コンスコンだけど二周目はなんとかしたい   作:おゆ

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ライラとバニングのエピソード、後編です


第百二十四話 ライラとバニング 後

 

 

 撃ち合いはどちらにも直撃を出した。

 

 これでラカン・ダカランのザクⅢはメインカメラを失う中破、バニングのゼク・アインは右胸部を損傷、それはジェネレーターの一つをシャットダウンさせるほどの大破である。それでも完全に戦力を失ったわけではない。補助ジェネレーターに切り換え、出力は大幅に低下したがビームサーベルを片腕で振るだけのことはできる。

 そんな状態でもバニングにはまだ立ち向かうべき理由がある。

 自分が退いたら、今相手をしている新型ジオン機がライラと戦うことになる。絶対にそうさせてはならない。向こうも損害を食らっているようだが戦闘力の低下は未知数だ。

 ライラが新型ジオン機と戦うのは危険過ぎる!

 

 逆にラカン・ダカランの方ではしっかり決着をつけておかなければもしかすると前方の連邦機と挟撃される恐れがある。その判断は当たり前だ。

 両者はもう一度接近するべくして接近する。

 今度はどちらかの死で終わるだろう。おそらく分が悪いのはサウス・バニング、ビームサーベルの光がバニングのレクイエムとなって奏でられる。

 

 

 だが最後の最後、そうはならなかった。二回目の対峙もまたフィナーレを迎えず、中断になったのだ。それは突如、戦場に大きな流れが生じたためである。

 

 ガディ・キンゼーが艦隊を再び前進させることに決めた。

 

 立ち塞がってきたジオン艦隊を必要充分叩き、目的は果たした。妨害を排除すればそれでいいのだ。これ以上の愚かな消耗戦など不要である。

 

 ガディ・キンゼーとしては先行したエイパー・シナプス隊を支援するためになるべく早く前へ進むべきなのである。

 また、このタイミングで再び動くのは理由がある。

 通常、既にMS戦に入っているのならば上手いこと切りをつけ、出してあるMSを全て撤収させてからでないと進発できない。まさか戦場に味方MSを取り残すわけにはいかないからだ。

 ただし、ここでその懸念がなくなった。MSを収容する時間は取らなくていい。

 予期した通り連邦本隊はガディ・キンゼーとエイパー・シナプスだけに任せることなくきちんと後詰を用意してくれている。

 統率力に定評のあるアントニオ准将が艦列を整え、全体の戦線を押し上げているのが分かったのだ。それなら連邦MSはアントニオ准将の方へ収容してもらえばいい。

 

 

 連邦ガディ・キンゼー隊の全艦が一斉に移動を始めた以上、ラカン・ダカランはそれに巻き込まれるわけにいかない。それに局地戦はもうどうでもいい。エース機の責務としてできるだけ手早く隊と連絡を取り、統率を図る必要がある。更にいえば、ラカン・ダカランは戦いをロマンや勝負の場として捉える人間ではなく、あくまで戦闘も、あるいは戦争さえも手段として見るタイプの人間なのである。

 

 こうして飛び去ったザクⅢを見送りながら、取り残されたバニングは一息つく。寄ってきたライラのジムⅡを見て、その無事に心から安堵する。

 

「大丈夫か、バニング大尉」

「ああ、なんとかな」

 

 ライラは短く確認し、バニングもまた短く返す。今はそれ以上の言葉を交わす暇はなくそれぞれの隊を探さなくてはならない。

 その後、ガディ・キンゼーの指示に従い、バニングの第四小隊もライラの隊も揃ってアントニオ准将の艦隊へ向けて撤退を開始することになる。

 

 

「バニング大尉、さっきは済まない。危ないところだった」

 

 一段落ついて、ライラは改めてバニングに礼を言う。

 

「元はといえば私があのジオンMSに気付かなかったせいだ。まだまだ未熟だな。早く分かれば、バニング大尉と二機で挟み込めたかもしれない」

「そいつはどうだろう。あのジオンMSは確かに強かった。これでよかったのさ」

「しかしそのために大尉の窮地を招いてしまった」

「気にするな。それとライラ、俺は言ったはずだぜ、守ってやるって。忘れちゃ困る。いや、俺としちゃライラがわざわざ見せ場を作ってくれたのかと思ったぞ。回りくどい表現だな、ライラ」

「くそ、こっちが下手に出れば、上から目線で……」

「それで、死ぬかと思ったほど試されたが、俺は言葉通りのことをした」

「試してない!」

「で、ライラ、あの返事はどうなんだ。もう決まったようなもんだな。今言ってくれてもいいぜ」

 

「いい加減調子に乗るな! それとこれとは話が別だッ!」

「まあ後で飲みながら話そう。どうもMSの通信機越しでは風情がないせいか、ライラは本音を正直に話さないときた。強めの酒が要るとは、案外シャイなのか。そこもいい」

「こ、この、ぬけぬけと…… 」

 

 いつもの調子だ。そんなバニングの言葉を聞いて、とりあえずライラも言質を取られまいと反発するが本当に怒ってなどいない。

 それよりもライラにはちょっと気になることがある。

 

「あ、そういえばバニング大尉、そっちの通信出力がおかしい。妙に不安定のようだ。機体は大丈夫なのか」

「こっちは見ての通りの大破、ジェネレーターも半分いかれちまったが、ただ飛ぶだけなら全然行ける」

 

 サウス・バニングの乗るゼク・アインの計器はそう表示している。大破のため予備回路に切り替わっているが帰投までは充分に持つ。

 だが実際はそうではない!

 今その機体内部には重大な問題が発生していた。ジェネレーターのシャットダウンが不充分であったため、エネルギー漏れが生じ、内部を急速に侵食しつつあった。未テストで運用された試作機のため計器類が問題を正しく表示していなかったのだ。

 その不具合にまだバニングは気付いていない。

 

 

「そういえばライラ、こんな話を知っているか。歴史の話だ。昔スパルタっていうめっぽう強え国があった。それはな、生まれた時から猛訓練をさせて戦士を育てたからだ。体の小さいやつ、弱い奴は情け容赦なく死ぬしかなかった。逆に強え奴は何でもありの盗み放題、盗まれる方が弱いんだから悪いっていう理屈だ。そんな強さだけが正義っていう国だから、こりゃあ並大抵じゃかなわねえ。周りの国はみんなブルっちまってひれ伏すしかなかった」

「…… いったい、急になんの話だ。そんな歴史がどうした」

「いいから黙って聞け。だがな、そんなスパルタへついに戦いを挑む国が出てきたんだ。どうやったと思う? それは、恋人同士を集めて、恋人で隊を作ったんだぜ。そうしたらどんなことになっても退かない、負けない隊ができあがった。もし負けたら自分だけじゃなく恋人の命もないからな。腕がもげようが腹を刺されようが息がある限り剣を振るって戦った。死兵なんて生ぬるいもんじゃない。これを相手にしたらさすがのスパルタ戦士も心が折れちまって、それでスパルタは滅んだ。どんな猛訓練を積み重ねても、体を鍛えても、金も名誉も、ただ恋人を守りたいという気持ちには勝てなかったんだ」

 

「なんだか凄い話だな……」

「ライラ、俺の気持ちも同じだぜ」

「 ………… 」

「これからも戦いが続くか分からねえが、守ってやる。俺が守る。何度でもだ」

 

 こんなストレートな言葉、女の心に響かないわけがない。

 一瞬、ライラはほだされそうになった。

 ダメだダメだ、気を持っていかれてはならない。さすがにサウス・バニングは年の功、口が上手いだけだ。

 女を口説くにも年季が入っている。ここぞとばかりに畳み込んでくる言葉で流されてはいけないと思いなおす。

 

 

 その時、バニングのゼク・アインが限界を超えた!

 

 ついにエネルギー漏れが装甲を飛ばして噴き上げる。同時にバーニヤが異常作動を起こしてしまい、そのためゼク・アインは急な横Gのかかる運動を始めてしまう。

 もちろんバニングも異常に気付くとすぐに立て直そうとするが、それが全くできない。

 操作系は既に機能を失っていた。制御不能、このままでは確実に爆散する。そして機体が不規則に動く以上、脱出もできない。出た瞬間に機体がそこへ動いてきたらノーマルスーツの人間などひとたまりもないからだ。

 

 並行していたライラもまた異変に気が付いた。バニングのゼク・アインがコントロールできないまま飛ばされていくではないか。

 すぐさま後を追う。

 ゼク・アインは明らかに爆散間近と見て分かる。不思議にもそれに巻き込まれてしまうことを恐れる気持ちはライラに生まれなかった。そんなことはどうでもいい。ただ絶対にサウス・バニングを失ってはならないという思いしかない。

 

 ジムⅡの高運動性能が幸いした。周囲の第四小隊の誰よりも早く、ライラのジムⅡはゼク・アインに追い付くことができたのだ。

 そして慎重に見定め、ビームサーベルを一閃する!

 暴走しているバーニヤを斬り落とすと、ゼク・アインを腕で掴んで一瞬動きを止めてやる。バニングを脱出させるためだ。

 

 それを確認し、バニングを無事に保護したライラは安堵する。その場を離れたらすぐにゼク・アインは爆散した。

 

「バニング大尉、守ってやるのは私の方だったな! これで貸し借り無しだ。返事も無しだ。さっきは口説き文句、いやご高説ありがとう」

 

 そう言ってライラはしばらくの間笑い続ける。

 自分でもなぜだか爽快な気分である。バニングを失うと思った恐怖はあまりに強く、またそこから解放されたせいか。

 

 

 まだ気が付いていないだけだった。

 

 これまでの気安いつきあいが意外なほど深くライラの心に根を張っている。

 戦いでは冷静な策士でも、ライラ・ミラ・ライラはとっくにサウス・バニングの術中に嵌っていたのだ。

 

 

 

 このわずか半年後、年の離れたカップルがゴールインすることになる。

 

 とうてい幸せの門出のセレモニーと言えるようなものではない。

 結婚式という名前がついた、飲み比べの修羅場だったと後の語り草になった。

 新郎新婦がどういうわけか途中からそうなり更に酒好きの第四小隊が参戦したのだ。

 

 実際に見ていた一人であるコウ・ウラキは年少だったために難を逃れたのだが、そのため生涯酒を恐れたという。

 

 

 

 

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