コンスコンだけど二周目はなんとかしたい   作:おゆ

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第六十九話 道先

 

 

 連邦情報部の者からライラ・ミラ・ライラに指令内容が伝えられていく。

 

「現在、サイド6にジオンのコンスコン大将が逗留している。任務というのはこのコンスコン大将への情報戦についてだ」

「情報戦とは? それは情報部の者がすることで、まさか一介のMS隊長のするようなことではありますまい」

 

 いつものライラらしくなく多少の反発を見せた。最前線のMSパイロットには体を張って戦う誇りがあり、こそこそした情報戦の真似事などしたいわけがない。

 第一、なぜパイロットの中でも自分に命じられるのかが分からない。

 

「そう思うのは道理だな。ライラ・ミラ・ライラ中尉、誤解してほしくないが、やってほしいことは口先を使う情報戦そのものではなく、実行する者の護衛だ。そしてサイド6にいる前線隊長が何人かいる中でも君が適任なのだ。君はMS隊長として常に冷静かつ的確な判断をしてきた実績がある。地上戦や銃撃でも相当の腕前と聞いている。まさにうってつけだ」

「なるほど、口先を使う任務ではなく人物の護衛、でしょうか……」

「ただの護衛役ではない。監視役も兼ねている。この際オブラートに包むことはやめよう。その者が連邦の指令に反した時、速やかに始末してほしい。それが主な任務だ」

 

「そ、それは! もっと手っ取り早く言えば、裏切者が出たらその始末、ということでしょうか」

「理解が早くて助かる。そのためには手段を選ばずとも構わない。サイド6は中立区域だが、多少の騒ぎなら揉み消しは可能だ、ライラ中尉」

 

 

 それで話は終わる。日程と詳細、準備物などについては後ほどライラに送られてくるだろう。

 だが、暗くなった画面の向こうではライラの知らぬところでもう少しばかり話が続いていたのだ。

 

「情報部はいったい何を考えておいでですか!」

 

 ライラの上司が情報部の男に食って掛かる。実はもう一つ裏があったのだ。

 

「最善だよ。連邦にとっての最善だ。君も今さら決まり切ったことを聞くものだ」

 

 情報部の者は顔色も変えない。感情を隠すのが上手いわけでもない。本当にそう思っているから言っただけだ。

 

「し、しかしですね、ライラ・ミラ・ライラは優秀なMSパイロットで部下からの信頼も厚く、希少な者であることは……」

「希少だから何だね。君の単なる情のように聞こえる。そんなことを言えばジオンの大将ならもっと希少だ。比べたらお釣りがくるどころではない」

「……」

「別にライラ中尉が失われると決まったわけではない。コンスコン大将に対する策謀がうまくいけばそれで万々歳、連邦にとって慶事だ。ライラ中尉も無事に帰ってくる」

「うまくいかなければ……」

「それでもライラ中尉があっさり後始末を終えれば問題ない。心配はあくまで騒動が大きくなった場合だ。その場合、ライラ中尉もコンスコン大将も丸ごと消えてもらう」

「そ、そんなことを、しかもサイド6で」

「体裁はつけられる。中立地帯で揉め事を起こしたのを遺憾に思った連邦が速やかな収拾を図ったということで。なに、中立地帯で一般士官が揉め事を起こすなんて珍しいことではない。その当事者を過剰に罰した際、巻き込まれた人間も出てしまった、それだけのことだ」

 

 連邦も馬鹿ではなかったのだ。二重三重の罠を張ることを忘れるはずはない。

 

「それよりも君は周辺にMSの配備をしっかりやっておきたまえ。それとルナツーから応援の艦隊が来ることになっている。それを使ってサイド6を秘密裏に包囲するのだ」

 

 

 

 そして宇宙の別のところでは、捕虜交換式についてまた異なる感想を漏らす者がいた。

 

「調印式を見たかね、ステファン・ヘボン君。嬉しいことにコンスコン大将は私の願った通り壮健のようだよ。調印式も無事終わってなによりだ」

「ワイアット閣下、そんなことよりも……」

 

「おお、君も気付いていたとはさすがだね。ゴップ大将の横にジョン・コーウェンがいるとは…… 思いがけないことだ。この二人はいつの間に接近していたのかな。たぶん、捕虜交換前にゴップ大将がゴリ押しをしてジョン・コーウェンを取り戻させたことが契機なのだろうが」

「閣下、これは油断なりません! ジョン・コーウェン中将は元から独自色の強い人物、あまり他と組むことはしなかったはず。それが今、ゴップ大将に近づいているとなればそれなりの意図と計算があるでしょう」

「そう、その通りだ。おそらくは自分の考えにこだわり、実現させようとでも思っているのだろう。そのために近付いたのか。確かコーウェンはガンダムに執着し、量産化すべきとうるさいくらい叫んでいたのではなかったかな」

「ガンダムの量産化…… し、しかしコストが一桁二桁、いやそれ以上変わってくるのでは」

「コストは度外視、ガンダムさえあれば戦争を終わらせられると。そしてスペースノイドどもをそれで封じ込めておけるのだと。だが、君の言う通りコストを考えたら狂気の沙汰だ。今ではその計画は凍結されているはずだろう。連邦技術部のガンダムMKⅡ開発も中止され、ジョン・コーウェンがフライングでアナハイム・エレクトロニクスに発注したガンダム開発計画も頓挫したと聞いている。資金が回収されない恐れがあればアナハイム・エレクトロニクスも動くわけはない。そこが不満なのかもしれないな。ジョン・コーウェンは何としてもガンダムを造りたい。これは、ゴップ大将の口利きで本当にガンダムが造られるのかもしれない」

 

「閣下、ジョン・コーウェン中将の思惑はそれとして、逆にゴップ大将の考えは明らかです。連邦軍の中で減っている将官の中から味方を増やしたい、といったところでしょうか」

「そんなところだろう。だから恩着せがましく早めに取り戻したのだな。連邦の将は地球上のことしか知らないものばかりで、そうでない者の中でもダグラス・ベーダーは死に体だ。そして私ときたら決して御しやすい人間ではなく、ゴップ大将からすればたまったものではないからね。ステファン・ヘボン君、私としてもジャブローに潜ってばかりでここで一緒に紅茶も楽しめない者を上官に仰ぐ気などあるはずもない。私でさえ、ゴップ大将はせっかくサイド6まで来たのだからルナツーに督戦に来ると思っていたのだよ。将兵の忠誠を高めるのに絶好じゃないか。しかし私の見込み違いだった!」

「閣下……」

 

「ゴップ大将は宇宙で戦う将兵を見るよりもジャブローの巣が恋しかったようだ。私は連邦軍人である以前にコロニー落としをしたジオンを赦さない。しかし、彼らの気持ちの百分の一は分かった気がする。地球で安穏としている者どもから指図を受けるのは、宇宙で暮らす者からすれば決して気分が良くはない」

「それでも通信だけは届けてきましたが……」

「ああ、サイド6に少しばかり艦隊を割いて送れという話だろう。確か捕虜交換への備えだとか言っていたが何を今さら…… だがそんなことはどうでもいい。連邦上層部は私を煙たがっているのか、肝心なことは見事に蚊帳の外にしてくれた」

「蚊帳の外とおっしゃいますと?」

「まさに蚊帳の外だよ。この捕虜交換を利用して、連邦もジオンも謀略戦を仕掛けるに違いない。当然のことだね。しかし私は全く関与できず、頼まれもしない。謀略戦の方こそルナツーで暇を持て余している私がやるべきなのに」

「それはそうでしょうが、閣下……」

 

「ジャブローの連中は誤解している。侮り過ぎなのだ。なるほど物量では我が連邦が圧倒していて、いずれこのつまらない戦争にも勝つだろう。だが個々人の力量は別だ。ジオンにはコンスコンのような傑出した将がいるし、前線で戦うパイロットの能力も高い。ならば謀略戦でもジオンに有能な者がいてもおかしくないというのに」

「ご不満は分かりますが…… 我々も仕事が全くないわけではないと存じます」

 

「ステファン・へボン君、それはひょっとするとMSのことか。技術部と生産管理部から時々来る注文のことだね。宇宙での耐久性、整備性、そして戦闘力のデータを取って送り返す、単純なことだ」

「しかしその実戦データはここでしか取れず、それは今後のMS開発を左右する大変貴重なものであるかと」

「いつもガラクタじゃないか。やたらとエンジンの数ばかり増やしたものだとか、そんなものばかりでセンスの欠片もない。技術部にバランスという言葉を教えてやりたいね。航続距離だとか整備性だとか、そんなものは実戦テスト以前に考えるべき問題だろうに。いつぞやは装備を目一杯取り付けただけの物が送られてきた。索敵も操縦性も悪くて使い物にならなかったね。あれだけメーターが多ければそうもなるだろう。結果はあわや同士討ちのところだった」

「確かに、そういうものもありましたな」

「技術部もいったい何を考えて仕事をしているんだろうか。予算ばかり食って結果がそんなものとは。ジョン・コーウェンではないが試作を百回繰り返す暇があればガンダムを一つ造った方がマシに思えてきた」

「駄作がほとんどなのも否定できませんが、直近の戦闘で試したMSはそれなりだったではありませんか」

 

「あの二種類のことかな。確かに君の言う通りだ。我が連邦の予算食いもあの二種類だけはそこそこ良いものを造ったようだ。私も見ていたが試作機にしてはだいぶ使えそうな予感がする。名前は確かジーラインとジム・カスタムだったかな。私見を言わせてもらえばジム・カスタムの方を勧めたい。整備性も操縦性も良いと記憶に残っているのでね。私のその注釈を書き添えて、データを技術部に送っておきたまえ、ステファン・ヘボン君」

 

 

 

 

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