A県B市C川の河川敷、叔父とその友人を連れ私は洗濯物を干しに来ていた。坂の下にいく道の先にその川はある。その川は日本最長の川の支流だ。
途中ランニングする女の白い脚がショートパンツから伸びて眩しかった。金髪に蛍光ピンクのあの女性はオーストラリアから来たのだろうか?
ともかくつかつかと歩いていくと河川敷の道にぶち当たる。その道を左に折れて真っすぐ行くと足下に堤防が見えてくる。
コンクリートでガチガチに固められた河川敷の白さが朝日に眩しい。C川の黒い流れの中に数個の白い筋がキラキラと乱舞する。
「あそこにいる」
「そうだな。鯉ばかりだ。つまらない」
C市の名産品を一蹴し叔父は友人と腰のピースメーカー(当たり前だがエアガンだ。日本で拳銃は所持できない)を抜いて数発撃ち、 ゆっくりとコンクリに覆われた護岸を降りていく。私もその後姿を追って崖を降りた。
河原は白いコンクリートに覆われ、乾いた空き缶や木の根が転がっている。そういった一連のゴミの中でタイヤの輪のようなものが私の目に留まった。
「あれは……?」「どうした?」
叔父の声を背に近づくとその物体は白い腹を日光に晒した巨大なウナギだった。この川にこんな魚がいるとは知りもしなかった。
「おじさん、これ」「ああ、主だろう」「主って?死にかけなの」
そのタイヤのように丸まって腹を向けたウナギはまだ生きている。
「それは……」「それもあるけどね」叔父の友人がウナギを見たまま言葉を継ぐ。
「こりゃ儀式だ。ほら堤防も見てみな」
叔父の友人D氏の言葉に従うと確かに堤防の上、どころか視界の端々に丸まった巨大ウナギがその腹を日光にさらしていた。
「地元の民俗学者がやったんだろう」
巨大ウナギに白けた私たちは若干早足で、来た道を引き返していた。
河川敷の道。芝を打たれた道。白い花が咲いている。白い花の名前はなんて言っただろう。小学生の自分はあの花でよく腕輪を作る母親たちを見たものだ。
道の真ん中にあるトイレが見えてきた。そろそろ河川敷の道も中ごろだ。
トイレの傍の花畑に女性が立っている。長い髪は髪質が縮れ気味であり、サングラスをかけていた。手には杖を持っている。赤と白の混じった朝のワンピースを着た女性は「それだ、あれだ」と意味の分からないことを一人でブツブツ呟いていた。
「目を合わせるな。走るぞ」
静かに叔父と友人D氏が私にいい駆けだす。私もその背を追う。
気が付いた女が走り出す。叔父とD氏の背中が離れていく。早い。私の脚が遅い。もっと早く走らなくては!
女が追ってくる。