●守られなかった約束
厳しい戦いの後、ランバ・ラル隊は補給の為に帰還する。
命令系統から外れた任務を押しつけられた時、事前に補充を取り決めを交わしていたからだ。
だが副官のクランプが書類を眺めると、実に愉快な文字が躍って居た。
新兵が二名、ザク二機。これだけならば問題ない。
「なんだ、文句があるのか? 飛行機乗りとタンクの適性持ち、お前のところの条件には合致して居ると思うが」
「うちに入隊規定なんざありませんがね。まあそこに問題はありません」
飛行機乗りは亡命者で、モビルスーツの訓練が終わったばかり。
ルナタンクの方は勧められるまま適性試験を受け、単位取得による早期卒業で兵学校を追い出されただけ。
亡命者とド素人を寄こされるとは、まったく嫌われたモノだ。
だがそれでも貴重な兵士には違いないし、色んな任務を任されるので動かせるマシンの選択肢は多いに越したことはない。
「事前の申し送りでは、可能な限り
「……『我隊』にも余裕はない。アレが精々だ」
基地司令は親の仇でも見るような眼で、我軍とは言わず我隊とだけ口にした。
要するに上から補充を寄こさないと言われ、取り決めを守るために仕方無く手持ちの駒を切ったのだ。基地司令から見れば本部のラル家嫌いに巻き込まれたとばっちりと言うことだろう。
「修理を先延ばしにしていた機体を組み上げただけじゃないですか。アレではとうてい次の任務には……」
「クランプ。そこまでにしておけ」
事務屋でもあるクランプが抗議するのを、黙って見ていたランバ・ラルが止めた。
彼が直接抗議しなかったのは、隊長自らがやると後にシコリが残るからだ。
これまで止めなかったのは双方のガス抜きのため。
クランプには隊の不満を口にさせ、基地司令には上からの命令なのだと言い訳を通させたのだ。
「基地司令の御厚意をありがたく受領させていただきます。ハンガーは使わせていただいても?」
「あまり占領しないならば構わん」
オーバーホールせねばならない機体込みで、可能な限り修理を行う。
そこが双方の妥協点だった。
ラルの敬礼に対し、基地司令はタバコに火を点けることで答えた。
納得はするが感謝はしない、と。
●妥協案は現地改修
「大尉。良かったんですか?」
「仕方あるまい。警備用の05を回されても困る」
退出後、クランプの言葉にラルは簡潔に答えた。
上層部に睨まれている以上はどうにもならないし、補給その物を否定される方がよほど問題だ。
そういう意味では補充があるだけマシといえる。
「大尉がそうおっしゃるなら自分からは何も。ただ現実問題としてどうされます?」
「なんとかする他はあるまい。……しかしコレは酷いな」
二人がハンガーに辿りつくと、損傷した隊のモビルスーツ。
そしてソレにも負けないほどの補充機である。
二機は中破ダメージを受けた後、応急処置だけを施されてお蔵入りだった。
他にも損傷機や基地の修理があるのか、後回しに回されていたのだ。
「お前さんがた、本気でコイツらを使うのか? 二個一にしちまった方が確実だと思うが」
整備主任のおやっさんが声を掛けて来るが、実にその通りの状態だ。
二機とも片腕が故障しており、足回りもかなり怪しい所である。
宇宙ゆえに歩く必要はないが、AMBACによる反動機動は最悪だろう。
二機のパーツで一機を万全にした方が良いと提案するのも判る。
「戦力は必要だ。それにモビルスーツ乗りは育つのが早い。できるだけ乗せておいてやりたい」
一方で、ラル隊にも事情があった。
既に次の任務が決まっている上に、寄こされたパイロットは二名とも新人だ。
少しでも長く乗せておかなければ、いつまでも新人のままである。
「それで死ぬのは、その新人だぞ?」
「だからハンガーを使う許可を取った。仕様変更で乗り切るしかあるまい」
モビルスーツが連邦に対して有利なのは、その機動性だ。
手足を動かしてAMBAC機動を掛け、少ない推進力で移動方向を切り替える。
これは戦闘機には不可能な方法であるし、それが出来ないのであれば機雷にあたって死ぬ可能性すらあった。
「クランプ。お前はアコース達を連れ、カンピンになったザクで先行しろ」
「了解です。暗礁地帯で拠点になる場所を確保します」
ラルは副官であるクランプに、無事な機体の整備が終わり次第に出撃を命じた。
「情報は少しでも欲しい、頼んだぞ。私は腕回りをなんとかした後に追いつく」
「はっ!」
ラルは思案をまとめながらハンガー周囲の物資を見渡した。
何が使えて何が使えないのか、素早く頭を切り替えて行く。
「片腕を捨てればいい。シールド二枚か大型の装甲板を盾代わりに張りつける。この際だ、手首も外して適当な火器を付けといてくれ」
「また随分と思いきったな」
腕を動かして自在に戦おうと思うから問題なのである。
ラルはシールドを掲げて飛び込む事を前提に、左腕の稼働半径を諦めた。
そして腕を使わないのであれば、手もまた不要だ。
これで両腕を修理する必要がなくなる。
ラル機も改装計画に含めれば、その腕を使って三機分の片腕が賄える筈だ。
「機銃でもロケット弾でも付けてやるが、
「メインカメラに連動させて置いてくれ。新人ならそっちの方が当て易い」
ここで思い出したのが新兵二人の経歴だ。
戦闘機は最初から銃座が固定されているし、ルナタンクも似た様なものである。
正面視界に入れた時だけ撃てばよいのだ。
その方が当たり易いし、余計な操作をしないぶんだけ新人も覚え易いだろう。
「なんとかなりそうだな。しかし足はどうする?」
「ワイヤーガンを使おう。コロニー初期にはそうして移動して居たと言うじゃないか」
コロニーは回転する事で疑似重力を得ている。
だが建設当初はそうもいかず、ワイヤーを撃ち込んでウインチを巻き取る形で移動して居たとか。
「降参だ。本当に仕様変更した新型に見えるかもな」
「謙遜せんでくれ。親爺に聞いた話を思い出しただけさ」
肩をすくめる整備長にラルは笑って見せた。
父であるジンバ・ラルや周囲の人間達に聞いた経験をまとめただけだと苦笑した。
こうして右手のハードポイントにワイヤーロッドを、左手に大型シールドと機銃を取りつけた機体が完成する。
これを操るのは歴戦のランバ・ラル、そして新兵として補充されたトーマス・クルツとフレデリック・ブラウンの三人であった。
彼らの活躍でこの現地改修は正式な物となり、グフと呼ばれる機体の雛型になったのである。
と言う訳でグフっぽい何かを、現地改修で成立させてみました。
開戦して直ぐにグフみたいなナニカができれば、まあ使えるよねって妥協案です。
これをベースに新型を造れば、アイデアが先に有る分だけ速いんじゃないですかね?
なおアイデアを思いついた続きを書く予定ですが……。
グフはジャブロー強襲用の局地専用だったんだよ!
くらいのショートストーリーになるかと。
●現地改修案
左腕:大型装甲板、またはシールド二枚をVの字状に
左手:機銃かロケットランチャーを直接設置。手首そのものを換えます
右腕:ワイヤーガンを付ける。電撃・ヒート装置はウインチが一つしか余って無かった為
右手:普通にマシンガンを持ちます。持ちにくいので切り詰めたライトマシンガンを提案
ようするにザクタンクと同じノリですね