修正・加筆をするために一話一話読み返してるんですが…こ、これは中々こっ恥ずかしい物がありますね。自分が過去に書いたものを自分で読み返すのは中々精神的に辛いです…w
「…で、ここをいじると声にアクセントを加える事ができます。そのまま歌うことも出来ますけど、アクセントとさっき説明したベンドを調整するとよりリアルな声で歌えるようになるのでオススメですよ」
「な、なるほど…?」
「他にもこのPITってところで細かく音程を変更できたり…って、マスターちゃんと理解してますか?」
「…も、もちろん…」
「…」
明らかにわかっていない風の俺の返事に、ジト目で俺を睨むミク。…いや、しょうがないじゃん、だって情報量が尋常じゃないんだから。俺じゃなくても、こんな半端ない量の情報を一気に頭に叩き込まれて全部理解するのは無理だって。そりゃまぁロボットのこいつには何の造作も無いことなんだろうけど。
さて、ここでちょっとした状況説明をしておこう。現在俺こと千歳奏はパソコンの前に座らされ、今日うちに来たボーカロイド、初音ミクからマンツーマンで
♪ ♫ ♬
-20分前-
「それでマスター、あなたのお名前は?」
「え?あ、あぁ、俺は千歳奏。よろしく」
「千歳奏…素敵な名前ですね。こちらこそ、よろしくお願いします!…それで、マスターの後ろにいらっしゃる方は…?」
どうやら名前を覚えたからといって、名前で呼んでくれるというわけではないらしい。…未だに「マスター」なんて呼ばれるのは少し恥ずかしい、と言うかくすぐったいが、まぁ別に問題があるわけじゃないから構わないけど。
「あぁ、あいつは響って言うんだけど…まぁ、すぐにいなくなるから別に覚えなくてもいいぞ」
「いやいつかは帰ってくるんだからちゃんと覚えさせろっ!」
「そんなことよりさ…」
「え?あ、はい、何でしょう?」
後ろで抗議の声をあげている響を無視し、もう一度彼女の顔、というより彼女そのものをじっくり観察する。
じ~…。
「…?」
声を掛けられたものの、いつまで経っても質問が来ないことを不思議に思ってか彼女は首を小さく
じぃ~…。
「…???」
自分の体を見回し始めた。どうやら服が変だから見られていると思ったらしい。が、別に彼女の服に問題があるわけではないので理由が見つかるわけも無く、再び少し困惑した目で俺の視線を追う。…いや、まぁ彼女の服そのものは変…というか、特殊だとは思うが。
じぃぃ~…。
「…何か俺ちょっと変態チックになってないか?」何て疑問を持ち始めた頃、
「…えと、マスター?どうしました?私の顔に何か付いてます?」「奏、視姦ってのは隠れてやる物であって、堂々とやるものじゃないぞ~」
ミクと響が同時に口を開いた。
「いや、何も付いてないぞ」
無言で机の上にあった木製の写真立てを響に投げつけつつ、しれっとした様子でミクに返事をする。「あだっ!?こら、思い出は大切にしろ!」と、写真立てがおでこに直撃した幼馴染が何だか喚いている。別にいいよ、写真も俺・響・葵の三人で写ってるだけのどこにでもある写真だし。
「そ、それじゃあ何でそんなにまじまじと私のこと見てるんですか?落ち着かないんですけど…」
言葉通り落ち着かないようにモジモジとしている。それを見て俺が「う~ん…」なんて唸っていると、
「も、もしかして何か不備がありましたか!?遠慮無く言ってください、全力で修正しますから!」
急に何か焦りだした。
「え?いやいや、んなこと無いから心配すんなって!むしろなんていうか…」
「な、何ですか?」
緊張した顔をして俺の言葉を待つ。…彼女の期待(?)を裏切るようで悪いが、
「全然ロボットっぽくない」
俺の疑問は彼女の心配事とはまるで関係がなかった。
「…は?」
「えっとさ、ミクってボーカロイドだよな?」
「は、はい、そうです、けど?」
俺の言葉に拍子抜けしたのか、ポケーっとした表情で返事をする。
予想だにしなかった答えが返ってきたせいか、彼女も混乱しているらしい。
「ボーカロイドって事はロボットだよな?」
「アンドロイドです」
キッパリというかピシャリというか、とにかく速攻で否定された。
「…同じようなもんだろ?」
「違います!ロボットと一緒にされるなんて心外です!ロボットっていうのはこう…無骨なイメージじゃないですか!私みたいな柔らかそうな機械に対する形容詞としては相応しくなく…」
「長くなりそうだからそれは今は置いといて」
「むぅ~…」
そんな不満そうな顔をするな、俺だって色々言いたい事はあるんだよ。何でそんなしょうもないことにこだわるんだよとか、「柔らかそうな機械」って何だよとか、ロボットとかアンドロイドって形容詞だったのかよとか。でもそういうのも含めて長くなりそうだから、この話題は今は置いておく。
「要するに人間ではないよな?」
「…当然ですよ。それが何か?」
言いたい事を言わせてもらえなかったせいか、不機嫌そうに言う。…こういうところも凄く人間っぽくて、
「…何ていうか、」
「人じゃないとは思えない」
俺が言おうとした事を、響に先に言われてしまった。
「…ま、そういうこと」
「…それが何か問題なんですか?」
「いや、別に問題ってワケじゃないけど、意外だっただけ」
「はぁ…」
本人にとってはあまり不思議な事じゃないらしい。まぁそういう風に作られているんだから当然っちゃ当然だが。
それにしても、現代の科学でここまで人間らしいロボ…じゃなくて、アンドロイドが作れるとは知らなかった。見た目はもちろんのこと、表情からちょっとした仕草一つまで本当に人間っぽい。服装とか髪型とかをもうちょっとちゃんとして他人に人間として紹介すれば、10人中10人が何にも疑わないで信じるに違いない。
「さってと、俺はそろそろ帰るかな」
そんなやり取りの最中、唐突にそう言って響が部屋を出て行こうと腰を上げる。
「え、何だよもう帰るのか?最後なんだからどっか遊びに行くとかでも良いぞ俺」
「いや、いいよ。どうせ出発は明日の夕方だから昼までこっちにいるし、今日はお前も新しいおもちゃで遊びたいだろうしな」
「お、おもちゃって何ですか!?私はちゃんとしたソフトウェアだしアンドロイドですよ!」
「分かった分かった。じゃあ奏、そういうわけだからまた明日な」
「…ん、また明日」
響は答えるように手を上げて、部屋を後にした。…「新しいおもちゃで遊ぶ」がちょっとエロく聞こえてしまったとは、口が裂けても言えない。
「良かったんですか?明日引越しちゃうなら一緒にいたほうがよかったんじゃ…」
「あいつが良いって言ったんだから良いんだよ。それに別に
「そういうものですか…」
「そういうものなんだよ、だから俺はあいつの言った通りお前で遊ぶとするさ」
「だからおもちゃじゃないですってばぁ!」
♪ ♫ ♬
…というわけで、現在ミクの指導を受けているところなのだが…
「私達の歌声の合成には『周波数ドメイン歌唱アーティキュレーション接続法』、英語では『Frequency-domain Singing Articulation Splicing and Shaping』と言う名称の技術が使われていて…」
「ちょ、ちょっと待って!何がなんだか分からない!っていうかそれは必要な情報じゃないのでは!?」
「必要ではないですけど、知ってた方が得するのは確かなので我慢して聞いてください。まったく、これしきの情報処理が出来ないなんて…マスターって実は結構アホなんですか?」
「お前の基準で語るな!っていうかそもそも、お前にアホとか言われたくないわ!説明書の注意書きに書いてあったぞ、『基本アホな娘なのでちゃんと面倒を見てあげてください』って!」
「ウソ!?そんな失礼な事書かれてんですか私!?心外です、その認識改めさせて見せます!少なくともマスターよりは絶対頭いいってことを認めさせてやります!」
「お前って丁寧な言葉使いする割には結構毒舌だよな!?何なのお前、俺のこと尊敬してるのかナメてるのかどっちなんだよ!?」
「あはは、何言ってるんですかマスターったら。会って数時間で尊敬なんて出来るわけ無いじゃないですか」
「それもそうだ…って事はやっぱり俺ってナメられてる!?」
「さて、説明の続きですが…」
物凄く華麗にスルーされた。いやむしろスルーと言うか、完全に無視された、と言う方が正しい気がする。…これはやっぱりナメられていると言うことなんだろうか?
そんなやり取りをしつつもボーカロイド本人によるボーカロイドレクチャーは続いた。そしてある程度教え終わってから、
「じゃあとりあえずまずは慣れてもらいましょう。好きな曲の一部を私に歌わせてみてください」
「好きな曲ねぇ…」
突然言われてもパッと頭に浮かび上がるものがなかったので、iTunesを開いて適当な歌を選んで歌詞を入力する。
先ほど教えてもらった方法で、時にアドバイスを受けながら細かく調声していき、15分ほどで仕上げる。
「出来ましたか?そしたら私のヘッドホンのコードをパソコンのUSBに差し込んで、上のほうにある私の顔のアイコンをクリックすればオーケーです」
「了解」
言われたとおりの手順を踏んでボタンを押すと転送が始まり、10秒と待たずに完了した。
「これで良いのか?」
「はい、ちゃんと入ってます。じゃあ音楽流してください、歌いますから」
「分かった、行くぞ」
「どうぞ、お願いします」
確認してから曲を再生する。最初に15秒ほどの伴奏の間、表面上は冷静を装っていた俺だが、内心実はかなりドキドキしていた。
これでもしうまい具合に彼女が歌ってくれたら、今度は俺が作った曲を歌ってもらえる。そう思うと期待せずにはいられなかった。だから、
「■■■■■■■■■■■■」
彼女の口から物凄い雑音が発せられた時は、本当にビックリした。
「ちょ、ちょっと待て!なんだ、どうした!?」
「わ、私にも何がなんだか…あ、あれ?」
予想外の出来事に二人とも混乱している。それもそのはず、歌が流れるはずだった口からテレビが砂嵐を起こした時のような雑音が聞こえれば、そんなの驚くしかない。
「ゴメン、俺なんか間違えたかな?もう一回…」
「いえ、私が見てた限りではまったく問題ありませんでした。だからあるとしたら私に問題があるはず…。人口声帯が壊れた…?いえ、だったら今ちゃんと喋れるワケ無いですし、となると体の問題でもない…。あの、マスター!」
「なんだ、何か心当たりでもあるのか?」
「私をパソコンにインストールした時に、何か問題ありませんでしたか?一瞬止まってしまったとか、ありえないほど長い時間がかかったとか…」
「いや、そんな事はなかったけど…インストールした時に何か起こった可能性があるのか?」
「はい、マスターの調声に不手際はありませんでしたし、私のこの体にも何も異常はない。となると、インストールした時に何か問題が生じたとしか…」
「もしかしてディスク2とかあったのかな…?ディスク1って書いてあったりして」
確かめるためにイジェクトボタンを押してパソコンからディスクを取り出す。
「いえ、そもそもそんなに容量の大きいソフトじゃないので、ディスクは一枚だけのはずです」
「そっか、じゃあ何で…」
そう呟きつつ、何気なく手に取ったディスクをひっくり返す。
「…」
「一度問い合わせてみたほうがいいかも…って、マスターどうかしました?」
質問に言葉で答えずディスクの裏を見せる。彼女はそれを見て「…あ」と小さく声を漏らした。
ディスクの裏面には、親指の幅くらいの傷が3本ほど入っていた。
「これのせいって事ありえるかな?」
「…ありえます、っていうか多分間違いないです」
「…まぁ無理もないか、随分前に貰った物だって言ってたし」
「え、私って誰かのお下がりなんですか…?」
「響が昔福引で当てたんだと。で、使い道がないから俺にくれたんだと」
「…なんか軽くショックです」
「そんな事より、これどうしよう?」
「そんな事って…。まぁとりあえずはクリプトンの本社に問い合わせてみたらどうです?もしかしたら交換してくれるかもしれませんし、何らかの対処はしてくれるはずです」
「分かった、そうしてみるよ」
-30分後-
対応してくれた人との電話を切る。
「どうでした?」
「新しいディスクを送ってくれるってさ。2ヶ月かかるって話したけど…」
「2ヶ月!?いくらなんでも遅すぎませんか?」
「3年位前に新しくバージョンアップしたらしくて、今俺達が使ってるバージョンのはもう作ってないんだって。新しいバージョンのソフトじゃお前は動かないらしいから、何とかあまったのを探して送ってくれるって。随分親切だよな」
「…私ってそんなに古い型だったんですね」
「お前は初めてアンドロイドとして世間に出たボーカロイドだって言ってた。ただ最近は新しいのが人気だから、もう生産してないんだって」
「…凄い複雑です」
「まぁとりあえず2ヶ月は歌はお預けだな、残念」
「…」
まぁただで貰ったんだから贅沢は言えまい。2ヶ月くらい我慢してやるさ。
「その、マスター…ごめんなさい」
「いや、そんな謝られても困るんだが…。お前は悪くないだろ?あえて誰が悪いかを追求するならちゃんと保管しなかった響が悪い」
「でも…私ボーカロイドなのに歌えないなんて…はぁ、私って不良品だったんだ…」
「不良品って…むしろあんだけでかい傷がCDについてたのに、被害がこれくらいで済んでラッキーだろ。歌以外の機能はちゃんとしてるし、性格がおかしいわけでもないし」
「…はい」
「そんなしょげんなって、CDが届くまでの2ヶ月は俺のマスターとしての練習期間ってことで納得しとけって。それまでに俺ちゃんと歌わせ方とか勉強して、CDが来たらすぐにお前に歌わせられるように頑張るからさ」
「…!は、はい!ありがとうございます、マスター!」
ミクは目尻に涙を浮かべて…はいないな、アンドロイドだし。しかしそう錯覚するほど満面の笑みを浮かべて、深々と頭を下げた。
…こんなに人間らしくて人間じゃないなんて詐欺だ、なんていうか…ずるい。なんだか急に気恥ずかしくなってそっぽを向いてしまう。
「れ、礼を言うところじゃないだろ?さて、とりあえず飯作るか、腹減った」
「マスターって料理できるんですか、意外です。あ、私もいただいていいですか?」
「え、お前も飯食うのか?」
「そういう機能はありますよ。出来る限り人間と同じように作ってあるので」
…科学って凄いんだなぁ…。
「…何食うの?ネギ?」
「言うと思った…。あんな辛いの生でなんて食べれませんよ…」
「あれ、説明書にそう書いてあったのに」
「…その
そんな会話を楽しみながら、二人でキッチンに移動した。
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