「まさか、この世界にもドーパントがいるなんてな...」
翔太郎は冷や汗を流しながら後ずさる。
「なぜ貴様がドーパントのことを...
まぁよい。今から貴様は...ワシに殺されるのだからなぁ!」
コックローチドーパントは翔太郎に飛びつく。
「ウオっと!!」
翔太郎は執務室にある家具などを使って、攻撃避け続ける。
「ちょこまかと逃げるなぁ!!」
コックローチドーパントは自分の執務室だということも忘れて部屋そのものを壊さんばかりの勢いで暴れ続ける。
『これ以上はやべぇな...
使う予定は無かったが...仕方ねぇ!!!』
「死ねィ!!」
コックローチドーパントは蹴りを放つが、翔太郎はそれをしゃがんで回避する。
だがそれも狙い通りであった。コックローチドーパントは自身が放ったキックの勢いで窓の外に飛び出してしまい、鎮守府の3階から地面に叩きつけられた。
「よし...なら、反撃といくか!」
ジョーカー!!
翔太郎はジョーカーメモリのスイッチを押して起動する。そして彼は懐からダブルドライバー...によく似た赤いドライバーを取り出す。それはダブルドライバーの左側を取り払ったような見た目をしている。
そして翔太郎はその赤いドライバー-ロストドライバーを腰に装着し、そこにジョーカーメモリを挿入して、ドライバーを開く!
地面に叩きつけられたコックローチドーパントはすぐに起きあがり、翔太郎がいるであろう執務室を睨む。
だがその窓から出てきた影は翔太郎のものではなかった。
「だ...誰だ貴様は!?」
「俺はこの街の涙を拭う戦士...仮面ライダー...」
全身黒ずくめに赤い目、2本の角を持った戦士は左手でコックローチドーパントを指さす。
「『仮面ライダー...ジョーカー!!』
さぁ...お前の罪を数えろ!!」
そしてジョーカーは執務室から飛び降りると、ドーパントに格闘戦を挑む。
ドーパントは応戦するも、仮面ライダージョーカー-左翔太郎とは経験が違った。
ジョーカーはパンチ、キックを駆使してドーパントを確実に追い込んでいく。
そしてジョーカーの鋭いアッパーカットが突き刺さりドーパントはダウンする。
「オラオラどうしたぁ!
あれだけイキがっておいて、こんなもんかぁ?」
「黙れ黙れぇ!!ここではワシが1番偉いんだ!!ワシが1番なんだぁ!!」
ただガムシャラにジョーカーへと突っ込むドーパント。
そしてジョーカーはそれを待ち構えていたかのようにジョーカーメモリをドライバーから抜くと、腰のマキシマムスロットにメモリを装填し、叫ぶ。
ジョーカー!!マキシマムドライブ!
「ライダーパンチ...!!!
ウォラァ!!」
ジョーカーは紫色のエネルギーを右拳に纏わせるとそれをドーパントの顔面に叩き込んだ。
「グゴワァァァ!!」
と情けない声を上げてドーパントは吹き飛ばされた。その時、メモリブレイクされたことにより、ドーパントの身体からコックローチメモリが排出されメモリは粉々に砕け散った。
幸い戦っているところすら誰にも見られていなかった。今回だけはここの外出禁止という決まりに助けられたと言っていいだろう。
ただ1人の例外を除いて。
「あ、あわわわわわわ...
青葉...見ちゃいました...!!」
カメラを持った『青葉』という少女は直ぐに自室へ戻ると、提督に禁止されていた新聞の作成に取り掛かった。
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「ったく手間かけさせやがって...
にしてもこいつ、どうすっかなぁ...」
結局翔太郎はドーパントと化した提督をメモリブレイクしたあと、物陰に隠れて変身を解除した。
すると眼鏡をかけた『大淀』と名乗る女性がこちらへ近づいてきた。
「あ、あの...左さん?」
「ん、あぁ。どうされました、お嬢さん」
「な、何をなされていたんですか?」
大淀は恐る恐る翔太郎に尋ねる。だが翔太郎はあくまで落ち着いた様子で
「何って...『お話』ですよ。『お話』
この街を泣かせる悪党に、ちょっとばかりお灸をすえただけですって」
そして翔太郎は帽子を被り直す。
「待ってください!左さん!
どこへ行かれるんですか?」
「どこへ...か。
俺は、どこへ行けば...」
翔太郎は思い出す。自分がドーパントの能力により自分が住んでいた風都と似ているようで全然違う『もう1つの世界の風都』に送られてしまったことを。
そしてそこから元の世界に帰る方法が分からない以上、彼はどうすることも出来なかった。
『やばいな...本当に手がかりがひとつもねぇ...
いつもなら体の方が先に動いちまうけど...今回ばかりはそうもいかねぇな』
「左さん。もし逃げるならすぐにでも行った方がいいです」
翔太郎の思考を遮るように大淀が告げる。
「この方はいくらひどい人だったとはいえ提督です。ゆうなれば軍人です。
軍人に民間人が手を挙げたとなればすぐにでも大本営からあなたを捕まえるために追手が来るでしょう。
ですから今すぐに」
「その必要はないよ。大淀くん」
声の主は鎮守府の中庭に来ていた。目の前には割れた窓ガラスの破片。気を失って倒れた提督。誰がどう見ても、何か異常が起きたことが分かる状態だった。
そして目の前に現れたサングラスをかけた初老の男は軍服に身を包み胸元にはいくつもの勲章が付けられている。
「お前...園崎琉兵衛じゃねぇか!!」
そういうと何故か大淀は顔を青くする。
「ほう、私のことを知っているのかね」
「ひ、左さん!!今すぐ園崎元帥に無礼を謝罪してください!!!け
元帥様を呼び捨てにするだなんて...」
「大丈夫だ、大淀くん。
私は気にしてはいない」
「お前が何しに来た。
お前はあの時...屋敷の崩壊に巻き込まれて死んだはずだ!」
翔太郎は思い出す。風都にガイアメモリを蔓延らせた原因の組織-ミュージアム。その館長だったのが、今目の前に居る男、『園崎琉兵衛』だった。
そして翔太郎とフィリップは園崎琉兵衛と戦い、それに敗れた琉兵衛は自身の屋敷の崩壊に巻き込まれ死亡したのだった。
ただこれは全て翔太郎が元いた世界での話である。
「私が死んだ?
ハハハハハ!左くん...だったかな?
君は中々面白いジョークを言うじゃないか。
元帥になってからそれなりの年月が経っていたが、私のことを呼び捨てにするのは君が初めてだよ」
そう笑いながら言う琉兵衛の後ろに若い20代くらいの男が現れた。
「園崎元帥、よいのですか。
こんな得体の知れない男、今すぐに捕らえるべきです」
「き、霧彦!!」
その若い男の名は『須藤霧彦』。翔太郎と同じく風都を愛していた男であったが、その最期は自身の妻であった『園崎冴子』に殺されるという凄惨なものであった。
「貴様!なぜ僕の名前を知っている!!」
「まぁまぁ霧彦君。そこまでにしたまえ。
どの道ここの提督は逮捕する予定だった。
『誰が』やったのかは知らないが、結果的に我々の手伝いをしてくれたのに変わりはない」
そういうと大人しく霧彦は琉兵衛の後ろに下がる。
「立ち話も何だ、左くん。君に少し話たいことができた。
大淀くん。客室へと案内してくれるかな?」
「も、申し訳ありません!園崎元帥!!
実は我が鎮守府の客室は長い間使われなかったこともありまして、今はとてもお客様をお通しできるような状態ではなく...」
「話ってんならどこでもいいぜ。ちゃっちゃっと済ませちまおう」
「そう言って貰えることは有難いのだがね...
生憎この話はおいそれとほかの人間に聞かせられるものではない。
私と君を含めた数人で話をしたい」
「ならあっちに食堂があったぜ。あそこもまぁボロっちいが、まぁ腰を下ろすくらいならそこで充分だろ」
そう翔太郎が提案すると琉兵衛、霧彦、護衛の憲兵、翔太郎の数人は食堂へと移動した。
その際翔太郎は大淀の前に立ち優しく話しかける。
「なんども除け者にするような真似をしてしまって申し訳ない、お嬢さん」
「あ...わ、私のことは、『大淀』とお呼びください」
「では大淀さん。行ってきます」
とあくまで紳士的に翔太郎は対応する。
大淀は新鮮な気分だった。この鎮守府にいた男たちは艦娘のことを名前で呼ぼうとせず、己の欲望を発散するための道具のように扱っていた。
だが目の前の左翔太郎という男は、まるで自分のことを『一人の女性』として対応してくれた。そのことが大淀にとって言い様のない充足感を彼女に与えることとなった。
「左翔太郎さん...もし、あなたのような人が、ここにいてくれたら...」
中庭に残された大淀は一人小さく呟いた。
〜食堂〜
「ではいきなりだが本題に入らせてもらうよ」
そういう琉兵衛の横には霧彦が、そしてその背後、食堂の入口に数人の憲兵が配置されている。
「まずこの鎮守府の提督を無力化したのは君だね?」
翔太郎は「ああ」というとコクリと頷く。
「安心してくれ。それに関しては一切の責任を追求する気は無い。むしろ余計な抵抗がなかった分感謝しているよ。
そこでひとつ聞きたいのだが...彼はこんな『USBメモリ』のようなものを持ってはいなかったかね?」
そういって琉兵衛が霧彦から受け取り机に置いたのは密封パックのようなものに入れられた、破損したガイアメモリだった。
「ッ......!」
翔太郎は琉兵衛を睨む。翔太郎がいた世界では風都にガイアメモリを流通させた黒幕は目の前にいる『園崎琉兵衛』と同じ男だった。
「ここ最近、世界が謎の生命体-『深海棲艦』から襲われ混乱を極めているのに乗じて、このUSBメモリ、その名も『ガイアメモリ』を流通させているものがいるらしい」
そのあと翔太郎はガイアメモリについて簡単な話を受けたが、そこで彼は違和感を覚える。
彼はこの世界でもガイアメモリの流通に関わっているのは目の前にいる園崎琉兵衛が原因だと思っていた。
だがどうも琉兵衛からはそのような悪意や隠し事などは伝わってこなかった。
そこで翔太郎は試しに聞いてみることにする。
「まさかだとは思うが...その犯人がアンタだったりはしないよな?元帥さん」
「貴様!どれほど無礼を働けば...!」
霧彦が翔太郎に詰め寄ろうとしたところで琉兵衛が片手でそれを静止する。
「落ち着きたまえ、霧彦くん。
そして左くん。私はこのガイアメモリに関しては頭を悩ませていてね...
むしろ私はこれの流通源を突き止めたいとすら思っている」
琉兵衛は真剣な顔で翔太郎に告げる。どうも翔太郎には目の前の男が嘘を言っているかのようには思えなかった。
「そしてこれはまだ予想の段階だが...このガイアメモリは恐らく深海の技術によって作られ、地上に持ち込まれている」
「なるほどな...アンタの言いたいことはよく分かった。
でもただの部外者である俺に...そんな大切なことを話してもいいのか?」
「構わないさ。なぜなら君にはこちら側の人間になってもらうからだ」
「はぁ?」
翔太郎は間抜けな声を挙げた。
「私からのお願いだ。ぜひ君にはこの『風都鎮守府』の提督に着任してもらいたい」
翔太郎はポカンと口を開けていた。
「っておいおいおい!
いきなり現れたぽっと出の正体も分からない男にそんなこと普通頼むかぁ?」
怪訝そうな顔で琉兵衛をみる翔太郎。だがそんな反応は分かっていたとばかりに琉兵衛は続ける。
「こちらも人員不足でね...提督となる素養を持った人間は中々現れない...
だが君にはそれがある。
だがどうしても断るというのならそれも仕方ないだろう」
「なんだ随分とあっさり引き下がるじゃねぇか」
「ただし、次に着任する提督が前任者と同じような人間になる可能性は否定出来ないがね...」
「ッ...!
きたねぇぞ...」
とてもではないがそう言われては断れなかった。この半熟者は目の前で困っている人間を放っておけない、根っからのお人好しである。まだ翔太郎はこの風都鎮守府で2人の艦娘にしか会っていないが、あんな悲しそうな顔をしていた少女達を放っておくなど、とてもできなかった。
「すまない...私たちにも余裕が無いのだよ...」
翔太郎は目を閉じる。確かに元の世界には戻りたい。だが翔太郎に、目の前で悲しそうな顔をする少女達を...泣いている街を置いて元の世界に帰るなんてことはできなかった。
「いいぜ...やってやろうじゃねぇか!
なってやるよ、その提督とやらに。
艦娘の...この街の涙は...俺が拭う!!」
翔太郎は立ち上がってはっきりと告げる。
「そう言って貰えて何よりだ。
では今日をもって君を、この『風都鎮守府』の提督に着任させる!
よろしく頼むよ、左提督。」
そういうと琉兵衛と霧彦、その護衛たちは食堂を出て、鎮守府の前に停めた車に乗って去っていった。ついでに前任の提督もガッチリと拘束されたうえで車に乗せられ連れられて行った。
そして翔太郎は力尽きたように食堂の椅子にドサッと座る。
「やっちまったぁ〜」
翔太郎は頭をガシガシと掻く。完全に勢いで言ってしまった。まだ元の世界への戻り方の手がかりなんて何一つわかってはいない。
「なんて言っててもしょうがねぇ!!
引き受けちまったもんはやるしかねぇ!」
翔太郎は立ち上がると、とりあえず執務室に向かうことにする。
だが食堂を出ようとしたところで、彼は大淀がすぐ近くにいることに気づいた。
「おーい、大淀さーん!」
「ひ、左さん!」
大淀は翔太郎に駆け寄る。
「大丈夫でしたか!?
何か変な事を言われたりは!?」
まぁ変なことはたくさん言われたがとにかくまずは言うことを言わなくてはと考えた翔太郎は大淀を落ち着かせる。
「ま、待ってくれ!大淀さん。
あんたに伝えなきゃいけないことがある」
「伝えなきゃいけないことですか...?」
そして翔太郎は息を吸いハッキリと告げる。
「俺...この『風都鎮守府』の提督になった」
「あぁ!提督になられたんで...
って、ええええええ!!!????」
一人のハーフボイルド提督が、少女と街の涙を拭う物語が今幕を開けた。
ちなみにWにでてきた琉兵衛さんたちと今回この物語に出てきた琉兵衛さん達は要するに他人の空似です。
あとこの物語では特に園崎家は悪いことはしません。