コンスコンだけど二周目はなんとかしたい   作:おゆ

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第八十三話 好敵手

 

 

 連邦オーガスタ基地急襲はシャアの先行出撃というハプニングはあったものの順調に推移している。

 地上に居座ったムサイが連邦の増援に対して睨みを利かせ、一方では基地を守備する連邦MSとの戦いで確実に勝利へ近付いている。

 

 

 ここで俺はカーラ・ミッチャム教授の言葉を聞き、ダリル・ローレンツの出撃を命じた。

 

「よし、ではサイコ・ドムを発艦へ」

 

 それは期待通りだった。

 いや、それ以上だ。

 

 地表に降下し、連邦のジム隊と接触したダリル・ローレンツのサイコ・ドムがたちまち戦果を挙げていく。

 それも見ていておかしいことがある。

 動きが速いのは神経接続とやらのせいだと理解できる。本来重いドムが考えられないほど切れのいい動きになっているのが分かる。

 だが、不思議なのはドムの標準的な武器であるジャイアント・バズをそのまま使っているのだが、その弾を確実に連邦のジムに当てているではないか! まるで連邦ジムの来るべきところへ先に撃っているような塩梅だ。

 

「凄いな! あんなに正確に撃てるものなのか」

 

 ジャイアント・バズは威力はともかく初速は遅く、無駄撃ちを一度二度して相手MSの足を止めてから仕留めにかかるものだが、ダリルにはその常識が通用しないらしい。いや、俺は今までダリルをチベの砲手にしていたが本来の狙撃能力にはこんなものもあったということだろうか。それがチベの主砲より連射ができる状態でいっそう発揮されているのだ。

 こうしてダリルのサイコ・ドムの戦力が加わって戦況は更に順調、もう少し押せば連邦MSの組織的抵抗は崩れる。

 

 

 ここでようやくシャア少将の本来の部下たちが追い付いてきた。シャアのザンジバルに搭載されていた八機ほどのMS隊である。もちろんすぐさま戦いに加わった。

 俺はまたもや目を疑う。

 何? おかしいな。ガトーのアクト・ザクがもう一機いる? なぜアクト・ザクが……

 しかもその挙動が変だった。

 その一機だけ妙な戦いぶりなのだ。突然背面飛びなどをして、背中を柔軟にしならせながら連邦MSを撃っている。そんな機動法がマニュアルにあるか?

 

「どけどけーー!! お前ら邪魔なんだよ!」

 

 これはシャアの隊にキャラ・スーン学徒兵が補充として配属されていたのだ。むろん彼女が訓練所でハイスコアを叩き出していたから、今回の地上作戦前に加えられたというわけだ。俺は無茶苦茶な戦いぶりを初めて見ている。むろんシャアも初めて見て呆れているんだろう、一瞬動きを止めてそれを眺めているようだ。

 

 

 ついに連邦MSの排除に成功した。次々出てきたものも片付けた。散り散りになって逃走したり、行動不能になって脱落した連邦MSを深追いする必要は無く、放置していい。

 これで目標の一つである連邦のMS開発部を徹底的に叩ける。

 建物はもとより、造りかけの試作MSや部品、その生産ラインを破壊するだけにとどめては意味がない。技術開発部の人員はどうせ地下道でもう逃げているだろうからその脳内の分は仕方ないが、せめて開発データを格納しているところまで叩く必要があるのだ。

 

 その途中で連邦の研究途上のMSを撮影する。

 データも重要そうなものがあれば、ジオンの今後のため頂く。こうした機会でなければ手に入らない連邦のMS技術情報はマ・クベ少将へのいい土産になるだろう。

 そこで驚くのは一見して分かる量だ。研究中のため試作にも至らずパーツにとどまっているものも多いが、とてつもなく多岐に渡っている。

 

 連邦はどれほど底力があるのだろうか。

 技術開発に割けるリソースがジオンとは桁違いに違いない。

 連邦はジオンと違い、MSはできるだけシンプルな機種構成にして大量生産をかけてくるのが常だった。コストバランスを重視するためだが、それは正に戦争に勝つのが前提の強者の余裕でもある。想定用途ごとに新たな設計を起こし、例えば水中用のゴッグなどを造ることまでして、少しでも寡兵を有効に使おうというジオンのやりかたとは真逆だ。

 だが、結果的な量産としてはそうであっても連邦は決して初期開発自体を緩めてはいない。改めて目の前にそれが示された。

 逆に言えばジオンが未だに性能の優位性を保てているのが不思議なくらいだ。ジオンMS開発の基礎となったザクがいかに画期的なものだったか分かる。

 

 

 作戦が順調なのに気分が暗くなってしまう。

 おまけに衝撃の事実が俺を襲った。

 俺はそういった連邦の研究MS機体の中にあるものを見つけた。

 

 何と、ガンダムタイプもあったのだ!

 

 そこにあったのは完成には程遠いものばかりで、おまけに連邦MSは白を基調としていてどれも似たように見えるものだが、この俺だけはガンダムを見間違えることなどあり得ない! その恐ろしさは誰よりも知っている。

 ガンダムには勝てない。

 これだけは無理なんだ。

 どんな戦況でも関係ない。こっちがどんなに戦術を駆使して、圧倒的に追い込んだとしても勝つことがかなわない、それがガンダムだ。

 く、くそ、連邦はまだガンダムの開発を諦めていないのか……

 

 

 

 俺が感じた不安の通り、世の中というものは万事がうまくいくものではない。

 

 ちょうど同じ頃、連邦軍北極基地に一人の男が着いた。

 大きな期待を胸に基地に入ると出迎えたMS整備主任から声を掛けられる。

 

「お待ちしていました、イオ・フレミング少尉」

「挨拶はいい。早く、例のMSを見せてくれ」

「基地司令への答礼はどうします? 今からお連れしましょうか」

「いや、先に目的のものを見た方がいい。ここに来た意味はそこにしかない。答礼はその後だ」

 

 年配の整備主任は下士官階級なのでイオ・フレミングに一応敬語は使うが、苦笑せざるを得ない。

 到着したパイロットはまるで駄々っ子ではないか。

 おもちゃを欲しくてたまらない子供のようだ。

 

「そんなに焦らなくてもいいでしょうに。もう用意はさせていますよ。各部チェックは終わり、問題が無いのは確認しています。そのための北極基地ですから。ただし、汎用機体ではないので少尉を待って実働テストに入ることになります」

「俺は一分一秒でも早く乗ってみたいんだ。ノーマルスーツに着替える時間も惜しい。どこだ、どこにある」

「直ぐに格納庫に案内しますよ」

 

 その新しい機体に搭乗させるべきパイロットは上層部から指定され、どんな人間かと待っていれば大人になったやんちゃ坊主だった。

 この機体はそれまでガンダムパイロットだった者の中から選ばれることになっていた。本当ならばアムロ・レイ曹長が最有力だったのだ。それまでの戦果の積み重ねがものを言った。

 しかし、寸前でそれがひっくり返ってしまった。

 なぜならアムロ・レイには「ちょっとした検査」を受ける必要があるという横やりが入ったからだ。連邦のオーガスタ基地、正確にはその中にある胡散臭い研究所の要請である。

 面白いことにアムロ・レイ曹長の所属する強襲揚陸艦ホワイトベースはそれに渋り続け、ルナツーへの戦力集中を盾にとってアムロ・レイの放出を遅らせている。

 

 結果としてこの機体のパイロットにはイオ・フレミング少尉が就く。言うまでもなく本人も乗り気である。

 

 

 そして格納庫に着いた。

 そこには、ジョン・コーウェンがゴップ大将に勧め続けたガンダム計画の残滓がある。

 

 ジョン・コーウェンは熱弁をふるったが、どんなに請われてもゴップ大将はガンダム大量生産にうんとは言わなかった。

 コスト面であまりにも荒唐無稽過ぎる。普通に考えればジムを着実にバージョンアップし、穴がないように改良していった方がいいに決まっている。回り道のようでもコスト的にはずっと合理的だ。

 ガンダムは試作機だからこそ一切の妥協をせず造られたのであって、兵器としては考えられないコストになる。その部品からして既存のものをほとんど使わず特注の塊だ。材質から始まり、規格すら捻じ曲げ、例えば駆動電圧どころかネジのピッチすらも機体各所でバラバラに最適化されるというとんでもないことがされている。

 かつて連邦上層部は天才テム・レイに対し、戦局打開のためとにかく早く高性能MSを造れと要請した。ルウム会戦でジオンMSに完敗したショックがあまりに大きかったためである。そしてテム・レイは偏った天才らしくそれを全く言葉通りに受け取ってしまった。結果的に期待以上の仕事をしたがコスト的な合理性という視点はすっぽり抜け落ちていたのだ。

 

 連邦の政治屋との関係を重視、いや癒着しているゴップ大将としては、そんな数字しか見ない連中にガンダム生産など言えるわけがない。

 

 しかしゴップ大将は老獪だった。ジョン・コーウェンを派閥に取り込むメリットを天秤にかけ、政治的な配慮というものをした。生産など全く予定しなくともガンダムタイプの研究開発だけは妨げないポーズを取る。ガンダムマークⅡというスローガンは建前として空虚に残された。

 ただしそれだけではジョン・コーウェンは納得しないかもしれない。そこでゴップ大将は、ガンダム計画においてただ一機、造りかけて中止されていた機体を完成させるよう指示したのだ。

 

 ここに唯一無二、ガンダムの名を冠するMSが誕生した。

 

「少尉、このMSです。現在の連邦にたった一つだけのガンダムタイプMSですよ。コードネームはゼフィランサス」

「ゼフィランサスか、可愛い名じゃないか。しかし、この性能は殺戮の悪鬼なのだろう?」

 

 それは不敵に笑っているようにも見えるMSだ。見慣れたジムのような優美な感じはなく、骨太で力がみなぎっている。関節部の強化と特徴的なシールドの形がそういう印象を持たせるのかもしれない。

 

 今、ダリル・ローレンツの因縁のライバルが再びガンダムに乗る。

 

「気に入りませんか」

「気に入らないわけがない。いいや、大いに気に入った。このガンダムとなら俺はジオンなどに負けやしない。世界の果てまで行けそうだ」

 

 

 

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