コンスコンだけど二周目はなんとかしたい   作:おゆ

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第三十三話 ジオンの反転攻勢

 

 

「ジオンの明日を担う若者が何より大事、か。そうだな。カスペン准将の言うことにも一理ある。MSは速やかに新型機へと切り替える。今の生産ラインとの整合性は度外視していい。一時的に生産が止まることになっても構わん。どのみちジオンの生産能力は限られている以上、どんなに効率よく生産したところで連邦の物量に勝てるわけがない。それなら技術を特化し、いわば鋭い針のようになるしかないのだ。俺は戦いは数という考えを曲げるつもりはないが、今はそうせざるを得ない。そして連邦は物量もあれば、ガンダムという特別機もある。ただしガンダムを数多く揃えることは連邦といえど無理だ。そこをジオンは突く」

 

 次にドズル閣下は驚くべきことを申し渡した。

 

「マ・クベ准将、新しい機体の選定と生産準備を任せる。いちいち全員を集めて選定の議論はせん。マ・クベ准将に任せるといったら全て任せる。急いで進めろ。そしてもっとMSの性能を上げるため、先々の技術開発も怠るな」

「は、はっ!! ドズル閣下、確かに承りました! ではガルバルディ、ドワス、アクト・ザクの選定と量産を急いで」

 

 ドズル閣下もぶっ飛んだことを言う。

 任せるといってもその重要性は計り知れない。

 確かにこれが考えられる限り最速のMS開発・生産体制だ。貧弱なジオンの国力でも開発速度で負けるわけにいかない。

 マ・クベ准将はとても嬉しそうだった。

 やはり、新しいものを開発するのは楽しみだ。そういう技術者魂があるんだろうな。任せられた責任は重大であるが、MSの選定などは漢が一生をかけるべき価値のある仕事だ。

 

「そしてカスペン、後進パイロットの教育や育成について全面的に任せる。そして後継機のテストでマ・クベに協力しろ」

「全力を尽くします、ドズル閣下」

 

 

「さて、話を元に戻すぞ。当面は残存戦力を使っての抗戦だ。差し当たり本国を防衛しつつ、ア・バオア・クーへ対応せねばならん。これはコンスコンが言っていたことだが、吸血作戦を取る。拠点を奪われたことを逆手に取るのだ」

 

 そうドズル閣下が言った。

 本人はあまり考えもせず言ったのだろう。しかし、皆に少しばかり波紋が広がる。なぜなら、ドズル閣下は部下のアイデアを自分の功績とはせず、事実を率直に言う性格だということが改めて分かったからだ。

 軍も人の組織である以上、様々な思惑があるものだ。上司が部下の功績を奪うことなど日常茶飯事である。

 しかしドズル閣下はそういう悪癖とは無縁だった。

 

「吸血作戦とは、ア・バオア・クーへの連邦の補給行動を破壊する難しいゲリラ戦だ。もちろん失敗すれば、ア・バオア・クーへ連邦の戦力が集積してしまう。そして連邦がソーラ・レイを撥ねのけ攻め切れると判断した時に本国へ攻勢をかけてくるだろう。ただし、ゲリラ戦もうまくやりすぎてはだめだ。逆にア・バオア・クーを手放す決断をさせない程度にしておかなくてはならん」

 

 

「ふむ、それは私に向いていそうだ」

 

 皆が声のする方を一斉に振り向く。

 今の声はシャア・アズナブル准将からのものだ。

 

「ゲリラ戦ならば、なるべく少数の方がいい。素早く襲い、確実に目的を達成して姿を消す。これはとても私に向いている」

「シャア・アズナブル准将? しかし、技量の問題ではなく将官級の者が実行部隊に加わることはないぞ。今までの大佐の時でもMSに乗るのは感心できなかったくらいだ」

「ドズル閣下、私が准将にまでなれたのは光栄に思っていますが、それはただの結果に過ぎない。今はまだMSに乗っていたいものです」

 

 確かにドズル閣下の言うことは正しい。

 本人の意思に関わらず、地位に伴った行動及び責任というものがある。

 

「いえ兄上、ここはシャア准将の言う通りに。そんな地位のことを言うなら、どこぞの将もビグザムに乗ったのでは?」

 

 ここでキシリア閣下が横やりを入れる。

 確かにドズル閣下が地位に相応しい行動を、などと言えたものではない。難しい顔をして黙ってしまった。

 

「ありがとうございます、キシリア閣下。では私のザンジバルでゲリラ戦を行いましょう。唯一この作戦に困難があるとすれば、連邦の補給の護衛にガンダムがつくことくらいでしょうが、別にガンダムを倒す必要はない。うまく引き付けておいて、輸送艦を壊せばいい」

 

「……よし。ではゲリラ戦についてはシャア・アズナブル准将に一任する。さて、次に考えることは大まかな戦略になる。ここでジオンが勝てる方策をひねり出さねばならん。一番難しいことだが」

 

 

 

 ついに俺が手を挙げる。

 考えていたことを言うべき時だ。

 

「ん? コンスコン、何か考えがあるのか」

 

「ドズル閣下、少しばかり考えていたことがあります。吸血作戦の次はマ・クベ准将の言う通り、グラナダを最優先でいいでしょう。けれど次が問題です。ソロモン、ルナツー、フォンブラウンを奪って宇宙から連邦を駆逐し制宙権を確立するか。それとも先に地球に降り立ち、再び地表作戦を展開するか」

 

「コンスコン、確かにその二つの道に分けられるが、大きな話だな。だがどちらも現状では夢物語だぞ。難し過ぎる」

「いえ、ドズル閣下。初めに大きなところを考えながら動かなければ、いくら緒戦でうまくいっても以前の二の舞になります。そこで提案したいのは、ア・バオア・クーとグラナダを奪還した後、地球を目がけて攻勢に出ます」

 

 これは皆にとって意外な言葉だった。以前の地球制圧作戦はものの見事に失敗した。ジオンにそのトラウマは大きい。

 

「な、なぜだ! 以前ジオンはそうやった。結果的に莫大な損失を出して撤退せざるを得なかったではないか」

「目的は地表の制圧ではありません。地球に取り残されたジオン将兵の救出です。今、彼らは絶望的なゲリラ戦を展開し、追い詰められつつあります。しかもそんなことをしても連邦には大した痛手にもならず、宇宙戦の片手間に相手をしているだけです。そしてカスペン准将の言う通り、ジオンは人が資源。彼らを救ってやることは、全体の士気を上げると同時に兵の補充を意味します」

 

「それはそうだが……」

「長期制圧を目的としなければ機動軍で充分でしょう。宇宙港や往還機は使いません。艦の製造に使う資源を、ある程度MSの生産の方へ振り向けるとしても、艦の製造ラインはある。他の艦種よりザンジバル級を優先的に作り、それで地球に向かえます」

 

 皆も分かっている。ザンジバル級は唯一宇宙と大気圏両用に作られている。チべやグワジンでは大気抵抗は考えられていないし、立派なメガ粒子砲があっても大気内では威力を殺されてしまう。大気圏内での高速飛行とそこそこのMS搭載を両立しているザンジバル級が使いやすい。

 

「しかしコンスコン、地球作戦は難しいぞ。何もかも勝手が違う」

「いえドズル閣下、本当にジオン兵の救助だけなんです。ジャブローなどには手を出しません」

「? 地球に行くのに、向こうの指導部を叩かないのか。では戦争は終わらせられんぞ」

「どのみちジャブローを叩くのは意味がありません。なぜなら連邦は以前の戦いで『学習』をしてしまっているからです。いくらジオンが暴れようと、いずれ補給線が切れて続けられない。その時叩けばいいだけだと。一度そう連邦指導部が『学習』したからには、例えジャブローが囲まれても降伏などするはずがありません」

 

「で、では本当に終わらんではないか! 持久戦になれば絶対にジオンの負けだ」

 

 

 ここが重要なところだ。一息いれて俺は話を続ける。

 

「要は持久戦にさせなければいいのです。つまり、連邦の方から持久戦を諦めさせ、決戦に引きずり出すのです」

「な、何だと! 連邦の方からだと! いったいそれができるのか。コンスコン」

「できるのです、ドズル閣下。先ほどマ・クベ准将は資源の話をしました。確かに鉱物資源のほとんどは地球にあります。ジオンはマ・クベ准将の先見の明によって確保できましたが」

 

 これはその通りだ。もちろん宇宙に岩石は山ほどある。しかし意外に使える鉱石は少ないのだ。それには理由があり、地球はその火山活動や水流によって長い時間をかけて成分を濃縮する。特に希少金属はそうやって鉱石になるのだ。宇宙に浮かんでいる小惑星ではそういうことが起きない。

 

「しかし、逆に宇宙にしかない資源があります。すなわち重水素やヘリウムです。当然、どちらも核エンジンに不可欠なもの。そしてそれは木星プラントからの供給に頼っています。このプラントからのルートを断ち切り、備蓄を襲撃する。これで地球のエネルギーは破綻します。下手に人口が多いだけに収拾がつかなくなり、慌てて短期決戦をせざるを得ないでしょう」

「木星船団公社との折り合いはどうする。南極条約があるが……」

「公社そのものを敵に回すのは得策ではありません。輸送艦の航路を割り出し、勝手に戦時宙域に設定します。連邦への受け渡しポイントを狭めてやり、積み替え後を狙って襲撃すれば」

 

 軽いヘリウムなどの資源は、地球にはほぼ無い。地球の重力では引き留めておけず、大気から宇宙に逃げられてしまうからだ。地球から一番近い採取場所は木星である。シャリア・ブルなどはそのために木星船団にいたのだ。

 木星圏からのガス採取、精製、輸送は木星船団公社という非政府組織が受け持っており、ジオンを含む各コロニー、そして地球に供給している。建前上は戦争と関係なく、人類のための共有公社である。

 木星圏からの輸送艦は工廠まで備える超巨大艦であり、地球の重力圏までそれほど近づくことはない。基本あまりエンジンを使わない巨大艦なので、地球をスイングバイしながら航行するわけだが、地球に近いルートを通るようにすると、速度が速くなってしまい受け渡しがしにくい。またスイングバイ曲線にいてもなお重力で艦体に歪みが出てはいけないからだ。つまり資源の受け渡しは地球と離れたどこかの宙域で、連邦と事前に示し合わせて行っている。

 

「…… なるほど、そういうことか。資源の面で連邦を締め上げるというわけか。スペースノイドにはスペースノイドのやり方がある。面白い。面白いぞ、コンスコン。それでいこう」

「核エンジンが使えなくなれば艦もMSもガラクタ同然。とはいえ、連邦も馬鹿ではありませんから、こちらの意図に気付いたら備蓄を隠す、受け渡しポイントを秘匿する、ダミーを使ったり、護衛を付けたり、色々なことをしてくるでしょう。その裏をかいて戦い続けませんと」

「それでもやってみる価値はある。いや、それ以外に勝つ方策は見当たらん。コロニー落としを際限なく続けることは、ジオンのやることではない。今さらジオンが人道的などと言っても仕方ないことかも知れんが」

 

「兄上、そうとも言えず、今からでも意味を持たせられるでしょう。ジオンが体制を一新したことをアピールすれば。正直サイド1の残りコロニーは難しいでしょうが、サイド6くらいはジオンの側にもう少し引き寄せられる余地があるかと。そして当然連邦へも交渉余地が残るでしょうし」

 

 キシリア閣下も政略面から、ギレン閣下のやり方からの転換を支持した。

 実現可能性や実行案についての細かい検討は本国の制服組がするとしても、これで皆が納得する形で基本方針は定まった。

 

 ジオンはようやく本当の意味で固まったんだ。

 ここから、立ち上がる!

 

 

 会議場は若干気の緩んだようなほっとした雰囲気に包まれる。

 だがその中、突然思いもかけない凶報が飛び込んできた。

 

「か、会議中失礼します! 只今通信が入りました! ソーラ・レイ管制宙域においてアサクラ大佐叛乱! 軟禁から脱出し、従う将兵らと共に技術指揮艦ギドルを占拠したとのことです!」

 

「な、何だと! こんな時に! いや、アサクラ大佐としては処罰前にやむに止まれず、ということか。しかしこのタイミングとは、一刻も早く鎮めねばならん。混乱を連邦に悟られてはいかん。では、コンスコン、行ってくれるか」

「承知しました、閣下」

 

 俺が指名されるのは道理だ。

 アサクラ大佐がギレン総帥の腹心だったことはよく知られている。

 

 ここでまさかシャア・アズナブル准将などを鎮圧に差し向ければ、またしてもギレン派を粛清かと疑われる。せっかくうまくいきかけた体制がぶち壊しだ。逆にギレン派のデラーズ准将などを使えば、妙な温情で取り逃がすかもしれない。ここは比較的ニュートラルな俺がやるべきだろう。

 

 ソーラ・レイ、その前はサイド3マハル・コロニーと呼ばれたれっきとした居住型コロニーだった。そこへ急行する。

 

 

 

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