コンスコンだけど二周目はなんとかしたい   作:おゆ

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余話 50年後 ~ 戦う意志 ~

 

 

「シロッコ総司令官、思いがけずMS戦の現況はよくありませんな。はっきり言えば負けつつあり、このままではジュピトリスを危険に晒すことになります。今からでも遅くありません。ジュピトリスを土星艦隊の方向から急速後退させ、ジュピトリス以外の艦を使って縦深陣を形成してはいかがでしょう」

「後退して縦深陣? カガチ、そんなことは無用だ」

「し、しかし、ジュピトリスの砲火無しでも艦隊戦では有利になれるのは自明、土星側の艦隊も今、射程外から撃ちかけて対空砲火の邪魔をするだけなのはそのためです。MS戦でまだ踏ん張れているうちに陣形を変えれば勝機はあります。とにかく今のリスクを減らすことが肝要かと」

「いつから戦術指南役になった、カガチ」

「総司令官、今の相手が伝説の戦術家コンスコンであればゆめゆめ戦術を軽視してはなりません」

 

 ジュピトリス中央艦橋では副司令フォンセ・カガチがシロッコに説いているが決して通じているわけではない。

 カガチはシロッコとコンビを組んだのは初めてではなく、それなりにシロッコの高慢さを理解しているつもりだ。今までシロッコの利発さ、特に兵器開発において非凡なところに再三驚かされつつ、しかしその高慢さに辟易させられてきている。

 

 

 それでも今の会戦の状況を考えると進言せざるを得ない。カガチも自分の思う最善の戦術というものがある。

 

「もう一度申しますがジュピトリスの後方退避を願います。他の艦なら戦闘速度で蛇行し、ついでに対空砲火を互いに重ねればMSに易々と取り付かれはしません。しかし、ジュピトリスは小回りが利かない分、取り付かれ易いのですから」

「くどいな。勝てば問題ない。今、ザビーネ・シャルの奴が遅れて戦闘に参加したようだ。少しは役に立ってくれよう」

 

「それこそ危険! 本当に味方なら一安心、ザビーネ・シャル殿の実力をもってすれば蹴散らすのに充分でしょう。技量も一流、戦闘経験も多いザビーネ殿なれば。しかしザビーネ殿はこちら側に何か含むものがあると見受けられ、戦いで手を抜く、あるいは裏切りまでされると一気に旗色は悪化します!」

「カガチ、そうはならん。あのアホウは裏切ることを恥と思う種類の人間だ」

 

 パプティマス・シロッコはそれなりにザビーネ・シャルの性格を把握していた。

 ザビーネは裏切ることはない。

 しかし、裏切るのはシロッコの方だった。

 

「それに、裏切られても別に構わない。いっとき向こうを混乱させる役をしてもらえれば充分だ。いいや、むしろ裏切ってくれた方が後味がいいのかもしれん」

「…… は? 総司令官、それはいったい…… 意味が分かりかねます」

「もうじき頃合だ。あの自律型兵器を出す。それできれいさっぱり一掃してくれる。ジュピトリスを下げて戦術でこそこそ勝つのは面白くなく、思いもしない状況で向こうが慌てふためき、絶望の悲鳴を上げながら壊滅するというまたとないショーを見ない手はないのだ」

 

 シロッコの自信の根拠はこれだった。いよいよ実験兵器を投入する。これにはカガチも納得するわけはなく、引き止めにかかる。

 

「お、お待ちを! あれを使ってしまえば味方のMSも巻き込むではありませんか! 確か敵味方識別ができるまでに至っていないはず。実戦投入するにはまだ早く」

「識別機能など最初から付ける必要はない。それがあればこちらのMSを盾にされてしまうだろうが」

「しかしこちらのパイロットを犠牲には…… 彼らは皆、長い遠征に耐えてきた勇士、いえ仲間なのです!」

「現にMS戦は負けているのだろう。私のバタラ改を預かりながら無様な真似を。木星帝国はドゥガチ総統のお考え通り信賞必罰、負けたものがどうなろうが知ったことではない!」

 

 フォンセ・カガチは唖然として今度こそ言葉を失った。

 

 

 

 その頃、クロスボーンの指揮官用カスタマイズMS、ベルガ・ギロスを駆りながらザビーネ・シャルが言う。

 

「軋轢があったとはいえ、友軍が危機にあれば何もしないわけにはいかない。あの総司令は気にいらないが、いったん木星に救われた身だ。それに騎士として振る舞うのが貴族の務めでもある。まあ、あの総司令官のことだから要らぬ節介と言いそうなものだが」

 

 率いる黒の部隊は幾多の戦いで常に前線にいた猛者たちであり、各々技量は高い。

 ジュピトリスへ向かう土星MSを討ち払うため一糸乱れず急進する。

 

 今の状況は、土星の先遣MS隊十機が最もジュピトリスに近付いている。

 ついでジュドーら五機ほどが遅れて続く。十二姉妹やキャラ・スーンを含むその他は木星側のMS隊を相手取り、足止めする役に専念している。

 そこを無視してザビーネ・シャルらが通過しようとしたのだが、気付いたキャラ・スーンが慌てて妨害しようと進路に出てくる。

 

「ガキどもに手出しはさせないよッ! 母ちゃんが守ってやる」

 

 そういう意気込みがある。

 

 だがしかし、一瞬だ。

 いともあっさりキャラ・スーンのジャジャが斬り払われてしまったではないか!

 なんとか脱出はしたようだが歴戦のキャラ・スーンがほとんど何も成し得ないほどの速さだった。

 

 これを見てしまったジュドーが黙っているわけがない。

 

「何をしたんだッ! お前はーー!!」

 

 それだけを叫ぶと、先行していたのに自分だけは引き返す。他は先に行かせる分別はあった。自分はすぐさま黒のMSたちと戦闘に入り、お返しとばかりに何機か倒す。

 機体性能の差などジュドー・アーシタにとって意味はない。

 ついに隊長機らしき姿を見つけて戦いを挑む。

 

「土星のこのMSは何だ? 侮れない気合いと強さだ。いいだろう、騎士として戦いたいのであれば、このザビーネ・シャルが存分に相手をする」

 

 少し戦えばジュドーが並の相手でないことくらいザビーネにも分かる。

 しかし、だからこそ面白い。強敵と戦うのは誉れであり、それこそクロスボーンの誇りの依って立つところだ。

 

 

 

 一方、十二姉妹の奮闘によって木星MSはだいたい片付けられ、ここの戦闘が終わりに近付いている。MS戦はなんとか土星側の勝利に終われそうだ。

 と思った瞬間、誰も想像もできない恐ろしいことが起こった!

 

 木星側が満を持して出してきた大量の「ある物」が迫ってきたのだ。

 

 

 あろうことか、「ある物」は未だ残存していた木星MSたちの方へ最初に接触したのだが、それらを見る間に引きちぎり消滅させてしまう。傷付いたMSにも容赦なく、また無傷のMSよりも速い。

 

 十二姉妹のクシャトリアⅡは驚くほかない。

 

 続いてクシャトリアⅡの方へ迫ってきたのだが、それらは何と多数の円盤状の機械だった。大きさは人より大きく、MSよりは小さい、明らかに無人の機械だ。それが恐れもなく群れをなし向かってくる。

 もちろんこの未知の物に対しても十二姉妹は反応し叩き落としにかかる。だがそれでも対処しえなかった。

 

 十二姉妹の鉄壁の連携は崩されてしまう。

 

 勝手が違うので戸惑ったこともあるが、とにかく数が多過ぎる。各々がファンネルを全数展開し、更に本体でビームサーベルを振るい、ようやく対抗できるレベルだ。操作の負荷がぎりぎりまで上がり、疲労のため一手誤れば即座にやられてしまう。

 この機械兵器のために形勢は逆転されてしまった。

 

 やがて姉妹が一人、また一人と疲労から隙を突かれ、大破して脱落していく。

 もはや半分にまで減り、もちろん残された者は更に大変だ。

 

 

 だがしかし、それでも闘志を衰えさせないのは十二姉妹の末っ子だった。

 

 実は土星艦隊がこの会戦のために出港する直前、十二姉妹の育ての親ともいうべきスベロア・ジンネマンが危篤に陥っていた。もはや九十五歳の高齢のため寝たきりになっていたのだが、ついに寿命が尽きようとしていたのだ。

 後ろ髪を引かれる思いの姉妹たちに言い残した。

「お前たちの戦いに行くんだ。信じるべきものを信じ、心のままに戦え」

 

 この死闘を展開しているちょうどその時、スベロア・ジンネマンは静かに息を引き取った。

 

 土星圏コロニーの病室で柔らかな光に包まれながら逝った。

 その一生は快活な闘士であり、頼れる指揮官であり、そして何よりも多くの者に父性を見せた生涯だった。

 

 最期は先に逝っている妻ではなく、養女となって共に長く過ごし、多くの思い出を共有しているロザミア・バタムが看取っている。

 

「お父さんがお父さんでよかった。娘になれて、自分の人生を歩けたわ、お父さん。今は本当に幸せの記憶でいっぱいなんだから」

 

 涙と口づけで最大限の感謝を表す。

 その言葉は、お前は幸せだったかと問われたような気がしたので答えたのだ。

 

「今は眠って。ありがとう、お父さん」

 

 スベロア・ジンネマンはロザミア・バタムを娘としてたいそう可愛がっていた。

 それは預けられた例の十二姉妹も同様だったがとりわけ末妹を可愛がり、もちろん末妹も慕っていたものである。

 

 

 

 今こそ父のため、自分のため、土星のため、末妹は死んでも戦い続ける覚悟を見せる。

 

「分かるわ! お父さんが見てる! だったら私は、絶対に、諦めるわけにいかない!!」

 

 涙を絞って立ち向かう。

 だが防戦一方なのは変わりがなく、しだいに機体の損傷は重なっていく。精神力の限りを尽しても物理的な限界点が近い。

 

「まだ、まだ動く!!」

 

 クシャトリアⅡの四枚羽の三枚は失われ、脚部なども破壊された。

 もちろん、残った長女や次女などはそれ以上に酷い有様だ。

 

 

 

 ここで再度逆転したのは別の者たちによる。

 

 一機のクシャトリアⅡ、それがうっすら淡い光を放つ。

 そして宙を漂うファンネルを接収し始める。

 十二姉妹のクシャトリアⅡのものだったファンネルのほとんどはコントロールを離れてしまい、戦場にただ浮くだけのものに成り果てていた。

 それらを集め、改めて戦う武器に戻していくではないか。

 

 それがリタ・バシュタ、元の名はリタ・ベルナルだ。

 

 圧倒的なまでのNT能力でファンネルのコントロールを再支配すると、同時に数十、いやそんな数ではないビームを放つ。

 その火力で戦闘機械を問答無用に封じ込める。

 

「機械は生まれ変わることはないわ。機械は機械らしくここで壊れてしまいなさい!」

 

 

 決定打となったのはまた別の者である。

 この戦闘機械を見ていて気付いたことがあるのだ。

 

「こいつらはまるで群体のように動いている…… 一つ一つがそれほどの性能を持つ? いいや違う。それならコストに見合うはずがないし、連動した動きからしてもそうではない。操っているところがあるのではないか。よく見ろ……」

 

 ギュネイ・ガスは冷静に考える。そして他とは違う機械を見つけ出したのだ。

 

「操っている熱量の高いものはないのか………… 見えた! それがコントロールタワーか!」

 

 

 

 

 

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