〜Aへの扉〜/兵器達に心という名の花束を   作:電波少年

19 / 21
見ての通り既存の話にサブタイトルを振りました。

なのでこれからは原作と同じように2話で1つの話になるよう進めていく予定です。

急遽変更したので今回は少し詰め込み気味ですがご了承ください。


第19話 Yへの誘惑/いつまでも美しく

「ん、んぅ...」

 

執務室のソファの上には寝ぼけた目をこする緑色の髪の少々、山風の姿があった。

 

 

「お、やっと起きたか」

 

 

そう言って彼女の元に翔太郎が歩み寄る。

 

 

 

「よく寝れたみたいだな。さっきより大分顔色がよく見えるぜ」

 

 

 

翔太郎は安心したような顔つきただ。

 

 

 

 

それを見た山風は

 

 

 

「......り......と」

 

 

ごにょごにょと口を開く。

 

 

 

「ん?なんか言ったか?」

 

 

 

「ありがと...こんな私に、優しくしてくれた人間は、あなたが...初めて」

 

 

 

 

「気にすんな。それが今の俺の仕事だし、何より俺がやりたかったことだからな」

 

 

 

 

 

「......フフッ」

 

 

 

そう語る翔太郎の優しげな顔を見た山風は思わず吹き出してしまった。

 

 

 

 

「ん?何かおかしなこと言ったか?」

 

 

 

 

 

「ううん、私、艦娘になってから、人間のことが嫌いだったの。

 

特にあの前の提督は私だけじゃなく、この鎮守府にいた艦娘みんなを傷付けてた。

 

 

 

でも...提督は、あいつとは、違うから...」

 

 

 

 

おどおどしながらも必死に言葉を紡ぐ山風。

 

その表情は翔太郎が来る前とは比べ物にならないくらい温かいものだった。

 

 

 

 

「...そうか。なら、改めて自己紹介だ。

 

 

 

俺は左翔太郎。この風都の涙を拭うハードボイルド探偵にして、ハードボイルド提督だ。

 

 

これからよろしくな、山風。」

 

 

 

 

そう言って笑顔で左手を差し出す翔太郎。

 

それに対し山風は

 

 

 

 

「私は、白露型駆逐艦の...八番艦、山風。

 

 

...よろしくね」

 

 

 

 

 

ぎこちない笑顔を浮かべながらも差し出された翔太郎の手を取り、握手を交わすのだった。

 

 

 

 

 

〜数時間後〜

 

 

あの後執務室に海風と江風がやって来た。

 

江風は先の件について海風と共に翔太郎と山風に謝った。

 

 

山風はまたすぐに会いに来ると翔太郎に約束すると白露型の部屋へと戻って行った。

 

 

 

 

「さってと......これからどうすっかな」

 

 

 

 

翔太郎は執務室で1人腕組みする。

 

制作しなければならない報告書は既に作り終わり、山風の件も一応事なきを得た。

 

暇つぶしに艦娘達が集まっているであろう食堂に顔を出そうかなどと考えていると、

 

 

 

 

 

「司令官。ちょっといいかしら?」

 

 

 

 

そんな言葉と共に執務室の扉がノックされた。

 

 

翔太郎がドアを開けるとそこに居たのは、

 

 

 

 

「こんにちは、翔ちゃん」

 

 

 

「おう、如月か。

 

どうかしたのか?」

 

 

 

睦月型二番艦の如月であった。

 

 

 

「実はちょっとお願いがあるの。

 

もちろん引き受けてくれるわよね?

 

 

ハードボイルドな司令官さん」

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

「『美しさを求める女よ集まれ!

 

エステサロン Young』......

 

なんか胡散臭いチラシだな...」

 

 

 

「そうかしら?

 

女性は誰だって美を求めるんだから何もおかしいところなんて無いわよ?」

 

 

 

「まぁつまり、エステサロンに行くから許可を出してくれってことか?」

 

 

 

「許可だけじゃないわ。翔ちゃんにもついてきて欲しいの」

 

 

 

「俺が?

 

男の俺が行ってどうすんだよ」

 

 

 

「そういうことじゃないのよ。

 

確かにこの風都でも艦娘に対して優しくなった人は増えてきているわ。

 

でもきっとまだ私たちに良くない印象を持ってる人も多いはず。

 

もしそういう人が出てきたら大変じゃない?」

 

 

 

そう告げる如月に翔太郎は確かに、と返す。

 

 

実際艦娘たちに対して恐れや憎悪を抱く人間は風都から着実に少なくなってきている。

 

 

それだけ前の提督がこの街に残した傷は深いのだ。

 

 

もしものことを考えて翔太郎が着いていくのは決しておかしなことではなかった。

 

 

 

「よし!

 

その依頼、受けさせてもらうぜ」

 

 

「ほんと!? 嬉しいわ!

 

ありがとう、翔ちゃん!」

 

 

「っておいおい!あんましくっ付くなって!」

 

 

「ふふふ...ごめんなさいね。

 

じゃあ明日のヒトマルマルマルに正門に来てくれないかしら。

 

 

あとそのチラシに裏に何枚か割引券があるから他にエステに行きたいっていう子も私が集めておくわ」

 

 

 

「了解だ。

 

ちゃんと今日は早く寝ろよ?」

 

 

「んもう。あんまり子供扱いしちゃ嫌よ?

 

 

そういうことばっかしてると」

 

 

 

すると如月は突然背伸びをすると翔太郎の耳に息をフッと吹きかけた。

 

 

 

 

「うおぉ??!?」

 

 

 

「私が『大人』だってこと、身をもって分からせちゃうわよ?」

 

 

そうイタズラっぽい笑みを浮かべて如月は執務室を出ていった。

 

 

 

「...ったく、ありゃ相当魔性の女になるぜ...」

 

 

 

 

翔太郎はズレたネクタイを結び直すと、自身も執務室をあとにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜翌日 ヒトマルマルマル〜

 

翔太郎はあの後夕飯をとり、他の艦娘達と会話をしたり遊んだ後事務所に戻り眠りについた。

 

 

 

そうして今彼は如月との約束のために午前の10時に鎮守府の正門で立っていた。

 

 

すると

 

 

 

「お待たせ〜。ちょっと準備に手間取っちゃったわ〜」

 

 

スカートをヒラヒラとさせながら如月が小走りでやってきた。

 

 

「おう、おはよう。

 

他に来るやつは?」

 

 

「あとは龍田さんと陸奥さんが来るはずよ」

 

 

 

「というかもう来てるわ〜」

 

 

すると如月の後ろから龍田と陸奥が現れた。

 

 

 

「私も暇していたし翔ちゃんについて行くわ。

 

で...今日の格好はどうかしら?」

 

 

 

陸奥に聞かれた翔太郎は彼女の服装をじっと見つめる。

 

 

トップスのVネックは露出も多すぎず少なすぎすの絶妙なラインであり、とても上品なイメージである。

 

そしてボトムスのタイトなスカートのおかげで彼女の曲線美なラインが生み出すセクシーさはまさに大人の女性のお手本のようであった。

 

 

 

「あぁ...まぁ、なんだ...いいと思うぜ」

 

 

 

「...それだけ?」

 

 

「......」

 

 

 

翔太郎は依頼で多くの女性を見てきたが、目の前にいる陸奥はその中でも他に勝るものがいないくらい美しかった。

 

 

そのあまりの美しさに彼は言葉が見つからなかった。

 

 

「まったく提督ったら...

 

だからハーフボイルドだなんて言われちゃうんですよ〜?」

 

 

悪戯っぽく微笑む龍田に、自分の服装はどこかおかしくないかと見回す如月。

 

 

「う、うるせえ!俺は泣く子も黙るハードボイルド探偵だって言ってんだろうが!

 

 

ったく、ほら!もう行くぞ!」

 

 

 

「あらあら」

 

 

 

ズンズンと進んでいく翔太郎を見ながら陸奥と他のふたりもまた彼に着いていくのだった。

 

 

 

 

 

そして一行は如月の持つチラシに書いてある地図を見ながら目的のエステを目指していた。

 

 

 

「恐らくこの辺りのビルにあるはずなんだけど...」

 

 

如月が辺りを見回す。

 

 

 

 

 

 

「やった!やったわ!あの時の私に戻れたわ!!!!」

 

 

 

 

 

だが4人の意識は不意に発せられた大声に持っていかれた。

 

 

 

 

そしてその大声の主はあるビルの前で喜ぶ女性だった。

 

 

その見た目から年齢は20代くらいだろうと思われる。

 

 

 

女性はずっと手鏡を見ながら興奮した様子で飛び跳ねている。

 

 

 

そこで気になった陸奥がその女性に声をかけた。

 

 

 

「ちょっといいかしら?」

 

 

「何?」

 

 

「今私達は『Young』っていうエステを探しているんだけど...もしかしてあなたは?」

 

 

「そうよ。私も今ちょうどそこで『治療』を受けたの」

 

 

女性はそう言ってビルの2階を指さす。

 

そこの窓には確かにエステサロン『Young』

と書かれていた。

 

 

「治療?」

 

 

「まぁ行けばわかるわ。ただあなたたちにはあまり必要ないと思うけど」

 

 

そう言って女性は嬉しそうに去っていった。

 

 

 

その発言に首を傾げる陸奥。

 

 

 

 

『私たちには必要ない...

 

一体どういうことかしら...?』

 

 

 

「陸奥さーん。早く行きましょう」

 

 

 

その声に気づいた陸奥が振り返ると『Young』に入るための階段を見つけた如月と龍田が手招きしていた。

 

 

 

 

 

「あら、ごめんなさい。

 

今行くわ」

 

 

 

そう言って小走りで階段へと向かう陸奥だが、近くのガードレールに腰掛ける翔太郎に気づく。

 

 

 

 

「あら?翔ちゃんはどうするの?」

 

 

 

「俺が行ってもしょうがねぇだろ。

 

そのへん歩いて暇潰してるから、お前らはゆっくり疲れを癒してきな」

 

 

 

「...なんかごめんなさいね。ただついて来させてきちゃっただけになっちゃって」

 

 

 

「気にすんな。それより俺はお前らが少しでも元気になってもらいてぇんだよ」

 

 

 

そう言って翔太郎は少し照れくさそうに帽子を被り直す。

 

 

 

「...分かったわ。

 

 

じゃあ、お言葉に甘えるわね」

 

 

 

 

そうして陸奥は如月と龍田と共にエステサロンへと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

〜エステサロン 『Young』〜

 

 

「わぁ...これがエステなのね」

 

 

如月は嬉しげに声を漏らす。

 

 

 

 

「あら?お客さんかしら?」

 

 

 

店内を見回す3人の元にロングヘアの女性が声をかけてきた。

 

 

その声に気づいて振り向く3人だが、彼女らは思わず息を呑んだ。

 

 

 

その女性があまりにも美しかったからだ。

 

 

 

如月も龍田も陸奥も、そこらにある女性とは比べ物にならないくらいの美人ではあるが、その女性はなんというか醸し出しているオーラが尋常ではなかった。

 

 

 

 

「あなたは?」

 

 

 

「私はこのエステサロン-『Young』のエステティシャンの一人、『Yui』よ。

 

よろしくね」

 

 

 

そう言ってyuiは3人に名刺を渡した。

 

 

 

「あら。どうもご丁寧にありがとう。

 

実は私たちもここでエステを体験しに来たの。」

 

 

 

如月は持っていた小さな鞄からチラシを見せる。

 

 

 

「あら、そうだったのね。

 

ならこっちに来て」

 

 

 

3人はYuiに案内され、カーテンで仕切られた部屋に行った。

 

部屋にはベッドがあり、ベッドはそれぞれカーテンで区切られていた。

 

 

 

 

 

「待っててね。今他のエステティシャンが来るわ」

 

 

 

 

そう言われた数分後。

 

 

 

如月と陸奥の所に他の女性のエステティシャンが来た。

 

だが龍田のところには来ず、Yuiに聞くとたった今この店にいるエステティシャンが全員エステ中なのでもう少しだけ待って欲しいとの事だった。

 

 

それを了承した龍田は部屋で待っていたのだが、20分以上経っても担当の者が来ないため暇を持て余していた。

 

 

 

 

『遅いわね...

 

催促するようで悪いけど、yuiさんに聞いてみましょう』

 

 

 

 

少し歩いていたところに龍田はドアが半開きになっている部屋を発見した。

 

 

 

『ここかしら...』

 

 

 

 

そして龍田はその部屋を見て驚愕する。

 

 

 

部屋の中には眠っているしわくちゃにな老婆と、見たこもない怪物がいたのだ。

 

 

 

怪物は老婆の顔に触れる。

 

 

 

 

 

『な、何をしているの?』

 

 

 

 

 

するとしわくちゃの老婆の顔はみるみると若返っていき、老婆はすっかり若返ってしまった。

 

 

 

 

老婆が若返ると同時に、怪物は自身の体の一部から細長い箱のようなものを引き抜く。

 

 

 

 

『あ、あれって...yuiさん!?』

 

 

 

 

 

龍田は扉の隙間から目を離せないでいる。

 

 

 

 

 

「終わりましたよ、斉藤さん」

 

 

 

「もう?

 

 

って本当に若返っているじゃない!

 

 

ありがとうございます先生!!」

 

 

 

「いえいえ。

 

おだいも頂きましたし、もう帰っていただいても結構ですよ」

 

 

 

 

そうyuiが促すと、さっきまで老婆だった若い女性は足早に部屋を出ていった。

 

 

 

龍田は女性が部屋を出る寸前に隠れた。

 

 

だが

 

 

 

 

 

 

 

 

『見てしまったわね?

 

 

出てきなさい』

 

 

 

 

どうやらyuiにはお見通しのようだった。

 

 

 

「...説明を求めるわ〜」

 

 

 

龍田は精一杯余裕な態度を取り繕う。

 

 

 

「悪いけどあまり長話はしていられないの。

 

 

 

あなたのような若くて美しい女の子を傷付けるのは気が引けるけど...

 

 

 

消えてもらうわ」

 

 

 

『ヤング!!』

 

 

 

 

龍田の言葉に聞く耳を持たないyuiはヤングメモリを起動する。

 

 

そして服を少しはだけさせると、胸元にある生体コネクタにメモリを挿入する。

 

 

 

すると一瞬のうちに彼女の体は『ヤングドーパント』に変化した。

 

 

 

その見た目はスラリとした若々しい女性の見た目をしているが、ぎらりと輝く青い目は見る者に恐怖を与えさせる。

 

 

 

 

『これはちょっと不味いわね〜。

 

 

艤装は無いし、如月ちゃんと陸奥さんもまだこの店内に...』

 

 

 

そして覚悟を決めた龍田は壁に立てかけてあったモップを手に取る。

 

 

 

 

 

「うふふ...その可愛い顔を、苦痛に歪ませてあげるわ」

 

 

 

ヤングドーパントはその長い足でキックを放つ。

 

 

 

 

龍田はそれを躱すと、モップでドーパントを突く。

 

 

 

「くっ......」

 

 

 

「悪いけどそう簡単にはやられないわよ〜?」

 

 

 

たとえ艤装が無くても龍田は立派な艦娘である。

 

 

そして彼女は戦闘でも槍型の艤装を愛用しており長物は得意な武器である。

 

 

 

しかし、モップは艤装ではない。

 

 

ヤングドーパントは龍田のモップを叩きおると、今度は彼女の足元を狙ってローキックを放つ。

 

 

龍田はなんとかそれを飛んでかわすと、振り向きざまにミドルキックをお見舞いする。

 

 

 

それを食らったドーパントは少しよろめいて壁にもたれかかる。

 

 

 

 

「そろそろ人が来るかもしれないわよ〜?」

 

 

 

 

「残念だけどそれは無いわ。

 

 

私はここのスタッフには許可なくこの部屋に来ないよう口をすっぱくして言ってあるの。

 

 

だか...あなたはここで殺してあげるわ」

 

 

 

するとドーパントは右手から紫色の光線を龍田目掛けて放った。

 

 

 

「なっ...!」

 

 

 

まさか光線などを放ってくるとは思わなかった龍田。

 

それを避ける事も叶わず、光線をもろに浴びてしまう。

 

 

 

だが

 

 

 

 

「......何で?」

 

 

 

龍田は閉じた目を見開く。

 

 

だが彼女の体には一切異常はない。

 

 

 

『今のはなんだったのかしら...?

 

特に何も無かったけど...』

 

 

 

そう考えていた龍田はいきなりドーパントに首を絞められる。

 

 

 

「カハッ...」

 

 

 

龍田の体から空気が漏れる。

 

 

 

しかしヤングドーパントは体をふるふると震わせている。

 

 

 

「何で?何で?何で?

 

 

どうしてあなたには私の力が聞かないの?

 

 

私は今まであらゆる女性を若返らせてきたのに...

 

 

あなたはなんで!」

 

 

 

 

ドーパントはさらに力を込める。

 

 

龍田の顔が青くなり、意識が遠のいていく。

 

 

 

 

『...も、もうダメみたい...

 

 

折角、あの地獄から救われたのに......

 

天龍ちゃん、提督、みんな...』

 

 

 

彼女は薄れゆく意識の中で大好きな天龍と、自分を救ってくれた翔太郎、そして風都鎮守府の艦娘のみんなの顔を思い出す。

 

 

 

そしてついに彼女の意識が途絶えそうになったその時だった。

 

 

 

 

 

 

 

「ウォラァ!」

 

 

 

 

 

「キャア!」

 

 

 

 

 

いきなり何者かが窓を割って部屋に飛び込むと、そのままドーパントを蹴飛ばした。

 

 

龍田はドーパントの手から解放されると、床にへたり混んで咳き込んでしまう。

 

 

 

そしてまだぼやける視界のピントを必死に合わせようとする。

 

 

 

するとそこには、

 

 

 

 

 

真っ黒な体に赤い目をした何かがいた。

 

 

 

 

だがその何かは怪物に組み付くと、割って入ってきた窓から怪物ごと落ちていく。

 

 

 

龍田はそれを必死に追おうとするが、先程まで首を絞められていたために上手く立ち上がることが出来ない。

 

 

 

『あれは...一体...誰だったのかしら...』

 

 

 

 

最後にそんなことを考えて彼女は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして路地裏では龍田を助けた翔太郎-『仮面ライダージョーカー』とヤングドーパントが戦闘を続けていた。

 

 

 

 

「何者なのよ...!

 

アンタッ!」

 

 

 

ヤングドーパントは細い肢体を駆使して格闘を仕掛ける。

 

 

 

だがジョーカーはそれを軽くいなしていく。

 

 

 

 

「俺か?

 

 

俺は、この風都を守る『仮面ライダー』...

 

 

『仮面ライダージョーカー』だ。

 

 

俺がいる限り、この街を泣かせはしねぇ!」

 

 

 

 

その言葉とともにジョーカーはドーパントの腹に思いっきり前蹴りを浴びせる。

 

 

 

 

ドーパントは吹き飛ばされ壁に激突するとがくりと崩れ落ちる。

 

 

 

「さぁてと、これで決まりだ」

 

 

 

ジョーカーは『マキシマムドライブ』を放つために、ドライバーからジョーカーメモリを引き抜こうとした。

 

 

だがその時だった。

 

 

 

ヤングドーパントは先程龍田に放った紫色の光線をジョーカー目掛けてはなった。

 

 

 

「何!?」

 

 

 

ジョーカーはすんでのところで回避したが、光線がほんの少しかすってしまった。

 

 

 

「あっぶねぇ...

 

ったく手こずらせやがって。さっさと...

 

ッッ!!??」

 

 

 

トドメを刺そうとするジョーカー。

 

 

だが体に異変を感じ、地面に手をついてしまう。

 

 

 

「な、何だ...!

 

か、体が...!」

 

 

 

「どうやらあなたには効くみたいね...

 

 

本当はここで殺してやりたいのだけど...私ももう戦えそうにないわ...」

 

 

 

ドーパントはよろめきながらも路地の奥の方へと消えていった。

 

 

 

「ま、待ちやがれ...!

 

 

グッ...ぐああああ...!」

 

 

 

だがジョーカーの体は限界だった。

 

 

なんとかドライバーからメモリを抜くと、変身を解除する。

 

 

 

そしてフラフラになりながら路地から出る。

 

 

 

するとエステのある建物の1階前にたくさんの人がいた。

 

 

どうやら異変に気づいた誰かが通報したらしい。

 

 

建物の中にいた人は全員避難していた。

 

 

そこには陸奥と如月に肩を借りながら運ばれる気を失った龍田の姿があった。

 

 

 

翔太郎はふらつきながらもなんとか声をかける。

 

 

 

「...大丈夫か龍田!

 

 

陸奥、如月!龍田は生きてるか!?」

 

 

 

そう声をかけるが、陸奥と如月はキョトンとした顔をして翔太郎を見つめている。

 

 

 

 

「あ、あのボク?

 

どうして私たちの名前を知っているの?」

 

 

 

陸奥は少し困惑しながらも、翔太郎に尋ねる。

 

 

 

「はぁ!?

 

ったく今はふざけてる場合じゃねぇだろ。

 

 

龍田もこんな状態だし、今はとにかくこいつを助けねぇと」

 

 

 

「まさかボク、龍田さんに何があったか知ってるの?」

 

 

 

「き、如月まで...

 

 

俺を子供扱いしてバカにするのもいい加減にしろ!」

 

 

 

「こ、子供扱いって...

 

 

そもそもあなたは子供でしょ?」

 

 

 

「は、はぁ?

 

だから何言って

 

 

 

 

 

 

そこで翔太郎は言葉を失う。

 

 

 

先程まで混乱していて気づかなかったが、何故か陸奥たちがやたら大きくなっていた。

 

 

 

 

そして翔太郎は近くの水たまりに映る自分を見て、疑惑が確信に変わる。

 

 

 

 

 

『ち、ちげぇ...

 

 

 

アイツらがでかいんじゃねぇ...

 

 

 

俺が小さく、『子供』の時の姿に戻っちまってるじゃねぇかぁ!!!』

 

 

 

 

 

そこであまりの衝撃を受け、それに加え急激にこどもの姿に戻ったことで強い疲労感に襲われたことで翔太郎も龍田と同じように気を失ってしまったのだった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。