最後に投稿したのもかなり前になりましたが、なんとか続けていきたいです。
今個人的にshodoが熱いです。レンゲルがハブられないなんて...
「...ダメか」
フィリップは椅子に座ったまま、だらんと手足を投げ出す。
彼の目の前の机には、焦げ付いた物体がプスプスと煙を上げている。
『サイクロン!』
フィリップは目の前の鉄くずになってしまったものから、メモリを引き抜きおもむろに起動する。
メモリを握るフィリップの顔からは焦燥感や疲労が見えて取れる。鮮やかなエメラルド色のメモリに似合う普段のフィリップとは打って変わって、どこか淀んだ雰囲気を見せる。
『やはり今までのガジェットを作るのとは訳が違う...』
「フィリップくーん?」
憔悴するフィリップに、ガレージへの階段を小走りにかける亜希子が声をかける。
亜希子のキンキンとした高い声が、フィリップの鼓膜をこれでもかと震わせる。
「進捗はー...って、あちゃー...」
「見ての通りだよ。
同じ鉄くずがこれで10個目さ」
『これはまずい...
いつまたドーパントが現れるか分からない。
今でも通常のメモリ犯罪は照井竜が対処しているが...『アナザー』が干渉してきた場合、今の僕には打つ手が無い...
メモリガジェットだけでは限界がある...』
「フィリップくん...少し休憩したら?
煮詰まっちゃた時は一息入れた方がいいよ」
「悔しいけどそうさせてもらうよ」
フィリップと亜希子は事務所の方へと戻る。
『翔太郎...君がこの街の土を踏むその時まで、必ず僕が守り抜く』
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「照井刑事!」
「どうした」
風都署内では多くの署員が慌ただしく動き回っている。
理由は1つ、ここ最近風都で多発する誘拐事件である。
「風都港でまた被害者が...」
「またか...
警備はどうした」
「日々強化しており、それにより被害は以前に比べおおきく減りましたが、それでも被害者は後を絶たず...」
「分かった。とにかく港の経営者にも話して、強制的に業務を停止させることも視野に入れなくては」
「分かりました。すぐ各関係者にも伝えます!」
パタリと扉が閉じられる。
1人部屋に残された照井は手渡された書類を読もうとした。
その時だった。
風都署のガラスが大きく音を立てて割れる。
「ッ!!!」
照井は自分の首元を狙った何かをすんでのところで躱すが、勢い余って壁に叩きつけられる。
「チッ...失敗か」
「お前、ドーパントか!」
照井の目の前にいたドーパントは、肉食獣を連想させる牙をギラリと輝かせると、割った窓から飛び出す。
「逃がすか!」
『アクセル!』
照井はアクセルメモリを懐から取り出し起動させ、腰にアクセルドライバーを装着する。
「変......身ッ!!」
『アクセル!!』
エンジンのような起動音が部屋に響き渡ると、照井の体を覆うように装甲が現れる。
そして真紅の戦士、『仮面ライダーアクセル』はドーパントが逃げ出した窓から同じように飛び出し、その影を追う。
「ついてくるか...いいだろう」
追撃者-『パンサードーパント』は建物の屋根を軽やかに駆け抜ける。
アクセルはその身体をバイクに変形させると、道路を駆け抜けていく。
『こいつ...まさか風都港へ向かっているのか?』
パンサードーパントは目に風都の海を映すと、そこに向かいよりスピードを上げる。
それに呼応するように、アクセルもハンドルをさらに捻る。
照井の予想通り2人は、今回の事件の全ての始まりである風都港へと向かっていく。
パンサードーパントは港の広けた場所に、ふわりと着地する。
アクセルもそこに着くと人型に戻り、自分を狙った獣と対峙し、それを睨む。
「初めて会ったな、アクセル」
「お前は...?」
「俺は...『パンサー』。
お前を殺すために、『こちら』の風都に来た」
パンサーは言い終わると同時に、鋭い爪をアクセルに突き立てようと飛びかかる。
アクセルはエンジンブレードでその攻撃を防ぐと、パンサーを横薙ぎに斬ろうとする。
だがパンサーは一瞬で跳躍し、その斬撃を余裕綽々に躱して見せた。
「遅い、あまりにも遅すぎる。
お前の力はその程度か?」
「俺に...質問するな!!」
『エンジン!!マキシマムドライブ!!』
アクセルはギジメモリである『エンジンメモリ』をブレードに装填し、A型のエネルギー弾、『エースラッシャー』を放つ。
だが
「ヌゥ.........ハァッ!!!」
パンサーはそのエネルギー弾を腕をクロスで組んで正面から迎え撃ち、それをはじき飛ばした。
「なに!?」
「俺がただ早いだけだと思ったか」
そしてパンサーは一瞬でアクセルの懐に入り込むと、鋭い膝蹴りをアクセルの鳩尾に打ち込む。
「カハッ......グァッ...!!」
呻くアクセルにさらに爪で引っ掻く。パンサーはアクセルの肩を強く掴む。
「なるほど固い装甲だ。だが!」
パンサーは両足で、アクセルの胴体を連続で蹴り続ける。アクセルの体からは火花が散って辺りを照らす。
「グァアアアア!!!」
パンサーは肩を離すと、最後に勢いよくアクセルを蹴り飛ばした。
「終わりだ、アクセル。
死んでもらうぞ」
「......まだ、だ」
アクセルはよろめきながら、エンジンブレードを地面に突き立てて立ち上がる。
「これで分かっただろう。
速さでも力でも、貴様は俺に勝てん」
「.....確かにお前は速い。
だが、俺は今からお前の速さを超える...!」
「......!!それが、『トライアル』か」
アクセルがおもむろに取り出したメモリ。
それは今までの通常のガイアメモリとは大きく形が異なり、メモリの上部には信号機の意匠を施されている。
「既に知っているなら都合が良い。
全て...振り切るぜ!!」
『トライアル!!』
カウントダウンを経て、アクセルの体は赤から黄色、そして光沢のある青色に変わる。
「随分と軽装になったな...だがそれでも俺より速いとは思えんな!」
パンサーがまたもアクセルに飛びかかる。
「言ったはずだ、振り切るとな」
アクセルはトライアルメモリのマキシマムドライブを発動し、宙に投げる。メモリはストップウォッチのように時間を刻む。
そして飛びかかってきたパンサーをはるかに超える速度で彼に近づくと、凄まじい速さの連続蹴りを浴びせていく。
ゆっくりとトライアルメモリが落ちる。
『トライアル!マキシマムドライブ!!』
アクセルはそれをキャッチすると、メモリのタイマーをストップさせた。
「9.4秒。それがお前の絶望までのタイムだ」
アクセルが告げる時、パンサードーパントは断末魔を上げることも無く大きな爆発音をあげたのであった。
〜鳴海探偵事務所〜
「それが、君を襲った『パンサー』というドーパントの話かい?」
フィリップは本を片手に興味深そうに照井の顔を覗き込む。
「その通りだ。どうやら俺を倒すために、こっちの風都に来ていたらしい」
「だが不可解だ。君は確かにそのドーパントのメモリブレイクに成功したんだろう?
それなのになぜ、ドーパントの本体は
「そんなことは俺もわかっている。メモリブレイクの爆発の後に振り返ってみたが、そこには誰もいなかった」
「なるほどね...
そこのカラクリもいずれ調査しなければならないだろう。
だが当面の目的は、とにかく誘拐の被害を減らし、『アナザー』のしっぽを掴む。
それに異論は無いかい?照井竜」
「俺に質問するな」
照井はぶっきらぼうにそう放つと、自分で淹れたコーヒーをすする。
「相変わらずだね」
呆れたように微笑むフィリップだが、その顔にはどこか『影』が残る。
本来、自分の横に立っていた人が居なくなった。
その喪失感は、フィリップ自身も気付かぬうちに彼を蝕む。
『翔太郎、待っていてくれよ』
フィリップはさらなる決意を胸に、今自分が成すべきことを成すために立ち上がった。
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「グッ...うぅ........」
「見事にやられてしまったね。
パンサー」
「ま、待ってくれ。俺はまだ
「君はここまでだ。
さようなら」
「あ、あああ......アアアアアアア!!!!」
『パンサー』『コックローチ』『グラス』『ツリー』『スメル』『ボム』『Tレックス』『イエスタディ』『ジュエル』
その瞬間辺りに、『べちゃっ』という音ともに肉片や血が飛び散った。
「うおっ、きったね」
アナザーと呼ばれた小柄な男は、思わず身を仰け反らせた。
「やはり複数メモリを直挿しで同時使用するのは不可能か...
ありがとう、パンサー。君の死は新たなる発見を私にもたらしてくれた。
君の死はきっと無駄にしないさ」