グフで頑張る話【完結】   作:ノイラーテム

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地上戦

 ランバ・ラル隊は地球降下後、キャリホルニアのビーチに居た。

ラフな格好でサングラス姿などは、まるで観光客の様だ。

 

「大尉~。自分達はこんな事をして居ても良いのですか?」

「今はラルさんとでも呼べ。……負傷したタチ達の復帰が間に合うというのと潜入工作の為だ」

 心配そうな顔でフレデリック・ブラウンが椅子から上半身を傾けるが、ラルは気にもせずに肌を焼いて居た。

 

 タチ中尉らが負傷し、ブラウン達が新兵として補充された。

しかしながら南米行きの前に間に合うと聞かされて、急遽時間を取ったのだ。

もちろん潜入工作用というのも嘘ではなく、宇宙市民が持たない日焼けを付ける為でもある。

 

「現地民に偽装する必要はないが、ジオン臭さはここで抜いておけ。できるかぎり訛りもな」

「ど、努力します。しかし現地民との接触まで想定する必要はあるのでしょうか?」

 ラルはサングラスを軽くずらしながら、溜息を着いた。

休暇だと思って満喫しろと行ったのだが、若いブラウンはそこも含めて訓練だと必死に考えているらしい。

 

「ジャブローに直接侵入する穴を探す気はない。結果として見つかれば最善ではあるがな」

 そもそも第三次降下作戦が始まるまでの、短い間に成し遂げなければならない。

今まで工作員が必死で探して見つからなかったのだ、ジャブローヘ直通する穴が見つかったら苦労はしない。

 

「航空機の支援があれば上陸できる浜辺。対空砲座が少なく降下し易い台地。その辺を探す事になるだろう」

 もちろん連邦の増援が大量に出てこない場所だ。

先行して突撃して来る精鋭に合わせて、ラル達がそれを援護する。

 

 空からの援護も合わせれば、一時的に橋頭堡を築くことは可能だろう。

後は味方の速やかな到着と、万全な補給計画があれば南米戦線を実行できるかもしれない。

いきなりジャブローに直撃するのではなく、脇に在るギアナなり、チリなりの裏口から侵入路を探すつもりだ。

 

「あなた。カクテルをお持ちしましたよ。それとトーマスさんが戻って来たようです」

「ほう? 何か掴んだか」

 トーマス・クルツは元もと地球の出なので、ラル達よりも先に演技やら肌を焼くなどの偽装が終わって居る。

一足先に南米からの移民が多い町へ繰り出し、訛りの矯正をしながら情報を集めていたのだ。

 

「ハモン様。ありがたくいただきます」

「こんなおばさん、ハモンで良いのよフレデリックさん」

 ラルの内縁の妻であるクラウレ・ハモンはカクテルを運ぶ銀盆の下に、最低限の情報を集めた紙片を隠した。

ブラウンは僅かに覗いた紙片に気が付きながらも、ハモンの美貌にドキドキしていた。

 

「大尉、これを」

「ラルさんと呼ばんか。しかし味方を装った連邦軍だと? ハッ! 考えることは皆同じらしい」

 クルツからの報告では、鹵獲品のザクを利用した襲撃部隊が存在するとのことだ。

宇宙で見かけた様に連邦軍もモビルスーツ部隊を準備しつつあると言うことだろう。

 

 襲撃部隊はその先駆けであり、少しでもジオンの侵攻を遅らせようとするものであった。

 

「半舷休暇を待つ者には悪いが我々が向かった方が良かろう。陸戦隊の連中を先行させて、新型の完熟訓練を行う」

「はっ!」

 こうしてランバ・ラル隊は潜入用の偽装工作を中断しアリゾナへ向かった。

 

 ランバ・ラル隊は部隊を二つに分け、クランプ隊を援護に当てた。

急造で作られたマゼラトップ砲を持たせ、高台を抑える様に動かしておく。

 

「クランプ隊は囮だ。判るな?」

「相手のルートを絞ってから戦うんです……よね」

 当然ながら襲撃班も帰還を前提に計画を立てている。

もちろん状況次第では最後まで闘う必要を感ているだろうが、撤退ルートや、迎撃ポイントを定めている筈だ。

 

 そこで襲撃を開始した敵を横合いからクランプ隊が攻撃。

相手が撤退ないし、迎撃を決断した所でラルの本隊が満を持して殲滅する。

 

「そういうこったな。……どうやら補給拠点が襲われたらしいぜ。ラルさん、ブラウンさん、行きますよっと!」

「こいつ。休暇返上を根に持っておるな。まあいい」

 アリゾナ各地に潜ませた陸戦隊からの情報で、クルツ機が早速移動を始めた。

それ自体の判断は間違って居ないので、ラルは笑って無礼を許してやった。

 

「その辺りだと物資集積所か。まあ妥当な所だな」

 攻勢においては襲撃者の利というものが存在する。

何処を攻撃するかは仕掛ける側の自由なのだ。

北米司令部も警備を固めている筈だが、北米は占領下でもあり、どうしても警戒が緩くなる。

 

 もし襲撃者に不利な点があるとしたら、ラル隊はゲリラ屋だということだ。

ゲリラ活動のやり方には慣れているし、襲撃者の意図も判る。

そして撤退ルートや迎撃ポイントの想定、そしてそこに伏せるとしたらどの程度であるかの推測も付き易い。

 

「偽装を考えると最近になって作られたマゼラトップ砲を持っているわけがない。これは十中八九、タンクが居るな」

「せっ戦車! 地上では陸戦の王だと、教官殿がおっしゃってました」

 ブラウンが教育課程で、オプションとして戦車資格も取った時、凄腕の鬼教官に習ったらしい。

なるほど、それでスジは良いのに素直なのかと思いつつ、ラルは想定案を絞り込む。

 

「二個小隊は居るとして、タンクは個別に配置か、それとも増強か」

 戦車はモビルスーツとは比べ物にならない射程と、曲射攻撃能力を持っている。

個別に配置して援護としても良いし、三機対三機と思わせておいて、四機目として加勢させても良い。

 

「陸戦隊の報告待ちだが、ここは増強して四つで一小隊と見よう。となると読めて来たぞ」

 警備の部隊と戦闘になった時、同じ数では敗北の危険性がある。

その意味では三を四で抑える形を取り、重ねて奇襲によって絶対有利を保っているのだとラルは予想した。

 

 実際のところ、タンクを潜ませての曲射攻撃は『悪くない』程度に収まってしまう。

なにしろ北米はジオンが抑えているのである、時間を掛けて囲まれたら援護の意味が無い。

速攻で終わらせる為にも、絶対的な優位さは欲しいだろう。

 

「ようし。待ち構えてやるとしよう」

「「了解!」」

 相手の移動ルートを見抜いたラルは、高台の占拠をクランプ隊に任せて先回りする事にした。

自分が相手ならば、そこに移動して八機での攻撃を目論む筈だからだ。

 

 アリゾナ砂漠は砂漠と言っても平坦ではない。

起伏に富んでおり、隠れる場所が豊富にあるという訳でもないが、隠れるには十分だ。

 

 ラルはこちらに向かうと決めた段階で、その内の幾つかをピックアップ、陸戦隊を先行派遣しておいた。

相手も警戒しているがルッグンによる航空偵察や、ザクによる追撃を想定して居る為、気が付かれ難いのも大きいだろう。

ましてやこちらは先行して数名を配置し、来るか来ないかだけを判断すれば良いので、場所確定だけならば簡単なのだ。

 

「いいかフレデリック。お前はそのまま待機して、もう此処には何も居ないフリをしていろ」

「了解です」

 穴を掘って下半身だけを隠した場所に、ラル隊は潜んで居た。

シートとロープを張り、その上に適当に積み上げただけの簡単なカムフラージュ。

相手がまっさきに警戒するのは大きな障害物なので、意外とこんな小細工が効く。

 

 もちろんレーダーや赤外線が万全ならば論外だが、相手自身が逃走の為にミノフスキー粒子を使って居る。

移動も考えると、最初の数分を誤魔化すだけならば問題はない。

 

「来たぞ。真っ先にタンクを叩くのを忘れるなよ」

「判ってるよ」

 ラル機が先行して大盾を構えて突撃。

その後ろからクルツ機がガトリングライフルで射撃しつつ、追随して行く。

まずは二個小隊いる内の、片方が相手だ。

 

 ガトリングの有効射程ギリギリな上に、移動射撃だ。

全弾が当たることはないが、牽制して心理的に追い詰めるならばこれで十分である。

戦車が方向を変えて退避しようとしたところへ、続けざまに砲撃を浴びせて行く。

 

「ほう……判断の早い者が居るな。だが一機だけではな!」

 ラル機は手近な偽ザクをヒートソードで切り捨てたが、その間に動き出した一機が居る。

そいつを無視して動きの悪い一機に接近、これを仕留めて葬った。

 

「トーマス! 挟み討ちにして次の小隊に向かうぞ!」

「あいよ!」

 ジグザグに回避機動を行い居ながら、もう一班に判断する時間を与えようとするザクを二機で追って行く。

ガトリングを浴びせながら直線距離を塞ぎ、ラル機はその間にヒートソードを格納した。

 

 そして剣とは機動半径の違うヒートロッドを伸ばして、避けようとしたザクを打つ。

たまらず障害物に隠れようとしたところを、曲がったロッドが欧打して葬り去ったのである。

 

「フレデリックはあのままでいいのかよ?」

「伏兵に置いておく。……間も無く囮のクランプ隊が駆け付ける予定だ。不利な状況で戦い続けるとも思えんからな」

 ザクは三機編成なので、相手の隊長も、もう一機が隠れていると判断するだろう。

必ずしも逆行してさっきの場所を通るとは限らないが、それでも同じ場所にもう一機居るとは思うまい。

 

 つまり相手が逃げようとした時に、三角形の配置になって包囲網が築けると言う訳だ。

効率的な有効打を求めると言うよりは、単に心理戦の問題である。

完全に意表を突いて不要なほどに追い詰めるのではなく、小さな危機の連続によって、冷静な判断力を奪うと言う訳だ。

 

「なんだよ。それじゃあ危険なのは突っ込むオレたちじゃねえか」

「不満なのか? まあ怖いなら援護でも構わんが」

 うるせえなあと笑いつつ、クルツも剣を構え直すラルに従って移動を開始した。

亡命者ゆえに歪んで居た彼も、ラル隊の中に染まりつつあるのだろう。

 

 

 そして相手側の指揮官も愚かでは無い。

追い詰められて居ると悟り、最も危険の少ないコースから脱出を図った。

 

『三方から囲まれました! どうしますか?』

『あの二機を突破する! 振り返らずに突撃せよ!』

 フレデリック機は一機だが、同じ場所に留まって居たがゆえに工作する時間があった。

また迂闊に動かないと言うことは、地雷やオート射撃の砲座が埋まって居る可能性もあった。

かといって三機居る上に、マゼラトップ砲で長距離射撃を行うクランプ隊は論外だ。

 

 ゆえにラル機とクルツ機に向かって逆行して来たのである。

 

「ドンピシャだな!」

 クルツはガトリングライフルを放った後、左手で保持して頭の35mmを使った。

そしてフリーになった右手でヒートロッドをキープ。

援護態勢を保持して、ラル機を避けて逃げる機体を狙った。

 

「タンクを叩けと言っただろう! キャタピラを損傷させただけで油断するな!」

 ラルはヒートソードで61式に追撃。

葬りながら駆け抜けて行くザクへ、左手の35mmを放った。

おりしもクルツ機と十字砲火になり、一機目を大破させることに成功する。

こうした武装の切り替えの早さは、今までのザクにはない利点だ。

 

 これで残り二機。

同数であれば、対モビルスーツ仕様の06FGの敗北はない。

むしろ逃げに徹して駆け抜けられるか、それとも、覚悟を決めて特攻されるかの判断が別れ目と言えるだろう。

 

『ぬおおお!』

「そうさな。……私でもそうする。だからこそ、読み易い!」

 相手の指揮官機は、ガトリングライフルを持つクルツ機に向かった。

ザクマシンガンよりも火力のあるこの機体を行かして居ては、そもそも逃走も難しい。

だが今ならば片手保持で格闘を準備する態勢だし、格闘距離ならば二機から撃たれる事もないと判断したのだろう。

 

 それを先読みしたラルが、盾を押しつけるように横から割って入った。

 

「だが運が悪かったな。この機体は白兵戦向きなのだよ!」

 対モビルスーツ戦を考慮した場合、白兵戦の方が有効だとされている。

手持ちのメガ粒子砲は開発が遅れているし、エネルギーは飛ばすよりも、近距離から直接放つ方がパワーが出るものだ。

 

 ラル機は相手のヒートホークを盾で受けつつ、そのままヒートソードを肩口に押し込んだ。。

純粋なパワー戦になれば一から白兵戦を企図した06FGの方が勝る。

ましてや装備が一回り上になるように設計されているのだ、鍔競り合いを嫌った相手に対し、左手の35mmを追い討ちで撃ち込めば決着が付いた。

 

「こっちも終わったぜ」

「良くやった。ガルマ大佐に報告してから、元の任務に戻るとしよう」

 見れば指揮官機を片付けている間に、クルツも残り一機を倒して居たらしい。

装備が上でも相手が逃げに徹して居れば確実とは限らない。

それを仕留める判断ができたことをこそ、ラルは褒めるのであった。

 

 そして、ついで仕事かと思われたこの任務に、思わぬ余録が付いて来た。

襲撃で破壊された警備用の戦車隊の接収許可の他、ガルマから褒賞とジャブローへの期待を込めて、水陸両用型の試験機が回されてきたのである。

 

 こうしてランバ・ラル隊に、ザク・マリナーと戦車隊が加わったのである。




 と言う訳で、ランバ・ラル隊が地上に降下。
キャリホルニアで地上に慣れつつ、部隊規模を微妙に拡大する事になります。

 なお作中で述べて居ますが、任務としてはマッドアングラー隊の様にジャブローへの入り口を探すわけではありません。
現実的に上陸可能か、降下可能な場所を策定する為の行動。
南米大陸のどこならば進出可能か、味方が来るまで持ちこたえられる場所があるか……を探すものです。
それで十分に、原作のジャブロー戦よりマシな戦いができるでしょう(落せるとは言って無い)。

 なので次回南米に上陸してサクっと終わる可能性もあります。
まだ四月・五月なので相手にガンダム居ないのと、橋頭堡確保までが任務だからですね。

追加:メカニカル
1:MS-06M:ザク・マリナー
2:ルナタンク(破壊されている)
3:マゼラアタック
4:?

追加:人員
A:タチ中尉ほか
B:?

『戦車兵たちがこちらを気にしているようです。仲魔にしますか?』
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