いや、理由があるにはあるんです。しかしまぁ、それは後ほど後書きで…。とりあえず本編をどうぞ~。
「ゲーセンに行きましょう!」
「…まずは『おかえりなさい』だろ普通」
「それもそうですね。マスター、お帰りなさいゲーセン行きましょう!」
「繋げんな。どれほど行きたいんだよ…」
軽く額を小突くと、「ぁいたっ!」と可愛らしく悲鳴を上げてから、手で額をさすりつつ目に若干涙を溜めて俺を睨むミク。
しっかし、学校から帰ってきたマスターにこんな仕打ちをするボーカロイドは世界広しと言えどもこいつだけなのでは?いやまぁ、他のボーカロイドを見たことがないから知らないけどさ。
「暴力反対です!まったくもう、最近の若者は…」
「お前のほうが俺より若いだろうが、設定的にも実年齢的にも。っていうか何で急にゲーセン?何かやりたいゲームでもあんのか?」
「私が出演してるアーケードゲームがあるんですよ!」
「へぇ。…格ゲー?」
「何で!?今の微妙な沈黙の間にどういう連想したんですか、失礼にも程があるでしょ!?」
「いや、なんとなくお前が出演してそうなゲームってそれくらいかなと」
「いつもに増して言葉に棘がありません!?」
「まぁ挨拶できなかった罰と言うことで」
「…そんな理由でボーカロイドを格ゲーに出演させるとは…そんなマスター嫌いです」
「マジか。せっかく今日は特に予定も宿題もないし連れてってやろうと思ったんだが…そうか、嫌いならしょうがな…」
「マスター大好きです!」
「…その手の平返しはある意味尊敬できるのかも知れんな…」
文句の一つや二つ言ってやろうかと思ったが、ピョンピョン飛び跳ねて喜んでるミクを見たらそんな気も失せてしまった。…可愛いってのはこういう時ホントにずるいと思う。
♪ ♫ ♬
というわけで、最寄のゲーセンに来た。そういえばミクが来てからは結構バタバタしてて、俺自身ゲーセンに来るの久々だな。ま、そうは言ってもほんの数週間の話だし、そんな劇的な変化も無いだろうが。
「えぇと…どこにあるのかな…」
ミクが辺りをキョロキョロと見回している。ここは比較的大きなゲーセンなので、パッと見ただけではどこに何があるかはわかり辛いのだ。
「音ゲーならあっちの方に集中してるぞ」
「え!?」
俺がゲーセンの右奥を指差して教えてやると、ミクは驚愕したような表情で俺のほうを見た。…あれ、そんな驚かれることか?
「…何そんなに驚いてんだよ?」
考えてもわからなかったので素直に聞いてみる。
「え、あ、あぁ、ごめんなさい。ただ、何で私が探してるのが音ゲーだってわかったのかなって…」
「いや、なんでも何も、ボーカロイドのゲームなんて音ゲーくらいしかないだろ。逆に音ゲーじゃなかったら何なんだよ」
「…じゃあさっき『格ゲー?』とか言ってたのは…」
「…お前あれ真に受けてたのか?冗談に決まってるだろ」
歌を歌うためのアンドロイドが格ゲーに参戦してるなどと思うバカはいくらなんでもいるわけなかろうに。というかそれって俺がそんなバカに見られたってことか?極めて心外だ。お前俺のことどんな目で見てるわけ?そんな俺の心の呟きなど知る由も無いミクは、フラフラと俺が教えてやった方向に歩いていく。
「…あ、あった!」
仕方なく俺は俺で新しい筐体が入っていないかザッとチェックしていると、ミクがゲーセン特有の喧騒に負けないくらいの大きな歓声を上げた。振り向いてミクが見ている筐体に目をやる。そこには「初音ミク Project DIVA Arcade」と書いてあり、でかでかと3Dのミクが印刷されていた。
「へ~、これが。なぁ、DIVAってどんな意味だっけ?」
「花形女性歌手、プリマドンナ、歌姫とかそんな感じです。私は歌姫って翻訳が一番好きですけどね」
「ふ~ん。じゃ、早速やってみるか?」
「はい!」
ミクが元気よく返事をして筐体の前に立つ。そして無言で俺のほうに手を差し出す。…一言くらい言ってやろうと思ったが、言葉の代わりにため息を一つついて100円玉を渡してやる。
「ありがとうございます。では、いざ!」
少し勇ましい声を上げてコインを投入。曲を選んで難易度を…って。
「いきなりエクストリームですかミクさんや」
「まぁ基本的に難易度自体は高くないですしね。一つや二つ理不尽に難しいのがあったりしますけど、それなりにできる人はこれくらいでちょうどいいんですよ」
…なぜこの娘さんはこのゲームをやったこともないのに自分がそれなりにできるレベルであると断言しているのでしょうか?って言うかそれにしたって最初から最高難易度なんて普通選択しないんじゃ…?
そんな俺の心配をよそに、ミクがうきうきとした表情でロードを待っている。そして、開始。
「…お」
なるほど、自信満々だっただけあって出だしはかなりいい感じだ。結構速い曲だけどまぁそこまで難しくないかな?
(…あれ、でもこの曲って確か…)
ふとそんな、なんと言うか、いやな予感みたいなのが頭をよぎった瞬間、ミクが悲鳴を上げた。画面を見ると、大量の丸が落ちてきているところだった。どうやら連打をする場面らしいのだが、ミクの手はぜんぜん追いついていない。
「あ、ちょ、た、タイムタイム!」
「アーケードにタイムがあるか」、と突っ込む暇もなく一気にゲージがなくなり、曲が強制終了される。
「…この曲って途中からめちゃくちゃ早くなるんだよな」
画面を見つめて呆然としているミクの頭をポンポンと撫でてやりつつ、画面に表示されている曲名を見つめる。そこには、
「初音ミクの消失」
と、まぁ曲を知っていれば相当な難易度なのだろうことは容易に伺える曲名が書いてあった。最初からこの曲を選ぶとは、なかなか命知らずなやつである。
実際にはこの筐体に収録されているこの曲に歌詞が高速で流れるところは2箇所あるのだが、一つ目は曲開始直後にあるために比較的易しく設定されているのだ。ただその分、二回目で殺しに掛かってくる感じで…要するに、ミクは完全に製作者の思惑通りの失敗をしたのだった。
「…はぁ、残念。行けると思ったんですけどね…」
「あの連打は初見じゃきついな…。でも一回見たらできるだろ」
「いやいやいや、一回見ただけでできるわけないじゃないですか。少なくとも20回くらい練習しないと…」
「とりあえず俺にもやらして、見てたらやりたくなってきた」
「あ、はい、どうぞ」
ミクが筐体の前からどいて、俺に譲る。俺はさっきのミクと同じように筐体の前に立ち、同じ曲、同じ難易度を選択する。
「ちょ、マスターさっき何も見てなかったんですか?いきなりそれはあんまりお勧めしませんけど…」
「まぁ見てなって。一発クリアしてやる」
「ふふん」と不適に笑って視線を筐体に戻す。ちょうどロードが終わったところだったので、プレイ開始。
出だしは極めて順調。落ち着いて対応するボタンを曲に合わせて押していく。さっきミクがあえなく撃沈したところまではノーミスで到達。
そこからは、集中して焦らず、音楽に合わせてボタンを連打していく。画面に表示されているコンボ数が見る見る上昇していく。
横で「嘘っ!?」と驚愕の声を上げているミクもとりあえず今は無視し、最後まで気を抜かずにプレイを続ける。そして、最後も華麗に決めて曲が終了した。結果は…
「うっし、パーフェクト」
「…な、納得いきません!」
急にミクが妙な気迫をまとって詰め寄ってくる。…まぁこうなるかなぁ、とは思ってたからあんま驚きはしないけど。
「何で!?何でそんな軽くこなしちゃうんですか!?」
「軽くねぇよ、結構集中したから疲れた」
「それだとしてもほぼ初見でパーフェクトはないでしょ、謝ってください!」
「…誰に?」
「私に!」
「意味がわからないが、とりあえずごめん」
素直に謝ると、少し冷静になったのかミクが俺から離れる。しかし、まだ睨まれている。
「納得いきません、説明してください」
「説明も何も…。ちょっと自慢っぽくなるけど、俺色々楽器やってるし親も音楽家だからリズム感はそれなりにあるんだよ。音ゲーも結構やってるから慣れてるっていうかさ」
どっちも事実だと思う。誰に言われたわけでもないけどリズム感はいいほうだと思うし、ゲーセンに来れば最低一回は音ゲーやってるし。
「…」
「どうする?まだやるか?」
「…当然ですよ、パーフェクト取るまでやり続けます」
「…それは勘弁してほしいところなんですが」
結局その日はゲーセンで3000円ほど消費することになってしまった。最終的にパーフェクトが取れたミクはご機嫌だったが、取れるまでずっと機嫌が悪かったミクを宥めるのは骨が折れた。案外こいつは負けず嫌いなのかもしれない。
今度からは、あっさりクリアしないよう気をつけるとしよう。
…はい、と言うわけで毎度恒例言い訳タイムです。
実は今現在期末テスト期間真っ最中でして、それの勉強を午前中してたんです。しばらくやってから少し休憩しようと思ったら、友人に夕食に招かれまして。行って食べてすぐ帰ってくるつもりだったんですが、何か流れで今度はそのまま友人宅に招かれまして。で、その後もずっとダラダラとリラックスタイムに入っちゃって、すっかり更新するのを忘れちゃって…全然言い訳になってない気がする今日この頃。
まぁ日曜日中に思い出せたのがせめてもの救いと言うことで、ご容赦いただければ…。当然のように期末期間のためずっと勉強してるので、面白可笑しな大学エピソードなどございません。(キッパリ)
さてさてそんなわけで、今回はこの辺で。本当に申し訳ありませんでした、来週はきっと正午に更新しますので、お楽しみに…。