グフで頑張る話【完結】   作:ノイラーテム

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方針転換

●ルナツー攻略作戦の中止と……

 ランバ・ラルは場違いな場所に呼び出され、懐かしい顔に出逢った。

 その人物から直接命令が降るのは妙なことだが、彼とならば、この場所でもおかしくはあるまい。

 

「貴様らの持ち帰ったデータにより、ルナツー攻撃作戦は中断になった。落とすには総力を結集する必要があるだろう」

「はっ……」

 ドズル・ザビ中将はテーブルの上に二つの指令書を用意して居た。

どちらかを選べと言う態で、実際には決まっているパターンだ。

勿論、ついでに出来るから両方こなせという無茶振りもありえる。

 

 だが、どちらかを問う前に、ドズルは機密書類らしく封筒を放って来た。

 

「思うところがあれば口にして構わんぞ」

「拝見いたします。……第三の降下作戦ですか」

 コロニーの落下で防御力の墜ちた、北米とオーストラリアにのみ降下部隊を降ろして居る。

ルナツー攻略作戦を中止し、浮いた戦力で東欧に降下するというものだ。

 

 一応の目的はアフリカの資源地帯を攻略しつつ、欧州を席巻して食糧生産地を抑える。

だが本命は、ユーラシア大陸からジャブローヘの補給ラインを遮断する事に在った。

場合によってはジャブローからオーストラリアに向けらる予定の戦力を引き付け、その間に大陸を占拠するとある。

 

 広大なオーストラリア大陸を落とし、資源も食糧生産地も抑え、完全な要塞化すれば確かに理想的だろう。

 

「自分は軍人です。行けと言われれば嫌応はありません。せめて万全な補給は頂きたい所ですが」

「ふん。相変わらず食えん奴だな」

 言いたいことを言っても良いとは言ったが、実の所は違う。

ドズルが上層部の批判をする訳にはいかない。

 

 代わりに発言させてガス抜きをしつつ、上手い理由を口にしたならば採用して上申する。

問題が起きてもラル家の言った事で済むし、……ラル家の現状に対する不満であれば可能な限り聞く気でいた。

旧知ゆえの後ろめたさを払しょくしつつ、自分に不都合が合ってもゴリ押しで流すつもりだったのだ。

 

 とはいえラルとて名家の出た。

そんなことは百も承知だし、ドズルが口を効いてくれても、現場が了承するとは限らない事を知って居た。

ならば可能な限り、部隊の補給状況を良くするのが精々だ。

 

「ここからはオフレコだぞ? 現状は北米とオーストラリアだけだから効率良く進んでいる」

「でしょうな」

 お互いに他言無用だと言われて、信じるほど馬鹿でも無い。

適当に相槌を打って、命令ならば聞くという態度は崩さない。

 

「それをユーラシアにまで手を出すなんて馬鹿げている! 東欧の工場力が冷戦後に暴露されたのを参謀本部は知らんと見える」

「まあアフリカ大陸の方が本命なのでしょう。植民地引き上げに伴う工業投資の破壊は有名でしたからな」

 植民地引き上げ問題。

今も残る連邦への不信は当時からずっと変わらない。

 

 ヨーロッパ列強は植民地から引き揚げる際に、道路・建物などのインフラ代金を要求。

植民地政策に賠償を払うどころか、法外な金を要求したのだ。

しかもコレが受け入れられないとしるや、工業機材を全て接収、技術者たちも引き上げたと言う。

 

 だからこそコロニーの植民地制作に対して今も不信を抱いて居るし……。

逆説的にいえば、発展の遅れたアフリカ地域には、今もまだ膨大な資源が眠って居ると言えた。

 

「それにユーラシア大陸からジャブローを経由して、オーストラリアに送られる戦力を黙って見ている訳にもいかんでしょう」

「……理論は判る。絵に描いた餅だとしか思えんがな」

 最後までラルが批判めいた事を口にしなかったので、ドズルは溜息をついて降参だと告げた。

そして用意した二通のうち、片方でピラピラと風を扇いで見せる。

 

「貴様にガルマへ送る物資の護衛を任せる。必要な装備は、その都度に持って行って構わんぞ」

「はっ! ランバ・ラル任務を受諾いたします!」

 ラルは敬礼をして一度話を区切る。

その上で予想される追加任務に溜息を着いた。

 

「……しかし必要性の寓意が大きい様に思えますが?」

 どうして輸送任務に自分が必要だろうか。

そもそも輸送の護衛に、必要な装備を持って行って良いなどとは言葉の範囲が広すぎる。

例えギレンなりキシリアから新型装備を渡すなと言われたとしても、だ。

 

「貴様にやってもらいたいのはその後だ。物資を北米司令部に渡した後、ガルマが難儀して居る要件に協力してやって欲しい」

 ここでドズルは二枚目の命令書を渡した。

時間差で発行された優位性の高い物で、一枚目の命令を完了すると同時に、次の命令に移行するモノだと思われた。

 

「ガルマ大佐の要件と言いますとハワイ……」

 ドズルは身内に甘い男だが、ワザワザその援護に職権乱用するほどではない。

だとすると重要な案件……先ほど見せられた第三の降下作戦を変更し得るほどの内容だろう。

 

 となれば時間と共に完了するハワイ攻略作戦への援護ではありえない。

 

「……いえ、ジャブローへの入り口ですか」

「そうだ。貴様には南米大陸の周囲を探り、橋頭堡ないし比較的に安全な降下地点を探してもらう」

 南米ジャブロー攻略が、ジオン最優先の課題。

だが現状では南米侵攻は夢のまた夢だ。

 

 ユカタン半島は双方の部隊が鉄量の陣地を築いて居る。

少しでも姿を見せれば、どちらともなく長距離砲撃が飛んで来るだろう。

かといって直接降下すれば対空砲撃を受けるし、潜水艦で上陸作戦行うには数が足りなさ過ぎた。

 

「なんとか潜り込める場所が見つかればそれで構わん。爆撃のついでに全力で降下なり上陸を支援できる」

 ユーラシアを占拠して、連邦を分断したとしよう。

それで分断されるのは、ジオンも同じこと。

どうして連邦が反撃に出てこないと言えるだろうか?

もちろんギレン総帥ならば、効率良く戦力を誘導する自信があるのかもしれないが。

 

「……ユ-ラシア大陸に攻め込むよりは採算が高い博打ですな」

 何が博打かと言って、ラル隊の犠牲だけで済むのだ。

調査に失敗したとしても僅かで済むし、成功すればメリットは大きかった。

 

 こちらの案は可能な橋頭堡があればだが、徐々に南米を蚕食して行く。

そして連邦の増援を海で阻みながら、ジャブローへの入り口をゆっくりと見付ければ良い。

 

「可能性の目があり、ジオン全体の為ならば仕方ありますまい。このラルの一命を賭して」

「すまんな。……代わりに持って行けるモノは全部持って行ってくれて構わん」

 二枚目の命令書は、ジャブロー攻略作戦に向けての徴発許可証だった。

最優先課題ゆえにその効果は大きい。

いかにラル家を嫌う者が居ても、この命令書の前には霞むだろう。

 

「しかし新型装備に習熟するにしても時間がありませんが、ジャブローを抜くとなれば相当な物ですぞ?」

「貴様とは我・俺の仲だったではないか。ハッキリと言ってよいんだぞ、ちゃんと扱える機体を寄こせと」

 北米司令部への補給にかこつけて、その一部を持って行く。

そこまでなら問題はないが、問題は新型装備を即座に使えるとは限らない。

 

 場合によっては組んだばかりの06の方が助かると言わんばかりのラルに、ドズルはニヤリと厳つい笑顔を浮かべた。

死地に向かう旧友に、なんでもしてやろうと言わんばかりだ。

 

●対モビルスーツ用

 子供のころのような笑顔を浮かべたドズルは、自慢するかのようにガルマ専用機を見せた。

ガルマにも用意してやらねばなるまいと、以前から準備してあった物だ。

あえていうならば、仕様が変更がされたばかりの様だ。

 

「ん? あれは……」

「そうだ。貴様がやっておった試みを一から修正して導入しておる」

 試験的にしたのではなく、壊れていたから仕方無く現地改修をした。

そう言いたい気持ちを抑えて。ガルマ専用機を眺める。

 

【MS-06FS:ガルマ専用ザク】

 額には指向性通信用のブレードアンテナは元より、ヘッドバルカンが装備されている。

だが大きく違うには腕で、左腕部のハードポイントに大盾を、右腕部には機関砲を固定装備にしていた。

手首周辺も調整してあるので機銃を装備できるのだろう、そして何より、長剣を装備して居るのが目立つ。

 

「ガルマは司令官だからな、そこだけは譲れんかった。しかし貴様らに渡す機体は、このザクを元にした完熟生産品(ゴールデンマター)になる」

「使えるならば鞭である必要はありませんよ。しかし……これは良いですな」

 見栄え良く、ザビ家の専用機ゆえに限定生産品を前提に構築されている。

だが完熟生産品(ゴールデンマター)というからには、補給を考慮した製品になっているに違いない。

 

【MS-06FG:ザク・グラディエイター】

 簡単に言えば、対モビルスーツ用のザク。

その仕様書を見ると、実に期待通りのモノが記載されていた。

 

 左腕の大盾はもちろんのこと、手首にマゼラアタックと共用の35mm、頭部にも設置式で追加可能。

肩の右側に砲身、左側に弾倉とのことで、視界を気にする場合は付けなければ良い。

 

 右手は宙間移動用のワイヤーの代わりに、打撃武器としても使える熱線式のヒートロッドになって居る。

もちろん今まで通りの電圧式ワイヤーに変更可能だと言う。

直接攻撃というよりは、盾や障害物を迂回した、関節攻撃が心強いだろう。

 

「そして何より、新型のザクマシンガンが完成したのですか。130mmとは心強い」

 主兵装のザクマシンガンは110mmから130mmに大型化して居る。

当然ながらザクバズーカやフットミサイルのようなオプションも、規格品ゆえに装備可能。

 

「そうだ。上伸のあった90mmは遅れているが、ヒートソードと並んで意欲的に取り組んでいるらしいな。間に合えば試験品を持たせよう」

「申し訳ないのですが……アレでしょうか?」

 90mmといえば、ラルには気になる物があった。

自分が上伸したのはサブマシンガンの筈だが、ドックの傍らに放置されていたのは、似ても似つかないデカブツだった。

 

「ああ、あれは試験の過程で酔狂な奴がいたらしい。欲しければもってけ、運用データをくれてやればよかろう」

 そこにあったのは90mmの小口径砲身を試す為に、まずは長くして安定させようとしたのだ。

ただしそれだけではブレが酷い上に火力が低くなる。

そこで35mmのように三門を束ねて、ガトリングライフルにしてしまったらしい。

 

「うちには元航空兵がおります。もしかしたら嬉しがるかもしれませんな」

「というとA-10サンダーボルトか? 天下の爆撃王ルーデルが作らせたと言うアレは浪漫だからな」

 なんのかんのといって、彼らも男の子である。

ゴッツイ兵器には目が無いのだ。

 

 ちなみにこんな会話が通じるのは彼ら名家の家系だけである。

宇宙世紀では技術者はそもそも航空機を見たことが無い者が多いし、特にコロニーでは伝説どころか形状すらロクに知らない者がいた。

ドップの形状など、初期の状態ではまともに飛ばず、苦労したとかしないとか。

 

 こうして二人は旧交と浪漫を温めた後、敬礼をして別れることになった。




 と言う訳で、グフに近い物が生産されました。
正確には陸戦用のJ型を作る際に、試験的に対モビルスーツ用の機体を作った感じになります。
グフが強いと言うよりは、相手に陸戦ジムも怪しい時期だからこそ意味がある的な。

【MS-06FG:ザク・グラディエイター】
主兵装:ドラムマガジン式ザクマシンガン(130mm)
副兵装:ザクバズーカ、フットミサイル、クラッカー、オプション式ヘッドバルカン(35mmx3)、電圧式ワイヤー
固定装備:左腕部:大盾、右腕部+右手:ヒートロッド、左手:三連装機銃(35mmx3)
試験型装備:ヒートソード、ガトリングライフル(90mmx3)

 ちなみに作中で語って居ますが、このストーリーではオデッサ降下作戦はまだです。
速攻で北米、次にオーストラリアと相手の防備がガタガタの場所だけ。
ガンダム放映当時はともかく……。
東西冷戦の終わった後の東欧経済・工業力の問題は語り草なので、為政者が知らない筈はないと言うのを前提にして居ます。
(東側の優等生である東ドイツが誇る車両のトラバントでさえ、物凄い酷かったというオチだそうです)

 東欧の資源も取り尽くして居るので降下する意味はない。
でも戦線が停滞するのが判って来たので、オデッサを取ると見せかけてアフリカ占領。
ユーラシア大陸からアフリカ経由でジャブローに送って居る戦力を分断するのが目的。
と言う感じで、原作との順番を逆転させて居ます。オデッサ作戦はジオンが誘導したと言う感じですね。
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