、分かりやすく載っていることだってある。それに桜雲自身、人にものを教えるのが得意というわけではないし、自分が教えただけで解決するとも思えなかった。

 

「いやいや、こういう時は慣れてる人に聞いた方が分かりやすいのよ」

「そうかな・・・・・・」

 

 メグミの言葉に納得できそうになるが、桜雲はまだ首を縦には振らない。

 

「それに、桜雲の猫との触れ合い方は信用できるから」

 

 その言葉に、桜雲もメグミの顔を見る。その目は、お世辞や社交辞令で言っているようには見えない。本当に、桜雲のことを信じて言っているようだった。

 

「だから、お願いしてもいい?」

 

 そこまで言われては、桜雲も無下に断ることはできない。建前をこれ以上並べることもできそうにない。

 桜雲は、小さく頷いた。

 

「分かった。僕でよければ、教えるよ」

「ホント?ありがとう!」

 

 メグミがニコッと笑う。その笑顔を見て、桜雲も照れ臭くなってしまう。

 そしてその日は、具体的な日にちや場所などが決まった際のために、お互いに連絡先を交換して解散となった。

 

 

 メグミと別れて帰路を歩く桜雲は、だんだんと茜色に染まってきた空を見上げて『はー』と抜けるような息を吐く。

 まさか、昨日偶然知り合ったメグミとまた今日会えるとは思わなかった。同じ大学に通っているのだからその可能性もゼロではないはずだったのだが、再会がまさか1日で叶うとは思ってもいなかった。結構貴重なことなんじゃないかと、桜雲はその稀な確率に当たったことに妙な高揚感を覚えている。

 いや、それ以上にすごいのは、また猫カフェに行くということだ。それも、メグミと一緒に。

 その提案をされた時、桜雲の頭にはある言葉が浮かび上がっていた。

 『デート』という言葉が。

 

(いやいやいや、付き合ってるわけじゃないし、そこまで仲良しってわけでもないし)

 

 その言葉を意識したところで、桜雲は頭を振る。

 確かにメグミは親しげに接してくれているとはいえ、それを意識するのはあまりにも早計だ。メグミが意外と押しの強い性格なだけなのかもしれないし、桜雲のことを単に『猫好きな知り合い』としか見ていないのかもしれない。いや、絶対そうだ。

 となれば、そんな感じで意識をする自分が何とも滑稽に思えてきた。

 成人年齢を超えて、自他共に認めるのんびり屋であっても、そういう色恋沙汰に興味関心を抱き始めているとはいえ、それは流石に短絡的だ。

 

(まったく・・・ちゃんとしなきゃ)

 

 やれやれと思いながら、桜雲は家路を急ぐ。全く持って、自分もまだまだ青いようだと嘆息した。

 そんな一抹の期待から目を背けるように、今日の夕飯は何にしようかな、寝る前に猫の本でも読むかな、雰囲気の良さそうな猫カフェってどこかにあったかな、と考えながら、歩を進めていく。

 夕暮れの太陽は、穏やかに明るい。




メグミのパーシングの乗員の名前は、
メグミの出身校・サンダース大学付属高校の本籍地である長崎の地名から戴きました。

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