〜Aへの扉〜/兵器達に心という名の花束を   作:電波少年

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第7話 Jな提督/街の涙を拭う者

「うおおおぉぉ!!」

 

翔太郎は艦載機からの爆撃により吹き飛ばされた。幸い直撃はしなかったもののその爆風は凄まじいものだった。

 

「サンキュー、千代田」

 

「やっと大人しくなったわね」

 

そういうと千代田と呼ばれた少女は再び翔太郎目掛けて艦載機を飛ばす。

艦載機のプロペラ音が翔太郎に危険が迫ることを伝える。

 

『これ以上はマジでシャレにならねぇぞ...

 

 

 

なら...『奥の手』を使うしかねぇな』

 

 

翔太郎は彼女たちに見えないように懐から携帯を取り出す。

 

そして

 

 

『ジョーカー!!』

 

 

ジョーカーメモリを起動し、携帯-ビートルフォンに挿入する。

ビートルとはメモリガジェットの一つであり、メモリガジェットは様々なガイアメモリを挿入することによりは色々な力を発揮する端末である。

 

そしてジョーカーメモリを挿入されたビートルフォンはマキシマムドライブを発動した。

 

 

 

「ちょっと、何よアレ!」

 

 

 

千代田は目を見開く。他の艦娘たちも艦載機が飛行していた空を見上げる。するとカブトムシのような形をしたロボットが次々に艦載機を体当たりで撃ち落としていく。

 

 

 

「てめぇ、何しやがった!!」

 

「おおっと。まだ血気盛んなレディがいるな。ちょっと大人しくしててもらうぜ」

 

 

摩耶が翔太郎に再び殴りかかろうとするが、翔太郎は腕時計を外す。

 

 

『スパイダー!!』

 

 

スパイダーメモリを起動し、時計型メモリガジェット-スパイダーショックに挿入する。

 

するとスパイダーメモリを挿入されたスパイダーショックは蜘蛛の形に変形し、摩耶に糸を発射して拘束した。

ちなみにこの糸はドーパントの力を持ってしてでも用意に引きちぎることは出来ないスグレモノである。

 

「何だこの糸!?ちぎれねぇ!」

 

バタバタともがく摩耶に動揺する眼帯の少女と『龍田』と呼ばれた少女。

 

その隙にスパイダーショックは二人をあっという間に糸で拘束する。

 

「ふぃー...まさか一日に二度も爆撃されるなんて、ツイてねぇぜ」

 

そういって地面におちた帽子を拾い上げる翔太郎にガチャンと砲塔が向けられる。

 

 

 

「あなた...何者なの?それにあれは何?」

 

 

茶髪のロングヘアの少女は翔太郎に砲塔を構えながら話す。

 

「何...かぁ。答えてやる代わりにお前らの目的を教えて貰ってもいいか?」

 

「この状況で随分と余裕そうじゃない。

私はあなたの質問に答える義務はないわ

もし変な素振りを見せたら擊つわよ」

 

 

「別に俺は何かをする必要はねぇさ...

 

 

後ろを見てみな」

 

 

そう言われた少女は『まさか』と思って後ろをむく。

あの変な機械がいつの間にか後ろに回り込んでいたと考えたからである。

 

 

だがそこにメモリガジェットの姿はない。

完全にブラフだった。

 

それに気づいた少女は砲の引き金を引く。

 

だが一瞬思考が停止した少女の砲塔を翔太郎は蹴りあげ、軌道を逸らす。

 

そして少女が怯む隙に胸ポケットからデジタルカメラ型のメモリガジェットを取り出すと、

 

 

 

『バット!!』

 

 

バットメモリを起動して挿入する。

 

するとデジタルカメラはコウモリの形になる。

翔太郎はすぐに目を腕で覆う。

 

 

メモリガジェット-『バットショット』は強烈なフラッシュを放つ。

 

その強力な光量に少女の視界は真っ白になった。

 

その隙に翔太郎は少女の後ろに回り込むと、そのうなじにトンと当身を当てる。

 

そして気を失って前に倒れる少女を優しく支えて、地面に横たわらせた。

 

 

 

するとその様子を見ていた艦載機を飛ばした千代田と摩耶、龍田、眼帯の少女が口をパクパクさせながら翔太郎を見ている。千代田が飛ばした艦載機は全てジョーカーメモリの力で強化されたビートルフォンに撃ち落とされてしまった。

 

 

「あ...あ...あなた...本当に何者なの?」

 

「俺か...俺はこの風都鎮守府に着任したハードボイルド提督...左翔太郎だ。本職は探偵だけどな」

 

「た、探偵!?なんで探偵が提督なんてやってんのよ!?」

 

 

「まぁそれは色々と事情があってな...

逆にこっちから質問させてもらうぜ。なんで俺を襲った?」

 

 

「そ...それは」

 

 

千代田は口篭る。すると後ろにいる眼帯の少女が糸に縛られたまま答える。

 

「どうせお前も前のやつと変わらないんだろ。

 

今回入渠施設を修理したのもまたオレ達を弾除けとして使うために決まってる」

 

「天龍ちゃん...」

 

輪っかの少女-龍田は悲しそうな顔で天龍を見る。

 

「だから...またみんなが辛い目に合わせられる前に、お前を消そうと思ったんだよ...」

 

そう語る天龍は、いや天龍だけではない。今この場にいる気絶した1人を覗いて、ほかの4人はとてもつらそうな顔をしている。

 

それが嫌でも翔太郎に彼女達が味わってきた地獄を想像させる。

 

 

 

 

「なるほどな...お前らが辛い思いをしてたのはよくわかった。いや、おまえらだけじゃあないな。この鎮守府にいた他の子達もみんなお前らと同じ目をしてた。

 

だが安心しろ。俺は...お前らとこの街の涙を拭うために提督になった」

 

「オレ達と...街の?」

 

「そうだ、お前らは実際には泣いてなくても心が泣いてる。俺も伊達に探偵やってねぇ。そういう心が泣いてるやつは見りゃわかる。

 

お前達が泣いてちゃ...この街の涙は拭えねぇからな」

 

「オレ達の...『心』...」

 

 

 

「そんなものあるわけないわ」

 

 

 

龍田が先程のおっとりとした口調ではなく、ハッキリと口を開く。

 

 

 

「私達に心ですって?冗談言わないで。

私達は女性の姿をしただけの『兵器』、艦娘よ。そもそも兵器に心なんて

 

「ならなんでお前達は俺を襲ったんだ?」

 

 

 

翔太郎が龍田の言葉を遮る。

 

 

 

「本当に心が無いんじゃ、そもそも辛いなんて思わないだろ。

お前達が俺を殺そうとしたのは他のみんなを理不尽な出撃から守るためだろ?

もしそうならお前らは十分に他の誰かを『守りたい』って『心』を持ってるじゃねぇか。

 

お前達はただの兵器なんかじゃねぇ。他の誰かを守りたいっていう『心』を持ってる。

 

 

だから今は俺に任せときな。お前達の涙も、この街の涙も...この左翔太郎が拭ってやる」

 

 

 

翔太郎は優しく語る。

 

「...あれ?おか...しい...わ...

なんで...なんで、こんなに...

 

『涙』が出てきちゃうのかしら...」

 

そう自分の目から地面に落ちる雫を見る龍田。だが泪を流しているのは龍田だけではなかった。天龍も、摩耶も、千代田も、そしてなぜか気絶している大井でさえも、無意識のうちに涙を流していた。

 

「ほらな?そうやって泣けるじゃねぇか。

 

それがお前らに『心』があるっていう立派な証拠さ」

 

「......涙、拭えてないじゃない」

 

「......ま、まぁ誰だって泣きたくなる時ぐらいあるもんさ...」

 

そういって恥ずかしそうに目深に帽子を被る翔太郎。

 

「フフフ...」

 

「プッ...」

 

「フッ...アハハハハ!!」

 

と涙を流していた少女たちは翔太郎を見て一斉に笑いだす。

 

「ちょっ、お前ら笑うな!

だーっ!これじゃあハードボイルド形無しじゃねぇか...」

 

 

 

そして彼女らは一様に思うのだった。

 

左翔太郎が提督になってくれて良かったと。

 

この人なら、自分たちを涙を拭ってくれると。

 

 

 

「な、何してるんですか!?」

 

 

そんな素っ頓狂な声を上げながら大淀が翔太郎たちのところに走ってきた。

 

しかも来ているのは大淀だけではない。先程の艦載機の爆撃音を聞いて、多くの艦娘たちがここに集まってきていた。

 

「え!どうしたの大井っち〜

なんでこんな所で寝てるのさ〜」

「摩耶!」

「ち、千代田!あなた何したの!?」

 

すると大井、摩耶、千代田の姉妹艦と思われる艦娘達が次々に駆け寄ってきた。

 

「提督。説明してもらいますよ」

 

大淀は眼鏡をクイッと上げて翔太郎を威圧する。

 

「え、えーっとなぁ...うーん...

 

あ、遊んでたんだよ!な、なぁ?お前ら!」

 

「そそそそそうだぜ!オレは提督達と遊んでただけだ!」

「わ、私も天龍ちゃんと一緒よ〜」

「オ、オレもだ!」

「ち、千代田もです!!」

 

みんなしどろもどろになって答える。気絶している大井だけは北上に頬をつんつんされている。

 

「...じゃあなんで天龍さんと龍田さんと摩耶さんは縛られてるんですか...

しかも大井さんに至っては気絶してますし」

 

「た、探偵ごっこだ!俺が探偵やってるって言ったらこいつらが何してるか知りたいって言うから身をもって教えてやったのさ」

 

 

 

4人は首をブンブン縦に降る。

 

 

 

「...あれ、私は...って北上さん?!

どうしてここに?」

 

「あ、起きた」

 

どうやら大井も目を覚ましたようだ。

 

「な!大井、オレたち遊んでただけだよな!な!?」

 

すぐさま天龍は縛られた体をピョンピョンさせながら大井に迫る。大井は未だ何が起きているのか分からず目を白黒させている。

 

「大井っち。ここはとりあえず便乗したほうがいいと思うよ〜」

 

そう北上が促すと、大井は天龍の言葉に乗じて首を縦に降った。

 

 

「な?大淀。俺達はただ遊んでただけだ。

だからこいつらに罰とかは無しだからな?」

 

「...もう...わかりましたよ」

 

 

「よし!ならそうことだ!

お前ら部屋に戻れー。

明日適当な時間に自己紹介でもすっから今日はとっとと寝なー!」

 

 

 

そして翔太郎はこの場に集まった艦娘を寮に帰らせたあと自身も執務室へと戻った。

 

 

〜執務室〜

 

「あー...全身が痛てぇ...」

 

翔太郎は椅子に座って首を鳴らす。

時刻は現在22時過ぎ。

 

思えばあまりに濃密すぎる1日だった。

 

服はボロボロになってしまっており替えもない。

 

『これじゃあシャワーもろくに浴びられねぇし、腹減ったなぁ』

 

今回の捜査の時財布は事務所に置いてきてしまったので金もない。

 

何をしていいかもわからずこのまま寝てしまおうかと思った時、執務室の扉がノックされた。

 

「間宮です。提督、お腹が空いていませんか?軽いものですけど、お食事をお持ちしました」

 

「...!!間宮さん、今すぐ入ってください」

 

すると間宮はお盆の上に軽い食事を載せて部屋に入ってきた。

 

「すみません。このようなものしか作れなくて...」

 

「何を言ってるんですか、間宮さん。あなたに作って頂いたというだけで、飛び上がりたいくらい嬉しいですよ。

ではいただきます」

 

 

そういって翔太郎は料理を口に運ぶ。

 

「...美味い!」

 

「本当ですか!?そう言って頂いて何よりです」

 

ニッコリと微笑む間宮。

 

『あぁ...間宮さん。俺にはあなたが天使に見えるぜ...』

 

空腹も相まってあっという間に完食した翔太郎。

 

「ご馳走様でした、間宮さん。

本当に美味しかったです」

 

「お粗末さまでした。

それと...ありがとうございます、翔太郎さん。あなたがこの鎮守府に来てくれたことが、私にとって何よりも嬉しいです」

 

『間宮さん...やっぱり貴方は天使だ...』

 

そうして少し言葉を交わしたあと間宮はお盆をもって食堂へと戻って行った。

 

 

食事をとり腹が満たされた翔太郎はあまりの疲れからかボロボロになった執務室の床でグゥグゥと寝息をたてながら眠ってしまったのだった。

 

 

 

〜大本営本部〜

 

「本当によかったのですか、元帥。

あんな素性のしれない男に鎮守府を任せて」

 

「安心したまえ、霧彦くん。私には分かる。彼は君と同じ、『風都』を愛する人間だ」

 

「あいつがですか?」

 

「あぁ。私は彼を信じてみようと思う。

君に提督の素養があれば、あの鎮守府に任せることもできたのだが...」

 

「それはもう納得しています。私には『提督』としての素養がありませんから。

 

では元帥。本題の方に入らせていただきます。」

 

霧彦がそういうと琉兵衛は「続けてくれ」と促す。

 

「この1ヶ月のガイアメモリ使用での検挙者が先月を上回りました。

その数値は...

 

 

ガイアメモリという存在が初めて確認された先月に比べて約3倍です。」

 

「そうか...我々はこのガイアメモリに対する知識が少なすぎる。霧彦くん、すぐにでも解析を進めるよう技術班に釘をさしておいてくれ」

 

「了解しました」

 

 

 

そして琉兵衛は1人元帥のみが座ることを許された椅子に深く腰掛ける。

 

 

 

「この美しい海を穢す深海棲艦に、ガイアメモリ...

すぐにでも、その全てを解明せねばならん」

 

琉兵衛は決意を固めたような目をすると、そのまま『風都鎮守府』へと向けたある指令書を作り始めた。

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