〜Aへの扉〜/兵器達に心という名の花束を   作:電波少年

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ハーレー博士の口調が曖昧になってしまいました。申しございません。


第16話 Mの視察/レッツゴー、剛

「剛ー!!勝ったよ!

 

どう?いい画だったでしょ?」

 

 

「ああ!最高にいい画だったぞ、島風!」

 

 

ピョンピョンと跳ねる島風の頭をくしゃくしゃになでる剛。

島風はまるで大好きな飼い主に撫でられる犬のようだ。

 

 

 

その横では島風に手も足も出ずに完敗した摩耶と天龍が拳を握りながら俯いていた。

 

その目にはうっすらと涙が見える。

 

普段の勝気で明るい姿とは打って変わって大人しくなってしまった姉に、鳥海と龍田はかける言葉を失っていた。周りにいる艦娘たちも同様である。

 

 

 

「摩耶!天龍!」

 

 

 

だが翔太郎はそんな2人に臆することなく話しかけていった。

 

 

「お前らよくベストを尽くした!今日はたくさん飯食っていっぱい寝ろ!」

 

 

「...んだよ、馬鹿にしてんのか」

 

 

天龍の口調こそ悪いもののその言葉からは一切の覇気が感じられない。

そしてそれは摩耶も同様だった。

 

 

「どうせお前も笑ってんだろ...そりゃそうだよな。あんな不甲斐ない演習なんて見たら誰でも笑うよな」

 

 

だが翔太郎はそんな2人の頭にポンと手を置く。

 

「何シケた顔してんだお前ら。いつもあれだけ自信満々なこと言っといて、1回負けたぐらいでヘコたれんなよ。

 

島風が自分たちより努力をしていた、それだけじゃねぇか」

 

 

「うぅ...グスッ...」

 

 

摩耶と天龍はあまりの悔しさに涙腺のダムが決壊寸前という状態である。

 

 

「ほら泣くな。そんなんじゃハードボイルドな艦娘になれねぇぞ?」

 

 

「...別に、ハードボイルドになんかならねぇよ」

 

 

摩耶と天龍の頭を撫で続ける翔太郎。

 

そして数分たってようやく落ち着いたのか、摩耶と天龍は

 

 

「ありがとよ。今日から訓練再開して、もっと強くなってやる!!

 

世界水準超えてる俺には不可能なんかねぇ!」

 

「そうだ!アタシだって負けてらんねえ!」

 

 

といつもの調子を取り戻した。

 

 

 

翔太郎はそんな2人をみてうんうんと頷いた。

 

島風との演習も終わり、剛も視察任務を既に果たしていたため、風都鎮守府の艦娘たちは寮に戻っていった。

 

だが彼女たちの大半はどこかやる気に満ちた目をしており、トレーニングや訓練をまた始めようと意気込んでいる者が多かった。

 

 

 

そんな艦娘たちを見送った翔太郎は剛と共に、海を見ながら談笑に耽った。

 

 

ちなみに剛が連れてきた島風と、この鎮守府の雪風はかなり馬があったらしく二人で遊んでいた。

 

そして雪風は

 

『しれえ!島風ちゃんに合わせたい子がいるので寮を案内してもいいですか?』

 

と聞いてきたので翔太郎は二つ返事で了承した。

 

 

 

そして今に至る。

 

 

 

「にしても見事な動きだったな。まだここに来て1週間くらいだが、剛のとこの島風の動きは他の艦娘と一線を画してるってのは一目でわかったぜ」

 

 

「だろ?あいつは本当に努力してきたんだ。

 

『また艦娘として戦いたい!』

『もっと速くなりたい!』

 

って言いながら必死に努力してきたからな」

 

 

「ん?『また』?」

 

 

翔太郎は剛の言い方が気になったのか頭の上に疑問符を浮かべている。

 

 

「そういや話してなかったな。俺と島風の出会いを」

 

 

剛はそう言いながら懐かしそうな目で水平線のその先を見つめながら続ける。

 

 

「あれは...まだ俺がアメリカにいた時...」

 

 

 

───────────────────────

 

〜アメリカ〜

 

「よし、中々いい画が撮れたな」

 

 

剛はカメラで撮った写真を眺めていた。

 

 

 

『今日は『訓練』も休みだしな。さて、他にいい場所は...』

 

 

 

剛はそう考え、歩きながら浜辺を見回す。

 

 

 

そして彼は驚愕に目を見開くことになる。

 

 

 

なぜならその浜辺に全身傷だらけとなった金髪の少女が倒れ伏していたのだから。

 

 

 

「な!だ、大丈夫か!?」

 

 

その少女に駆け寄る剛。その華奢な身体を起こし、声をかけ続けるも返事はない。

 

 

「ど、どうする!こっから病院は遠いし...そうだ!ハーレー博士なら!」

 

 

 

 

 

〜研究所〜

 

 

「おーい!博士ー!」

 

 

「Hey!!どうしたMr.剛!

 

ってその女の子はなんじゃ?」

 

 

「大変なんだよ。この子、海岸で倒れてて声をかけても起きないんだ!」

 

 

「Really!? ワシ、医学の方はテンでだめなんじゃが...仕方ないネ!ここに寝かせてやってくれィ」

 

 

そしてハーレー博士は金髪の少女の身体に触れると、あることに気づく。

 

 

「Mr.剛...とんでもない拾い物をしてしまったナ」

 

 

「とんでもないって...何が?」

 

 

「深海棲艦のことは知っているな?」

 

 

「そりゃそうだよ。毎日ニュースでやってるし...」

 

 

「なら...『カンムス』のことは?」

 

 

「『カンムス』ってあの女の子が軍艦の力で戦っているアレだろ?

確かこのアメリカも『アイオワ』の建造に成功したって...

 

 

ってまさか!?」

 

何かに気づいた剛にハーレー博士は指をパチンと鳴らして答える。

 

 

「Exactly。この少女は『カンムス』じゃよ。

 

しかもあの最も深海棲艦からの攻撃が激しく、それに対抗する『カンムス』を所有しているJAPAN産だ」

 

 

「そんな...でもこんな大怪我負ってるんだ!すぐにでも病院に連れていかないと!」

 

 

「Wait!Mr.剛!」

 

 

 

島風を抱きあげようとした剛にハーレー博士が大きな声でそれを止める。

 

 

「ど、どうしたんだよ。すぐにでも連れていかないと手遅れに...」

 

 

「それはNo problemだ。カンムスは傷を負ってもさらにダメージを受けない限りそれ以上悪化することは無い。

 

だが問題はそこじゃあないぞい。もしカンムスを病院になんざ連れていったら、すぐにでも軍を呼ばれてこの子は連れていかれるじゃろうな」

 

 

「嘘だろ?!」

 

 

「嘘じゃないわい!アメリカは...いいやアメリカだけではない。

 

Japanを除いた全ての国がカンムスに関する技術を喉から手が出るほど欲しとる。Japanだけがカンムスの製造を軌道に乗せられているからな。

 

そしてそんな軍の人間達の手に、この子が渡ったなら...」

 

 

「...ッ!じゃ、じゃあどうすれば」

 

 

「Mr.剛。今から急いで『訓練』を再開じゃ。ワシもこの子の傷をできる限り治す方法を見つける。そしてこの子の傷とお前の訓練が出来次第、すぐにでもJapanに向かうのじゃ」

 

 

「に、日本に!?なんでそんなまた急に...

 

そ、そうか!」

 

 

 

 

言動の割に剛はかなり頭がキレる男だった。

 

彼は自分の姉が日本の海軍に所属していたことを思い出したのだった。そしてその姉に会えればもしかしたら事態が好転するかもしれないということに。

 

 

 

 

 

彼はその日からある『訓練』を再開した。

 

 

 

 

そしてある日。

 

剛は予定していた訓練をこなし、シャワーを浴び終えた時だった。

 

 

着替えて自分の部屋に行くと、自分がいつも寝ているベッドにあの時の金髪の少女が座っていたのだった。

 

 

「き、君!目覚めたのか?」

 

 

「うん。あの髭のおじさんが『この部屋のお兄ちゃんに挨拶してきなさい』って」

 

 

「そっかぁ...よかった!俺は『詩島剛』!君は?」

 

 

「私は...『島風』。駆逐艦の『島風』だよ」

 

 

「そうか。ならよろしくな、島風」

 

 

そう言って手を差し出す剛。

 

 

「うん。えっと...」

 

 

「剛でいいぞ」

 

 

「分かった。よろしくね、剛」

 

 

島風は差し出された剛の手を取った。

 

 

そして剛は島風の隣に座ると、意を決してあの日のことを聞くことにした。

 

 

 

 

「島風は...どうしてあの時浜辺に倒れてたんだ?」

 

 

 

 

それを聞いた島風はいきなり悲しい顔になる。

 

 

「島風は...捨てられたの」

 

 

「す、捨てられた?」

 

 

「うん。お前みたいな速いしか取り柄のないうるさいやつはいらないって。

 

最低限の燃料だけ積まれて、私はみんなの弾除けにされたの」

 

 

それを語る島風は、表情こそ自身を嘲笑うようだったがその目にはたしかに涙が滲んでいた。

 

 

 

 

「そんなことが、許されるのかよ...!

 

たった一人の少女の命を...そんなふうに...!」

 

 

 

それに対し剛の顔には怒りの色が見えた。

 

 

 

 

「私たち艦娘は人と違って、代わりはいくらでもいるの。だから島風が轟沈しても...

 

 

 

「そんなわけないだろ!」

 

 

剛は島風の方をガシッと掴むと必死に言葉を紡ぐ。

 

 

 

 

 

 

「命に...代わりなんてあるものか!今俺の目の前にいるのは他の誰でもない『島風』自身だ...だから何があっても『死んでもいい』なんて言っちゃダメだ!」

 

 

 

 

 

 

「剛...」

 

 

 

 

 

島風は剛の言葉に目を白黒させる。

 

 

 

「でも私には誰もいないの。他の艦娘みたいに姉妹もいない。提督も相手にしてくれない。

 

私はずっと一人」

 

 

 

「何言ってんだ。俺がいるだろ?」

 

 

 

そう言って自分を親指で指す剛。

 

 

その言葉にまたも面食らう島風。

 

 

 

 

「お前はもう1人じゃない。寂しいってんなら俺がいてやるからさ」

 

 

 

 

 

その声を聞いた島風はワァッと泣くと、剛の胸に顔を埋めて泣き続けたのだった。

 

 

───────────────────────

 

「んで、そっから1年間俺と島風は修行し続けたのさ。島風ももう一度艦娘として戦うことを望んだからな。あの連装砲ちゃんたちもその博士が開発してくれた。

 

で、1年経って俺と島風は俺の姉さんが務めてる久留間鎮守府に住まわせて貰ってる。

 

しかも島風はそこで遊撃部隊の隊長を任せられるくらい優秀なのさ」

 

 

「へぇ...中々目頭が熱くなる話じゃねぇか。そりゃああの島風もあれほど強くなろうと思えるわけだ。

 

 

ってか待てよ?島風の修行は分かるけど、剛は何の修行をしてたんだ?」

 

 

 

「え゛っ」

 

 

 

ギョッとしてしまったという顔をうかべる剛。

 

 

 

「ま、まぁそのなんだ...それは機密事項だな!」

 

 

 

「...おいおい」

 

 

呆れたように帽子に手を当てる翔太郎。

 

だが翔太郎自身もあまり聞かれたくないことはある。

秘密を持つ者同士お互い様だと自分の中で結論づけてあまり深くは聞かないことにした。

 

 

 

「さってと...そろそろ帰らないとな。この鎮守府も中々楽しかったぞ!

 

おーい、島か

 

 

 

 

と剛が呼びかけたところで剛がポケットに入れていた携帯が音を鳴らす。

 

それに出る剛。

 

 

 

「はい、詩島です。......ホントですか!?

 

 

はい...はい。そこならそっちから行くよりも俺が言った方が早いです。

 

......大丈夫ですよ!すぐに島風と向かいます!」

 

 

そういって剛は通話を切る。

 

 

「おーーーい!!島風ーー!!

 

エマージェンシーだ!

 

行くぞー!!!」

 

 

 

するとその呼び声を聞いた島風は持ち前の速さで剛の元へとすっ飛んできた。

 

 

「剛!どうしたの?」

 

 

「ひっさびさの仕事だ!すぐに行くぞ!」

 

 

「...!りょーかい!

 

ありがとねーー!雪風ーー!!」

 

 

島風は後ろを向いて自分のことを追ってきた雪風にブンブンと手を振る。

 

そしてそれに気づいた雪風も手を振り返す。

 

 

「島風ちゃーーん!また来てくださいねー!」

 

 

 

そして剛はバイクのヘルメットを被ると翔太郎に向き直る。

 

 

「短い時間だが世話になったな。じゃあ、また!」

 

 

そういって剛は島風を後部座席に乗せるとそのまま風都鎮守府を嵐のように去っていった。

 

 

 

 

肝心の翔太郎はその急展開すぎるやり取りに口をポカンとさせていたが、 探偵の勘が彼にあることを告げる。

 

 

 

『何かきな臭ぇな...こっちも行ってみっか』

 

 

 

そう考えると翔太郎は工廠に向かう。

 

 

 

 

 

 

〜工廠〜

 

 

「おーい!明石ー!」

 

 

「はーい?あっ、提督!視察は終わったんですか?」

 

 

「あぁ。あといきなりで悪いんだがバイク出せるか?」

 

 

「えっ!?今から乗られるんですか?バイクならそこにありますけど...」

 

 

「おっ、サンキュー!」

 

 

 

 

翔太郎はバイクにすぐに跨るとヘルメットを被る。そしてすぐに剛の後を追おうとした。

 

 

だが

 

 

 

 

「待ってください!」

 

 

と明石が翔太郎を呼び止める。

 

 

「どうした?」

 

 

「私も連れていってください!」

 

 

「何?ダメだダメだ!何があるかも分からねぇのに!」

 

 

「いーやついて行きます!まだテスト走行もしてないのに急に動作不良でも起こしたらどうするんです?

 

このバイクを作ったものとして、私にも責任があります!何があっても乗せてもらいますよ!」

 

 

頑として譲らない明石に翔太郎は呆れたようにため息をつく。

 

 

「分かったよ。だが...何かあったら必ず俺の指示に従うんだぞ。分かったな?」

 

 

「はい、了解です!」

 

 

 

 

 

ピシッと敬礼する明石。翔太郎の言い回しにどこか違和感を抱いていたが、彼のバイクの後ろに乗せてもらえることがあまりにも嬉しかったのかそんなことはすっかり気にならなかった。

 

 

 

そして明石も自前のピンク色のヘルメットを被ると、翔太郎が乗るハードボイルダーの後部座席に乗る。

 

 

 

翔太郎は一気にアクセルを捻ると、そのまま風都鎮守府を飛び出て行った。




今回剛の過去にガッツリ触れましたが、これから出るゲストライダーはここまで掘りさげることはないと思います。
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