●トーチカを叩け
ランバ・ラル隊は戦力を整え暗礁区域に向う。
来るべきルナツー攻略に向けて、今のうちに連邦の哨戒拠点を調査。可能であれば叩く為だ。
そこは比較的大きな隕石であり、哨戒拠点が設置され、見張り台と砲台がある。
そしてセイバーフィッシュや戦闘ポットをはじめとした兵器が数機ほど格納されていた。
「心配するな。敵の主力はクランプ隊が引きつけてくれる」
「はっ、はい!」
「……はいよ」
ラルが声を掛けると二人の新兵の反応は両極端だった。
フレデリック・ブラウンは緊張して声が裏返り、トーマス・クルツは不敵というか一応といった風情で応える。
もっとも共にモビルスーツの訓練が終わったというだけの話で、本当の経験は違う。
ブラウンは完全な新兵、クルツの方は亡命する前は航空兵として活動して居た。
「今回の目的はトーチカを叩いておき、合流後に潰し易くする。うまくすれば逃げ出してくれるかもしれん」
「そう旨くいくかねぇ。まあ見張り台か砲のどっちかを潰せればいいか」
ただの景気付けなのにクルツは一々反応した。
言いようの無い不満が挙げ足取りに向かっただけだろうと、ラルは気にもせずに戦場の様子を眺め直した。
ラル隊にはクルツの様に境遇上の不満を抱えた者が少なくない。
というよりも、他ならぬラル自身がその一人だ。
だが言葉での反抗で済ませられるならば問題無いし、打ち解ける第一歩だとも言えた。
「始まったぞ。隕石の形状で部分遮蔽を取る。合図したらついてこい!」
「了解!」
「了解」
遠方で牽制を兼ねた砲火が上がり、設置されていた何かの機材が吹き飛んだ。
応射するようにトーチカの砲座が火を吹き、旧式ながらメガ粒子砲の上げる無言の唸りが宙を染め上げた。
それを援護射撃代わりにして、格納されているメカのうち、セイバーフィッシュやトリアエーズの編隊が飛び出して行くのが見える。
その間、ラルは自機の腕を水平に上げ、新兵の操る二機を制していた。
「まだだ。まだ、まだ……良し行け!」
アナログなサーチライトと、やや遅れて起動するシンプルな赤外線探知による視認警戒網。
警戒されているタイミングを外し、ラルは自機は腕を降ろして簡単な合図を送った。
「おお!」
「わぁ!」
三機のザクが、左手の大盾を掲げて身を隠し隕石に取りついた。
率先する蒼いザクの後ろを二機が追随。この段階では気が付かれていないと信じて射撃はしない。
もっとも相手の攻撃が来ない場所に向かって居るので、撃たない方が安全ともいえる。
そう信じているからこそ、クルツはともかくブラウンは無駄撃ちを避けられたのかもしれない。
「部分遮蔽を確保した。今度はこちらに敵の目を引き付ける。盾に隠れて撃ちまくれ!」
「当たれ当たれ当たれ!」
「なかなか当たらねえが……当ててる奴も居る、と」
下半身を隕石の地形で、上半身を大盾で隠してザクがマシンガンを放つ。
三機のマシンガンが火を吹き、宇宙でなければバンバンバンと音がしただろう。
だが当たるのはラル機のみで、二機はそれなり以下である。
ラル機を見れば右手でザクマシンガンを保持し、左腕の盾でそれを抑えつける様に固定している。
クルツはそれを真似て銃身を安定させると有効打を奪い始めた。
「フレデリック! いつまで無駄弾撃ってやがる! そのうち弾が切れるぞ」
「は、はい!」
「言ってやるな。今は囮でもある。注意せねばならんはこの後だ」
三機は身を寄せているために御肌の触れ合い回線で通信を入れあって居る。
若い二人の会話を聞きながら、ラルは頼もしさを感じた。
クルツはモビルスーツに慣れて無いだけで技術を盗むコツを知って居るし、ブラウンは素直に忠告を聞いて実行出来る。
これが血気盛んなだけの連中なら、無駄弾を撃つ前に喧嘩で大変だろう。
場合によっては命令い従わせる為に、どちらが上かを腕力で教え込まねばならないところだ。
「このレベルの隕石では稜線射撃が出来んからな、戦闘ポッドが出て来る。接近戦になるぞ」
稜線射撃とは重力を利用した山越射撃の事だ。
曲線を描いて落ちる様に撃つため、障害物で直接射撃が出来ない相手を狙いつつ、メカの弱点である上面装甲を狙えると言う二重の利点がある。
「せっ接近戦!? ……それと稜線射撃ですか?」
「ちっ。てめえ戦車乗り何だろうがよ! なに習って来やがった!」
「知らん訳ではあるまい。初の実戦でいきなり頭から出てこなくとも仕方無かろう。とはいえ残弾も気になる所だ」
聞いたことはあっても、身に付けて居ない単語を聞き返す言葉。
知っては居るのだろうとラルは口にしつつ、体感ながら残弾に考慮を馳せた。
目の方は体感では測れない、新装備の大盾を何度も確認して居る。
自分は問題無いがブラウン機は怪しく、クルツ機もまだ数射は余裕があるという程度に過ぎない。
ラルは哨戒拠点の攻略に向けて、目まぐるしく計算を始めた。
●至近戦闘
残る弾と、残った時間。
やれること、やらねばならないことを前提に、ラルは任務を割り振っていく。
「トーマスは適当に撃って援護射撃。フレデリックはギリギリまで盾を掲げるだけで何もしなくていい、後は私達のサポートに回れ」
「はいはい。適当……ね」
「了解であります!」
ここでラルがミスしたとすれば、敵中列以降を撃てと具体的な指示をしなかったことだ。
ブラウン機はラルが指示したまま大盾を構えて身を縮こまらせている。
おそらく操縦席では、どちらの方向にブースターを吹かしたら逃げられるのか必死で考えている筈だ。
「来たぞ、戦闘ポットだ。少なくとも二個小隊、六機以上は居る」
敵の戦闘指揮官も熟練なのか、それともデータ派なのかこちらの残弾を把握して攻めて来た。
戦闘ポットの武骨な体が姿を現し、機銃を撃ちながら接近して来たのだ。
「フレデリックは十秒後に右の陰に飛べ、トーマ……まだ速い!」
「ハハハハっ! 当たるじゃないか」
問題が生じたのは、ラル機が機先を制して飛び出した時だ。
ブラウン機を退避させつつ、援護射撃を指示する前に、クルツ機がマシンガンを使ったのである。
当然ながら最初の一機を血祭りに上げ、二機目を削っただけでマシンガンは沈黙。
残りの機体が一斉にこちらへ迫って来るのだ。
ラル機はヒートホークで一機に切りつけ、もう一機に向かうので精いっぱいだ。
「フレデリック、お前の銃を寄こせ! って居ねえじゃないか。仕方ねえ!」
ここでクルツは左腕で盾を掲げる動作を中断し、そのまま左手に割り振られているトリガーを押した。
据え付けられた機銃がバババとマシンガンよりも小さな反応を示す。
だが相手の方から接近して居る事もあり、戦闘の機体を潰すには十分過ぎる。
ラル機が後続に咄嗟にワイヤーを伸ばしていた事もあり、相手の隊列は分断。
三方から残りの弾を撃ち込んで殲滅した。
「凄いです、トーマスさん!」
「……よく咄嗟に思いついたな。格闘戦を選んで居たら援護できない所だった」
ブラウンは素直にその場で歓声をあげ、ラルの方も接触回線を開いて、ひとまずは褒めて伸ばす事にした。
勝手に攻撃を開始したのは問題だが、元はといえば、新兵相手に具体的に指示しなかった自身にも問題はある。
ある程度は手綱を付けないと増長してやり難くなるだろうが、お互いに理解し合わぬ身では、釘を刺す程度で良いだろう。
それにいつまでも新兵だからと指示する訳でもなく、慣れたら一人立ちさせて、自分の判断で行動させるのだから。
「まあな。こっちはカメラの先にしか飛ばねえと聞いてたし、オレ向きだと思ってたんだよ」
「そうか。機体の特性を把握すのは良いことだ。しかし……使う気があるなら先に言って欲しい物だな。それだけ気を付けていれば満点だったろう」
相互理解の問題があったことだけは確認させ、『良くやった』と言うニュアンスで告げれば、『次はちゃんとするよ』と言外に還ってくる。
クルツの方も場合によっては救援に来た味方を撃つ可能性があったこともあり、それなりに反省はしているようだ。
不満から尖った所もあるが、ランバ・ラル隊でなければ、文句どころではすまない事くらいは理解して居るのだろう。
このまま何事もなければ、半端物の寄り合い所帯として機能するだろう。
その後は残弾を分配し、クランプ隊と合流してトーチカを潰して撤収した。
と言う訳で二回目を書いてみました。
グフっぽい機体で頑張って、次回で地上に降ろされる。
ザニーか先行量産型のジムと戦う感じ……なのかな?
フィンガーバルカンも現地改修だったら使い方次第で、壊れた手の代わりになる。
その意味では悪くないという感じに収まると思います。
ワイヤーとかヒートロッドも、接近戦のみならば使えるのでは? という話になるはず。
問題なのはそういった推測と感想を連ねてるだけで、あまり書いてて面白くない?
やはり、モビルスーツ戦をしないと、戦闘物として始めたガンダムっぽくないからでしょうか。
書いては見た感じですが、もしかしたら、ここで打ち切り・停止になるかもしれません。