〜Aへの扉〜/兵器達に心という名の花束を   作:電波少年

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活動報告にビートルフォンに関する謝罪及び報告を載せておきました。まだ見ていない方はご確認ください。


第9話 Jな提督/レッツパーティー

「よーし!お前らはグラスは持ったな?」

 

「いいぜー、提督ー!あたしはもう飲みたくてたまらないんだよー!」

 

そういって翔太郎を急かすのは軽空母の隼鷹である。前の提督がいた頃は禁酒令がいたので久方ぶりの酒に心を踊らせている。

 

「まぁ待て隼鷹。今日は俺の提督就任2日目記念だ。本日は無礼講!さぁ、好きなもん食って飲んでくれ!

 

 

じゃあ、カンパーイ!」

 

 

 

『カンパーイ!!』

 

 

翔太郎の乾杯に合わせてみんなもグラスを掲げ宴会が始まった。

翔太郎はさっき鈴谷と熊野と買い出しに行ったあと、鎮守府にあった集会所のような場所を掃除して宴会の用意をした。

 

隼鷹や千歳、足柄や那智のような飲兵衛艦たちは酒を飲める日をまだかまだかと待ちわびていたらしく快く準備を手伝ってくれた。

 

それに一部を除いた駆逐艦達も加わり、比較的速やかに用意は進んだ。

 

途中で隼鷹が我慢できずに酒を勝手に開けようとしたがなんとか姉の飛鷹が止めてくれた。

 

本当は翔太郎は鎮守府全員の艦娘を参加させたかったのだが、翔太郎の呼びかけには一切応じず姉妹艦が誘っても首を縦に降らなかったため、また後日来てくれる時にもう一度宴会を開くことを勝手に約束した。

 

 

料理が間宮や鳳翔が一生懸命作ってくれた。

 

比叡も

 

「提督にも比叡特製カレーを食べさせてあげますね!!」

 

と意気込んでいた。他の艦娘たちは「ヒッ」と声を漏らしていた。なぜだろう。

 

 

そしてヒトハチマルマル。集会所はとても賑やかな雰囲気に包まれていた。

 

最初一部の駆逐艦が酒を飲み始めた時は翔太郎も大焦りで止めようとしたが、響曰く艦娘に年齢の概念はないらしく、別に飲酒をしても問題ない、ということを言いながらグビグビとウォッカを飲み干していた。

 

「Hey!テートク!お酌してあげるヨー!」

 

「おう、サンキュー金剛!

 

んっ...プハァ!」

 

「ワーオ!いい飲みっぷりネー!」

 

「提督、カツ揚がったわよ!さぁ、たーんと召し上がれ!」

 

「どれどれ...ほぅ、こりゃ美味いな!

最高だぜ、足柄!」

 

「もう提督ったら!褒めても何も出ないんだからね!」

 

そう言いながら大量のカツを翔太郎の皿に盛る足柄。ちなみに翔太郎の前では赤城と加賀が一心不乱に食べ続けている。あの細い体のどこにあれだけの量が入るのか気になったが触れないでおいた。

 

「ちょっと、提督!私たちもおにぎり作ったから食べてちょーだい!」

 

そういっておにぎりを差し出すのは暁たちだ。第6駆逐隊のみんなで作ったらしい。響はその後ろで未だにウォッカをグビグビと飲み続けているのだが。

 

「なるほどな...このちょっと形が崩れてるのが暁が作ったやつだな?」

 

「な、なんで分かったの?!」

 

「探偵にはなんでもお見通しなんだよ。一人前のレディになるならおにぎりくらいはちゃんとしたのを作れないとな」

 

「くぅ〜!見てなさい、次はもっとちゃんとした形のを作ってきてあげるんだから!」

 

「そうか、楽しみにしてるぜ。でも今日作ってくれたやつも味は十分に美味かったぞ。

ありがとな、暁、響、雷、電」

 

そういって翔太郎は順番に四人を撫でていく。暁だけは「レディの頭を気安く触らないで!」と言っていたが、満更でもなさそうだった。

 

 

 

「よーし!那珂ちゃん歌いまーす!!」

 

「よっしゃ、いいぞー那珂ちゃん!

さっすがウチの鎮守府のアイドル!」

 

「翔ちゃんったら分かってるぅ!

那珂ちゃんは鎮守府みんなのアイドルなんだからね!」

 

 

いつの間にか翔太郎は一部の艦娘たちから『翔ちゃん』呼びされるようになっていた。

だが彼は元の世界でも、風都に住む多くの人たちから『翔ちゃん』呼びをされていたで、特にそこに違和感を感じることなく呼びかけに答えていた。

 

そして艦娘たちに囲まれて楽しそうにしている翔太郎を見ている北上と大井。

 

「見て見て大井っち。提督すっごい楽しそうだよ」

 

「別にあんなやつのことなんか知らないわ。

アレでハードボイルドを語るだなんて、本物のハードボイルドに失礼だと思わないのかしら」

 

大井は不機嫌そうな顔でグラスを口につける。

 

「でも大井っち...私がこの鎮守府で見てきた中でも、今日が一番楽しそうだよ」

 

「えっ!?そ、そんなことないわよ北上さん!」

 

「ほんとぉ〜?」

 

「...ほ、本当...」

 

「ふーん」

 

そういって北上は皿の肉じゃがを口に含む。

 

 

 

翔太郎たちが那珂ちゃんの歌に合わせて手拍子を送っている中で赤城は食べる手を止めて加賀に話しかける

 

「加賀さん」

 

「どうしました、赤城さん」

 

「私は今...とても楽しいです。みんなでいっぱいお話できて、いっぱい美味しいものを食べれて...これも左提督のおかげです。

 

私は今初めて、この『風都鎮守府』に来てよかったと思えました」

 

ニッコリと微笑む赤城。

そんな赤城に加賀は「えぇ」とだけいって答える。

 

「さぁ、加賀さん。今はとにかく食べましょう!あっ、あの唐揚げ美味しそう!」

 

赤城は大皿に盛られた料理をひょいひょいと口に運び、そんな赤城をみて加賀は小さな笑身をこぼす。

 

 

 

『安心して、赤城さん。何があっても...あなたを、この鎮守府を...私が守るわ』

 

 

 

加賀は二の腕をギュッと押さえる。

 

 

 

 

 

そんな加賀の二の腕には、黒い『生体コネクタ』が打ち込まれていたのであった。

 

 

 

 

そして宴会は終盤に突入する。駆逐艦などは疲れて寝てしまっているものも多く、第6駆逐隊はウォッカを浴びるように呑む響を除いて全滅していた。

 

まだ起きている艦娘は隼鷹を初めとした飲兵衛組と酒に強い陸奥など戦艦組、そして空母組の一部であった。

 

鈴谷は途中でフラフラと倒れそうになってしまい、熊野が「鈴谷さんったら!」と不満を漏らしながら部屋へと戻っていた。

 

翔太郎も先程までは地面に突っ伏していた。

 

理由はひとつ。比叡の特製カレーを食べてしまったからである。

 

翔太郎は比叡にカレーを出された時、その見た目と臭いに思わず顔を顰めたが、比叡はうるうるとした目で翔太郎を見つめており、仕方なく食べることにした。

 

だがひと口食べただけで想像を絶する感覚が翔太郎を襲い、さっきまでぶっ倒れていた。

 

 

もはや宴会を続けられる状態ではないので、各自流れ解散とし、翔太郎や大淀たちは食べ終わった食器などを片付けて食堂に持っていき、間宮さんたちと共に皿洗いをした。

 

間宮は当初提督に皿を洗わせるわけにはいかないと翔太郎を止めたが、

 

「ハードボイルドな男は皿洗い位朝飯前です」

 

と言って譲らないので結局手伝うこととなった。

 

そして全員が集会所から撤収した。

 

 

〜執務室〜

 

翔太郎は執務室で一人椅子に座りながら窓の外を眺めていた。昨日と同じで空は晴れており、星が煌めいていた。

 

『俺、今めちゃくちゃハードボイルドだな...』

 

窓に映る自分に酔っていると、部屋の扉がノックされた。

 

「おーい、提督ー!入っていいかー?」

 

「隼鷹か?いいぞー」

 

翔太郎が許可を出すと、ゾロゾロと数人の艦娘が入ってきた。

 

とは言っても来たのは隼鷹、千歳、那智、足柄の4人であり、みんなその手には酒瓶を持っている。

 

「おいおい、どうしたお前ら。もう宴会は終わったぞ?」

 

「何とぼけちゃってんだよ、二次会だよ二次会」

 

隼鷹が酒瓶をクイッと持ち上げる。

 

「このお酒、秘蔵のとっておきです。前の提督の時はチェックが厳しくて中々飲む機会が無かったんですけど...」

 

「どうした提督?まさかあれくらいの酒で酔ってしまうほどハードボイルドとは軟弱なものなのか?」

 

那智が煽るように言う。

 

「へっ...面白いじゃねぇか。いいぜ、付き合ってやるぜ」

 

 

翔太郎は執務室の床にどっかりと腰をおろした。

 

 

 

 

マルフタマルマル。かれこれ3時間ほど5人は飲み続けており、全身にすっかりアルコールが回っていた。

 

「提督、貴様はなぜ探偵を?」

 

「俺には師匠がいたんだけどよ...まぁその人の影響だ。おやっさんは...俺なんか比べ物にならないくらいの、正真正銘の『ハードボイルド』な人だったよ」

 

「へぇ〜、提督の師匠ねぇ。一度是非会ってお話してみたいわぁ」

 

「無理だな」

 

「何でさ?」

 

「もうこの世にいねぇからだよ」

 

場の空気が一瞬のうちに重くなる。

 

「おやっさんは...ある依頼をこなしている途中で死んだ。

 

いや...俺が殺したみたいなもんだな。俺の未熟さが、短慮さが、甘さが...おやっさんを殺した」

 

「提督に...そんな過去が...」

 

「あぁ。俺はあの日に決めたんだ。

 

帽子が似合う、ハードボイルドな男になってやるってな」

 

 

四人は何も言わなかった。だが翔太郎が「悪かったな、重くしちまって」と言いながら四人のグラスに酒を注いでいく。

 

そんな翔太郎の意思を汲み取ってか、足柄が口を開く。

 

「なら今日は飲みましょう。私たちにも、提督と同じで悲しい過去がある。だから今は、今の時間だけは...そんな思いをお酒で流してしまいましょう?」

 

そういって足柄はグラスを掲げる。それに呼応するように翔太郎たちはグラスを掲げ、再度カチンとグラスを合わせ、中に残っていた酒を一気に飲み干す。

 

 

 

結局5人が眠りについたのは、日が昇り始める頃だった。

 

 

 

 

〜執務室前〜

 

「提督ー!朝ですよ!」

 

大淀が声をかけるが返事がない。大淀は昨日翔太郎が宴会を出て、執務室に戻ったところまでしか見ていない。きっと昨日の疲れからまだ眠っているのだろうと思ったが、それでも起こすのは秘書官である自分の役目であると考えている。

 

まぁ翔太郎はそもそも秘書官なんて指名していないのだが。

 

 

「提督ー?開けちゃいますよー」

 

そういって大淀は扉を開こうとした。

 

 

だが何かが引っかかって扉があかない。

 

業を煮やした大淀は思い切り力を込めて扉を押した。

 

 

 

 

「な、なんですかこれはー!?」

 

 

 

大淀が思わず絶叫する。ボロボロの執務室には辺り一面に酒瓶が転がっており、翔太郎を含めた5人が寝息をたてていた。

 

 

うつ伏せの翔太郎の上には隼鷹が仰向けになってグゥグゥと寝息を立てており、その横で那智が上着を脱いで寝ている。

 

足柄に関しては下着だけしか来ておらず、ほとんど裸である。

 

千歳は酒瓶を抱きしめながら、幸せそうな顔でヨダレを垂らしている。

 

 

 

「ちょっ、ちょっと皆さん!?

おーきーてーくーだーさーい!」

 

かなり大きな声で叫ぶが全員一向に起きるような気配はない。

 

「どうしたんですか?大淀さん。朝から大きな声で...って那智!?足柄!?」

 

そういって部屋に駆け込んだのは妙高型の長女、妙高である。彼女と末っ子である羽黒は昨日の宴会のあと、部屋に戻って翔太郎が購入して鎮守府に送らせておいた布団でぐっすりと眠っていたので那智と足柄が抜け出していたことに気づかなかった。

 

執務室で酒盛りをしたせいで、部屋は恐ろしい程に酒臭くなっていた。

 

「提督!起きてください!!」

 

大淀はユサユサと翔太郎を揺する。

 

「んっ...ふぁ...あぁ、頭痛ぇ...」

 

翔太郎がゆっくりと目を開ける。

 

「提督!執務室で二次会をしないでください!それにこんなになるまで飲むなんて...何時まで飲んでいらしたんですか!?」

 

「えっとなぁ...ダメだ、思い出せねぇ」

 

翔太郎は二日酔いでジンジンと痛む頭を抑えながら目をこする。

 

「ほら!那智!足柄!起きなさい!!」

 

妙高は怒った声で、上着を脱いで爆睡する那智と、下着を丸出しにした足柄を叩き起す。

 

「...グゥ...ん、んむぅ...みょっ、妙高!?

何故ここに!?」

 

那智は焦って飛び起きる。なお足柄は目覚める様子がない。

 

「那智。昨日あなたは足柄と部屋を出て、ここで何をしていたの?答えなさい」

 

まさにゴゴゴゴという擬音がつきそうなくらいのオーラで妙高は那智に詰め寄る。

 

「確か私たちは...提督と二次会をするために執務室に行って...すまん、そこから全く覚えていない」

 

「全くもう...那智、足柄に服を着せるわよ。二人とも部屋に戻ったら、たっぷりとお説教するから覚悟しておきなさい」

 

普段の男勝りな態度は何処へやら、那智は妙高に威圧されてプルプルと震えていた。

 

 

結局足柄は妙高と那智が連れて帰り、大淀が隼鷹と千歳の姉妹艦である、飛鷹と千代田を呼んできた。

 

「ちょっと隼鷹!ほら、行くわよ!!」

 

「もう千歳お姉ったら!どうしてこんなになるまで飲んでたの!?」

 

2人は眠りこけた姉妹をズルズルと引きずりながら部屋へと連れ帰った。

 

 

部屋には翔太郎と大淀だけが残される。

 

翔太郎は大淀の前に正座させられていた。

 

「いいですか?提督。あなたはもうただの民間人ではありません。この国の存亡を担う提督の1人です。いくら出撃が免除されているとはいえ、敵が攻めてこないわけではありません。そこは弁えて置いてくださいね?」

 

「はい、重々承知しています!」

 

翔太郎も先程の那智のように、目の前の大淀に怯えながら土下座をする。

 

「まったく提督ったら...分かったなら顔を上げてください。引き継ぎの書類や確認してもらうことがたくさんあるのですぐに執務をしてもらいますよ!」

 

大淀は翔太郎を立ち上がらせると、顔を洗わせて椅子に座らせ、執務室の机に向かわせる。

 

 

口では怒っていた大淀だったが、その顔はどこか穏やかで嬉しそうだった。




次回からドーパントが出てきます。
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