コンスコンだけど二周目はなんとかしたい   作:おゆ

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第十八話 MS戦へ

 

 

 俺が最善のタイミングで出撃できたのには理由があった。

 ア・バオア・クーのジオン軍全体が連邦に対して合理的な迎撃態勢をとれたことも、全く同じ理由だ。

 

 原因は一つにつながっている。

 ア・バオア・クーの中央指令室、ここで何とも暗い争いがあった。

 

 

「ソーラ・レイ発射されました…… レーザー光、ゲルトルバ線上を直進」

「そうか、成功したか、それは良い。戦果はどうなった?」

「レビル将軍の連邦本隊に直撃、ほぼ壊滅させました。しかし……」

「どうした。ソーラ・レイは成功した。他に問題は無い。あるはずが無い」

「し、しかし総帥、先ほどから報告が入っていたグレートデギン、識別信号消失しました! おそらく連邦本隊と同時に……」

「そのことか。大したことではない。まったく父上にも困ったものだ。慣れないことをするから、ジオン艦と連邦本隊をうっかり間違えて接近したのだろう。結果として不幸な結果ではあるが、射線に入ってしまったのはただの事故だ」

「じ、事故、でしょうか」

 

「そうだ! 士気を落とさないため、取りあえず兵士たちには釈明をしておかねばならんな。そしてこの戦いが終われば父上にも国葬とは、なかなか忙しい」

 

 それでも戸惑いが隠せていないオペレーターとギレンとの会話が終わる。

 わずか一分後、中央指令室にキシリアが入ってきた。すぐさまギレンに問いかける。

 

「兄上、グレートデギンはどこに配備されました」

「…… 沈んだよ。突出し過ぎてな」

 

「この父殺しの男がッ!! それをつまらん誤魔化しで隠すとは!」

 

 

 一触即発の雰囲気だ。

 しかしそれはもう一人の男の一喝で消されることになる。

 

「キシリア! 気持ちはわかるが、ギレンの兄貴に何かしてはならん。仮にも兄弟だろうがッ!」

 

 その男はドズルだ。キシリアに一瞬遅れて入ってきていた。

 ドズルは知っている。

 キシリアは小賢しいが、昔から父デギンのことになると激情を発するのだ。今、ギレンが父デギンを斃したと思って感情を出している。しかもキシリアの手に小銃があるのが見えているではないか。

 

 ドズルはひとまずキシリアを抑えた。

 

 そうせざるを得ない。

 ここでザビ家内部の争いが起こったら最悪のタイミングだ。

 司令部が機能を失い、乱れた指揮系統のまま連邦との一大決戦に臨めば、勝てるわけがない。ただでさえジオンは敗色濃厚なのにあっさり自滅だ。笑い事にもならない。

 

 このままア・バオア・クーで敗ければ、ジオン公国は滅ぶ。

 ドズルは連邦に勝たなくては話にならないことを分かっている。

 ただしキシリアの気持ちはよく分かる。ドズルとしても父の死は衝撃的で、兄ギレンが限りなくクロであることがやり切れない。

 

 ところがギレンはキシリアが銃を下ろしたのを見ると、逆に態度を硬化させた。

 

「トワニング、ドズルとキシリアは公王を事故で失ったショックで取り乱している。ここにいたところで、二人には何も任せられん。指令室から退室してもらえ」

 

 

 しばらく考えていたドズルが、そのギレンの声で意を決した。

 諭すような声でギレンに話す。

 

「ギレンの兄貴、それは違う。ここは逆に兄貴が指揮を離れてくれ。そして、頼むからおとなしく拘束されるんだ。事の真偽がはっきりするまでは。そうしたくてするんじゃない。なに、本当に事故ならどうということはない」

「何だとドズル!! 総帥たる私を拘束だと! そんなことが認められるものか」

 

 ギレンは見誤っていた。自分は今まで権力を拡大させ、ジオンの総帥にまで昇りつめている。

 そして、家族の間でも君臨するのが当たり前だと認識していたのだ!

 頭が良く、しかも抜きんでて政略眼を持っている。勇猛なだけのドズル、考えの小さいキシリア、優しくも甘いガルマ、これらを統率してきた。自分がトップであることがもう当然だと思っていた。

 しかし、それは決して兄弟たちから尊敬を受けていたためではなかったのだ。まして敬愛ではない。

 ドズルでさえギレンを立てて愚直に従っていたのは、ギレンが長兄であるからという理由だけなのである。

 

 

 ギレンはようやく現状を認識する。ここに至って、デギン公王を謀殺したことが致命傷になるのか。自分ならどうにでも押し切れると思っていたのに。

 

「どうしたトワニング! ドズルとキシリアを退がらせろ。早くせんか!」

「…… 恐れながらここはドズル閣下とキシリア閣下の仰りようも、それはそれで理があるかと……」

「何! 寝返るのかッ、貴様まで!」

 

 その時、硬直していた指令室のオペレーターが急を告げる。

 

「あ、連邦軍動き出しました! 直進してきます! 進行方向Nフィールド、戦艦巡洋艦、多数接近!」

「ついに来たか。連邦め。ドロスの隊に連絡、MSと砲台で迎撃する。MSは順次発艦、岩礁を利用して艦砲を避けつつ前進」

 

 オペレーターに応えて指示を出したのはドズルだ。

 ギレンは指令室から外された。一旦謹慎し、後でズム・シティへ移送することとされた。

 

「キシリア、俺は取りあえず迎撃の指揮を取る。もちろん最善のことをするつもりだ。しかし俺だけではとても手が足りん。戦局を見ながら頼むところが出るだろう」

「……ギレンの兄に、甘すぎる! 父上は殺されたのだぞ」

「キシリア、そのことは置いておけ。もう戦いは始まっているんだ」

 

 

 こうしてア・バオア・クーの戦いはドズル・ザビ中将が主役となる。

 

「先ずは総戦力の把握と、配分か。いや、先にコンスコンを出撃させておこう。奴ならば自分でなすべきことを判断できるだろうからな」

 

 

 

 またしてもサラミスを屠った。もう何隻目だろうか。

 俺はこのコンスコン機動部隊を率い、連邦の巡洋艦隊に多大な出血を強いていく。

 

「連邦艦隊と平行になるよう進路をとり、増速! 砲撃戦に引きずり出してやるぞ」

 

 さんざんに叩いてやれば、連邦としても注目せざるを得ない。

 この面倒な艦隊を潰そうと本気を出してきた。

 連邦の戦艦隊が動き始めた。それに加え、MS部隊まで繰り出してくるようだ。

 

「サラミス、これで九隻撃沈、三隻大破、凄い戦果です。コンスコン司令。こちらはムサイ四隻中小破だけなのに」

「副官、そろそろ退くぞ。引っ掻き回す役割は充分に果たした。連邦は歓迎会の準備をしてくれているようだが、あいにく出席はせん。この艦隊はまたNフィールドの主戦場に戻る」

 

 そしてコンスコン機動部隊は連邦艦隊から距離を取り直す。

 連邦が繰り出してきた大量のMSを艦の速力で振り切っていく。MSは短距離での敏捷性はあるが、充分に加速をつけた艦の速力についてこれることはない。

 そして俺の艦隊は再び回りこみながら、ア・バオア・クーに戻るコースをとる。

 

 だがしかし、その目論見は叶わなかった。

 思いがけないところに連邦の大部隊が控えていた!

 

「な、何だ!? ここにも連邦が、こんなに多く…… 連邦はいったいどこまで戦力があるんだ! こいつはしかも、単なる増援じゃない。ここから直進すればSフィールドか。そうか、連邦め、同時波状攻撃を狙っていたか」

「司令、どうします? 再度大きく外側を回り、Eフィールドから戻りますか?」

「そうなるとかなり時間がかかる。陽動を仕掛けたつもりがただの遊兵になるとは、この艦隊は笑えない道化になるぞ。やむを得ん、強行突破する」

 

 俺はそう判断してすり抜けようとしたが、そうはいかなかった。

 ここにいた連邦の部隊には思ったよりずっと空母が多かったのだ。しっかりとMSの網を張ってこられた。これは多少の覚悟が必要だ。

 

「MSが多いな。これでは艦に取りつかれるのは避けられん。どうしても排除が必要だ。こっちもMSを出すぞ!」

「各艦、MSいつでも出せるそうです!」

「よし! ガトー、ゲルググ出ろ! 機先を制して叩け!」

 

 

 俺の艦隊はここからMS戦に移行する。

 

「クスコ・アルはガトーの支援だ。ツェーン、艦隊の直掩に付け! シャリア・ブルは撃ち漏らしを見つけ、機動的に排除しろ!」

 

 MS戦は目まぐるしい。同時多発なら猶更だ。

 緊張して見守る。もちろん連邦のMSは数多い。だがこちらのMSの方が質という一点において大幅に上だ。

 

「ガトー機、撃墜数6、7、8! い、いえ10! 圧倒しています!」

「よし、さすがはガトー。他はどうだ」

「後衛ムサイに取り付きそうになったMS、排除に成功! ツェーン機、接近戦で叩きました!」

 

 これで行けるか!

 いや、そこまで甘くなかったな。

 やはりこうなる、というべきか。

 連邦のMS隊の中に、白いMSが見える。クスコ・アルの話によるとガンダムという名があるらしい。

 ついにこの艦隊に向かって迫って来た。

 

 ん? これまで何度も見た奴とわずか違う気も……

 しかし、その速度、只者でない雰囲気は同じだ。

 

 

「白いMS、艦隊中央部に急速接近! あ! カヤハワ機のドム、大破しました!!」

「何! カヤハワが!」

「しかし、生存信号はあります。通信は壊れていますが意識あり!」

「急いで救助だ! カヤハワを何としても助けろ! それでガンダムはどこへ」

「更に艦隊へ接近、しかし既にシャリア・ブル機のギャン、向かっています!」

 

 

 そのガンダムの中では、パイロットが通信を受けている。

 

「バニングからガンダム三号機へ、突出し過ぎるな。ベイト、アデルを待て」

「こちらコウ・ウラキ、了解。しかしジオンMS接近!」

 

 

 

 それと同時刻、ア・バオア・クーのベイでは一組の男女が会話をしている。

 

「大佐、もう出撃ですか?」

「ああ、早めに出ておかないと、あのデカいモビルアーマーに乗せられそうだからな」

「ふふ、悪辣ですね。だから今のうちゲルググで出てしまうと」

「用意してくれたのは嬉しいが、正直持て余すな。誕生日に一抱えもある甘いケーキを送られた気分だ。出るならゲルググの方がいい。第一、パーソナルカラーにしてもらったゲルググを残しておいても、誰も使わないだろう」

 

「大佐、お願いがあります」

「何だい、ララァ」

「出撃にノーマルスーツを着ないで出て下さい」

「なぜ? 私はそれで構わないが。しかしララァはいつもノーマルスーツを着るようにうるさく言うじゃないか」

「今回の出撃は、わたしが一緒だからです。大佐に誰も近付けさせはしません。一機たりとも。絶対に」

 

 

 宇宙は、混迷の色に染まる。

 あらゆるものを巻き込み、更に深く。

 

 

 

 

 

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