コンスコンだけど二周目はなんとかしたい   作:おゆ

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余話 50年後 ~ 開拓の発展 ~

 

 

 俺が地球圏から土星開拓に出発し、50年が過ぎ去った。

 

 もちろん開拓団を乗せたマハル・コロニーは出発から予定ちょうどに土星に到着、そして土星の輪に付かず離れずの周回軌道に乗せられた。

 

 それ以来苦闘しながら、幾多の危機を乗り越え、なんとか開拓を進めたと言いたいところだが…… 

 特に苦労らしい苦労はなかったのだ!

 

 申し訳ないくらいである。

 

 やはり土星の輪から簡単に氷と鉱物が得られるのは大きい。

 つまり水や酸素に不自由することは一切ないということだ。コロニーというのは水などを高度に循環し、できるかぎり節約するものだが、さすがに工業用水は廃棄するのでその分の補給が必要になる。それを気にしないでいいのは、地球圏のコロニーと比べてもずっと条件がいい。

 水とヘリウム3というエネルギーがあれば、当然食糧生産も順調だ。

 唯一の誤算といえば土星の衛星タイタンは役に立たなかった。タイタンはとても大きく、しかも大気を持つ衛星である。そのため基地を作りやすいと期待したのだが、逆に嵐がひどくて降り立つのが難しかったのだ。それになまじ大気があると低温が余計厳しいものになる。まあタイタンを使わなくともヘリウム3自体は土星からいくらでも調達できる。

 

 たった一度だけトラブルらしいものがあった。それはコロニーに光と暖かさをもたらす主反応炉の故障である。むろん緊急用の補助反応炉に切り替えたが、土星圏の光では太陽電池の出力が頼りないため、それを加えてもギリギリになってしまう。

 しかし、短時間のうちに無事解決することができた。

 それは今や技術部門を任せているフランクリン・ビダンが故障原因を的確に見抜いたことと、アナハイム・エレクトロニクス社からこの土星開拓に応募してきたメカニック、エマリー・オンス、ミリィ・チルダー、チェーン・アギたちが優秀だったことによる。

 

 

 人々は今も明るい表情をして開拓にいそしんでいる。

 

 コロニーの大きさがあると生活は快適であり、狭さを感じることはない。そしてこの人口では街にも賑わいがあるので、地球から遠いという寂しさを意識しない。何より食糧があれば人の心にもゆとりがある。そのため心配した暴動や分裂は生じないで済んだ。

 おまけにこの開拓団は男女比が非常に適切だったのだ。

 まあしかし、人間であるからには特定の人物に集中してしまうのは仕方のないこと、その騒ぎについては…… 考えないことにしよう。

 

 

 人口も予想以上に増えつつある。この50年でついに一千万人の大台に乗った。

 コロニーが手狭になる前に、多層化の改装を進めていくか、土星の輪の岩石にもっと基地を造るか、それとも新しいコロニーを建造するか検討したが、意見の圧倒的多数が新コロニー建設だった。そのための資材も生産力もあるのだ。決定打はフランクリン・ビダンが、互いに逆回転するコロニーを連結することで安定性を増すというアイデアを出したことによる。

 

 もう二番目のコロニーは完成し、人の移動を待つばかりになっている。

 

 そして気の早いことに三番目のコロニーの建設まで着手しているではないか。

 建設現場には多くの工事用MSたちが働き、資材の運搬や接合をしているのが見える。驚いたことに土星圏で生まれた子供たちはまるで自転車を乗るようにMSを乗りこなすのだ。凄いな。

 

 

 いや、MSといえば、この土星開拓に子供ながら加わってきた者たちはとうに大人になり、そしてMSパイロットとしても優秀だった。

 もちろん途中には色々あった。思い返すと当初、さすがに子供ばかりの生活をさせるわけにもいかず、集めて監督兼世話役を置くことにした。それには料理も上手く、子供好きなキャラ・スーン学徒兵を当てたのだが…… 何というか子供たちは元気だったのだ。

 

「おとなしく待ってな! ご飯はまだだよ! つまみ喰いする奴は許さないからね!」

「うわあ、ケチ!」「ケチのおっぱいオバン」「年増!」

 

「何だって! 誰だ今言ったのは!!」

「ギュネイだ!」「俺じゃない! ジュドー、お前って奴は……」

 

 憎まれ口を叩く子供らとキャラ・スーン、それも仲がいいからだ。

 

 子供といえば、やはり気になる者たちがいる。

 むろん、マハラジャ・カーン准将から託された十二人の子供たちのことだ。どんなものかと思ったが、さすがに年齢が上がるとプルプルーとは言わず、落ち着きが出てくる。体力だけは異常に高いのだが、別に攻撃的ではなく、普通の人間だ。それでよかった。

 

 それもこれもみな懐かしいな。今では子供たちも成人どころか中年を通り過ぎている。

 あ、結局のところMSに乗れないのは俺くらいなものじゃないか?

 

 

 ちなみに俺自身はもはや軍の指揮官ではないのだから、もうコンスコン大将とは呼ばれていないが、かといって総帥などと畏れ多い名では呼ばれたくない。

 そのため、「代表」という名に落ち着いた。

 俺はコンスコン代表と呼ばれている。

 実際は調整のためにあれこれ言ったり走り回ったりする損な役どころだ。

 そういう俺を周囲は温かく見守っているのかどうかは定かではないが、しかしねぎらいという意味なのか、新コロニーが竣工した今、最初のこのマハル・コロニーを何とコンスコン・シティと改名するそうだ。それについて元のマハルの住民たちさえ大いに賛同しているというのには驚いてしまう。俺の銅像を建てることは、さすがに冗談だと思ったが一応断る。第一、そんなものを建てるならガトーの銅像でも立てれば材料費が半分で済むかもしれない。

 

 

 

 さて、地球圏とは初期のころにはしばしば連絡を取っていた。

 しかしお互い光の速さでも一時間かかる距離、リアルタイム通信はできず、ビデオメールでのやり取りになる。

 

 そこでいくつかの地球圏の動きを知った。

 

 特に俺が知りたかったのは、むろん戦争や動乱のことだ。

 土星圏は安定して発展を遂げているが、果たして地球圏はどうなったのか。戦争などせず、皆は幸せに暮らしているのだろうか。

 

 幸いにして、人類を二分するような大きな戦争は起きなかったようだ。

 むろん細かな諍いはあるし、テロも収まらないが、存亡にかかわるほどのことはない。

 

 

 それでも一度は艦隊を動員せざるを得ない動乱があった。

 

 俺が地球圏を離れて十五年後、ゾルタン・アッカネンの乱というものだ。

 これは裏にハバロやカイザスといったギレン思想の文官がいて、密かに支援をして始まったことだが、おまけに連邦へ支配力を強めようとしたルオ商会にまでつながっていて意外に根は深かった。

 だが、その全ての影にサイド3の発展を快く思わないサイド2の思惑があり、全てをデザインしたと言われるが、そこまで明らかにすることはできなかった。

 

 ともあれゾルタン・アッカネンは真のジオン主義なるものを引っさげて乱を起こし、あろうことか連邦側ではなくサイド3ジオンの中枢を押さえようとしたのだ。サイド3は慌ててカスペン少将に迎撃を命じたり、シャア少将をアクシズから呼び戻そうとしたのだが、一手遅かったことは否めない。

 

 だがここで何と連邦軍が出動し、その乱をすみやかに片付けた。

 

 もちろんそれに当たったのはグリーン・ワイアット元帥である。

 

 ワイアットは単なる力押しはしなかった。持ち前の洞察力を活かし、細かなところまで見通して相手の弱点を突く。

 ゾルタン・アッカネンの副将格であるレズン・シュナイダーに接近し、裏取引を持ちかけたのだ。レズン・シュナイダーは好戦的ではあるが決して虐殺が好きなわけではなく、アッカネンの無駄な虐殺を伴うやり方についていけないものを感じていたところ、グリーン・ワイアットの話に乗ってきた。

 

 そうやって分裂させ、戦力を削いだ上に、ワイアットは付け入る隙の全くない艦隊戦でゾルタン・アッカネンを片付ける。

 最後はアッカネンの尋常ではない個人技に手こずってしまったのは確かだが、それはちょうど連邦軍でも歴戦のサウス・バニングらのパイロットが第一線を退き、養成機関などへ移ってしまった時期だからだ。代わって主軸になっているケーラ・スゥ、サラ・ザビアロフといった新しい世代のパイロットが奮闘するも、能力はともかく実戦経験の薄さを突かれ取り逃がしそうになる。だが、サイド4出身のメカニックからパイロットに転じてきたバナージ・リンクスという若者の活躍によって、ついに仕留めることができた。

 

 世間はグリーン・ワイアットが鮮やかに表技も裏技も駆使し、最小限の犠牲で乱を収めたことに目を見張った。

 連邦随一の知将は健在だったのだ。

 そして世間は二度驚くことになる。ワイアットはその戦いを最後にして政界へ転じることを表明した。このまま軍にいても連邦の腐敗は止められず、それを正すためには政治の世界に入るのが一番とワイアットは思い始めていたからである。

 

 

 ワイアットがそうした頃、もう一人の軍属が政界に転じた。

 それは、かつての戦争でジオンを地球表面から叩き出すのに大いに貢献し、その後も幾多の会戦で活躍した伝説の強襲揚陸艦ホワイトベースの艦長だったブライト・ノアである。人気と知名度により、議員の一端になるのは確実と言われた。

 

 そしてブライト・ノアはグリーン・ワイアットとほぼ同じ主張を持っている。

 連邦政府の腐敗と既得権益化を防ぎ、地球とコロニー群の調和のとれた発展を目指すものだ。そうしなければ人類は先細りになり再び戦乱が起きてしまうという危機感がある。

 

 

 お互いそれを確認するべく、二人はグリーン・ワイアットの私邸で会談を持つ。

 ブライトがそこに到着すると意外な人物が門のところで待っていた。

 

「ブライト・ノア元中佐ですな、歓迎いたします。どうかこちらへ。広間でワイアット様がお待ちです」

「こ、これは、ステファン・ヘボン中将……」

「もう中将ではありませんよ。私も軍属は辞めました。ワイアット閣下が辞めたと同時に。一生ワイアット閣下の副官のつもりでしたので、今度は秘書長として」

 

 ブライト・ノアは案内され、広間でグリーン・ワイアットと会い握手を交わす。そして話してみるとやはり思想が一致していると知る。

 

「どうかな、これはアッサムの逸品だよ。上品なコクを感じてもらえればありがたいのだが」

「いい紅茶だと思います。ワイアット閣下、いえワイアット議員、しかし知っておくべきなのはこの紅茶を楽しめるのも平和と地球環境の保全がなされてこそ」

「おお、そうだよ。その通りだ。そのためには連邦政府を常に見張る者が必要になる」

「全く、その通りでしょう」

 

 

 その会談中、ブライト・ノアと共に来ていたハサウェイ・ノアは別室にて待たされていた。

 後でワイアットに紹介されるのだろうが、重要な会談中は同席できないからだ。

 ハサウェイはソファーでおとなしく本を読んでいたのだが、ふと目を上げると1メートルもない距離に女の子がいるのに気付いて驚く。

 

 それは豊かな緑の髪を持ち、目の大きな少女だった。

 

「今気付いたの? あなたって鈍いのね。私はあなたが門に来る前から分かってたわよ」

「君はなんだい? 僕はハサウェイ・ノア、父の付き添いで来たんだ」

「ふうん、私はクェス・ワイアット。ハサウェイ、退屈でしょ。どこか行かない?」

 

 

 

 

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