僕たちのいたアカデミア   作:香枝ゆき

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ハイスペックとイレイザー

「やあ、待っていたよ」

ソファーの上には、白いねずみがちょこんと座っていた。

個性「ハイスペック」。

人間以外の動物が唯一個性を持った例として確認されている稀有な生き証人そのものだ。

「多忙な校長が一体どうしたんですか」

「そりゃあ、君と話したかったんだよ、イレイザー」

相澤は椅子に座ることなく、部屋の隅で立っていた。

今さらなにを話すことがあるというのか。

相澤の除籍指導は相当前に職員会議で紛糾済みだ。

侃々諤々の議論を経て、教師の指導は各々自由と決着がついている。

「見込みがない生徒たちを除籍指導とすることのお話ですか」

「うん。君は除籍をやり過ぎた」

「それだけ見込みがない生徒が多い。俺は元々、あの入試システムには反対です」

「相変わらず、ミッドナイトが聞いたら蹴り飛ばされそうな台詞だね。まあ、言わんとすることは分かるよ。イレイザーも、今の実技試験じゃあ十分な実力を発揮できないからね」

ロボット相手に個性を使った戦闘試験。

戦闘向きでない個性は、まずここで苦戦を強いられる。

「……俺に1-Aを任せたのはどうしてですか」

「ん?個性がバラけすぎていることかな?荷が重かったかい?」

「……無個性がいるなんて想定外ですよ」

互いの目が細められた。

雄英は、願書に個性届けを含まない。つまりは足切りをしない。

ひいては実技さえ突破すれば、無個性がヒーロー科へ進学することも可能だ。

「……君が初日に除籍にしなかったのは意外だった」

「俺は好き嫌いでは判断しません」

今でこそヴィランが幅をきかせているが、ヒーローの本質は戦うことだけではない。

人を救ける。

そのために必要なことは、攻撃力だけではなく、情報収集・伝達や撤収能力も含まれる。

人の個性は一人一つ。

力を重視するのであれば、そうでない個性はこぼれ落ちるしかない。だが、「強個性」にあぐらをかいていれば、素っ首叩き落とされるだろう。

相澤は気に入らないものを手当たり次第に除籍しているわけではないのだ。

「見込みがあるということかな?」

「俺がそれまでに除籍にした生徒よりは」

「充分だ」

話は終わりとでも言うように、相澤は部屋を出た。

「…………君には、いつも損な役回りをさせるね」

根津は、誰もいなくなった校長室でつぶやいた。

 

 

月日:4月2日

 

記入者:A Mikumo

 

時間割:HR、国語、英語、社会、ヒーロー基礎学(実技)

 

HRで委員決めをした。

合理的に決めろと言われたので、合理的に、アルファベット順で割り振ることにした。

きっとヒーロー志望ならみんな委員長になりたいだろうけど、そんなのは時間の無駄だと言われそうだ。

 

やたらテンションが高いマイクの授業中は、暗かった空気が救われた気がするけれど、それ以外はやっぱりどんよりとした。

サポート会社から、入学前に要望を出していたヒーロースーツが届いて、もうここにはいない人のスーツが受け取られることなく置いているのを見て、一体何人が残っているのかと怖くなってしまった。

 

 

そして、午後の、二人一組で組んで行う実戦形式のヒーロー基礎学で、また除籍が出た。

 

帰りのホームルームで、耐えきれず、誰かが静かに泣いた。

 

 

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