コンスコンだけど二周目はなんとかしたい   作:おゆ

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最終話    夜会

 

 

 俺の土星開拓団の門出を見送ってくれる人は多い。

 

 もちろんドズル閣下とキシリア閣下もそうだ。ズム・シティの出港ゲートまで来て、最後の最後まで俺との別れを惜しんだ。

 

「コンスコン、土星で足りない物があったら遠慮なく言え。無人機で運べるものは運んでやる」

「その時はよろしくお願いします。ドズル閣下」

「思えば、貴様とは士官学校以来の仲だった。懐かしい。その時のことも、戦争が始まって一緒に戦った時のことも、いくらでも思い出すことがある。本当に貴様には世話になった」

「そんな、こちらこそ長くドズル閣下に仕えられたことは望外の幸せとしか」

「それは逆だ。よく俺のもとで働いてくれた。そして貴様は大した奴だ。ジオンの危機を何度も救ってくれて、どうやって礼をすればいいのか分からん。ゼナのプロマイドとミネバの婿以外は何でもしてやる」

「 ………… 」

 

 予想よりも、というか予想通りの締まらない最後になったが、いかにもドズル閣下と俺の仲らしくていい。それくらいが一番いいのだ。

 その後ドズル閣下は泣いて言葉をなくし、話はキシリア閣下に代わる。

 

「コンスコン、やはり開拓団は大所帯になっただろう。総勢三百七十二万人か。これはな、お前の人望が形になったものだ」

「キシリア閣下、それは畏れ多い」

「いや、私は本当のことを言っているのだぞ。土星開拓が未知の世界で、厳しいものになるかもしれないことは皆知っている。だがな、お前がいる限り酷いことにならないと希望を持っている。そこが普通の開拓とは違うのだ。少なくとも人同士が争い、支配したり奪ったりすることはお前がいる限り無い、そう思うからこそこれほどの人間が集まった」

「それは…… 努力します」

「では頑張れ、コンスコン。地球圏のことはこちらに任せておけ」

 

 俺は最後の敬礼をして去っていく。

 その後、ドズル閣下とキシリア閣下でなされた会話は知らない。

 

 

「キシリア、さっきの言葉はそのままだな。コンスコンだからこそそれだけの人が集まった」

「いえ兄者、それは実はささいなこと、開拓が成功した後どうなるかが最も重要なことでは?」

「後のことだと……」

「こちらからは干渉のしようもないはるか遠方、指を咥えて見ていることしかできないのに、もしも歪んだ独裁政権ができてしまえば目も当てられないことに」

「危険過ぎる! エネルギー供給どころか将来の災厄にしかならんぞ。なるほどそれでコンスコンか…… 当然、奴しかいない。奴なら絶対そうはならない。そしてキシリア、コンスコンを選んで任命したお前が一番凄い」

 

 

 

 俺の出立は中継もされて、多くの者がそれを見ているのだが、遠くルナツーの連邦軍基地でも祝う者たちがいた。

 

「コンスコン大将がようやく行きましたな。少し寂しくなったのではないでしょうか、ワイアット元帥」

「そうだね、ステファン・ヘボン君。好敵手がいなくなるのは実に寂しい。あれほどの戦術使いにはもうお目にかかることはなく、ルウムの激しい戦いが懐かしいくらいだ。まあ、逆に言えばこれから地球圏の治安は私が頑張らねばならない。そう大した敵など出てくるまいが」

「元帥が全力で戦う相手など存在しないでしょう。小さなテロならともかく、連邦に戦力で挑んでくる相手ならば艦隊戦で打ち破るのも容易いもの。それはともかくコンスコン大将へ餞別にあれを送ったのですか」

「おお、そうだよ。土星への旅立ちに当たって、手持ちで最上級の茶葉、ディンブラの特選を送らせてもらった。長い旅路だ。紅茶の香りを是非楽しんでもらいたいと思ってね。我ながら一番いい餞別だよ、ステファン・ヘボン君」

 

 

 その頃、俺の周りでは紅茶を飲む者はいなかった。

 

 まして茶葉の味の良しあしなど分かる者はいないのだ。

 味音痴というわけでないが、そんな微妙な違いなど分からない。

 そのあげく、何とその茶葉はフォウ・ムラサメとセシリア・アイリーンの手によって紅茶ケーキの材料に使われ、皆に振る舞われてしまったではないか!

 それはそれで有効活用されたわけで美味しく食べたのはいいのだが、もしもグリーン・ワイアットが知ったら泣くだろうな、と想像することはできる。

 

 

 

 何もかも順調にいったわけではない。

 やはり、というべきか。

 

 地球圏を離脱する直前、ミノフスキー粒子が濃くなったと思いきや襲撃を受けた!

 

 相手は連邦サラミスが三隻とジム・クゥエルが十五機ほどだ。

 おそらく連邦側の急進過激派の仕業だ。俺が去る直前のチャンスに賭けたのだろう。この土星開拓を頓挫させれば、悪名かもしれないがとにかく自分たちの存在をアピールできる。

 

 もちろんこちらも警戒し、索敵は随時していたのだが、それでも待ち伏せをしてこられたら完全に防ぐことはできない。マハルは推進剤節約のため、惑星軌道から計算された最適コースを変えることはなく、ちょっと類推するだけでコースを読まれてしまう。その途上でデブリに偽装して待ち構えてきたものなど見分けられやしない。

 

 敵勢力の数は少数といえど、非常にまずい!

 

 勝ち負けの話ではない。コロニーを撃たれてしまえば少なからず傷になり、そのまま土星へ行くのが難しくなる。万が一重要ブロックに損傷を受けたのに換える部材がなければどうなる。いきなり計画が頓挫してしまうではないか。

 

 時間との勝負だ。

 コロニーは大きい。すぐに有効射程内に捉えられてしまうだろう。そこまで近づけさせる前に、できるだけ早く、一機も逃さず討ち取らねばならないのだ。

 

「緊急出動だ! ガトー、できるだけ早く叩き落とせ!」

 

 俺がそう命じるやいなやガトーらは素早く出撃していく。しかしもう戦闘は始まっていた。

 このマハル・コロニー周辺をパトロールというか、たまたま酔狂にも外側から故郷を眺めていたいと思った海兵隊たちが外に出ていたのだ。

 

 

「なめたマネされたもんだね。このマハルに傷一つ付けさせるもんか!」

「どうします、お頭」

「もちろんすぐ出るよ! 返り討ちにしてやる。どんな魂胆で襲ってきたかなんて関係ない、マハルを狙ったら命はないと思いな。あのサラミスも連邦MSも、ここを墓場にしてやるさね!」

 

 ザンジバル級リリー・マルレーンから出撃した海兵隊のガルバルディ改たちは一気に迫り、必殺のビームを浴びせて混乱させると直ぐに切り込みをかける。

 襲撃してきたジム・クゥエルたちもそれなりに信念があり、能力も戦術もあった。だがしかし、マハル・コロニーを守る海兵隊の圧倒的気迫に敵うはずなどない。あれよという間に数を減らしていく。

 それでも苦し紛れにコロニーへ向かって数発は撃ってきて、俺はヒヤリとしたが幸いにも当たることはなかった。

 ガトーたちが合流した時には最終局面、そのまま全滅させた。

 

 無事にマハル・コロニーは地球圏を離脱し、次第に地球も月も小さくなる中、はるか彼方の土星を目指す。

 先のことは分からない。

 しかし冒険であることだけは間違いない。

 

 

 

 

 --- そして7年が過ぎ去り、宇宙世紀は0088年に入る。

 

 

 連邦は終戦時の協定で、月面フォン・ブラウン市へ政府機構を移転させることに合意している。それに従い、徐々にフォン・ブラウン市は拡充され、この頃には人類の中心地の形を成してきた。

 

 一方のジオンもまた約束通り共和制へと移行し、もう公国ではなく連邦内の一地区となっている。実際は高度な自治権を持ち、独自の政府活動も可能、自前の士官学校と警備軍を用意することもできる内容である。

 その名は、サイド3のかつての名前であるムンゾに戻ったわけではなく新しい名が付けられた。

 しかし何のことはない、その名もZodiac Extension Of the Nearside、つまりコロニー群としては最も地球から遠く、そして逆に月面の政府からは近いという意味だ。もちろんこじつけの屁理屈なのだが、こうしてジオンという名を使い続けることになる。

 

 

 そして肝心のジオンの政体では新しいところがある。

 

 二つの議院が改革の主軸として設けられた。

 議院制度は地球連邦からの要請なのだが、以前ギレン総帥が機能停止させていた議院をそのまま再開したのではない。キシリア・ザビはジオンの事情に合わせてアレンジした議院制度を作った。

 

 一つの議院は一般民衆の中から選ばれる市民院であり、これは分かりやすい。

 もう一つは、サイド3六大家やその他の名家、豪商から構成される貴族院である。ザビ家やカーン家、ラル家などは誰しもが文句なく認める貴族であり、もちろん議員になる。

 

 それらの他、ひときわ目を引く者がいた!

 ジオン・ズム・ダイクンの遺児、アルテイシア・ソム・ダイクンである。

 

 シャアは政界に出ることはなく、シャアはシャアのままで押し通した。

 時折はサイド3に帰るものの、基本的には任されたアクシズの発展に力を尽くしている。もちろんシャアのカリスマを惜しむ人は多いが、本人はその方がいいとした。

 そしてシャアと共にいるララァ・スンもそれに同意しているのだ。

 

「ふふ、シャア少将がいるところがわたしの故郷」

「ララァ、しかし不自由に感じていないか」

「どうせクスコ・アルのお姉様もいないし、人の多いズム・シティなんかよりアクシズがいいわ。本当なら二人だけで山にでも住みたいくらい。人の思念が多いところは嫌だもの」

 

 だがシャアといえどダイクンの名を消し去ることまで望まなかった。そこで、自分の代わりに妹のセイラを元のアルテイシアの名で登場させたのだ。アルテイシア自身は当初気乗りしなかったが、本来の気の強さが良い方向に働き、若くとも立派に貴族院議員が務まっている。

 

 しかし、いずれは全面的に二つの議院へ政治をシフトさせると確約しているのものの、その移行はゆっくりである。未だこの時点では執政官という新しい地位にいるキシリア・ザビがジオンの政治の大半を差配している。

 一方のドズル・ザビは統帥兼士官学校長というあまり権力のない立場にいるのだが、本人は何も気にしていない。戦争でなければキシリアの方が万事上手なのだと分かっているし、おまけにこの頃は可愛い娘のミネバを見るのに忙しいのだ。

 

 この形でジオンはうまく回っている。

 

 

 

 そんなある日のこと、ズム・シティで華やかな夜会が開かれた。

 

 貴族院の面々を呼び、マハラジャ・カーンの私邸で行われたのだが、それには二つの意味があった。

 一つは祝事のためだ。

 

 先日、ジオンは元から仲の良かったサイド6と幅広い協定を結んだのだ。新コロニー建造、資源採掘などについて幅広く共通規格、共同生産にすることと、また農業でも工業でも効率的な分担を図ることで合意した。

 これは事実上の経済的合併である。

 今後は人事交流もいっそう進み、ほぼ垣根がなくなると見込まれる。

 そこへ復興途中のサイド5も加わった。元々人口は少なく、使えるコロニーはわずかだったサイド5だが、デブリを片付けテキサスコロニーを修復してからは最も急速に発展している地区である。地球にも月にも近いという好適な位置関係がそれを後押ししているのだ。

 

 こうしてサイド3ジオンとサイド5、サイド6の三つが蜜月の時代を迎える。

 

 

 そして今日の夜会にはもう一つの目的がある。居並ぶ面々にとってはこちらの方がより重要なことだ。

 今や工業界でアナハイム・エレクトロニクス以上の規模と影響力を持つブッホ・コンツェルンの総帥シャルンホルスト・ブッホが来賓することになっている。

 

 

 

 




 
 
 
切りが悪いのでエピローグ7年後に入っています
次話がエピローグ7年後の2、本作品で最も重要なエピソードです

その後、エピローグ50年後、コンスコン最後の戦いをもって完結いたします
終わりまでどうかお楽しみ下さい!
 
 
 
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