〜食堂〜
「おーい!伊良湖ー」
翔太郎、間宮、金剛四姉妹は伊良湖に会うために食堂を訪れた。だが間宮が探偵事務所に相談に来たその前まで伊良湖は食堂でお菓子を作っていたらしいが、今は何故かその姿が見当たらなかった。
「あれ?伊良湖ちゃんどこ行っちゃったんでしょう?」
「おかしいわね。私がさっき翔太郎さんの事務所に行く前までは確かに食堂でお菓子を作っていたはずなんだけど...」
首を傾げる比叡にどこか心配そうな声で答える間宮。
すると
「あれ?間宮さん。それに提督に金剛さんたちまで。
皆さんどうされたんですか?」
厨房の奥から割烹着を着た伊良湖が現れた。
そして何故かその額には一筋の汗が見られる。
「よぉ伊良湖。いまさっき食堂に来た時おまえの名前を呼んだんだけど、聞こえなかったか?」
「あ、そ、そうだったんですか。ちょっと食材の準備に夢中になっていたので気づきませんでした。
申し訳ありません...」
「いや、別に謝ることはねぇさ。で、俺たちちょっと伊良湖が作るお菓子を食ってみたいんだが、構わねぇな?」
すると翔太郎の言葉に顔をぱあっとさせ
「本当ですか!?すぐに作りますね!
皆さんは何かリクエストはありますか?」
とても嬉しそうに翔太郎たちに尋ねてくる。
「俺は伊良湖におまかせだな。お前らは?」
「私たちも伊良湖におまかせするネー!」
金剛の言葉に妹たちも頷く。
「なら皆さん座って待っていてくださいね!」
伊良湖は足取り軽やかに厨房へと向かっていく。
それを見届けた翔太郎は隣の間宮に小声で、間宮に話しかける。
「一応伊良湖ちゃんを見張っていてください」
「わ、分かりました」
そして間宮は伊良湖のいる厨房に、翔太郎と金剛達は食堂のテーブルに座って待つことになった。
〜テーブル席〜
「さてと...お前らはどう思った?」
「どうって...別にいつもの伊良湖ちゃんでしたよ?」
「私にもあまりおかしな所は見えませんでしたが」
「むしろまたお菓子を作れるようになってキラキラしてたネー」
「か〜っ...これだからトーシロは...」
翔太郎はヤレヤレといったように手を挙げ、首を振る。
「どういうことですか!」
「榛名。お前はどう思った?」
「は、榛名ですか!?榛名には...なんというかどこか余裕がないような...」
榛名はおずおずと口を開く。
「俺も同意だ。さっき厨房からでてきたときも変な脂汗かいてたし、どこか普通じゃない高揚感みたいなのを感じたぜ。
まだ確定って訳じゃあないが...ありゃ何かしらありそうだな」
「どうしてそんなことが?」
不思議がる霧島に翔太郎は帽子を置いて告げる。
「まぁ、探偵の直感ってやつだな」
「直感...ですか。理論で動く私にはどうも理解し難いものです」
「おいおい霧島。それじゃあ探偵としてやってけねぇぞ」
「別に私は探偵ではありませんよ...」
「直感なら自信があります!」
「うるせぇ比叡!耳元で叫ぶな!あと直感に自信があるのは結構だが、料理だけは直感で作るんじゃねぇ!」
「ひぇぇぇぇぇ!」
そんなやり取りをしていると、厨房から伊良湖がお盆に最中とお茶を載せてやってきた。
「皆さんお待たせしました!伊良湖最中です!」
伊良湖は翔太郎たちの前に最中と緑茶を置いていく。
「わぁ、美味しそうです!」
榛名達は嬉しそうに最中を口に運んでいく。
「ワーオ!Very deliciousネ!」
「上品な甘さだ...こりゃうめぇな」
翔太郎達はあっという間に最中を食べ終わる。
「ありがとな、伊良湖。美味かったぜ」
「はい!私も提督と金剛さん達に喜んで頂いて光栄です!次はもっと美味しいお菓子をご馳走できるよう頑張りますね!」
こうして翔太郎、金剛四姉妹、間宮は食堂を後にし、事務所へと向かった。
〜事務所〜
「いや〜、それにしても美味しかったですね!伊良湖ちゃんの手作り最中」
「はい!榛名も大満足です!」
「なぁ間宮さん。食堂にいる時に伊良湖は?」
「特に何もおかしなことはしていませんでした。ただひたすら頑張ってお菓子を作っていました」
「やはり伊良湖さんには何もないのでは?」
「どうだかなぁ...間宮さん確か伊良湖と部屋は同じですよね」
「えぇ...そうですけど」
「一応伊良湖が何かおかしなことをしないか念のために見ておいてくれませんか?
それで何も無いようならおそらく大丈夫かと」
「分かりました」
「よし。なら今日できることはここまでです。また何か相談したいことがあるならいつでもお待ちしてますんで。
ほらお前らも!帰った帰った」
こうして翔太郎は間宮と金剛四姉妹を寮に戻らせると、やっと一息つくことができた。
翔太郎は事務所の椅子に座ると、ゆっくりと目を閉じ、背もたれに体を預ける。
『こうしてると...元の風都にいた時を思い出す...あいつら、元気にしてっかなぁ』
「おっといけねぇいけねぇ、俺としたことが...
こんなことしてる暇があるならまずはやることやんなきゃな。
そろそろ『あいつら』が来るはずだ」
そう考えていると、事務所の扉が開かれる。
「お待たせしました司令官...ってすみません。部屋を間違えました...」
「いやいやいや!合ってるって!ほら、お前ら。早く入りな」
そう翔太郎が迎えたのは、駆逐艦の朝潮、朧、雪風、海風である。
「わぁ...すっごい」
「しれえ!このお部屋はどうしたんですか?」
「リフォームしたんだよ。こっちの方がハードボイルドだろ」
「はい。とてもオシャレだと思います。
それと...山風のことなんですけど...」
海風が顔を暗くする。
すると事務所に来た他の艦娘たちもみんな一様に同じような顔になる。
「そうか...今のところ俺が顔を合わせられてないのが、満潮、霞、曙、天津風、山風の5人だ」
「やっぱり私には無理です...私よりも漣とかにやらせた方が...」
「いいや。朧、これはお前にしか頼めないと思っている。朝潮も雪風も海風もそうだ」
「なぜですか?私よりも江風に任せた方が...」
「ダメだな。江風や漣は恐らく引っ張ってでも連れてこようとするだろ。
そんなんで顔を合わせたところでそうさせたやつと、今この時点で寮から出てきてないやつが普通に接することが出来ると思うか?」
「た、確かに...」
「俺が朝潮、朧、海風に任せているのはお前らがほかの姉妹艦のことを1歩引いた視点で見られるからだ。別に急ぎすぎる必要はない。じっくりと氷を溶かすように接してやってくれ。そのうちまた心を開いてくれるはずだ」
そう翔太郎に言われた3人は顔を少し赤くし、胸を弾ませる。するとその横にいた雪風が手を上げる。
「しれえ!雪風はどうして選ばれたんですか?」
「雪風はそうだな...元気一杯で優しいからだな!」
「わぁ!雪風、しれえに優しいって言って貰えて嬉しいです!」
翔太郎は雪風の頭を優しく撫でてやる。
「まずはこの鎮守府全員の艦娘の涙を拭ってやらないとな。街の涙を拭うのはそれからだ」
「司令官はなぜそこまでこの『風都』という街にこだわるんですか?」
朝潮がおもむろに翔太郎に尋ねる。
「特に深い理由なんざ無いさ。俺はただこの街が好きなだけだ。この街そのものが、この街に住む人間が、この街に吹く『風』が俺は好きなんだよ」
「風...ですか?」
「あぁ。今日もなかなかいい風きてるぜ」
「しれえ、なんか天津風ちゃんみたいこと言ってます!」
「へぇ...天津風ってそんなこと言うのか。こりゃぜひ一緒に風都の風を感じたいぜ」
「はい!そのためにも天津風ちゃんに司令官にあって貰えるよう、雪風も頑張ります!」
「おう。頑張ってくれよ、雪風」
そういって翔太郎は雪風の頭を撫でる。
そしてまだ顔を合わせられていない艦娘のことを任せられた4人の艦娘たちは部屋をあとにした。
『司令官の期待に応えられるよう、全身全霊で頑張らねば』
『提督のために私も頑張らないと!待っててね、曙!』
『そっかぁ...司令官は『風』が好きなんだ。でも名前に『風』が入ってる子って結構いるんですよね...』
『天津風ちゃん、しれえも風都の風が好きっていったらきっとしれえに会ってくれるだろうな!』
4人はそれぞれの思いを胸に抱きながら、翔太郎の想いに応えるために寮へと戻って行った。
そして翔太郎はまた1人になる。すると翔太郎の思考はまた伊良湖についてのことに戻される。
『伊良湖...本当に勘を取り戻しただけならいいんだが...そう簡単にはいかない気がするな』
だが伊良湖のことばかり気にしている訳にもいかない。
翔太郎は指令書の内容であるメンタルケアをこなすため、ほかの艦娘とコミュニケーションをとるために事務所を後にした。
〜厨房〜
「はい!あんみつですね!少々お待ちください!」
伊良湖が腕を取り戻したこともあって、食堂はたいへん賑わっていた。
特に甘いもの好きの艦娘たちはこぞって食堂にいる間宮と伊良湖のもとに甘味を味わいに来ていた。
伊良湖は嬉しそうに注文の甘味を作っていく。
そんな伊良湖に間宮は心配そうな顔で話かける。
「大丈夫?伊良湖ちゃん。さっきからほとんど休んでないけど...」
「大丈夫ですよ!私、今何よりも皆さんにお菓子を作ってあげられるようになったのが嬉しいんです!これからも一緒に頑張りましょうね、間宮さん!」
「...ええ、そうね。一緒に頑張りましょう、伊良湖ちゃん!」
そして間宮も伊良湖と同じく調理に戻る。
『そうよ。こんなに健気に頑張る伊良湖が、なにか悪いことをしてたりするわけないわね!私も手伝わないと』
だが間宮は、その後ろで伊良湖が目を血走らせ、息を荒くしていることには気づかなかった。
〜食堂〜
「おうお前ら。甘いもんばっか食ってんじゃねぇぞ」
「あっ、翔ちゃん!」
食堂にいた鈴谷が翔太郎の元に駆け寄る。
「伊良湖ちゃんが作るアイスマジチョーうまい!翔ちゃんも一緒に食べよ!」
「俺はさっき最中を食わせてもらったんだよ。それにいいのか鈴谷。華の女子高生がこんなに甘いもんばっか食ってたら太るぜ?」
「なっ!翔ちゃんったら最低なんですけど!まじデリカシー無さすぎ!
そもそも私、女子高生じゃないし!」
「おっと、そうだったな」
「全くですわ、鈴谷。わたくし達は女子高生でなくとも淑女ですの。淑女たるもの甘味ばかりにうつつを抜かしてはいられませんわ。
わたくしのように優雅に紅茶を嗜むのが淑女というものですわ」
「そういう熊野も鈴谷が来る前に間宮さんのパフェにがっついてたんだけどね〜」
そういってへらへらと笑うのはスプーン片手に笑う北上。どうやら大きめのアイスを大井とシェアしているようだ。
「ちょっ、ちょっと北上さん!」
「え!何熊野ったら鈴谷に内緒でパフェ食べてたの!?ズルイズルイ!私だってパフェ食べたかったー!」
「仕方ありませんわ!間宮券が余っていたのですから!」
「ったくどうしようもねぇな...」
そういって笑みを浮かべる翔太郎。ちなみに翔太郎の後ろでは熊野が食べたパフェの10倍の大きさを誇るジャンボDXパフェを赤城が脇目も降らず1人でがっついていた。
「ねぇ提督ー。夜戦に行きたいよー、や、せ、ん!」
いきなり翔太郎に飛びつく川内。
「うおっ、危ねぇ!って川内か!だーかーら!何度も言ってんだろ、出撃は禁止なんだよ!夜戦になんて行かせられるか!」
「そんな殺生な...!そこをなんとか...」
「ちょっと姉さん!すみません、提督。川内ったらもうずっと夜戦夜戦ってうるさくて...」
「悪ぃな。出来れば行かせてやりてぇんだが、出撃そのものが禁止されちまってるからな」
「でも川内が夜戦に行きたいって言い出すようになったの、左さんが提督になってからなんですよ。提督のためにもっと働い...
「わー!!ちょっと神通!ストップストップー!」
翔太郎にニコニコしながら話しかける神通の口を顔を真っ赤にした川内が塞ぐ。
「おぉ...なんか、いろいろ事情があるんだな...」
なぜ川内が神通を口止めした分からず困惑する翔太郎。そこに横にいた那珂がため息混じりに口を開く。
「...翔ちゃんって、本当に探偵?」
「なんだよいきなり。当たり前だろ?俺はこの街の涙を拭うハードボイルド探偵さ」
そうキメ顔で語る翔太郎。すると那珂はいきなり翔太郎に飛びかかる。
「探偵のくせにニブチンすぎ!このハーフボイルドー!」
「んだとぉぉぉぉぉ!?」
翔太郎は那珂に飛びかかられてバランスを崩す。するとその様子を見ていた駆逐艦たちも一斉に翔太郎の元に集まり、翔太郎はもみくちゃにされた。
結局翔太郎は駆逐艦たちの遊び相手となり、そのまま夕飯の時間まで駆逐艦たちと遊び続けるのだった。
〜フタサンマルマル 艦娘寮〜
「ハァ...ハァ...」
伊良湖は寮の裏で息を荒くしている。
「早く...早くこれを...もう1回使わないと!」
伊良湖は割烹着のポケットをガサガサと漁る。
「良かった...あった...早く、これを!」
伊良湖の手はガチガチと震えている。
その手に握られるのは、地球の記憶を詰め込んだ小さな箱。『ガイアメモリ』。
ついに伊良湖がそのガイアメモリのスイッチを押そうとしたその時。
「...あっ!!」
伊良湖の手に握られていたガイアメモリはいきなり放たれた糸によって巻き取られた。
突然のことに目を白黒させる伊良湖。そしてその糸が巻き切られた先には、
「やぁ、お嬢さん。こんな時間に外で何をしているのか、教えてもらうぜ」
風都鎮守府提督、左翔太郎が伊良湖から奪ったガイアメモリを手に持って立っていた。
『本当はこんなやり方...したくなかっんだけどな』
そう考える翔太郎の右肩に止まっているのはバットショット。
翔太郎は夕飯を取ったあと、伊良湖と相部屋の間宮の了承を得て、2人の寮の部屋の前にバットショットを仕掛けていた。
翔太郎はバットショットが撮る映像を、スタッグフォンを介して見ていた。
そして先程ついに伊良湖が寮の部屋から姿を現し、メモリガジェットを展開して、伊良湖が隠し持っていたガイアメモリの奪取に成功したのだった。
翔太郎はそのガイアメモリのスイッチを押す。
すると
『スイーツ!!』
とメモリの音声が流れる。
『なるほどな...地球に内包されていた菓子の記憶を取り込んで、菓子作りの腕を取り戻したのか』
「返して!それがないと、私はもう...みんなにお菓子を作ってあげられない!
お菓子が作れない私に価値はない!価値のない艦娘にはなりたくないの!
だから返して!!」
「ダメだ。それはできねぇ」
「どうしてですか!?
分かりました...休まず働きます!お給料もいりません!だから...だから...私にお菓子を作らせて下さい...
私に価値をください...お菓子を作れないと...私は...」
「伊良湖はお菓子が作れなくとも必要とされてるさ」
「え?」
「伊良湖は気づかなかったのか?確かに今日お前がみんなにお菓子を振舞っている時、みんなはとても嬉しそうにしてたさ。
だけどな、お前が料理が出来なくなった時、お前は何をしていた?」
「私は、食堂で注文を取ったり、皿洗いをしていましたけど...」
「そうだ。そして俺はその時の伊良湖をちゃんと見てたぜ。料理が出来ないから、それ以外のことを精一杯に頑張るお前の姿をな。
そしてここにいる艦娘たちは、そんなお前の姿を見て、みんな感激していたさ。
ついこの間まで塞ぎ込んでたやつが、今は自分に出来ることを一生懸命やってる」
「でも私は...給糧艦なんです!お菓子を作るために作られたんです!お菓子を作れなければ、私は必要とされ...
「違う」
翔太郎はキッパリと言い放つ。
「お前はお菓子を作るためにいるんじゃない。みんなの『笑顔』のためにいるんだ」
「みんなの、笑顔...」
「あぁ、そうさ。お前はお菓子を作るだけじゃない。そのお菓子を手段として、誰かを笑顔にさせるのが艦娘としてのお前の仕事だ。でもその手段が、お菓子だけとは限らねぇ。
だから伊良湖。こんな悪魔の箱に惑わされるんじゃねえ!ありのままのお前でいろ。お前はこんなものに頼らなくても、十分誰かを笑顔にできている。
お前はそれを俺が来てからの数日間で証明して見せたじゃねぇか」
「提...督...」
「そして『みんなの笑顔』のために働く伊良湖が流す涙は...俺が拭ってやる!
だから伊良湖は...この鎮守府の自分含めた全員の笑顔のために働くんだ。それもこんな悪魔の箱に頼らず、自分今できる精一杯でな!」
「提督...私、私...」
伊良湖はワンワン泣いた。翔太郎はそんな伊良湖のそばに寄り添った。そして持っていたハンカチで伊良湖の涙を拭いて、伊良湖が泣き止むまで一緒にいた。
〜執務室〜
翔太郎はタイプライターを使い、元帥宛の極秘文書を作っている。
『今回の伊良湖がガイアメモリを持っていた騒動は、特に大きな事件になることなく幕を閉じた。その後伊良湖にガイアメモリの入手経路を聞いたが、どうやらスーツにサングラスをかけた怪しい男に貰ったらしい。
最初こそ怪しんだものの、一目で自身のコンプレックスを言い当てられた伊良湖は、ガイアメモリの魔力に逆らえずそれを受け取り使用した。その結果、彼女の体に地球に内包されている『菓子』の記憶が流れ込み、菓子を作ることができるようになったらしい。
以上報告をおわる』
ちなみに翔太郎は伊良湖の件は間宮と金剛四姉妹にそれとなく解決した旨を伝えた。詳細を聞き出そうとした金剛と比叡にかなり詰問されることとなったが。
そして翔太郎もう一つ気になることがあった。これは自分自身のジョーカーメモリなども関係することなので報告書には書かず自身の心にとどめておいている事だ。
『伊良湖の体にはガイアメモリを挿す生体コネクタが存在していなかった。そしてそのスイーツメモリを見ると、端子の色が赤色だった。
ドーパント用のメモリの端子は銅、フィリップのは銀、俺が使うメモリは金。そして大道克己が財団Xから強奪した『T2メモリ』は青。そしてそのT2メモリの特徴は、ドーパントになるのに生体コネクタを用いないことだ。そしてこの端子の赤いメモリも、変身には生体コネクタを用いない...
こりゃなにか悪い予感がするぜ』
だがその考えを誰かに話さるでもない。翔太郎は大きめの茶封筒に報告書とスイーツメモリを入れる。
すると執務室の扉が開かれる。
「提督。大本営の方がお見えになりました」
「分かった。通してくれ」
翔太郎は今回のガイアメモリの件を大本営に伝えた。本当はまだ大本営を信用しきれていなかったが、フィリップがいない以上どうしようもない。翔太郎には大本営に信じて託すという選択肢しか残されていなかった。
そして大本営からの指令は報告書とガイアメモリの提出である。
翔太郎は伊良湖に対する処分を無くすことを条件にこれを承諾した。
あとから聞いた話によると、琉兵衛には艦娘を罰する気はさらさらなく『罪を憎んで人を憎まず』を地で行く思想の持ち主らしい。
むしろ今後の伊良湖へのメンタルケアに細心の注意を払うことが翔太郎への命令となった。
本当になぜこの世界の琉兵衛はこんなに人がよくできたやつなのか翔太郎は不思議に思った。
そしてとうとう大淀が、大本営から送られてきた人物を執務室に招き入れようとしている。
そして翔太郎は部屋に入ってきた人物に驚愕することとなった。
「提督。こちらが大本営直属の部署、超常現象調査部及び超常現象対策部の部長を務める『照井竜』大佐です」
「照井だ。今回の『件』への協力、感謝する」
「って照井じゃねぇかぁ!」
翔太郎はドンと机を叩く。
「おいおいマジかよォ...琉兵衛や霧彦に加えてまさかも思ったけどお前もいるのかよ...
しかもまた同業だし...」
翔太郎は頭を抱える。
「おい、お前。ここの提督は大丈夫なのか?」
「は、はい。ちょっと変わってるけど...とてもいい人ですよ、はい」
「にしても照井。なんでお前が来てんだよ」
「俺に質問するな」
「ったくいつものパターンかよ...」
翔太郎はまたも頭を抱える。
そして次は大淀が照井に尋ねる。
「あ、あの...『福井』大佐!」
「『照井』です」
「し、失礼しました!では...照井大佐。本日はどのような御用でこの風都鎮守府に?」
「俺に質問するな」
「えぇ...も、申し訳ありません」
翔太郎はそのやり取りをもう見慣れたもののように見つめる。だがそこにどこか懐かしさを感じ、その懐かしさが少しだけ翔太郎の心を安らがせる。
「おい、早く大本営より指定されたものを提出しろ。こちらも時間はない」
「ったく分かったよ。ほら、これが例のものだ」
「確かに受け取った」
照井は翔太郎から受け取った封筒を大事そうに持ってきたアタッシュケースに入れて、鍵を閉める。
そしてそれを持って執務室を出ていこうとする照井。だが
「おい、照井!」
翔太郎が呼び止める。
「なんだ」
「お前らが何を考えてるか俺にはわからねぇが、俺はお前らを信用して『それ』を託したんだからな。
だからひとつだけ答えろ。お前らはそれを何に使うつもりだ」
そして照井は部屋を出る直前で翔太郎の方に向き直ると、その目に彼を見据えながらハッキリと答える。
「俺に質問するな」
それだけ言うと照井は執務室をあとにする。
「そうか...なら安心だな」
「え、えっと何が安心なんですか?」
照井がいなくなった執務室で大淀は翔太郎に尋ねる。
「あいつの目を見りゃわかる。あいつの最後の言葉は『聞くまでもない』っていう意味さ。それにあいつなら問題ねぇだろ」
「は、はぁ...では提督。提督は今何を照井大佐に渡したんですか?」
「秘密だ」
翔太郎は即答する。
「悪いが今のことについてはあまり詮索しないで貰えると助かる。な?」
「...了解しました」
そういうと大淀は頭を下げて執務室を後にする。
執務室に1人残った翔太郎は窓から見える風都の海をその目に映すと、また椅子に座るのだった。
金曜更新の電王見てました。やはり電王は名作ですね。
電王のキャラを艦これで置き換えると、良太郎→羽黒・五月雨
モモタロス→天龍 ウラタロス→陸奥・龍田 キンタロス→球磨
リュウタロス→夕立 って感じですかね...
これで意外とかけそうだな...