いつの間にかお気に入り100件超えてました。皆さん本当にありがとうございます。
「よし...こんなもんか?」
翔太郎は大量の書類に目を通し、印鑑を押したり必要事項を書き込んだりしていた。
艦娘の資源や開発に関することは何一つ分からないのでそこは大淀に手取り足取り教えられながらなんとかひと段落つけたのであった。
「お疲れ様です、提督。お茶を入れましたよ」
「おう、ありがとな」
翔太郎は湯呑に入った茶をズズっと啜る。本当はコーヒーを優雅に飲むのが翔太郎的にはハードボイルドなのだが、わざわざ茶を入れてくれた大淀を無下にする訳にもきかない。
しかも大淀が入れてくれた茶はとても味わい深く、二日酔いの体に深く染み渡るのだった。
「そうだ、大淀」
「どうされました?提督」
「あいつらの寮を建て替えてやろうぜ」
「寮、ですか?」
「あぁ。いくら布団が綺麗になっても、建物があんなにボロっちいんじゃ夜も落ち着いて眠れないだろ」
意外とそんなことは無く翔太郎が来てから艦娘たちはぐっすり眠れるようになったことを大淀は知っていたが、実際問題寮がかなり老朽化してきているのも事実である。
「分かりました。妖精さんたちにお願いしましょう」
「そうと気まりゃ...おーい!ちんちくりん!」
翔太郎が窓から叫ぶ。すると窓から緑のスリッパを持った妖精がすごい勢いで執務室に入ってきて、
「だれかちんちくりんなのよ!このはーふぼいるど!」
翔太郎の頭をスリッパでパコンと叩いた。
「よし、きたな。早速だがみんなで協力して艦娘寮を建て替えてくれ。戦艦、空母、巡洋、駆逐、計4つだ」
「4つ!?じょうだんじゃないわよ!1つりょうをたてかえるだけでもめーーーっちゃたいへんなのに!」
「そこをなんとか頼むぜ」
翔太郎は手を合わせる。
「ふん。いくらなんでもよっつはむりよ。」
そういってそっぽを向く亜樹子似の妖精。
「そっかぁ、残念だなぁ。折角、お土産買ってきたのによぉ。まぁ他の艦娘たちに分けてやればいいか」
「そ...それは!」
翔太郎はわざとらしく口笛を吹きながら、昨日商店街で買った『風都まんじゅう』32個入りを見せつける。
「まぁ無理なものは仕方ねぇな。よし、大淀!他の子達呼んでき
「やるわよ!」
妖精は口から少しだけヨダレを垂らしそうになって答える。
「いいわ!やってやるわよ!
みんなー!」
「はーい!」
「ぜんいんしゅうごーう!」
「あっ、しょうちゃんじゃーん!」
「どったのしょうちゃん?」
執務室には5人の妖精が集まる。そして当たり前のように全員が風都の中でも特に翔太郎と関わりの深い面子にそっくりである。
この妖精、というかここにいる全ての妖精に言えることなのだが、みんな服装や髪型は風都イレギュラーズのメンバーにそっくりなのに、全員が同じ顔なのである。妖精独特のどこか憎めないあの顔である。
きっと全員が同じ格好をしたら気づかなくなってしまうだろうというくらいには全く同じ顔である。
そんなことを考えた翔太郎だったが、直ぐに気を取り直し、妖精相手に交渉を始める。
「お前らにお願いがある。今日中に艦娘寮を全館建て替えてほしいんだ」
「ぜんかん!?さすがにそれはたいへんすぎるにゃーん」
サンタちゃん似の妖精が驚く。
「そこを何とか頼むぜ。ほら、土産も買ってきてあるからよ」
「あっ、ふうとまんじゅうだー!
もうしょうちゃんったらとりひきうますぎるよー!しょうがないなー」
ウォッチャマン似の妖精はまんじゅうを見た瞬間に承諾された。
クイーン&エリザベス似の妖精も
「しょうちゃんのたのみならおーるおっけー!」
と快く承諾してくれた。
「よし!ならお前ら頼むぜ!」
妖精たちはビシッと敬礼のようなポーズをとると、一気にちらばっていく。
「これで完璧だな」
「提督、寮を改修中の間は皆さんはどこに?」
「っといけねぇ。そこ考えてなかったな。
まぁあいつらも今日中に終わらせてくれるらしいからな。鎮守府のどっか適当な場所にいりゃあ問題ねぇだろ」
「分かりました。それにしても1日で4つの寮を改修なんてほんとに出来るんですかね...」
「さぁな。でもこいつらがやるって言ってるならやってくれるだろ。
このあと何か俺はやることは?」
「今書いて頂いた書類だけで今日は大丈夫です」
「分かった。なら2日連続になっちまうがもう一度買い物に行ってくるぜ」
「またですか?」
「安心しろ。ちゃんと執務に関係あるものだ」
「...分かりました。何かあるようなら先日借りたこの携帯で連絡しますね」
そういって大淀はビートルフォンを見せる。
翔太郎は「あぁ、そうしてくれ」と言うと帽子を被り執務室を出た。
今日の翔太郎の出で立ちは、昨日『WIND SCALE』で購入した青いワイシャツに黒いベスト、ネクタイは白という、これまた70年代を彷彿させるハードボイルドファッションである。
鎮守府の廊下を歩いていると、
「あっ、司令官!」
と声をかけられた。振り向けば第6駆逐隊の四人が翔太郎の元へ小走りでよってきた。
「司令官、妖精さんに寮を追い出されちゃったんだけど、私たちの寮はどうなるのかしら?」
「お前達の寮は今日で建て替えだ」
雷に翔太郎が答える。
「建て替え?つまりもっとレディに相応しいお部屋になるということね?」
「さぁな。それはあの妖精共の手腕次第だな」
「私たちは建て替えの間、どこにいればいいのです?」
首を傾げる電。
「そうだな...まぁ鎮守府のどっか適当なとこに...
そうだ。お前らお出かけしたくないか?」
「お出かけ?」
キョトンとする響に翔太郎が続ける。
「あぁ、お出かけだ。ちょっと執務室に欲しいものがあってな。良かったら一緒に行かねぇか?」
「行きたいわ!ちょうど暇してたもの!」
嬉しそうに答える雷に、暁、響、電も同意する。
「よし、なら行くぞ」
〜風都〜
「で、提督。何を買いに行くのです?」
「そういや話してなかったな。まぁ見てのお楽しみだ」
翔太郎は暁、響、雷、電の5人で風都に繰り出していた。
今5人は鈴谷、熊野と共に行った商店街に来ている。
「おう、どうした翔太郎!そんなにちびっ子引き連れて。誘拐でもしたか?」
「バッ、ふざけんな!うちの艦娘だよ。今日もちょっとばかし買い物だよ。
そういや昨日の金は?」
「あぁ。ちゃんと振り込まれてたよ。
これからもご贔屓になー!」
翔太郎は酒屋の店主に手を振る。
昨日の買い物で翔太郎はその持ち前の人の良さと風都愛を生かし、冷え切っていた風都に住む人間との関係を1日で修復してしまったのだ。
「ハラショー、さすが司令官だ。あれだけ酷い目に合わされていた人達ともうここまで仲良くなれたのか」
「まぁな。これも俺のハードボイルドさのおかげだな」
「多分ハードボイルドは関係ないと思うわ!」
雷たちは翔太郎と離れないようにして歩いている。もし迷子にでもなってしまっまら一大事だ。
まぁ翔太郎の人柄を知った商店街の住民達ならすぐに鎮守府に連絡を入れてくれるのだが。
「あら、かわいいお子さん達ね。翔ちゃん、この子は?」
「うちの鎮守府の駆逐艦たちだよ。ほらお前ら、挨拶しな」
4人はぺこりと果物屋のおかみさんに頭を下げる。
すると奥からその旦那である店主が出てくる。
「翔太郎か。おぉ、こりゃまた随分と可愛らしいお子さんを連れてるな」
「子供扱いしないで!私は1人前のレディよ!」
「は、はわわわわ。暁ちゃん。初対面の人にそんなこと言っちゃダメなのです...」
電がオロオロしながら暁を止めようとする。
だが店主は大きく笑った。
「レディ?がはははは!確かにお嬢ちゃんがおっきくなったらきっと美人さんになると思うぜ」
「ほんと!?」
「本当だよ!男ゲン、果物はダメでも女の目利きだけは...
って痛てててて!」
ゲンはおかみさんに耳を引っ張られて涙目になる。
「全くあんたってやつは...
ごめんね、お嬢さんたち。お詫びにこれあげるから、帰ったらみんなで食べてちょうだい!」
そういってゲンさんの奥さんは袋にたくさんのリンゴやみかんなどの果物を詰める。
「悪いぜ、洋子さん」
「いいのいいの!お嬢さんたちもこれ食べていっぱい大きくなるのよ!」
そういって洋子さんはグイグイと袋を押し付ける。
「ありがとう!私が持つわ!」
そういって暁は袋を受け取る。
「大丈夫?重くない?」
「大丈夫よ!なんたって1人前のレディなんだから!」
そういってフフンと胸を張る暁。通りかかる人達はその微笑ましいやり取りに、優しい顔になっていた。
これも翔太郎が来る前までは見られなかった光景である。
「じゃあね!気をつけるのよ!」
「じゃあなー!また来いよ!」
そういって手を振る果物屋の夫妻。
「大丈夫か?暁。重いなら無理しなくていいんだからな?」
「もう子供扱いしないでよ!艦娘なんだしこれくらいへっちゃらだわ!」
そんなやり取りをへて、5人は商店街の路地裏にある、怪しい店の前に着いた。
「ほ、本当にここが司令官さんの行きたかったお店なのです...?」
「あぁ、安心しな。ここで間違いねぇよ。
いいなお前ら、店の中では絶対に騒いだり走り回ったりするなよ?
商品を落として壊したりなんてしたら大変だからな」
翔太郎が釘を刺すと、4人は真剣な顔で頷く。
それを見て翔太郎は優しく微笑むと5人は店に入る。
〜アンティークショップ〜
「いらっしゃいませ...おや、あなた達は?」
「そこ鎮守府の提督と艦娘たちだ。ちゃんと金払って買い物をするから安心してくれ」
「昨日商店街の皆さんが話していられた方ですね。どうぞ、気の済むまでご覧になってください」
店内にはオシャレなアンティークが並ぶ。
「す、すごいわ...まさに大人って感じだわ...」
暁は売られているものが何かは分からないが、何かとんでもなくオシャレで高そうだということはわかった。
「司令官。ここで何を買うの?」
雷が翔太郎に尋ねる。
「今日買うものは1つ。タイプライターだ」
「たいぷらいたー?」
雷はキョトンとした顔をする。
「タイプライターってのは書類とかを作る時に使う機械。まぁ簡単に言うと、印刷専用のパソコンみたいなもんだな」
「印刷専用?ならパソコンとプリンターとかを買った方が、ほかのことに使えて便利なんじゃないかな?」
響は当然の疑問を投げかけるが、翔太郎はチッチッと指を振る。
「分かってねぇなぁ。パソコンとタイプライターじゃ、ハードボイルドさが段違いだ。
まぁこれもお子様には分からない世界といったところだな...」
「つまり大人の世界ね...私もたいぷらいたー買おうかしら...」
「多分暁ちゃんは買っても使うことがないと思うのです...」
「タイプライターならこちらにあるもので全てです」
店主はそういってタイプライターを見せる。
「なるほどな...ならこの白い枠のやつを買わせてもらうぜ。もちろんちゃんと使えるよな?」
「はい。ちゃんと動作は確認済みでございます」
「わかった。ならそれを買わせてもらうぜ」
「分かりました。今すぐ箱に入れましょう」
そういって店主はタイプライターを気泡が入ったプチプチと音がなるビニールで包むと、ダンボールの箱にいれ、それを手提げ付きの紙袋に入れた。
「ではお値段は......」
翔太郎が店主と会計を済ませる途中、暁たち店の外に出ていた。
当初暁達は見たことも無い色々なアンティークに目を輝かせていたが、よく見れば値札にはウン十万円というとんでもない値段のものがちらほらとあり、もしそれを壊してしまったら...なんてことを考えると、とても店の中にはいられなくなってしまった。
「よし。お前ら、買い物は終わりだ。だが帰るのには少し早いな...
そうだ、もう一個店に行くぞ。ついてきな」
そう言われた4人はまるでアヒルの親子のように翔太郎の後について行く。
少し歩いて着いたのは、オシャレな外見の喫茶店-『白銀』であった。
〜『白銀』〜
「いらっしゃいませ」
そうカウンターの奥でティーカップを拭いているのは、店のマスター『フランク白銀』である。フランク白銀は元の世界の風都にもいたマジシャンであり、引退後に孫の『リリィ白銀』とともに喫茶店『白銀』を開いた。
するとリリィ白銀が席に案内するために翔太郎たちの元へと来た。
『どうやら琉兵衛たちと同じで二人もこの世界に...いや記憶はないから実質別人みたいなもんか...
まさか...フィリップや照井もそっくりさんがいるってのか?』
「お席はこちらへどうぞ。随分と可愛らしいお連れ様ですね。妹様ですか?」
考え事をしていた途中でリリィ白銀に声をかけられ、気を取り直す翔太郎。
「悪いがこいつらは妹じゃねぇんだ。艦娘だよ」
「艦娘なんですか!?じゃああなたは?」
「俺は風都鎮守府の新しい提督にして探偵の左翔太郎だ」
「ということは前の提督は?」
「捕まったよ。でもこいつらもあいつの被害者だったんだ。散々雑に扱われて、怪我をしても治療すらしてもらえなかったんだ。
だから...こいつらに対して敵意とかは向けないで欲しい」
それを言われた暁たちは一様に暗い顔になる。自分たち艦娘が風都の住民達にしてきたこと、前提督にされてきたことを思い出すと、口を開くことが出来なかった。
「いいえ、そんなものをむけたりはしませんよ。あなたを見れば、前のあの男とは全く違う人間だということが一目でわかります」
カウンターの奥でフランク白銀が穏やかな声で語る。
どうやらリリィ白銀も同じ気持ちのようだ。
「ほらほら!早く座っちゃってください。
注文とりますよ!」
そう促され、テーブル席の奥のソファに響、雷、電が、手前には翔太郎と暁が座る。
当初は雷が座ろうとしたのだが、全員が翔太郎の隣に座ろうとしたらしく、翔太郎がジャンケンでもすりゃいいだろと言うとジャンケンすることになった。
結果は見事暁の一人勝ちである。
5人はメニューを見ながら注文を決めていた。
「そうだな...俺はオリジナルブレンドを頂くぜ。砂糖やミルクは無くていいぞ」
「私はアイスココアにするわ」
「電もアイスココアが欲しいのです」
「ここにウォッカは無いのかい?」
「こら、響!真昼間っから酒を飲もうとするんじゃねぇ」
「そうかい...ならコーヒー牛乳をお願いするよ。コーヒーの苦さはどうも慣れないんだ」
「暁ちゃんはどうするのです?」
「わ、私は司令官と同じやつにするわ!」
暁は少し焦り気味に言う。
「俺と同じやつでいいのか?なら、砂糖とミルクを
「いらないわ!大人のレディはコーヒーに余計なものは入れないのよ!」
「ったく無理すんなよ?」
すると翔太郎はリリィ白銀に目配せをする。
リリィ白銀は何か分かったように頷くとカウンターへと戻っていき、数分後に注文を持ってきた。
「はい、アイスココア2つとコーヒー牛乳、あとオリジナルブレンドが2つでーす。
あと一応、本当に万が一のために砂糖とミルク、置いておきますね」
そういってリリィ白銀は下がっていく。
翔太郎はマグカップの取っ手を掴むと口をつける。
「ほう...程よい酸味がたまらねぇな。
こりゃ俺ももっと練習して、照井よりも美味いコーヒーを淹れられるようにならねぇとな」
静かに対抗心を燃やす翔太郎。
奥のソファでは3人が甘い飲み物をグビグビと飲んでいる。
そして翔太郎が隣を見ると、暁が目の前のコーヒーとにらめっこしている。
「どうした、暁。コーヒーは温かい内に飲むのが大人のレディのマナーってもんだぜ」
「ギクッ...分かってるわ!の、飲んでやろうじゃないの!」
そういって暁は恐る恐るコーヒーの入ったカップを口に運ぶ。
そして
「...に、にが〜い...」
「だから言ったじゃねぇか。無理すんなって。ほら、分かったなら砂糖とミルク入れな」
「そうするわ...」
暁は苦味に蝕まれる下を出したまま、角砂糖とミルクをドバドバとコーヒーに入れていく。
「おいおい...下手したら響が飲んでるコーヒー牛乳より甘くなってねぇか?」
「し、仕方ないじゃない...苦すぎるのよ!」
「フフっ」
2人のやり取りを見て電が思わず吹き出す。
「どうした電。お前からも暁になんか言ってやれ」
「ち、違うのです...翔太郎さんが司令官になるまで、こんなに楽しい気分になることは無かったのです」
「本当ね。あなたが司令官になる前は出撃に遠征ばっかり、怪我をしても治してなんか貰えなかったわ」
「でも司令官はこうやって私たちに笑顔を、楽しいと思える『心』をくれた」
「おいおいよしてくれ...照れるじゃねぇか」
そういって笑う翔太郎に
「でも本当のことよ、司令官。あなたのおかげで私たちは確実に笑顔を取り戻せてる。
いや、私たちだけじゃないわ。みんなも、きっと同じ気持ちよ」
「暁...」
暁たちの捻りのないストレートな言葉に思わず、顔が綻ぶ翔太郎。
そのやり取りをカウンターから見ていたリリィ白銀とフランク白銀も、翔太郎と同じように顔を綻ばせていた。
だがそこで翔太郎のスタッグフォンが着信音をあげる。
翔太郎はスタッグフォンを取ると耳に当てる。
「どうした?大淀」
「提督!今すぐに戻ってきてください!!」
「なんかあったのか?」
「敵襲です!深海棲艦が...風都鎮守府近海にきています!!」
「......!!
分かった、すぐ戻る!」
そういって翔太郎は通話を切る。
「どうしたの司令官?何かあったの?」
「お前ら、すぐに鎮守府に戻るぞ!
深海棲艦が鎮守府近海にきやがった!
マスター、これはお代だ。釣りはいらねぇからな」
翔太郎はテーブルに1万円札を置いて荷物を持って、席を立つと第6駆逐隊の4人を立たせ、鎮守府へと走り出した。
〜 風都鎮守府〜
「すまねぇ!大淀!遅くなった!」
「早くして、翔ちゃん!」
執務室には大淀と陸奥が残っていた。
本来なら陸奥も出撃したいところなのだが、翔太郎の指揮能力は皆無だと言っていい。そのために実質指揮をとるために陸奥が残ったのだった。
翔太郎たちは鎮守府に着いたあと第6駆逐隊の4人と別れ、1人執務室へと走った。
「提督!早く出撃許可を出してください!
提督が許可を出さないと出撃できません!
出撃できる艦娘は既に艤装を装備していて、直ぐに出られます!」
「分かった!出撃だ!」
「了解!!」
大淀は敬礼すると執務室に置いてあるマイクを使う。
『執務室より伝令!提督からの出撃許可が出ました!艤装をつけた艦娘は直ぐに出撃をお願いします!
なお、提督の指揮能力を加味して、今回の迎撃の指揮は陸奥さんが取ります!』
伝えることを伝えると大淀はマイクを切る。
「今回は翔ちゃんは私の指揮を見ておいて。
実戦で学んだ方が早いわ」
「お二人共!すぐに司令室へ移動しましょう!」
〜鎮守府近海〜
「さぁeverybody!張り切っていきまショウ!follow me!!」
司令室からは陸奥が指揮を執るが、実際の戦場での細かな判断は金剛に一任されていた。
「気合い!入れて!行きます!」
「あれ?加賀さんは?」
瑞鶴が疑問の声を上げる。
「加賀さんは艤装の調子が悪く装備を整え次第、第2迎撃部隊に混ざってくるようです」
赤城が答える。
「ふーん、そうなんだ。なら加賀さんが来る前に私たちで全部倒しちゃおう!
加賀さんに活躍なんてさせないんだから!」
第1迎撃部隊の士気は十分だった。翔太郎が来たことで精神的、肉体的に大きく余裕が出来たため、みんな万全の状態で出撃出来ている。
ただ後方には精神的なダメージから出撃出来なかった艦娘も多い。
「皆さん!敵艦隊を発見しました!
砲撃戦に移ります!」
霧島が声を上げる。
その声とともに第1迎撃部隊は砲撃戦の構えをとった。
〜???〜
「ウッ...ハ、ハナセ!コノウスギタナイニンゲンメ!」
怒りの声をあげるのは戦艦タ級。だがその四肢は鎖に繋がれ身動きが取れなくなっていた。
「キミにはこの力を与えよう」
「ナ、ナニヲスルツモリダ!」
「喜びたまえ。君はこれで艦娘を簡単に倒すことが出来る」
『アイスエイジ!』
そして男はタ級に『端子が赤い』アイスエイジメモリを挿入する。
「アアアアア!!!!」
タ級は絶叫する。だが何故かメモリを挿入したことによる外見の変化は起こらない。
だが四肢に繋がれていた鎖が一瞬にして凍結して粉砕されたことからメモリの持つ固有の効果は体に残っていることが分かる。
そしてメモリを挿入されたタ級は理性の無い獣のように男に襲いかかろうとするが、
「今はこれを使おうか」
『パペティアー!!』
メモリが体に挿入される。
男はその体を、パペティアードーパントに変化させる。
そして男は右手をタ級の顔の前に掲げる。その瞬間タ級はまるで『糸の切れた人形』のようにダランとなる。
男は右手の指を動かす。
するとタ級は人形師に操られる人形のように動き出した。
「さぁいっておいで」
タ級は海上に着水するとものすごいスピードで鎮守府へ向けて動き出した。
「『T3メモリ』、素晴らしいな。今までのT1、T2と違い、『地球の記憶』に内包された力を最大限引き出せる。
T1メモリの出力では深海棲艦に使用したところでその抗体で弾かれてしまう。
だがまだ生産数が少ない。とにかくT1メモリを色々な人間に使ってさらなる実験を進めなくてはいけないな」
そう言って男は建物の奥へと歩いていった。
〜鎮守府近海〜
「全巻一斉射撃、ファイヤー!!」
金剛の高らかな声ともに艦娘たちがいっせいに射撃を行う。
その鉄の雨に多くの深海棲艦達が沈んでいく。
「流石です!お姉様!この調子なら!」
「皆さん、一気に攻めましょう!」
「勝利が!!私を呼んでいるわ!!」
艦娘たちは次々に深海棲艦を沈めていく。
「待ってください!十時の方向に...戦艦タ級です!」
「一艦で来るとはいい度胸だな。直ぐに沈めてやる!」
「何かあのタ級...様子がおかしいような...」
その瞬間、タ級がカッと目を見開いた!
〜司令室〜
「この調子ならすぐに終わりそうね」
陸奥は少し安心したような顔でモニターを見つめる。
すると司令室に入電が入る。
「あら、入電?大淀さん、ちょっと出てくれない?」
「分かりました」
そういって大淀は受話器をとる。
『はい。こちら司令室の...
『緊急です!海上が...凍りついてしまい、身動きが取れません!!』
声の主は霧島。だがその様子は焦りの2文字だった。
『海上が...凍る?』
『いえ...海上だけではありません!
艤装なども凍りついてしまい、砲撃すらできない子もいます!このままでは...』
大淀の声を聞いていた翔太郎は、まさかと思い立ち上がり、大淀から受話器を奪い取る。
『こちら翔太郎だ!まさかそっちに...変な見た目の化け物はいるか!?』
『化け物ですか!?こちらには...戦艦タ級しか...キャア!!!』
『霧島...?霧島ァー!!!』
無常にも通話は切れてしまう。
「て、提督?」
「大淀、陸奥。ここは任せる。俺は行かなきゃならねぇ!」
「行くってどこへ行くって言うのよ!?」
「あいつらのところへだよ!」
「あなたがいってどうなるの?それよりあなたは...
「すまん!話しは後で聞く!」
翔太郎は陸奥の言葉を聞く前に駆け出した。
「もう!翔ちゃんったら!」
「仕方ないです、陸奥さん。
ですがもしかしたら提督には何か策があるのかも...」
「策?」
「ほら、提督って何かよくわからない機械をいくつか持っていたじゃないですか」
「それでどうにかなればいいのだけど...」
「今は...提督を信じるしかありません」
〜工廠〜
「おーい!明石はいるかー!?」
「どうしたんですか?提督!」
ピンク色の髪の工作艦、明石か忙しそうに作業をしている。
「ここに俺が乗れるボートはあるか?
できればエンジン付きがお望みだ!」
「エンジン付きボートならそこに...
って何をされる気ですか!?」
「話はあとだ!」
そういって翔太郎はボートに飛乗ると、そのままエンジンを最大出力にして鎮守府近海へと出ていった。
〜鎮守府近海〜
この近くには誰もいない。深海棲艦や艦娘たちはここからもっと西で戦っている。
『加賀』は海上移動に使う艤装のみを展開している。
「赤城さんを、この鎮守府を...」
『アビス!』
加賀は起動したガイアメモリを二の腕の生体コネクタに挿入し、
「ワタシガ...マモル...」
その姿を空母ヲ級に変えて、第1迎撃部隊がいる戦場に向かって、海上を滑り出した。
次からここにドーパントの詳細などを載せていきます。
今回出てきたドーパントはまだ少ししか出番がなかったのいずれちゃんとした戦闘の際に載せます。