コンスコンだけど二周目はなんとかしたい   作:おゆ

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第十話 逆になった

 

 

 長過ぎると思われる時間の後、俺は報告を聞く。

 

「ガトー大尉、報告します。当機は左腕を落とされる中破、ツェーン隊長のドムはエンジン部破損を含む大破です。ツェーン隊長は負傷しましたが、しかし命に別条はありません」

 

 良かった。本当に。ツェーンが助かれば何でもいい。

 

「ドム隊は全機帰投せよ。収容が終わり次第、テキサス・コロニーを離脱する」

 

 コロニーを出る直前、マ・クベ大佐から連絡を受ける。

 

「今回は世話になった。いや、なりました。コンスコン准将」

「マ・クベ大佐がMSに乗るとはびっくりした。少々見直したよ。しかもあの白いMSと戦うとは、凄いね」

「乗れたのは、ギャンのチューニングが合っていたのでしょう。元々操縦系の支援が充実しているのもギャンの良いところです。それはそうと、准将がバロム分隊を連邦のマゼランから救ってくれたのもありがたい。その後デラミン艦隊と合流し、木馬から逃げ切ることができました」

「そうか、それは良かった」

「デラミン艦隊がやられたら大ごとでした。あれには白磁の壺を置いてあったんです。宋時代の逸品ですよ」

 

 え? 何? そこですかーー!!

 ま、まあ個人の趣味は仕方がない。けど何でいちいち戦場まで壺持って来てんの?

 日に一度眺めていないと精神的にダメだとか? どうせ実用に使わない壺なら置いてくればいいのに。

 それともソースでも入れて使っているのか?

 いやそこは絶対聞いちゃいけないんだろうな。

 そういうマニアってどこがスイッチか分からないから。地雷を踏まないよう、気をつけて会話しないととんでもないことになるんだよな!

 

 

 

 マ・クベの艦隊を見送ると、俺は次に負傷したツェーンの見舞いに行こうとする。

 この時、俺はツェーンが軽傷とも重傷ともつかない状況なのは聞いていた。

 

 廊下を行き、処置室にあと一歩で入るというところで、ツェーンのでかい声を聞いた。

 

「そりゃあんたに感謝しているわ! 助けてくれたんだもの。お礼は言わなくちゃね。だけど、良かったなんて軽々しく言われたくない!」

 

 な、何? 何が起こってる?

 あ、俺がツェーンに良かったという前にこれ聞いてて助かった。しかし話の相手は誰だ?

 

「……命があったのは、良かったことじゃないか。違うか。死んでいればここで声を出すこともできない」

「だけど、だけど私は指を二本喪ってしまった。私が馬鹿だった。身の程もわきまえず突出したなんて」

「戦場では指でも手でも足でも喪うものはいくらでもいる。いや、誰でも何かしらは喪う、それが戦場だ。負傷は恥ずかしいことではなく、残った体を褒めてやれ。それまで時間がかかるなら、気持ちが収まるまで俺に叫ぶのはいい。だが、自分には向けるな」

「利いた風なことを!」

「それと酷なようだが、隊のみんなには笑ってやれ。お前のことを心から心配しているんだ。それが、部隊長の取るべき態度だ」

「……分かってる」

 

「だけどね、指を喪ったことは変わらないのよ! それはもうどうにもならないこと。騒いでも、騒がなくとも一緒。私は隊長としても、女としても半端モノになったんだわ!」

「だったら騒ぐな。責任なら、俺が取ってやる」

 

 ちょ、ちょっと待ってよ、ガトーさん!!

 それ絶対誤解する言い方だから!

 第三者の俺が聞く分には、ドム隊の挙げるべき戦果をツェーンの分まで挙げてやる、そういう意味なんだろ。でもツェーンの受け取り方は違うと思うぞ。絶対バックに花が咲いているシーンだから。

 俺が言っても、悲しいことに誤解なんかされないだろう。しかし、ガトーさんはクッソイケメンなんだよ。だから言い方にも気をつけるべきだ。

 案の定、ツェーンは黙ってしまったじゃないか。

 

 俺は処置室には入らず、艦橋に戻った。なんか寂しいな。俺が部外者みたいだよ!

 

 

 

「コンスコン司令、発進準備整いました。今後の進路は?」

 

 そう副官が聞いてきた。

 気持ちを切り替えないといけないな。

 

 実のところ、俺は進路を決めかねていたんだ。早めにア・バオア・クーに向かい、ドズル中将に合流を果たすか。

 それともサイド6に存在する怪しい組織、フラナガン機関に向かうか。

 俺は戦争の大まかな流れは知っている。ただし、正確な日付は知らない。ア・バオア・クーの戦いの日付が分からない。ついでに言えば個々人の動きも分からない。俺が見たものは、リアルな情景というよりは人の意志の流れ、その集合体というものが主だったんだ。

 

 一つ言えることは、木馬のことはもうどうでもいい。

 マ・クベも助かったし、それで充分じゃないか。

 

 

 ただここで、俺は知らなかったんだ。

 

 俺の方ではよくても、木馬の方ではそうでなかったのだ。

 木馬の方が連邦司令部から命令を受けていた。

 

 しばらく前から連邦はコンスコン機動部隊のことを話題にしていた。

 異常な戦果を挙げていれば嫌でも目に付く。

 

 戦えば必ず勝つ、常勝不敗の艦隊として。

 

 この部隊を探り、可能なら早期撃滅すること、これが木馬が受けた新たな任務だった。

 しかもやる気になる因縁がある。

 コンスコン機動部隊がテキサス・コロニー入港前に撃破したマゼラン、そこに木馬ゆかりの人物、ワッケイン司令とやらが乗っていた。そんなの知らないよ。

 

 結果的に、木馬が逆に俺の艦隊を追ってくるなんて!

 想像もしていなかった。

 

 

 

 ただし俺の方を追尾していたとしても、俺の方が先に木馬を発見してしまった。

 この場所はサイド2付近のコレヒドール岩礁地帯という。

 

 進路を決めかねていた俺がこんなところにいるのは理由がある。

 来たるア・バオア・クーでの戦いに向け、ジオンのはぐれ艦を一隻でも多く収拾しようと思い立ったからだ。

 

 戦争も末期、混乱はジオン全軍に及んでいる。

 地球上のジャブローやオデッサが主戦場だったのに、ジオンはあっという間に反攻を受け、宇宙で激しく戦うことになってしまった。ルナツーに潜んでいたティアンム将軍、ジャブローから上がってきたレビル将軍が一気に仕掛けてきたからだ。

 

 結果、あちこちで戦線が錯綜した。突如の艦隊戦で指揮官が先にやられ、逃げ出すのが精いっぱいの小艦隊は多い。宇宙は広く、逃げおおせて気付いたら指揮系統から外れている、そんな場合だ。

 そういう艦は、確実にジオンの拠点があるグラナダなどを目指すべきだが、途中に危険も大きい。補給を求めてさまよう、又は安全のため取りあえず連邦から隠れる、を選ぶこともある。

 

 そして宇宙にところどころ設置されている岩礁地帯は隠れるのに適している。

 先のサイド5での岩礁でも、探索した結果、俺ははぐれ艦のムサイを二隻見つけて加えているのだ。

 だからそんなことを思いついた。

 小惑星ペズンにも近いコレヒドール岩礁は最大の岩礁地帯、はぐれ艦がいる可能性は大いにある。

 

 

 そして、はぐれ艦を接収する根拠を俺は持っている。

 ソロモンを出航する際、ドズル中将から二つの訓示を受けていたんだ。

 

「コンスコン、今回の貴様の武勲で少将へ昇進の内示を出したぞ。俺の権限でな。正式には本国に帰って兄者から叙任されることになるだろう。それともう一つ、直ぐに貴様のために大部隊を用意してやれないのを俺も残念に思っている。そこでだ、明確な指揮下や作戦行動中にない艦、つまりはぐれ艦を接収する許可証も出そう。ジオンの戦線が乱れている今、そういう艦は多い」

 

 昇進については素直に嬉しい。

 だがこれで最後なんだろうな、と思う。少将といえば、キシリア閣下と同じだ。階級の上では。

 もちろんザビ家のキシリア閣下と俺では価値が千倍も違うと自他共に思うだろう。けれど軍の階級で同じというのも凄い。ただしこの先、俺がそれを抜いて中将昇進はありえない。

 話は戻るが、はぐれ艦の接収について、俺はこうしてドズル中将からお墨付きをもらっているんだ。

 

 

 

 ともあれコレヒドール岩礁地帯に俺はやってきた。そこで先に木馬を発見できたのは、またしても木馬の方が交戦していたからだ。

 もう木馬、戦ってばっかりだな!

 

 今度も妙なことがある。

 木馬の相手は、見たこともないモビルアーマーだったんだ。

 俺が言うのもなんだがジオンも変なものばかり作りすぎる。今度のはとんがり帽子の形をしているじゃないか。どういう合理性でそんな形になっているのか、意味が分からない。体当たりするわけでもないだろうに尖っていても仕方ない。どんどんジオンのデザイン力は悪化しているのではないか?

 

「何だあれは。シャリア・ブル大尉の乗っていたものとも違うな。武装はまた砲台を操っているのか……」

 

 当然のごとく木馬から白いMSが発進して応戦している。

 奴ばっかり皆勤賞だな!

 いくつもの細かい砲台が動き回り、その白いMSを狙ってビームを放っている。

 観察し、気付いた。

 

「おい、よく見ると砲台はリモコンですらないぞ。線がない! どうやって動かしてるんだ!」

「そ、そうです。こんなミノフスキー粒子の濃い中、電波が通るはずは……」

 

 現実、目まぐるしく砲台は動いている。

 ビームで黄色の線が宇宙に描かれる。白いMSがビームを躱していくことには驚きもしない。化け物は化け物だ。

 

 

 

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