グフで頑張る話【完結】   作:ノイラーテム

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南米戦線

●時に苦境は上げ底である

 ランバ・ラル隊の作戦は最終段階にあった。

現在のところまで、作戦は順調。

何らかの動きがあると、連邦が察知して居ない筈は無い。

 

 だがジャブローを目指すのがジオンの勝利の鍵であるならば……。

あえて、その道を外れたことが、連邦の調査を逃れる一手と成って居た。

 

「連邦製のモビルスーツは脅威だとは思わないかね?」

「工場を襲撃したいと言う気持ちは判ります。ですがね、せっかくここまで来て作戦を中断する訳にはいきません」

 キシリア派が勝手に送って寄こした援軍の指揮官。

ゲラート・シュマイザー少佐が隊の副官であるクランプに伝えた要請は、実に難しい事だった。

無理難題と判って居るからこそ、ラル本人ではなく、クランプに伝えると言う形を取って居る。

 

 そもそも目的は工場襲撃の為では無く、南米戦線を築くためなのだ。

それなのに工場を……それもメインの物では無く、組み立てるだけの下位工場を狙う意味は無い。

スケールメリットの為にジャブローの外にもあるからこそ、一つ二つ潰してどうにもならないからだ。

 

「正直、言いたくないのだが……『了承を取って居る訳ではない』と、私も言われたのだよ」

「ちなみに……断ったらどうなります? 命令系統が違う筈ですが」

 要するにキシリアか、それに近い筋からの命令と言う事だ。

尋ねることができるのはシュマイザー自身が乗り気ではないからでしかなく、クランプも苦い顔で応じざるを得ない。

ここで断ることも出来る筈だが、どうにも嫌な予感しかしない。

 

「君たちの増援をカモフラージュする為の爆撃隊。その一部が我々の支援に当たることになる」

「なっ!? 勝手に命令を変更……。いえ、優先度の高い命令を割り込ませるということですか?」

 無茶苦茶だと声を荒らげかけて、クランプは寸でのところで思い留まった。

直接の上官でないにしろ、中尉が少佐に無礼を働く訳にはいかない。

ましてや、それを理由にくだらない任務を押しとおさせる訳にはいかないのだ。

 

「シュマイザー少佐……いや、ゲラート。ソレは余程のことなんだな?」

「ああ。先方は既に到着して居るとか」

 旧知の仲ゆえに、ラルはストレートに尋ねることにした。

シュマイザーも多くを語る訳にはいかないが、間接的に理由を口にする。

 

 ……先方、即ち望まぬ来客。

ようするに、スパイなり政治取引で得たナニカを、その工場襲撃にかこつけて受け取るというのだ。

どうやらキシリア派はジャブローを制圧しても、戦いが終わらない可能性を考えているらしい。

でなければ作戦順調なこのタイミングで、無理やり割り込んで来る筈が無い。

 

「先日、ワシらで戦って見た。基幹構造もだが……、あの『ビーム』は脅威だな」

「あれが連邦にだけある以上、勝利は難しいだろう」

 幾つかある連邦優位な技術の内、喫緊の脅威で、将来的ならばジオンが得てもおかしくない発想。

おそらくはビーム関連の制御技術だろうとアタリを付けると、シュマイザーは否定しなかった。

 

 ラルは天を仰いで暫し考える。

今更目的の変更などできないが、かといって援護を勝手に持って行かれるのも困る。

そして……勝手に持って行って解決するならば、シュマイザーも相談には来ていない筈だ。

ここで無碍に断れば、何の解決にならないだけでもなく、要請と言う形で情報を伝えてくれた彼の為にもならない。

 

 彼としては何も伝えずに、上の命令に頷いて居れば良いのだ。

それをしなかったのは彼個人の心意気に反するのと、同時に……彼にとっても良い結果にならないからだ。

こちらが提示できるナニカがあれば、ただ上の命令に従うよりは確実に部下を守れると思っているに違いない。

 

「……せめてスケジュールを合わせよう。ワシらの作戦がお前さん達の襲撃の為になるか、脱出の為になるかは判らんが」

「それで構わない。無理を言ったな」

 ラルが作戦を開始した時、ソレを囮にして連邦の注意が反れたところを工場へ乗り込む。

あるいは先に襲撃して、連邦の追撃部隊が向かったところで、こちらが作戦を開始して追えない様に大騒ぎにする。

その為のスケジュール合わせが妥協点だ。これならば、お互いの行動がかろうじてプラスに繋がる。

 

 お互いがお互いを囮に使いつつ、爆撃隊は当初のコースで収まった。

あるいは最初からその予定で、スケジュールと場所の調整をする為に、理由を付けて訪れただけなのかもしれないが。

 

「ジーク・ジオン。本来の意味で」

「ジーク・ジオン。お互いの健闘を祈る」

 こうして旧知の二人は最後まで演技したまま別れることになった。

ただ去り際に、ザビ家のジオンではなく、ジオンという国の為に祈りながら。

 

●南米戦線

 結局、シュマイザーはラルの行動を待ってくれたようだ。

作戦決行日になってもフェンリル隊は動かず、ダミーの爆撃隊も予定通りに定期便をジャブロー周囲に振らせている。

 

「クランプは全体のコントロ-ル。タチは増援を連れて降下地点を確保しろ」

「了解」

 作戦を開始するにあたり、ラルはいつもの様に状況を開始した。

狙うはジャブローを離れ、南東方向への挙兵。

爆撃隊が通ったコースの中で、対空陣地や砲撃陣地が減ったままな……残りを潰せば降下作戦が行い易い場所だ。

そこから南東へ陣地を広げ、あるいは東へ海岸線を目指す。

 

「アコースとコズンはそれぞれ優位地形を占位。姿を隠しながら交代で援護攻撃を行え。ドダイも使って構わん」

「はっ!」

 この二機は先日と同じく、高台や隠れた場所からマゼラトップ砲で曲射。

タチの分だけ一機減っているが、今回は早期殲滅では無いので問題は無い。

むしろ隠れていることで、何機が支援に充てられたかを隠し通す。

 

「オレ達は?」

「貴様らは私が直卒する。連邦のモビルスーツが出て来たら抑えに行くぞ」

 質問したクルツは『そうこなくっちゃな』とでも言わんばかりに口笛を吹いた。

不謹慎だが誰も咎める者はいない。

彼がこの隊のエースであり、挑む相手が強敵であると知って居るからだ。

 

「時をおけば連邦もやって来るが、直ぐに援軍も訪れる。それにフェンリル隊の撹乱も始まる予定だ」

「物も言い様ですね」

「違いない」

 歴戦の兵士たちは笑い合い、それぞれのザクに登場して行く。

一様に敬礼し、マシンガンを天に掲げて動き出した。

 

「進軍開始! トーチカや対空砲は必ず叩いておけよ!」

「「了解!!」」

 囮の爆撃隊が通り過ぎた所でラル隊は一斉に動き出した。

後を追う様に増援のザクや戦車が動き出し、通り過ぎて行くガウからも数機のザクが降りて来た。

 

「増援をタチ中尉が組み入れながら前進。次の陣地へ向かって居ます」

「判っとる。打ち合わせに無いことがあれば報告で構わんぞ」

 生真面目なフレデリックが、メインカメラを精いっぱい望遠モードにして一々報告して来るのだが、ラルは頷くだけだ。

この段階で何かある筈は無い。

あるとしたら、当初の予定よりも遥かに警備隊が多い場合だけだ。

 

 だが、それは戦いが楽であることを意味はしない。

連邦が圧倒的多数なのは判って居ることだし、それは地方の拠点であっても同じこと。

一つ二つの陣地ならまだしも、連戦すればするほど近隣から戦車や装甲車が集まって来るだろう。

 

 ……当然、モビルスーツもである。

 

「来ました! 連邦製の、ジムとかいうモビルスーツです。それも三機! 車両を伴って居ます!」

「この辺りに配備された奴だな。アコース達が指揮車両を潰したら出るぞ」

 連邦側の部隊は三機と一両。

三機編成に指揮用か突撃砲などの戦闘車両を随伴させ、四つで一小隊だ。

 

「ようやく出番かよ。この間の借りを返してやらあ!」

「得たデータは一応の物だと言うのを忘れるなよ? あくまで一機ずつやる」

 クルツが今度こそ一息に勝つ気で居るが、一応、根拠が無い事も無い。

あの戦いで陸戦隊が観察して居たことと、倒した機体を調べて、簡単にデータを取ってあるのだ。

 

 とはいえ名前がジムで、ザクと同じ程度のスピードであること。

装甲がザクを10としたら12、構造的耐久値がザクを100%として150%くらいだという目算に過ぎない。

 

「まずは先頭の一機を全力で叩く。フレデリックはそのまま残りの牽制に当たれ」

「了解です!」

 援軍が来るので、フレデリック機が貴重なザクマシンガンの弾を盛大に連射して頭を抑える。

ついこの間、100mmから130mmになったばかりの新型ザクマシンガンでようやく傷付くレベルだ。

35mmは牽制にしか役立たず、どうしても損傷を与えるならば至近距離で撃ち込むしかない。

 

 ゆえに……。

 

「おらよ、まず一機!」

「次も時間を掛けるなよ!」

 クルツとラルで、同時に切り掛って白兵戦を挑んだ。

相手も盾を持っているので、盾の無い方向から一機。

戦い慣れないゆえに盾を向けようと、予想され易い動きをしたところで、回り込んだもう一機で斬り割く。

 

「なんだ!? こいつら脆くないか?」

「気のせいではないか? こっちはこの間と同じ強度だぞ」

 昨日の今日で大きな差だが、これには理由がある。

 

 二人の知らない良い情報と、悪い情報が合った。

良い点では隊長やエースが乗る機体のみが、何もかもザクより上の機体であること。

悪い点では、既に初期量産が始まって居ることである。

 

 強い方は優良なパーツを使用し、堅牢で破壊し難い。

だが弱い方はザクよりマシな部分で大部分の比重が占められている。

二人にとって幸いなのは、隊長機がこの場に一機しかいなかったこと。

 

「大尉! 敵の航空機部隊です! 続けて戦車他が多数!」

「爆撃コースに入ったらガトリングを使え。できるだけ接近してからだぞ」

 不幸だったのは、予想通り次々に増援が送られてくると言う事実である。

予想通りゆえに気落ちする事は無いが、苦戦を免れられる訳でもない。

 

 爆撃機に高台に隠れた二機より、ガトリングライフルやマゼラトップ砲を食らわせ、戦車を叩き……。

いずれ来る新しいモビルスーツ部隊へ、間断ない対処を余儀なくされていた。

強力な個体は一機で会ったが、弱い方ですらザク以上、それが無数にやって来る!

 

●援軍援軍、また援軍

 戦況はジリジリと連邦側に傾き始めた。

モビルスーツの性能を持ってしても、大量の通常兵器には抗し難い。

既に待機したガウが到着し、北米司令部からの援軍を降下させているが、それでも数の差が圧倒的だった。

 

 さすがは連邦政府のお膝元であり、手近な部隊を送って居るだけなのに凄まじい数である。

これで連邦側の本格的な爆撃編成や、即応部隊が居ないのだから、どれほどの物量か推して知るべしだ。

 

「くそっ。連中に嵌められたんじゃねーのか? 予めこっしの作戦を連邦に漏らしておくとか」

「ゲラートはそんな下種じゃなあい。このレベルは想定の範囲だ。……しかし、あの砲台群が無ければ森に引き込めるんだがな」

 シュマイザー個人を越えてキシリア派が動く可能性もあるが、まだ予想された範囲の部隊だった。

連邦の本拠に近いのだから当然だし、即応部隊としてモビルスーツ隊を寄こされていないのがその証拠だ。

 

 予想を越えて問題になったのは、森に隠された砲台群の方だ。

爆撃を避けて地下に収納された砲塔があるのは知って居たが、想定外の数が合った。

おそらくは、爆撃で偶然破壊される可能性も踏まえていたのだろう。

目的が対空であり、長距離砲としては効果が薄いので助かっているが、それでも森側に引き込めないのが痛かった。

 

「大尉! クランプ中尉からです。モ、モビルスーツが。モビルスーツ隊が向かって居ると!」

「来たか! まったくここまで予定通りだと、計算外が響くな」

 ヒートソードならば……振り降ろしか、両手の斬撃ならばという前提だが。

威力の乗る攻撃であれば通用するのは判って居た。

だからモビルスーツ隊を森に引き込んで、各個撃破で倒す予定だったのだ。

 

「どうするよ?」

「一端乱戦に持ち込んで森に移動するしかなかろう。タチ達の方に退く訳もいかん」

 タチ中尉の本隊は増援を組み入れながら進出し、連邦側の拠点や対空砲座群を荒らし回って居た。

移動に続く移動で爆撃を避け、相手陣地に入り込む事で連邦側の建物を障害物として利用して居るのだ。

 

 ここで前衛を務めるラルの小隊が合流しては、全ての戦力が本隊に向かってしまう。

もちろん、この三機を手強しと見て後回しにしたり、逆に侮って本隊を潰しに行く可能性もある。

それを避ける為にも、これまで通り先制して攻撃する事で敵の眼を引き付ける必要があった。

 

「ですがそろそろ損傷が気になります……」

「なあに、装甲の代わりなんぞ此処に有る。武装を奪えんのが辛い所だがな」

 ラルは倒したジムの盾を奪い、戦車砲を受け止め続けて壊れた大盾の代わりにした。

連邦製のマシンガンは無理すれば使えなくもないだろうが、今欲しいのはビームサーベルの方だ。

しかし、これは手首回りの調整や、融合炉の問題があるので無理である。

 

「お前達、気を抜くなよ。できるだけ倒さねばならんが、有利になったからと追い討ちしては直ぐに囲まれる」

「判ってるよ」

「了解です。みなさんの後ろは取らせません」

 まず盾を掲げる戦術で時間稼ぎはできるし、相手にワザと悟らせることで白兵戦に持ち込む事が出来る。

そのまま森へと引き込めば良いと判って居ても、なかなか冷静に戦況を移行させることはできない。

 

 腕が立つだけに夢中になり易いトーマスへ釘を刺した上で、ラルは戦闘を再開した。

まずは残弾を気にしながら遠距離戦で戦車や装甲車を叩き、出て来たジムを迎撃する予定だ。

しかし連邦側も連絡が言って居るのか、迂闊に飛び出しては来ない。

ジリジリと隊列を維持し、相手側も盾をかざして接近して来る。

 

「時間稼ぎはこちらとしてもアリなんだがな……やり過ぎると向こうに傾くか」

 数に押されて少しずつ森に移動し、時間稼ぎしつつ残った砲台を葬れば好転する可能性もある。

だが時間が味方するのは相手も同じこと。

モビルスーツ隊も十機ほどだが、中隊編成をひとまず送りつけて来ただけなら、まだまだ来る可能性の方が大きい。

 

 対してこちらは増援が来るにしても、連邦ほど早くは無い。

どこかで勢いを取り戻し、こちら優位に戦況を進めなければなるまい。

その上で自分達の判断で、この場を放棄するなり、次の場所に進む必要がある。

 

「トーマス。まずは私がやるのを見ておけ。その後で貴様に任せる」

「……了解」

 ラル機が一歩前に出ると、トーマスは不承不承ながら従った。

まずはどんな戦術を採るかを示した上で、後は譲ると言うのだから、まずは見ておくしかない。

 

「トーマスは右、フレデリックは左に着け。回り込んで来る敵や、崩れた奴は倒して構わん」

「OK」

「了解です」

 この配置は白兵戦と主にシールドの問題だ。

自身も白兵戦を行うトーマスは右手側面を開けておき、同時にラルが下がった場合は即座に交代する。

逆にフレデリックは左手を掲げたまま、イザとなればラル機を守る為に待機させた。

 

 そして距離を詰めて来るジムの群に対し、ラル機はまた一歩前に出た!

対応して迎撃を始めるジムもまた、三機一小隊が前に出る。

相互に連携して距離を詰め、マシンガンやビームサーベルで挑む構えだ。

 

「盾にはな、こんな使い道もある!」

 ラル機は先方の一機が掲げる盾を、思いっきり自分が持つ盾で上から下に強打した。

そしてガードが下がったところで頭へヒートサーベルを振り下ろす。

それで壊れるのはメインカメラだけだが、この乱戦ではこれで十分。

 

 よろめかせてその機体の分だけ空いた隙間にネジ込むと、今度はヒートソードで盾を殴打した。

先ほどの攻防を恐れて、掲げ直した所に蹴りを入れる。

もう一度盾を振り下ろした時、二機目もたまらず転げ落ちた。

 

「背中は任せる」

「援護します!」

「けっ!」

 咄嗟に発した言葉をミノフスキー粒子の影響下で判る筈が無い。

だがラル機が更に飛び出て、回り込んで三機目に挑んだ時。

数歩分の隙間を埋めるべく、ブラウン機とクルツ機も前に出て来た。

 

 回転斬りで勢いを付けたラルの一撃を、三機目のジムは防ぐことができなかった。

殴打戦では弾き返せるだけの装甲圧があるのだろうが、これほどの一撃は無理だ。

 

 あっけなく一小隊が潰されたことで、後続のジムは思わず一歩下がる。

いや、勢いの良過ぎるラル機の進出に、隠れた援護班が居ると指揮官が判断したのかもしれない。

それほどにラル機は突出し過ぎていた。

 

「アコース達も良いタイミングだ。しかし……このまま行きゃあせんだろうな……新手の援軍も来てくれたが、どうするべきか……」

 実際に隠していた機体が居り、マゼラトップ砲が降り注ぐ。

それで一息つき、空を見上げて再度訪れたガウが援軍や物資を降下させて行くのが見える。

このまま森へ移動するとして、どうやって弾薬を運ばせるか悩んで居た時……。

 

 戦場に魔王が訪れた。

最後のガウがこちらに移動しつつハッチを開いたかと思うと、重量物を投下したのである。

 

●戦場の魔王

 落着と同時に上がる砂塵の中で、ラルは思わず咆えた。

 

「大型機!? 噂に行くモビルアーマーか! しかし、今更一機だと」

 その一機で戦況を変え得る可能性があるのか?

そんな筈は無い。戦場に置いて火力こそが正義、砲座の口径こそが戦いを分けるモノなのだ。

今更、一機の高機動マシン、あるいは試作用のメガ粒子砲を搭載したデカブツが居た所で好転する筈が無い。

 

 だが……。

それが試作のモビルアーマーではなく、もっとこの戦場に相応しいモノであったらどうだろう?

 

 タンクこそは戦場の王であると人は言う。

ならばアレは、魔王と呼ぶに相応しい。

 

「信号灯です。ジオン軍、教導隊所属……あれは、戦車兵!?」

 砂塵の中からあがるのは、三色の信号灯だった。

可視下の戦場でワザワザそんな物を打ち上げるのは、この場に居る者に伝える為ではない。

 

「デカブツが何かぶっ放すぞ!」

「長距離の曲射砲撃? まさか……陸戦隊へ知らせる気か!」

 砂塵が晴れる中で、巨砲が唸りを上げる。

正面を剥かねば自身が倒れそうな程の大口径。

そう、口径こそが戦況を分ける正義ならば、これはまさに大正義だ!

 

「あれはまさか……宇宙船の30cm砲か!」

 口径にして300mmのカノン砲が火を噴いた。

選択弾種は榴弾、炸裂して周囲に子弾をばらまく面制圧の武装である。

 

 陸上兵器というものは前面に装甲圧が高く、上や後方に薄い物だ。

ゆえに頭上から降り注ぐ弾の雨霰は、装甲に厚いジムとて致命傷になりえた。

ましてやラル隊を警戒して密集して居たのである。ひとたまりも無い。

 

「そうだ……そういえば聞いたことがある。モビルスーツよりも強い戦車があるって……まさか、ソンネン教官!?」

「戦車隊の教官だった彼か!? ……っ」

「なんだ。一発だけで行っちまうぞ? 援護はもう終わりかよ」

 フレデリックの半狂乱な声をミノフスキー混じりで聞きながら、ラルは素早く計算を始めた。

どうやらアレは大型戦車のようだ。ところどころザクのパ-ツが見えるが、センサー類の強化に使用して居るのだろうか。

 

「森の対空砲座を叩く機だ……あれで良い。フレデリック! あのデカブツのケツを守れ! ソンネン少佐のケツを舐める為に連邦の連中がシャカリキになるぞ!」

「はい! 自分はソンネン教官の援護に参ります!」

 ラルは指向性レーザー通信機であるブレードアンテナの設定を弄ると、短い信号をクランプに充てた。

後は彼の方で、ソンネンに複雑な情報を送るだろう。

そのサポートの意味もあって、ラル隊の暗号コードを知るフレデリックを護衛に付けたのだ。

 

「トーマス! ここは二機で残りを片付けるぞ。散々腕を自慢して居るんだ。文句は言わんだろうな!」

「けっ。さっきまで意気がってたのに、もう息があがったんですかねえ大尉さんはよ」

 そして生き残りのジム隊へラル達は向かった。

榴弾を受けて損傷してもいるが、それ以上に士気が散々に崩れている。

五機以上残っている筈だが、まるで負ける気がしなかった。

 

 こうしてヒルドルブの援護を受けたラル隊は、南米に橋頭堡を確保したのである。

やがて始まる南米戦線でジャブローが墜ちるか、それでも拠点を写して連邦が戦い抜くかは、今は語る時ではない。

 

すが。




 と言う訳でこのショートストーリーは無事に終了しました。
グフで頑張るという割りに現地改修だったり、最後はヒルドルブのお陰ですが勘弁してください。
白兵戦は狭い場所・モビルスーツ戦で有利に戦えますが、戦場での決定打には欠けますので。

●タイムスケージュル
二月:現地改修
四月:FGを受け取り北米へ
五月:南米へ潜入作戦開始
七月:南米で増援を徐々に受け取る。連邦も量産開始
八月:南米戦線開始

 と言う感じですね。
連邦がジム量産を始めたころまで、あるいは洞窟や森の様な狭い場所ならばグフは使える。
むしろ、ジャブロー近辺や、その中でならドムより強いんじゃないだろうか? と思ったので始めたストーリーになります。

 まぁその後は明らかに見劣りして行きますし、ジャブローが墜ちても……。
連邦には無数の基地と官僚組織があるので、即勝利には結び付かないとは思います。
しかし、北米・南米・オーストラリア(と制宙権)だけ確保して要塞にしておけば、何とか戦い抜けるんじゃないかと思いま
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