直接、飛べるように、あとがきにてURLを記載しておきます。
動物紹介は一期のおねえさん、おにいさんをりすぺくとしてお送りしていますが、オリジナル路線も行こうかなぁと思っています。
PCで見ないと崩れるかも。
カラカル
カラァカル……はですね、乾燥したところがすきでしてぇ
黒い耳が特徴でしてぇ……なんといぅのでしょう……
ジャンプ力ぅ……ですかねぇ
人間よりもぉ、高く飛べるんですねぇ
それを使ってぇ、空で飛んでいる鳥を捉えたりぃ
体の大きな動物も狩ることができるんですよねぇ
その中でもですねぇ……オスはですねぇ
縄張りが広いんですよねぇ やまねおにいさん
激しく揺れる草。それを掻き分けて何かがこちらにやってくる。聴覚と視覚で暗雲を捉えたともえは体を身構える。セルリアンの映像。彼女の脳裏に真っ先にそれが映ったようで、汗をだらしなく垂らしている。風向きは今までとは反対側に吹き始め、空もあわただしく変動している。
ばたつく草は急に止まると、中から何かが出てきたのだった。
「あら、イエイヌ。あなたが群れで行動するなんて珍しいわね」
草むらから現れたのは、セルリアンではなく、黒い耳*1をした橙色の短い髪とリボン。藍色の目の少女であった。ともえは一息ついて安心すると、目の前の少女の耳に目を奪われる。彼女はイエイヌと出会ったときも感じた好奇心に囚われて、近づくと、そつなく彼女の耳を触り始める。
「ちょっとちょっと。撫でないで。くすぐったい」
少女はこそばゆそうにしている。フレンズの耳には感触があるというのは今までの研究でも分かっているが、どうしてそこに至るのかは、ビッグバンがなぜ起こったのかと同様な段階の疑問だというのが、現在の通念である。
「あっ。ごめんなさい。少し感触を確かめたくって」
ともえは我に返るとぱっと手を耳から話す。少女は気恥ずかしく自分で耳を触りなおすと、ともえの言った言動に少し、何か動物的本能な身の危険を感じたのだろう。目の前で僥倖に浸るともえを何とも言えない目で見ている。
「感触!?まぁ別にいいけど。私はカラカルよ。あなた。耳がないなんて珍しいフレンズね」
カラカルは珍しさで触ってきたのだろうからと、触られたことにあまり気にしていない様子である。あるいは、こういうことに慣れているかのどちらかだろう。
「あたしはともえと申します」
ともえはスケッチブックをわきに抱え、帽子を取って、軽くお辞儀をする。記憶がないはずなのだが、こういう礼儀的作法は体に染み付いているようであった。フレンズも動物の時の習慣がフレンズ化した後も顕著に現れるように。
「カラカルさん。ともえさんはヒトなんですよ」
イエイヌは彼女と以前からの知り合いらしく、気さくに言葉を交わしている。
「ええっ。ヒトってあの⁉︎」
カラカルは大っぴらに動揺している。ヒトというものがどれほど珍しいのか反応だけでともえは分かってしまったようだが、ともえは場の空気を気遣ってか顔には出さない。
「そういえばカラカルさんはヒトの記憶があるんでしたっけ?なんでも、旅をしたとか」
イエイヌはともえのおうちの情報の手がかりを探すために尋ねている姿を申し訳なさそうに見つめるともえ。彼女はイエイヌだけにまかせっきりにさせてしまってはいけないという思いからか、二人の会話の合間に入る。
「もしかして、あたし以外にヒトに会ったことがあるんですか?」
ヒトに会った貴重なフレンズ。ともえがそれを聞き逃すはずもなく、目的の情報を手に入れようとする。
「そういえばそんなことをあなたに話した気がするわね。でも、それは微かに覚えているってだけだし。それに、今の私にはね……」
カラカルはあまり歯切れの悪い回答をする。つまり、確証を得られる情報ではないということである。イエイヌもカラカルも会った気がする。ともえも居たような気がすると誰もが、そもそもヒトというものが存在するかも分からないような状況である。
「そういえば、イエイヌ。あれほど待ってたご主人様が現れてよかったわね」
カラカルは話を転換させ、イエイヌに話を振る。イエイヌはともえを見ると、済まなそうに口を覚束なくさせている。
「いいえ。ともえさんは記憶にあるご主人様とはどうやら違うようです。それに、ともえさんはともえさんです」
イエイヌはご主人様という概念以前にともえというヒトとは隔絶された存在であることを強調する。ともえは嬉しさの反面、イエイヌのご主人ではなかった自分を悔い、申し訳なさを募らせているようだった。
「なんか、ごめんね」
風は先ほどよりもやわらぎ、暑さがもわんと、彼女たちに襲い掛かる。だが、木陰と水場が近くにあるからか、一帯はひんやりとしていた。
「ともえさんが謝る必要は無いんですよ」
イエイヌはともえは悪ではないからと、彼女の揺蕩う気持ちを無上に抑えるように諫める。
「そうです。そうです。ともえさん。ともえさん。カラカルさんは凄いお姉さんで、私に色々と教えてくださった素晴らしい方です」
気分を変えるように楽しい話題を提供するイエイヌ。純粋無垢な心意気がその発言には現れている。
「モフモフしているし、可愛いし、凄いフレンズちゃんなんだね」
ともえもその話題に乗る形で、カラカルの可愛さに対する本意を強調する。それは素からの発言だと考察しなくても分かるほどに、にこやかさを見せて言っている。接頭に謎の理由が付加されているが、ともえ本人にとってはそれだけで尊敬に値する価値があるのだろう。
「そんなに褒められると、なんていうか、少し恥ずかしいわね」
カラカルは顔を紅潮させて、まんざらでもなさそうな顔をしている。彼女は面倒見のよい性格と褒められるとあまりに喜ぶようで、フレンドリーな人物であるようだ。
「ともえさん。ともえさん。私、少し探したいものがあるのであっちの行ってます」
イエイヌは指を指して木の向こう側、水辺側に行きたいことを伝える。一人で何かを探しに行きたかったのだろう。木の裏側には先ほどは、水で気にはならなかったが、確かに、ガラクタの山のようなものがはみ出している。その中にイエイヌの私物があるのかもしれない。
「あ、うん」
イエイヌはともえの返事を聞くと、すぐさまに何かを探しに木の裏手へと消えていった。カラカルは心配そうな目で見つめている。
「少しいい?」
「はい。なんでしょう」
カラカルはともえに深刻そうな表情で話を切り出した。
「一応だけれども、言っておいた方がいいかなっと思ってね。自分の身は自分で守ること。これはジャパリパークの掟。なんでも、イエイヌを宛にしちゃダメよ。彼女、ただでさえ、貴方の言うことなら何でも聞いちゃいそうだし」
彼女の警告、もとい、注意ではある。やんわりとした口調の言葉ではあったが、ともえは様々な思い当たる節目がありすぎるせいか、少し目を見開くことはできないでいる。
「……はい。分かりました。」
踏ん張りが付かない返事。ともえはスケッチブックを強く握りしめていた。
「少しあの子が心配なだけだから。それにともえ。貴方もね」
カラカルは言い過ぎてしまったのかと不安を覚えたようで、言葉を補填する。
「あの」
ともえは少し震えているようで芯がある声を出す。
「なに?」
カラカルはそれに合わせるように、ふんわりとした羽衣のような声を出す。
「ありがとうございます」
ともえはお辞儀をする。その行動に少しばかり、カラカルも驚きを隠せていない様子である。
「お礼なんて言われるほどの事じゃないわ」
少し照れ恥ずかしそうに、ともえから視線を外す。その背中はともえには壮大な背中に映ったに違いなく、ともえのスケッチブックを持っている手は震えてはいなかった。
「ありましたー」
その時、イエイヌは溌溂とした声で笑顔を張り付けて帰ってきたようであった。手に真ん丸とした円形の板のようなものがあった。板ほど真っすぐではなく、少しく真ん中がくぼんでいる。そして橙色である。
「それは?」
「私の宝物です。ずっと持っていたものです」
思い出深そうにイエイヌはそれを握っている。それを懐かしそうに、見続けている。昔の記憶を重ねるように、じっくりと。
「落とさないように、ここに入れてく?」
ともえはイエイヌの大切なものと理解したらしく、背負っていたショルダーバッグを開封すると、中の空きを確認している。先程の、イエイヌにまかせっきりという言葉が、彼女の胸中にリフレインしているのだろう。
「じゃあ」
イエイヌはその好意に甘えて、ともえに思い出の品を渡す。その様子を傍目で見ていたカラカルは奇怪そうな目で見つめていた。自分の大切なモノ。それを渡すというのは、イエイヌとともえの間の絆の強さを見たからである。
「貴方たち、今日知り合ったばかりにしては、随分仲がいいわね」
それは当然の疑問であって、必然的に感じてしまう物だろう。まるで、以前からの付き合いがあるような、無駄のないチームワークであったのだから。
「どうしてでしょうね」
ともえは渋ったような言葉しか言いようがなかった。
「ともえさんは凄いからだと思います」
それに対してイエイヌはともえに絶大な信頼を置いているようである。凄いというのは、ともえが描いた絵のことだろうが、カラカルはそれを知る由はなさそうである。
「はいはい。そうね、そうね」
カラカルは受け流して柔和な対応をしている。イエイヌが凄いフレンズと言っていたのは、こうやって、他人を諭して、面倒見がいいことを言っているのだろう。
「そういえば、いつもの皆さんは」
いつもの皆さんという単語。他には誰かがここに集まってくるのだろう。キョロキョロとイエイヌは周りを確認している。すると、それに共鳴したかのように、再び草が揺れ始める。ともえは今度こそセルリアンかと、イエイヌの前に立つ。
カラカルとイエイヌは身構えていないことにともえは気が付いていないようだった。颯爽と草が倒れていき、道が出来ているのが遠目からでも見て取れる。その影も捉えぬ速さは、一瞬、何がやってきたのか分からなくさせる。
「ぬぅ~」
ばさりと二つの白い角が目の前に現れ着地する。韋駄天かとも思わせる一世を風靡する走り様は流石としか形容しがたいものである。
「わぁ」
ともえはそれに圧巻して声が出てしまう程であった。白色のブレザーとスカートをはき、純白の首巻をちらつかせ、手にはアーチ形の何かを持っている少女がそこにあった。
「ちょっと、オグロヌー!置いてかないでよー」
その少女を追いかけるようにして遠方からもう一人の少女の声が聞こえてくる。息を切らしているようで、言葉に力強さを感じさせない。カラカルとイエイヌは驚いていないが、ともえだけは目を見開かせて固まっている。
「あれあれ。貴方、見かけない顔ね。どこのフレンズ?私、オグロヌー*2っていうんだけど。私、こう見えてもすんごく速いんだ。」
「えっと……」
ともえはあまりの速さに頭が追い付いていないでいた。オグロヌーの早口で情報を多く詰め込まれた一方的なマシンガントークにともえの脳内はショートを起こしかけて、白煙を頭から噴出しかけている。彼女の達者な口はとどまることを知らないようである。
「貴方も足が速いフレンズ?それにしても貴方は耳もないわね。あれあれ?その四角いのってなに、なに。見せて。貸して。触らして~」
オグロヌーはスケッチブックに興味を示すと、更に好奇心は加速していくばかりで、既に暴走列車と化していた。ともえもされるがままにその言葉のキャッチボールが出来ないことに思考停止しかけている。
その様子に助け船を出すように、カラカルは二人の間に割って入り、オグロヌーの暴走を止めようと白手袋をした手を出す。
「はいはい。オグロヌー。そこまでにしてあげて」
カラカルが止めたときには遅く、ともえは目を回している。イエイヌはともえが倒れかける瞬間に肩を即座に持ち態勢を整えさせようとしている。
「あら、カラカルさん。先にいらしてたんですか。チャップシマウマちゃん*3も一緒なんですけど……あれ?」
オグロヌーは後ろを振り返った。そこには彼女が先ほど、通ってきた場所で、勢い余って走ったせいか、草が倒されて道が出来ている。そこにものすごい荒い息遣いをする音が近付いてくるのが分かった。
「……はぁはぁ。オグロヌー……。後先考えずに行動するから……そうなるのよ」
ひざ丈までしかない白色のカーゴパンツに白シャツ、白いスニーカー。黒と白の縞々の髪の少女が中腰で息を切らして立っている。先程のともえと同じように死にかけており、立っているのが辛そうであった。きっと、オグロヌーがあまりに速く走るために追いつくのに必死に走ったのだろうと思われる。
チャップシマウマはオグロヌーの顔を見ると安心したようにその場に倒れる。
「バタンキュー……」
「チャップシマウマちゃん!?」
少女の安らかな表情がそこにはあった。この世に未練のない、幸せな表情は木陰で安らかに息をつく。その顔はそよ風も嫉妬してしまうくらいのとびきりの爽やかな表情であった。
【使用させていただいたURL】
オグロヌー©けものフレンズ http://bit.ly/blue-wildebeest
チャップマンシマウマ©けものフレンズ http://bit.ly/chapmans-zebura
第1.5話「ぼうし」 by ばるばんさーさん [pixive] http://bit.ly/episode1-5
台詞を先に書いて後に文章を書いていく形をとっていると、汚くなりますね……。
bitlyは別に怪しいリンクじゃないです。
実はオグロヌーちゃんはけものフレンズ2に出てきているので未登場ではありません。
オグロヌーちゃんもチャップシマウマちゃんも、どちらも、公式ガイドブックが初出です。