コンスコンだけど二周目はなんとかしたい   作:おゆ

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余話 50年後 ~ 大いなる夢を持とう ~

 

 

「カミーユ! カミーユ!! 気が付いてないの!?」

「あ…… ああ、大丈夫、少し気分が悪くなっただけだから。それで、戦いは終わった?」

 

 強力MSを倒すという戦果を上げたカミーユ・ビダンをその妻がなんとか曳航し、帰投に転じていた。

 ジュピトリスを含む木星艦隊はそれ以上何かを仕掛けてくることはなく、既に戦いは終わっている。

 

 

 

 間もなく土星側に通信をよこしてきた。

 

「木星艦隊副司令官フォンセ・カガチである。土星側へ降伏する。ただし、協定締結まで艦艇の保存と、将兵の一定待遇を要求する」

 

 案外素直に木星艦隊は降伏を受け入れた。俺はそれと同時に向こうの司令官パプティマス・シロッコの死を知る。

 

 こちらは木星の艦艇をとりあえず武装解除、土星の輪の近くまで持ってきて係留し、将兵については艦に置くわけにはいかず土星圏コロニーへ移送する。

 

 

 土星圏コロニーに入った木星将兵は一様に感嘆の声を上げた。逆にこちらが驚いてしまったほどである。

 それは全てに豊かでゆとりがあるからだ!

 

 空気や水が制限なく使える、たったそれだけのことが木星将兵にとってみればとんでもないことらしい。

 

 俺は気を良くし、というわけでもないが木星将兵を温かく迎え入れる。

 そこには俺なりの計算というものがある。木星将兵に土星圏のやり方とその結果を知ってもらい、その上で木星に返してやる。

 そうすれば、木星圏でもどうすれば豊かになるのか考える人間が増えるはずだ。

 

 現に副司令官であるフォンセ・カガチという者は思いっきり考え込んでしまっている。今までの木星の方針と、土星のやり方とで整合がつかないのだろう。真面目な人間だ。

 

 一般将兵の中にはもはや木星に帰りたくない者までいるらしい。

 

 ついでにいえば会戦でことごとく勝機を逃して敗けた総司令シロッコは当然のごとく恨まれた。しかし木星将兵たちは豊かな土星に来れたことで逆に喜び、シロッコの評価がむしろ上がったとは実に皮肉だ! シロッコは最小犠牲で敗けに導いたと言えるからである。結局のところ木星の艦隊で本当に沈んだ艦はほぼない。

 

 

 俺が思うに、木星圏で生活が厳しいのは置かれた条件だけのことではなく、やり方にも問題があるんだ。

 

 無理な拡張、無理な工業偏重が首を絞めている。そのためかえって人々は疲弊し、前へ進めないでいる。

 そこをじっくり構え、開発を無理のない範囲内で行うようにすればいいだけではないか。

 ドゥガチ総統は自分が生きているうちに完成させようと思い込み過ぎなのだ。

 計画達成よりも人を大事にする、そんな当たり前のことをしてほしいと思う。

 

 

 

 

 さて、我が土星艦隊は勝利の凱旋をした!

 

「土星万歳!」「見よ、コンスコンの勝利!!」「無敵伝説はまた塗り替えられた!」

 

 市民の喜びは爆発し、盛大にそれを祝っている。コロニーの至る所で花火を焚き、女たちは食べ切れないほどのケーキを並べて大騒ぎだ。今ぐらいそれがいいだろう。もちろん将兵は皆屈託のない笑顔を見せている。

 

 あの十二姉妹だけはそんな輪に加わらず、ロザミア・バタムと共にスベロア・ジンネマンの葬儀を改めて行っている。

 娘たち全員に見送られるジンネマンは幸せ者だ。埋葬はその妻のすぐ隣りである。

 いずれ訪れる時にはジンネマンの娘たちも横に眠るのだろう。

 

 別れは一時、家族はまた魂の姿でいつまでも一緒に暮らすのだ。

 

 

 そんなしめやかな一方で、俺は嬉しいものを見た!

 

 凱旋でお約束のようにジュドーが調子に乗っているのを妹リィナが諌めているようだったが、その上でジュドーの肩をぽんぽんと叩いている者がいたのだ。

 

「ジュドー、よく戦った。実戦で隊長らしいことができたか」

「ケ、ケリィさん! 帰ってたんですか!」

「しかし調子に乗るとまたキャラの母ちゃんからどやされるぞ」

 

 実際はジュドーらが生きて帰ってきただけで、キャラ・スーンは大泣きだったのだが。

 

「ケリィさん、俺もやりましたよ!」

「ギュネイか、お前もよくやった。お前の目は一流だからな。いつかそれが役に立つと思っていた」

 

 

 そうか、帰っていたのか……

 懐かしい。

 以前はガトーなどと共に土星圏艦隊を引っ張っていたケリィだ。そのケリィに会えて上気している者たちとの話が終わるのももどかしく、俺も近付き、そして茶目っ気のある敬礼を受ける。

 

「コンスコン代表、ケリィ・レズナー、戻ってまいりました」

「ケリィ、出発して12年になるのか…… よく無事で帰ってきた」

「コンスコン代表、恨み節ではありませんが、大会戦をやるならもう少しだけ出撃を遅くしてくれたら。ヴァル・ヴァロはいつでも動かせるようにメンテしてますが」

 

 驚いた。そしてとても嬉しい。

 

 俺が会戦に出撃した後でケリィ・レズナーが天王星探検の長い旅路から帰っていたのだ!

 

 少し老けたようだがその快活さは何も変わっていない。

 しかし、間に合っていたら本当にヴァル・ヴァロで同行する気だったんだろうな…… というかなぜ探検にヴァル・ヴァロを持っていったんだ?

 

 それはともかく、探検で天王星圏の詳細は分かった。土星のものより薄いが、その輪は補給物資に使えるもので、その意味で入植は可能といえば可能だ。だが価値のある特殊な鉱物などは期待したほど見当たらなかった。それなら土星圏を上回るメリットはあまりなく、将来は分からないが当面開拓する必要はない。

 

 

 

 さて、一段落ついたら俺はやることがある。いや、ここからが勝負だ。

 

 先ずは木星圏と停戦協定を結んだ。これは当たり前だ。艦隊戦で手痛い目に遭った以上、木星としてもそうせざるを得ず、もちろんしばらく地球に手を出す余裕もないだろう。

 だがしかし、それに満足してはいけない。

 こちらは木星圏としっかり同盟を組まなければならない。

 

 俺は政略の手を伸ばす。

 木星へアプローチする前にやることがある。土星圏は今一度しっかりとサイド3ジオンと結びつくのだ。

 

 

 そのために俺は幾つかの提案を考え、それをまとめた正式な外交文書をジオンに送った。

 

 さあどうなるか……

 しっかりと、そして冷静に判断してくれる人物がジオンにいればいいのだが。

 

 程なくしてジオンから土星圏へ回答のメッセージが届いた。

 俺はこれをザラ君と共に聞くことにする。

 これから政略の場に彼を置いていくことを考えているからだ。ガトーの孫ということを差し引いても見所があり、政略や軍略を学ばせればゆくゆくは土星圏にとって有為な人材になると確信している。

 

 期待と不安のうちにメッセージを開ける。

 

 画面に映るのはジオンのミネバ様、いや議長だった。

 もちろん、ドズル閣下が度々語っていた可愛い可愛い幼女ではない。

 父ドズル閣下というよりも、どちらかというとキシリア閣下のような明快かつ大胆な政治家の姿である。ジオン伝統のデザインが施された緑の服がブロンドの髪によく似合う。

 

 そのミネバ様の他に一人いるのはおそらくバナージ・リンクス、ミネバ様の夫である。

 なんだ、ドズル閣下が心配していたことはなく立派そうな人物じゃないか。

 

 

 話はもちろんミネバ様から語りかけられる。

 

「ミネバ・ザビ・リンクス貴族院議長です。コンスコン大将のことは父から幾度も繰り返し聞いていました。そこには色々なエピソードも含まれ、本当に面白、いえ興味深かったものです。そして父はコンスコン大将は決して間違ったことを言わない人だと語っていたのを思い出します」

 

 照れるな。

 しかし、ドズル閣下は何のエピソードを話したんだ? そこが気になるぞ。

 ザラ君も俺のエピソードを聞きたくて目をキラキラさせているようだがそこは我慢してメッセージの続きを聞いてくれ。

 

「土星圏からのメッセージは確かに受け取りました。そこにあった提案の数々は熟慮に値するものであり、検討してきました。率直に回答を申しますと、こちらジオンと土星圏との連携を見せつけながら木星へ交渉するという提案を良しとします。デメリットはほぼない上、木星圏との協力は喜ばしいことですから。そしてもう一つジオンへのザビーネ・シャルという人物の受け入れ要請も許可します」

 

 

 俺がこうして根回しし、先にジオンと結びつくには理由がある。

 

 これから俺は人類の未来絵図を木星のドゥガチ総統に語るつもりだ。

 人間には夢が必要、そして政治家にはもっと大きな夢が必要だ。

 

 感心はしてくれるだろう。しかし同調してくれるかはまた別の話である。

 

 そこで現実的な第一歩を描いて見せることによって説得力を増してやる。土星、木星、ほぼジオン優勢の小惑星帯、そしてジオンという地球圏の一部があれば、俺の夢であるチェーン発展構想の雛形になるではないか。

 後は直談判で腹を割って話し合い、木星圏の持つ地球圏への妬みを捨てさせ、未来に目を向けさせる。

 

 そしてもう一つ、俺はクロスボーン・バンガードとの遺恨を水に流し、協力関係を築くことも考えている。

 今の彼らにかつてのような全サイドへの征服意図はない。自治が可能な分のコロニー数個があればもう充分なのだ。ならば味方に引き込み、とりわけサイド2と分断した方がいい。ザビーネ・シャルという高潔なエースと、平和的な考えを持つロナ家の生き残りはその旗印になりえる。

 

 

 ただしミネバ様のメッセージはまだ終わらず、重大な言葉が続いていた。

 

「むしろコンスコン大将の考える構想を早急に形にするのを望みます。今や地球圏ではサイド2の勢いが止まらず、サイド1、5、7を従え、先頃ついにサイド4まで服属させました。もはや人口では人類の半数に達し、そして公然と軍事組織ベスパというものまで作っています。それに対し月面の連邦政府は恐れが先に立ち見て見ぬ振りをするばかり、逆に連邦軍の一部は反スペースノイドの強硬派が台頭し、暴発の可能性すらあります」

 

 やはり、というべきか……

 

 地球圏には不穏な動きが渦巻いていたのだ。しかし、歴史というのは下らないほど繰り返すものだな。

 

「お願いです、コンスコン大将。万が一サイド2か連邦が実力を行使すれば大乱になります。ジオンの戦術指南を頼めますか」

 

 

 

 俺はこれまで自分がやってきた戦い、本国会戦や第三次ルウム会戦なんかを振り返ることはない。

 今まで出会ってきたドズル閣下、キシリア閣下、デラーズ少将、シャア少将、マ・クベ少将も同じだ。愛すべき敵、ヘンケン・ベッケナー、サウス・バニング、グリーン・ワイアットなどをゆっくり思い返すこともない。あ、白い悪魔のことは忘れてしまえ。

 そしてガトーやツェーン、クスコ・アル、シャリア・ブル、ダリル・ローレンツたちとの長い長い思い出に浸るのも先でいい。

 

 俺には、まだまだやることがあるじゃないか。

 

 

 俺の名はコンスコン!

 ジオンの将にして宇宙の平和と幸せの未来を願う者。

 最後までそのために力を尽くすのだ。

 

 

 

 

    -   完   -

 

 

 

 

 




 
 
 
 
ここまで長いことお付き合い頂き、ありがとうございます!

「コンスコンだけど二周目はなんとかしたい」
ここで完結します

皆様の温かい支援と誤字報告に支えられ、なんとか完結まで漕ぎつけられました
特に難しかったガンダム特有のMS関連の事項について教えて頂き感謝します

さて、コンスコン、命尽きるまで皆の幸せのために頑張るのでしょう


本作品の動機はガンダムの幸せになるべきキャラを幸せに、でした
それを感じて頂ければ幸いです
 
 
Q&A

Q:結局ガトーさんのお相手は?
A:作者にも不明です。選ばれる人がいるということは、他の人は選ばれないということでもあり、その騒動の記述は避けました
おそらく名前の変わっていないクスコ・アル、レコア・ロンドは脱落、ツェーンもおそらく違う、となれば残るはセシリア、エマリー・オンス、シーマ様でしょうか
自由に想像して下さい


Q:この後のサイド2はどうなるの?
A:コンスコンの策が成って土星と木星は手を携え、それらとサイド3の連合は際どいところでサイド2の攻勢を凌ぎ切り、その野望を阻みます
ザビーネ・シャルとフォンセ・カガチは土星圏の優しい世界を目の当たりにして考えを変え、その後地球圏に行き、今度はコンスコン流の大きな夢と平和のために尽くします
マリア・ピァ・アーモニアについては、たぶんカガチさんが救って平和な教団になるでしょう


Q:コンスコンさんはもう一周?
A:作中にわざわざ記述したのは、「コンスコンだけど三周目もなんとかしたい」に作者が行くのを抑えるためです。気がついたらSEED世界のコンスコンさん、などはありません

と最初は思ってたんですが…… 実は続きが……
 
 
 



 
 
 
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