コンスコンだけど二周目はなんとかしたい   作:おゆ

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第四話 ミッションクリア

 

 

 連邦の新兵器を探し回ったのは少しの時間だ。暗礁宙域にもかかわらず案外早く見つかった。

 しかし、見つけられたということは……

 もう隠す必要がないということでもある。

 

 もう鏡の展開が始まっているじゃないか!

 

 半分近くは展開されてしまってる。

 こうしている間にも次々と決められた位置に鏡が並べられていく。そして最初の折りたたまれていた形から一気に開かれて平板になる。単純かつ凶暴な鏡の集団だ。戦いは数だよと言いたげな連邦のむちゃくちゃな物量兵器である。

 そして、これは相手の戦意を刈り取る派手な兵器でもある。ここぞという場面で使うような代物だ。つまり、既にソロモンの戦いが進んでいることを意味している。

 

 焦る。

 早く接近したいが、今の艦隊位置はラッキーともアンラッキーとも言えない微妙なところだ。

 鏡の真正面ではないが、少なくとも横や後ろではなく正面に近い。もっとソロモンから離れた場所から探し始めれば良かったようなものだが、それでは暗礁が邪魔になる。結果論だ。

 

 いくら急ぐとはいえ、このまま突撃するのは愚策だ。この新兵器の指揮官としても、なぜ俺の艦隊がこんな戦場から離れた暗礁宙域に出て来たのかと驚くだろうが、やることは決まっている。指揮官がよほどの馬鹿でない限り、鏡の角度を調整してこっちの艦隊に照射しようとするはずだ。

 

 そうなっては遅い。あくまで鏡に対して回り込み、横方向から仕掛けなければ一方的にやられる。

 

 そう思って見ていると鏡が少し動き始めたのがわかった。

 やはりこの艦隊を潰す気だ。

 

「全艦隊散開! あの鏡の射線から急速離脱だ!」

 

 慌てて副官も他のムサイの艦長たちも反応する。説明されるまでもなく鏡といえば光の反射、あの鏡の大群が狂暴な兵器であることが理解できる。

 ただし俺の次の言葉には副官も思いっ切り渋い顔をした。

 

「リック・ドムは全機緊急発進! 直掩などいらん。全機、一秒でも早く鏡の横に行け!」

「えっ! そんな、コンスコン司令、まさか!」

 

 副官が戸惑う理由は明白だ。俺の言うことが非常識過ぎる。

 艦が急速旋回中にはMSは発進させないものだ。

 当たり前のことだが、強い遠心力が働いている状態では艦内の物はみんな固定しておく。そうでなければ危なくて仕方ない。重たいMSの移動なんか論外、途中で転がったら冗談にもならない大惨事だ。たぶんカタパルトに乗せるだけで困難を極めるだろう。

 MSの発進は艦があくまで直線運動をして、充分に安定した状態で行うのが常道である。

 

「どうした、マニュアル通りじゃ面白くないだろ。アドリブも練習しとけ。いや、練習したらアドリブじゃないな」

「コンスコン司令……」

「やってやろうじゃないか。我がコンスコン機動部隊は、いちはやく全戦力を叩き付け、主導権を奪って相手にそれを渡さない戦いをしてきた。そうだろう? 今は悠長なことをしている場合ではない」

 

 実はそんなやり方をしたから白い化け物MSに逃げる間もなく全滅させられたんだけどな! なんてことは言わない。

 副官はなぜか目をキラキラさせて納得したようだ。俺の糞理論にチョロ過ぎる。

 

 散開とMS発進を同時に成し遂げた。うちの兵士たちは優秀だな!

 そして連邦の指揮官は散開した艦隊のどこへ照準を合わせるべきか、少し迷ったらしい。その一瞬が付け目だ。ドムをその分先へ進められる。

 照射を受けないよう、充分に角度を付けた方角からドムが鏡に迫る。

 早速バズーカで破壊に取り掛かった。

 

 しかし鏡の数は多い。

 簡単には破壊できない。

 そして嫌なことに連邦の指揮官は予想より賢い奴だった。

 素早く頭を切り替え、こっちを無視してソロモンに射線を合わせようとしていやがる。多少威力が落ちても充分、鏡が破壊される前に使えるだけ使おうというのだろう。ソロモンのゲートやそこにいる多数のザクだけでも薙ぎ払う気だ。

 このままでは多少なりとも損害が出る。

 

 俺は思わず叫んだ!

 

「ドム全機に通達! 鏡を壊さなくていい! 何をしている、足を使え足を!!」

 

 詳しいことを言わなくても、俺の思い付きをドムは分かってくれたようだ。

 鏡の横をドムの足で蹴り飛ばした。

 元々地上戦用に作られたMSが宇宙に持ってこられたという、変態的経歴を持つドムだ。重力を支える設計のため、見かけ通り無駄に足は重量級である。

 女の子に「足がドムみたい」などといえば決闘を申し込んだと同義になる。

 しかしそいつが今は役に立つ。

 もちろん鏡はデカく、それなりに重い。だがゆっくりでも横方向に動きを加えられた。そして思った通り、次々と別の鏡にぶつかっていく。つまりドミノ倒し、あるいはビリヤードの要領だ。

 

 鏡を破壊する必要なんてなかったんだ。

 

 無重力の空間、ちょっとの力を加えるだけで物は動く。そして超精密に角度を調整してこそ意味のある鏡の兵器だ。軽くコツンと当たるだけで全く意味のない物体になり果てる。

 

 ドム十二機の蹴りで連邦の新兵器は無力化された。鏡には調整用のバーニヤがついているが、それはたぶん初期位置設定用のものだ。こうやって三次元的にバラバラな動きを始めた以上、オペレーターが頑張っても再度並べ直されるまではかなりの時間が必要だろう。

 

 ソロモンの一部が輝いている。それでも少しくらいは照射されているんだろうな。だが少しであれば実害は出ないはずだ。ようやく狙ったミッションは成功させられた。

 

「ソロモンが常夏の国になりそうだ」

「司令、日焼け止めクリームが売れるでしょうな」

 

 お、つまらん俺のジョークに副官が返してくれるようになったじゃないか。

 

 

 

 さて、軽口を叩けるのもそこまでだ。

 当然のごとくお次は怒りの連邦護衛部隊の報復がやってくる。

 これはまともに相手はできない。今見えているだけでもこっちの数倍以上はいるからだ。

 ただしこちらにも応援が来ようとしている。

 ドズル中将はソロモンが照射された時点でこの新兵器の恐ろしさを即座に理解する。そして貴重なグワジンの部隊まで緊急発進させている。それらが到着するまで持ちこたえればいい。

 

「目一杯弾幕を張れ! ドムは後退しつつ相手の撹乱に徹しろ!」

 

 もちろん相手を乱したら逆撃を加えることも忘れない。

 

「十字砲火を設定する。三隻のムサイとデータリンク、最適位置とタイミングの計算を始めろ!」

「計算出ました! 砲撃予定位置設定!」

「よし、全艦その位置に急行した後、静止。エネルギーはメガ粒子砲充填に切り換えだ」

 

 俺は連邦の艦で適当な獲物を探す。一隻のマゼラン級戦艦が目に入った。あれはムサイやチベにとっては難敵だ。ここで片付けておきたい。

 

「ドムは撤収、早すぎても遅すぎてもダメだ。あいつを引っ張ってこい」

 

 うまいこと相手は乗せられる。

 よしよし、設定したポイントまでやって来い。こっちを甘く見たツケを払ってもらおう。

 

「敵マゼラン、ポイント到着!」

「今だ、全艦クロスファイヤ、撃てーーーっ!」

 

 しっかり狙点は定まっている。

 獲物であるマゼランはいくつもの方向から粒子砲に貫かれる羽目になる。

 だが、それでも爆散しない! さすがに強固なものだ。エンジンブロックの防壁が良いのだろうな。軽巡ムサイの砲ではそこまで貫通できないらしい。連邦は工業生産力に余裕がある分、使える部材も、その材質もいいのだろう。人員の多い連邦の方が人員を守れるなんて、ちょっと矛盾だろうが!

 

 ただしそのマゼランは大破している。エネルギー伝達が切れたらしく、砲も撃てない。もう慌てる必要はなく、止めを刺すのはやがてやって来るグワジンに任せよう。俺の方は細かい敵を打ち払いつつ、ソロモンの方へ後退していく。主戦場はやはりソロモン周辺だからだ。

 そこでなんとか奮戦し、ジオンのソロモン駐留軍が最小損失で脱出できるよう時間を稼ぎたい。

 何度も言うようだがジオンがソロモンをずっと保持することはできない。どんなに頑張ろうが、ア・バオア・クーの攻略を目指す連邦の大軍がちょこっとここへ応援を出す気になればお終いだ。

 

 

 さて、もう一隻いたマゼランに牽制の砲撃を仕掛け、サラミスを二隻ほど斃し、やっとソロモンの近くまで来れた。

 この辺りで激戦が展開されているのがよく分かる。

 宇宙はひっきりなしに飛び交う光条で溢れている。オレンジや青色、狂暴だが見た目には綺麗な線だ。時折輝く球体はもちろん艦かMSの最期の華だ。

 

 おお、マ・クベ君も働いているじゃないか! 見るとさすがに合理的な戦闘行動をしているようで、立派に役に立っている。決して指揮官として無能ではない。ここへ無理やり追いやった甲斐があったというものだ。

 しかし高機動を要求される激戦だ。おそらく旗艦マダガスカルの司令官室では振動で壊れる壺も出てくるだろうな。たぶんマ・クベ君は後で泣くだろう。それを思うと笑える。

 

 

 そんな下らんことを思っていられたのは一瞬だけだ。

 次に見えたもので俺は青ざめることになる。

 

 

 

 

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