〜Aへの扉〜/兵器達に心という名の花束を   作:電波少年

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第6話 Jな提督/遺された傷跡

そして3人はすぐに艦娘たちの寮に移動する。

 

「おーい!大淀ー!」

 

「あ、提督!怪我をしている艦娘たちはここに!」

 

大淀が指し示す方を見ると、そこには怪我の治療をされていない艦娘たちがざっと30人以上いた。

 

「こりゃひでぇな...」

 

その子たちを戦艦や空母などの大人組が慰めたり声をかけたりしている。

 

そして艦娘たちは翔太郎を見ると顔をくもらせる。中には「ヒッ...」と声を漏らしたり、睨みつけてくる者もいる。

 

一応大淀は翔太郎のことを紹介していたものの初めてあった相手、しかもそれが自分たちにひどい仕打ちを与えてきた『提督』となると警戒してしまうのも無理はなかった。

 

「よーし!手が空いているやつは傷が深い子を 入渠施設に連れて行ってやれ!

入渠施設の方は妖精たちに修理してもらった!すぐに使えるはずだ」

 

翔太郎の言葉通り大きな怪我をしている艦娘を優先して入渠施設へと運んだ。

 

「入渠してないやつは今入渠してるやつの着替えを持ってきてやってくれ」

 

翔太郎は提督らしく現場を指揮している。本当はあまりリーダーシップを取るようなキャラではないが今の彼には立場というものがある。そして一度乗りかかった船を降りるのは翔太郎的にはハードボイルドではない。

 

そして翔太郎も怪我をしている艦娘たちのところへと向かう。

 

「大丈夫か?」

 

「お願い!雷を助けてあげて!!前に怪我をしてから1回も入渠させてもらえてなくて...」

 

「お願いなのです!このままだと雷ちゃんが...!」

 

「よし、任せろ!

雷だっけか?もう大丈夫だからな」

 

そう言うと翔太郎は雷という少女をおんぶする。

 

「お前達も重症の子達の入渠が終わり次第入っていいからな。今は少しでも休んどけ。

 

悪かったな、色々と遅れちまって」

 

「いいや、ありがとう。大淀さんから話は聞いたよ。雷をよろしく、提督」

 

綺麗な白い髪の少女は翔太郎に頭を下げる。

翔太郎は無言でその少女の頭を撫でてやるとすぐに入渠施設へと移動した。

 

 

その途中で翔太郎におぶられた雷が目を覚ます。

 

「あれ...私は...」

 

「安心しろ。すぐに入渠させてやる」

 

 

 

「......ダメ!!」

 

 

するといきなり雷は暴れ出す。

 

 

「うおっ!お、おいちょっと待てって!暴れんなって!」

 

「ダメ!私が行かないと...次はあの子達が出撃させられる!!

提督がみんなを傷つける!」

 

子供っぽい見た目とはいえ雷は艦娘である。いきなり暴れられては翔太郎たまったものでは無い。

 

「落ち着け雷!あの提督はもういない!」

 

 

 

「え...?」

 

 

 

 

「あいつはもうとっくに捕まったよ。今ここの提督は俺だ」

 

 

「う...そ...」

 

「だから安心しろ。とにかく今は傷を癒しにいくぞ」

 

そう翔太郎に言われた雷は安心したのかまるで緊張の糸がプツンと切れたように気を失った。

 

そして翔太郎は雷を入渠施設に運ぶと、入渠施設でのことは大淀に任せ、次の怪我人を運びに行く。

 

 

 

 

 

あっという間に時間がたち何とか怪我人全員を入渠施設で治療することができた。

 

「ふぅ...つっかれたぁ」

 

翔太郎は腕を回したり首を鳴らしたりして体をほぐす。

 

「提督。お疲れ様です」

 

「いや、これくらいなんてことねぇよ。

にしてもあんな小学生くらいの子が戦わされてるなんて、改めて考えるとゾッとするぜ」

 

「...仕方がありません。私達は、そのために生まれてきたのですから」

 

「......」

 

 

『なぁフィリップ...お前ならこういう時、どう言うんだろうな』

 

 

項垂れる翔太郎。今の彼に、彼女立ちにかけてやれる言葉は見つからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

〜鳴海探偵事務所〜

 

「何!?左がドーパントに!?」

 

「ちょっ、落ち着いてよ竜くん!」

 

翔太郎がいなくなった鳴海探偵事務所はちょっとした恐慌状態に陥っていた。

 

今の事務所にはフィリップ、亜樹子、そして風都警察署の超常犯罪捜査課のトップにして警視、加えて鳴海亜樹子の旦那である赤いジャケットを着た若い男-照井竜が翔太郎の失踪についての話をフィリップから聞かされていた。

 

だがこの状況でもフィリップはまだなんとか平静を保てていた。

 

「これは非常にまずい状況だ。

頼む、照井竜。このままだと翔太郎を消したドーパントが他の人間を襲うかもしれない。君にそのドーパントを捕らえてもらいたい。

 

ダブルドライバーは翔太郎が装着しなければ僕の元には現れないし、ロストドライバーも翔太郎が持って行ってしまった。

 

事実、今の僕は変身することができない。

やってくれるかい、照井竜?」

 

「俺に質問するな。

とにかくそのドーパントに関して分かることを全て教えろ。一応署の方でも同様の事件を何件か確認していたがあまりにも情報が足りなかった」

 

「分かった。だが一つだけ注意して欲しいことがある」

 

「何だ」

 

「もしドーパントと戦うことになった場合、メモリブレイクせずにドーパントを無力化してほしい。

メモリブレイクしてしまったら、翔太郎への手がかりが無くなってしまう可能性がある」

 

「無茶な要求だな...

だがやれることはやらせてもらう」

 

伝えるだけの情報を伝えると、照井は風都警察署に戻っていった。

 

「翔太郎くん...大丈夫かな」

 

心配そうな顔をする亜樹子だったがフィリップはそれを優しく宥める。

 

「大丈夫だ、アキちゃん。

僕らはいつ翔太朗が帰ってきてもいいよう、やるべきことをやるだけさ。

とにかく僕らはもう一度被害者の家族に会ってみよう。何か新しい発見があるかもしれない」

 

そういってフィリップは立ち上がる。そんな彼を見て亜樹子は少し安心したような顔になると2人で事務所を後にした。

 

 

 

 

 

〜風都鎮守府〜

 

「どうだ、大淀。怪我をしてた子達は?」

 

「はい、全員の入渠が完了しました。入渠を終えたら安心したようにぐっすりと眠っています」

 

「そうか。すまねぇな、何から何まで」

 

「いえ...私達も、左提督が来てくれなかったら...」

 

 

 

 

「あなたが新しい提督さんですか?」

 

 

 

見上げるとそこには綺麗な黒い髪を長く伸ばした美人が翔太郎の顔をのぞき込むようにしてこちらを見ていた。

 

いつもならここでカッコつけながらクサいセリフを吐く翔太郎であるが、彼は何か引っかかることを感じていた。

 

『...この人、どこかで見たような...』

 

そして黙る翔太郎に女性は何か気づいたような顔をして口を開いた。

 

「すみません、人にお名前を伺う時はまず自分からですね。私は航空母艦で赤城型1番艦の『赤城』です。よろしくお願いします」

 

そういって微笑む赤城。

 

『...!?

赤城って...昨日のあの女性の名前と一緒じゃねぇか...よく見たら顔もそっくりだ』

 

考え込む翔太郎に赤城は不思議そうな顔で尋ねる。

 

「提督?」

 

「し、失礼。昔来た依頼者にあまりにも似てたもんでつい」

 

「依頼者?」

 

「左さんは探偵をやられていたんですよ」

 

と大淀が赤城に説明する。

 

「えー、コホン...なら改めて自己紹介を。

私、今日から風都鎮守府で提督に着任した、ハードボイルド探偵の左翔太郎です。

以後お見知りおきを」

 

そういって翔太郎は赤城に右手を出す。赤城はそれを取り握手を交わす。

 

 

 

『少し変わった人だけど...どこか、温かい 人...』

 

 

 

「何をしているの、赤城さん」

 

 

そう赤城に声をかけたのは髪をサイドテールに結った凛とした雰囲気の女性だ。

 

 

「加賀さん!」

 

「そちらの方は?」

 

「私は加賀型1番艦の加賀です。それなりに期待しているわ。

行きましょう、赤城さん」

 

そういうと加賀は赤城を連れて寮の方へと戻って行ってしまった。

 

 

 

「あの子...中々キてやがるな...」

 

 

 

翔太郎は加賀を見た時一目でその危うさに気づいた。翔太郎に期待していると言っておきながらその目には一切その色が見えず、まさに目が死んでいた。

翔太郎は人を見抜く洞察力だけは人一倍高くすぐに加賀の異常さに気づいた。

 

だがそのことは一旦置いておくしかない。今の翔太郎にはまだ他にやることがある。

 

「もう完全に自己紹介とかやれる状態じゃねぇなぁ。まぁそれは明日やりゃいいか」

 

 

「Hey!テートク!!

一息つくついでにイッショにティータイムデース!!

大淀もどうデスカー?」

 

 

そう元気な声で話しかけてきたのは金剛だった。

 

「私はまだ提督引き継ぎの書類整理なども残ってますし...左提督はここに来てから働き詰めでしたし休憩がてらに行ってみては?」

 

「ティータイムってことは紅茶か?悪いがハードボイルドな男はコーヒーしか飲まねぇんだよ」

 

「ブー!そんな冷たいこと言わないでくだサーイ!!いいから紅茶を飲むネー!!」

 

「イダダダダ!!行くから引っ張るなって!!」

 

 

そういって翔太郎は金剛に連れていかれてしまった。

 

 

〜戦艦寮・休憩室〜

 

部屋につくとそこには比叡、榛名、霧島、そして陸奥がいた。

 

「あれ、どうした陸奥」

 

「お隣さんだから呼んだんですよ」

 

「あらぁ、私はお邪魔だったかしら?翔ちゃん」

 

「んなこと言ってねぇだろ」

 

そういって彼は椅子に座るが様子がおかしい。なぜか陸奥以外の4人が、口をパクパクさせている。

 

「どうしたお前ら?」

 

「い、今、翔ちゃんって...」

 

「ん、あぁ、名前か。別に俺は好きな呼び方で呼んでもらっても構わねぇよ。

 

『提督』ってのより『翔ちゃん』のほうが言われ慣れてるくらいだぜ」

 

「さっすが、翔ちゃん。ハードボイルドだわ~」

 

そう陸奥におだてられた翔太郎はドヤ顔で帽子をとる。

既に陸奥は単純な翔太郎の動かし方を理解している様子だった。

 

「ヒエー...びっくりしましたぁ...

前の提督にそんな呼び方なんてしたら何を言われるか...」

 

「心臓が泊まるかと思いました...」

 

「さぁeverybody!紅茶が入りましたヨー!」

 

そういうと金剛はティーポットの紅茶をティーカップに注いでいく。

そして全員分に注ぎ終わる

 

「なら頂くぜ...ほう、中々美味しいじゃねぇか」

 

「美味しいに決まってます!金剛お姉様がいれた紅茶がまずいはずありません」

 

「すみません。お茶菓子はあまりいいものが用意できなくて」

 

とおずおずと榛名がクッキーを出してくる。

 

「いいや、これで十分さ。ありがとな、榛名」

 

「...!! 榛名、感激です...!」

 

「あ〜ら翔ちゃんったら、女の子の扱いが上手ねぇ」

 

「扱いってお前なぁ. ...」

 

みんなで楽しい茶会を楽しんだ翔太郎は、大淀に呼ばれて執務室へと向かった。

 

 

 

〜執務室〜

翔太郎は先程の戦闘でボロボロになった執務室へと入る。

 

「あ、提督。お疲れ様です」

 

「おう、お疲れさん。にしてもこりゃちょっとばかしやりすぎちまったなぁ」

 

「本当に喧嘩したんですね...」

 

「喧嘩じゃねぇさ...お灸を据えてやっただけだよ」

 

そういうと翔太郎は前の提督が残した趣味の悪い金や宝石などが散りばめられた装飾品などを手に取る。

 

「あいつが残したもの、全部売っちまおう。んで、その金であの子達に布団でも買ってやるか。さっき駆逐艦たちの部屋を見たが、あんなボロきれみたいな布団じゃろくに寝にくいだろうからな」

 

「分かりました。では買取業者の手配をしておきますね」

 

「あとあのボロっちい寮を立て替えてやるか。あの妖精たちに相談すりゃやってくれるだろ」

 

そんなことを話していると執務室の扉がコンコンとノックされる。

 

「雷です」

 

「入っていいぞ」

 

「失礼します」

 

そう翔太郎が許可を出すとそこには小学生くらいの4人の艦娘が立っていた。

 

「暁よ」

「雷よ」

「電なのです」

「響だよ」

 

駆逐艦の4人は次々に自己紹介する。

 

「俺は左翔太郎。今日からここの提督だ。

雷もほかの3人ももう怪我は平気か?」

 

「うん。司令官のおかげよ。本当にありがとう」

 

「そうか、ならよかった。明日食堂で纏めて自己紹介する予定だからお前らはもう今日は寝な」

 

そう翔太郎が促すと彼女たちは頭を下げて部屋へと戻って行った。

 

「大淀も今日はその辺にして今日はもう休め」

 

「ですが...」

 

「いいからいいから。休むのも立派な仕事だぜ」

 

「...分かりました。ではお言葉に甘えさせていただきます」

 

そして執務室に1人残った翔太郎は夜風に当たるべく、鎮守府に備えられた港へと出た。

 

 

 

 

 

 

〜港〜

 

翔太郎は1人海を見つめる。彼の目の前に広がる海は昨日まで自分がいた風都のものと何ら変わらない。そのことが翔太郎に自身がもう一つの世界の風都に来てしまったことを嫌でも実感させる。

 

『まずは手がかりだ。やることやりつつ、地味に探ってくきゃねぇな』

 

 

 

 

そう考えて執務室に戻ろうとしたその時、

 

 

 

 

彼を凶刃が襲う。

 

 

「ッ!!!」

 

 

翔太郎は既のところでそれを回避する。

 

「あら〜、避けられちゃったわ〜」

 

「ったく次はちゃんとやれよな、龍田」

 

「千歳お姉を傷つけるやつは絶対許さない...」

 

「北上さんに手出しはさせない」

 

「へっ...この摩耶様に任せな」

 

現れた5人の艦娘たちは翔太郎を一斉に取り囲む。

 

「おおっとこんな時間にこれだけの美女に囲まれるとはな...」

 

そういって笑う翔太郎だが

 

『こりゃまじでやばいぞ...こいつら目がマジ だ。

変身するわけにもいかねぇし...』

 

と内心焦りまくりである。

 

 

 

「ッ...ムカつく野郎が...死ね!」

 

 

すると自分のことを『摩耶様』と自称した少女が翔太郎に殴りかかってきた。

 

「お、おい!ちょっと落ち着け!」

 

翔太郎はそれを避けながら説得するが摩耶は一向に聞く耳をもたない。

 

そして頭に輪っかを浮かべた少女と、左目を眼帯で覆った少女が手に持っている薙刀と刀で翔太郎を斬りつけようとする。

 

「オレに殺されろ!」

 

「だいじょうぶよ〜。一瞬で死ねるようにしてあげるから〜」

 

「お前ら...マジで一旦落ち着け!」

 

 

 

何度も避け続ける翔太郎。三人を同時に相手して怪我がないのも、学生時代、そしてライダーとして戦う時に培った技術の賜物である。

 

「艦載機、発艦!」

 

 

だがそんな翔太郎にさらに追い討ちをかけるように茶髪でハチマキを巻いた少女が艦載機で爆撃を加えようとする。

 

そうすると先程まで翔太郎の周りにむらがっていた三人は直ぐに距離をとる。

 

 

「なっ!」

 

そして翔太郎は爆撃により吹き飛ばされてしまった。

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