●偽りの攻撃作戦
ルナツー周辺にある暗礁地帯の内、それなりの隕石群を元にした基地がある。
そこへ陽動作戦の一環として、ランバ・ラル隊を中心にした、それなりの部隊が襲撃して居た。
「斥候の陸戦隊からの報告によれば、通路の左右に機銃による砲台群があるとのことだ。潰せ」
「「了解」」
隕石の一部に三機のザクが降下した。
その間にクランプ隊は牽制攻撃と陸戦隊の浸透突破を測って居る。
「右はオレがやる。左はそっちでいいぞ」
「助かります」
トーマス・クルツのザクが新しく覚えた右回り左向きのテクニックで、カーブを曲がった瞬間に大盾を押し込んだ。
とはいえワイヤーを引っかけただけなので、普通のザクよりはやり易い。
フレデリック・ブラウンは素直に大盾をかざしたまま接近し、機銃砲台の頭上に当たる部分まで接近。
左手の新型機銃を連射し、あっさりと片を付ける。
「そっちの機銃の塩梅だどうだ? 随分と調子が良いじゃねえか」
「そうですね。二割増しは良くなった気がします」
これまで三機は汎用の60mm機銃を無理やり設置して使って居たが、試験用に新型の腕を回されていた。
左手だけなのが笑えるが、中でもブラウン機の腕は、重量級車両の補助や、精鋭である親衛隊が試験的に使って居る90mmへ換装されている。
これ以上に大きくしようとしたら、ザクマシンガンと同じ110mmにでもするしかないだろう。
「トーマスさんの手はいかがですか? 機銃なのに武器が持てるのは凄いですよね」
「その分、ヤワだけどな。……ったく整備の連中に文句言われちまわぁ」
一方で、クルツ機は指先の機能を残したまま機銃化した75mmを束ねて使って居る。
新しく設計された最新のモデルといえば聞こえは良いが、整備性という点に置いて劣悪な存在だった。
三種類の中で最も高性能、かつ技術部の自信作とはいえ、あまり評判は良くない。
「その辺りが判ってくれば、トーマスも新人卒業だな。90mmは予備火器ならともかく腕にするには共通性と汎用性が足りんし、75mmはそれ以前の存在だ」
「となると大尉の使ってるのが正式採用でしょうか?」
「悪かねえんだけど、そいつは中途半端なんだよなあ」
三つある試験型の腕の内、最後の一つは新型モビルスーツに使う為の手だ。
改良されているだけに性能は良いがごく普通で、用途は当たり前のようにしか使えない。
……ただし、手首周辺にマゼラアタック用の35mm機銃を外部設置できるようになっている。
ハードポイントの位置や、手首周辺の取り回しが改善されているのだ。
そこに外部設置型の機銃を取りつけるので、サイズはどうしても小さくなるものの、今までのモビルスーツに導入出来るのが大きな点である。
「弾はねえ、火力は低い。一度だけ使わせてもらったが、気を抜くともう弾切れだ」
「最初に使ったのが60mmで今が75mmだから余計にそう思うだけだ。慣れれば便利ではあるぞ」
クルツは元が航空兵であり、戦闘機の様に複数の武装同時併用を考慮に入れている。
その意味ではザクマシンガンを基準に、状況に合わせて60mmなり75mmを追加で射撃することを念頭に入れているのだ。
対してラルはあくまで普通のザクの延長上……マシンガンや格闘戦をメインに据えている。
咄嗟に使えれば良い、それだけで今までのザクよりマシだと言うスタンスだった。
「結局、大尉はどう報告されるのですか?」
「……そうさな。兵站の問題から35mmをマゼラと共用。90mmはサブマシンガンとして要望するか、ワイヤーの代わりに単発の速射砲というところだな」
「そんな所だな。っと追加のお客さんが来たぜ」
一回の兵士に話す事ではないが、新人教育を兼ねてラルは話しておくことにした。
クルツにはエースの素養があるし、ブラウンは素直なので生き残れば古参の隊長にはなれるだろう。
愚連隊と見なされかねないラル隊ではあるが、若い彼らならば転属も効くだろう。
そんな事を思いつつ、気楽に考えて居られる時間は終わった。
この基地を周げkした本当の理由が、彼らを待ち受けていたのだから。
●モビルスーツ vs モビルスーツ
ミノフスキー粒子によって普通のセンサーどころか熱源探知もやり難くなっている。
だが一つだけ、普通に通じるモノが合った。
今までソレが機能していなかったのは、単に戦闘の余波で騒音が消えて居なかったに過ぎない。
……そう、音源探知は宇宙世紀でも立派に通用する技術なのだ。
もちろん宇宙空間では機能しないが、ここは基地なので振動音を探知できる。
「音源の位置が高い? 全長10m以上はあるぞ?」
「友軍のザクでしょうか?」
元よりこの作戦は共同任務で、他にも何隊かの小隊が参加して居た。
偵察拠点程度ではなく、れっきとした基地なので当然と言えば当然ながら落とすには戦力が必要だからだ。
ラル隊・クランプ隊を合わせれば、実に中隊規模を越える。
別方向から回って来たザクがこちらに現われてもおかしくはない。
「……っち。そういうことか。離れろ! 連邦のモビルスーツだ!」
だがラルは別の考えをする。
今までの作戦であれば、こういった陽動任務では損を押しつけられてきた。
お前達だけで行け、時間を稼げればそれで良い。
暗にそう言われて、十分な支援もなしに飛び込まされることもあった。
これまでも陸戦隊を忍びこませて、可能な限り手を打って来たのだ。
「も、モビルスーツ!?」
「クソが! そういうことかよ!」
「散開して集中砲撃を避けろ。盾でやり過ごしてから各個に反撃する」
驚くブラウンは盾を構えたまま後退するだけだったが、クルツは障害物の陰へ向かって居る。
ラルだけが盾を構えて突進し、ザクマシンガンで牽制射撃を放った。
「鹵獲されたザクか」
先手は見なれたザクだった。
カラーリングをオレンジに塗装し直し、試験機として利用されていたようだ。
双方共にマシンガンを撃ち合うが、熟練の差と、盾のサイズの差が出る。
ラルの大盾をマシンガンは削るだけ。
逆に連邦側のザクは態勢を傾斜させず、肩のシールドを使いこなせないでいた。
何発か当ててひるんだところへ、盾による体当たりを掛けながら、奥へ弾を打ち続ける。
「まだ来るぞ! 当たらんでも構わん、撃ち続けろ。頭を上げさせるな」
「はっはい!」
ブラウンは素直に撃ち続けて、奥から出撃しようとする二機目のザクを抑えた。
途中で弾が尽きるが、盾を構えつつ、時々機銃による射撃の機会を窺っている。
だがクルツは焦り、いや、興奮しながら突っ込んで行った。
「けっ。ラチが開かねえ!」
「迂闊だぞ! 敵は何機居るのかも判らん。ここは陸戦隊からの情報を待て!」
連邦は鹵獲したザクを修理し、自分達がモビルスーツを開発した時の為に実験を行って居たのだろう。
ルナツーでも同様の試験を行っているだろうが、リスクを考えれば分散させるのが正しい。
だから居ても数機しかいない可能性はある。
だが、可能性だけならば、ここが本格的な実験基地である可能性もあるのだ。
ジオンにもそう言った場所があると噂されているし……そもそも、戦闘ポットやセイバーフィッシュが残っている可能性も捨てるべきではない。
「んだと!? 盾、いや鉄板かよ!」
「言わんこっちゃない! フレデリックはこの銃で援護しろ。私も前に出る」
「了解です!」
こちらの大盾を見習ったのだろう。
連邦は動きの鈍そうな試験機が、大きな鉄板を急造の盾として使って居た。
急拵えの盾を利用して居るのはお互い様だが、連邦は更に一段階ほど戦術を勧めている。
軽量型の試験機がマシンガンと短剣を手に牽制を繰り返し、鈍重な機体には肩へキャノン砲が付いていたのだ。
「クソが! あんな不細工な機体で当てて来るだと?」
「航空機や戦車では連邦の方が優れているからな。ましてここは連中の基地だ。何度も練習して居るのだろうよ」
予め決められたパターンで、連携を組んで居るから当て易い。
ただそれだけのことだが、ここは狭い基地である。
宇宙空間のように、動き回って回避する事ができないのが辛い。
「このままじゃこっちの盾が保たねえ。どうすんだよコレ!?」
「貴様の……。いや、何とかする事にしよう」
独断専行は後で殴りつけるとして、ラルは目の前の出来ごとに対処する事にした。
相手は補修資材の鉄板をそのまま使って、肩のキャノンで砲撃を行っている。
そして、そいつの陰に隠れつつ、近寄ったら牽制するもう一機が居るのだ。
「ワイヤーを使え。盾越しに攻撃する」
「っ! その手があったか」
大盾が保つ内に二機は接近すると、右手のワイヤーを振りかざした。
相手の鉄板越しに適当な場所に引っかけて、無理やり態勢を崩す作戦だ。
地上ならばまだしも、隕石程度の重力ならばそれも可能だろう。
「そういえば工作用の電圧があったな。これでも食らうがいい!」
ワイヤー射出して引っ張って移動しているが、元は巻き上げ用のウインチで巻き取る予定だった。
ウインチの数が足らないのでラル機は隔壁などをショートさせる為に、電圧機を代わりに付けていたのだ。
「上手く行けよ!」
ワイヤーを引っ張りながら、同時に電圧を掛ける。
すると抵抗して居た鈍重な機体が、ショートしないでも動きを鈍らせた。
流石に一撃で落ちるとは思って居なかったので、ラル機はそのまま体当たりを掛ける。
崩れた所へ左手でヒートホークを掴む。
そして援護の為に飛び出した軽量機ともつれあう様に組み合った。
「どうした! あっちの機体は支援せんのか? このままでは落ちちまうぞ!」
ラル機はワイヤーを絡めたままなので、相手が抵抗しなければ電圧をかけ続けられる。
重量型は直ぐに動けるような性能をして居ないし、トーマス機がフリーになったので、その内に倒せるだろう。
「……だ。余計な、御世話だってん、だ、ろうが!」
「「それはお互い様だな」
お肌の接触回線によって、途切れ途切れに相手に言葉が伝わってくる。
相手の短剣がワイヤーを切ろうとしたのをラルは見逃さず、斧を叩き込んで戦闘を終わらせた。
ここにモビルスーツ同士の戦いが終わりを告げたのである。
「皮肉だな」
「何がですか?」
残骸を調べて居た時、面白い物が見つかった。
軽量機が試験的に持って居たマシンガンなのだが……。
「ジオン製よりも小さくて持ち易いと来てやがる。大尉の言ってたことは本当だな」
「凄いですね。まるで予言みたいです」
「まあ、お互いが考えることは同じだからな」
それは90mmの機銃をマシンガンに仕立てたもので、急造ゆえに100mmはありそうだが、洗練して行くに従って小さくなるだろう。
「コレが正式採用される時はどうなりますかね?」
「だから予言ではないといったろう」
そう言いながら、ラルは現状の機体に足りない物を考えて見た。
それは自分達の行く末にも関わるし、間に合わせで作れるならば、やってみて損はあるまい。
ザクマシンガンを大型化しつつ、90mmくらいのサブマシンガンを携行。
そこまでの予想が外れることはあるまい。
その上で、ラル機が使って居る35mmがあれば火力としては申し分あるまい。
盾が役に立って居るのは、ここ最近の戦闘でも、相手が真似したことでも十分だ。
「長物とは言わんが剣の長さが欲しい所だな。ワイヤーの電圧も強化できれば言うことはないが」
そういってまだ見ぬどころか、計画段階の新型に心を馳せるのであった。
と言う訳で三回目。
開戦初期ならばグフのコンセプトは強いよねと言う話です。
マゼラアタックの35mmを左手に流用、サーベルも追加して終了。
あとはC型からF型に移行してる頃の筈ですが、陸戦用のJ型を設計する段階で、グフッぽいのが間に合いそうな勢いです。
MS-06Fのバリエーションで、06FG
↓
MS-06Jのバリエーションで、06JG
↓
グフは生産されない
と言う感じでしょうかね?
連邦の機体はザク、ザクをバラして連邦側のパーツを組み入れたのが二機。
強化の為にいろいろ付け過ぎた鈍重な重量型、最低限で済ませた軽量型と言う感じですね。
基本的にはザクなのですが。
次回があったら、新型ぽいザクをもらって、地上に降りろと言う感じになるかと。
(ルナツー攻略戦は負けるので)