ミクノポップ!!   作:YoShoki

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ちょっと送れちゃいました、申し訳ありません;
さてさて、今回はバレンタイン回。前回、というか「小説家になろう」の頃にもバレンタインの回はあったんですが、今回は里香さんがいるし環境が色々違うので、今回も書き下ろしとなりました。つまり、長いです。6000文字くらいですので、少し時間に余裕のある時に読んで頂ければと思います。


第25話 バレンタインの勇気

「…さて、いってきまーす」

「それじゃあミクさん、お留守番お願いね」

「はい、二人もちゃんと頑張ってきてくださいね?」

 

靴を履きながらそんなやり取りをしてから玄関を開け、里香と肩を並べて外に出る。あの節分の日の数日後、再びお袋から「手続きが全て終わったから来週の月曜日から登校を始めろ」という旨の連絡が入った。

それを聞いた本人は登校初日の朝までずっと期待半分緊張半分…いや、性格が災いしてか期待一割緊張九割といった様子だったのだが…登校を始めて四日ほどたった今では、表情にようやく余裕が出てきていて、ある程度クラスに馴染めたのだろうと俺は推測している。本人も楽しいといっているので、今のところ特に問題も無く、クラスで浮いてしまっているという事態も起こってはいないらしい。

しかし、我が妹ながらこの短時間の間によく成長したなぁと思う。きっとうちに来た当時の状態で学校に行っていたら、きっと今どころではないくらい悲惨的な状況になっていたかもしれない。超絶ネガティブで誰に対しても敬語で、おまけに過剰に人見知りで…なんて、いくら転校生補正があってもすぐに孤立してしまいかねなかったし。そう思うと、早い段階で勇気を出してよかったと思う。グッジョブ俺。

 

「…お兄ちゃんなんか珍しく朝からテンション高いね、どうかした?」

「いや、お前が立派に成長してくれて良かったなぁと思って」

「…どうしたの急に、気持ち悪い」

「まさかの反抗期突入!?…ホント逞しくなったなお前」

「誰かさんが意地悪だからね、それに対抗するためには私も進化するしかなかったの」

 

そう言って舌を出し、所謂「あっかんべー」の指無し版みたいなのを俺に向ける里香。そんな里香に軽くチョップをお見舞いしたその時、背後から「マスター!」と俺を呼ぶ声。今までに無い展開に驚き振り向くと、よほど慌てていたのかサンダルすら履かないで裸足のまま玄関を出て俺を呼ぶミクの姿が。

 

「どうした?何か忘れ物か?」

「忘れ物というか、一つ確認しておきたいことが。今日ってマスターたちがいない間にキッチン使っても大丈夫ですか?」

「?別にいいけど、何するんだ?」

「いえ、ちょっと料理を練習してみようかなぁって思ったんです」

「ふーん…まぁ、火事にさえならなきゃいいぞ」

「わかりました、ありがとうございます!それじゃあ改めて、行ってらっしゃい、マスター」

「おぉ、行ってきます」

 

再度ミクに見送られ、今度こそ学校へ向かう。しかし歩き出す直前で、里香が若干ジト目気味にこっちを見ていることに気づく。

 

「…なんだよ」

「…新婚夫婦?」

「あ?何が?」

「…何でもない、早く行こ」

 

意味がわからず聞き返すと、ぷいっとそっぽを向いて歩き始めてしまう。…何故急にそんな不機嫌に?これが反抗期というものか…。

 

「あ、そうそうお兄ちゃん」

 

と思ったらパッとこちらを振り向く里香。…年頃の女の子の思考はよくわからん。

 

「ん?」

「今日ちょっと帰り遅くなると思うから」

「何だ、居残りか?」

「…登校四日で居残りってどんな問題児?そうじゃなくて、ちょっと帰りに買い物したいからちょっと遅くなると思う」

「買い物?…まぁいいけど、一応ちゃんと携帯持っとけよ?どのくらい遅くなるんだ?」

「う~ん…買う物はある程度決まってるからそんなに時間掛からないと思うけど、まぁあんまり遅くなりそうだったらちゃんと連絡するよ」

「わかった」

 

しかし朝から何かやけに濃い一日である。今日って何かのイベントだったっけか…?

 

♪ ♫ ♬

 

「バレンタインでしょ!?」

 

昼休み。葵と海翔に今朝のことを話すと、葵が信じられないと言いたげな表情で俺に詰め寄ってきた。

 

「信じられない…バレンタイン忘れる男子なんか普通いないわよ?」

 

と思ったらホントに言われた。

 

「うっせーな…ちょっと色々あって忙しくて忘れてたんだよ」

「仮に色々あってもバレンタインは忘れないと思うけど…」

 

こういう時は比較的味方に回ってくれる海翔ですら今回ばかりは葵側らしい。…この中で言えばお前が一番バレンタインとか興味なさそうなんだがな。

 

「ま、まぁ確かにそうかもしれないけど、バレンタインって女の子が好きな奴にチョコ渡す日だろ?それならミクと里香の行動は関係ないんじゃ…」

「別に好きとかじゃなくても友達とか家族間であげる事はあるでしょうに…」

「…でもお前は今までくれた事無いじゃん」

「…何であたしがあんたにあげなきゃいけないのよ」

「…」

 

今のはアレですか、間接的に「あんたとは別に友達でも何でもない、ただの知り合いだ」的なことを言われたんですかね?本気で言ってるならかなり切ないな、冗談だろうけど。…冗談だよな?

 

「まったく…そもそも今日がバレンタインだってことを忘れるくらいチョコを貰うことが無いってことが問題なんじゃないの?」

「一つもあげないやつに言われたくないね」

「それは私のせいじゃないわよ、私が『あげたい』って思う素敵な人が身近にいないのが悪い」

「どんな責任転嫁だそれ…」

「責任転嫁じゃなくて事実よ。あたしちょっとジュース買ってくるわ」

 

「話はこれでおしまい」というようなタイミングで席を立つ葵。まぁバレンタイン中のこういう口論は男子は分が悪いし、助かったといえば助かったのだが。一つため息をついてからふと会話に参加していなかった海翔のほうを見ると…なにやら俯いて肩を震わせていた。こういう時は大抵泣いてるか笑ってるかの二択なんだが、どっちだろう…?あ、まさかアレか、葵の「友達じゃない」発言にショックを受けて泣いてるのか!?

 

「か、海翔?だ、大丈夫だって、葵が俺たちのことを友達じゃないなんて思ってるわけないだろ!?」

「はははっ…え?いや、当たり前でしょ」

 

…せっかく俺が慰めてやろうと思って言ってやったことをさも当然といったように肯定してきた。って言うかやっぱ泣いてたんじゃなくて笑ってたのね…うん、分かってたよ。

 

「…で?何でお前はそんな声を殺して笑ってたわけ?」

「いやぁ、葵ちゃんは可愛いなぁって改めて思ったの」

「はぁ!?え、アレ可愛いか!?」

「だってアレだよ?葵ちゃんがチョコレート誰にも上げないのって、本当の本命さん以外にはチョコレートあげたくないからだよ?」

「…うん、それが本当なら確かに可愛いけれど。何でそんな事知ってるわけ?」

「去年葵ちゃんのお母さんが言ってた」

「…へ、へぇ…」

 

何だろうこのコメントしづらい感じ。「どんな情報網だよ」とか「お母さんそんな恥ずかしいことばらさないであげて」とかツッコミを入れようと思えば入れられるけど、何か色々と触れてはいけない部分のようなそんな予感。しかしそうすると会話が途切れてしまうわけで…。

その後結局会話が再開することはなく、葵が帰ってくるまでずっとなんとも言えない空気が俺たちの間に流れた。しかしそんな気まずさすら意に介さぬ様子で始終ニコニコ…というより、ニヤニヤしている海翔が印象的で、同時に何か不気味だった。

 

♪ ♫ ♬

 

そんな奇妙な体験をしつつも一日が終わり、帰宅。登校前に言われたからてっきりキッチンに立っていると思っていたミクは、実際家の中に入ってみるとソファーで横になってテレビを見ていた。…ミニスカで横になるのはやめて頂きたい。

 

「ただいま」

「あ、マスター。…ちゃんと玄関で言ってくれないとお出迎え出来ないじゃないですか」

「別にそんなことしてくれなくてもいいよ、ありがたいけど」

「私がしたいんですよ、もぅ…お帰りなさい、マスター。今日は一日どうでしたか?」

「別に、大したイベントもなく平和に終わったよ」

「…え、今日バレンタインなのにですか?」

「…ほっとけ」

 

忘れていたとはいえ、貰えなかった事自体は普通にガッカリなんだから、その辺はあんまり突っ込むな。という意味を込めて目を逸らすと、意味を悟ったのか「あ、あはは…」と気まずそうに苦笑するミク。…普通の男子にとって、実はバレンタインとは拷問なんじゃなかろうか、などと今更ながら思う。

 

「あ、そういえば里香さん知りませんか?普段ならこの時間にはもう戻ってるんですけど…」

「あぁ、今日は何か用事があるからちょっと遅くなるって言ってたぞ」

「…そうですか。…やっぱり里香さんもあげるんだ…」

 

俺の答えを聞いて、なぜか少し複雑そうな表情を浮かべるミク。最後のほうに言っていた言葉は小さすぎて全然聞き取れなかったが、きっと俺に向けた言葉じゃないので聞き返す必要はあるまい。

 

「なんだ、里香に用事か?」

「あ、いえ、そういうわけじゃないんですが。ちょっと気になっただけです」

「ふ~ん…まぁとりあえずそんなに遅くなるわけじゃないらしいし、ちょっとしたら帰ってくるだろ」

「わかりました」

 

そう言ってミクは再びリビングの方へ姿を消した。俺もとりあえず制服を着替えるために二階へ上がる。…しかし葵の奴、何が「好きじゃなくてもチョコはあげる」だ。ちょっと期待して損したわチクショウめ。

 

「はっ、別にいいけどねっ!甘い物なんてそんなに好きでもないしっ!」

 

…ごめんなさいホントは結構好きです甘い物。叫んでみたら少しはそんな気になれる気がしたが、特にそんなこともなく切なさを増幅させるだけの結果に終わった。

 

♪ ♫ ♬

 

時は過ぎ、早くも夕食の時間。俺が戻ってきてから1時間ほどして里香が帰ってきたが、同じく期待外れの結果だった。…これも全部葵が悪いと思うんだ、あいつが余計な事言わなければバレンタインを思い出さなかったし、こんなヤキモキする必要もなかったし。

しかしそこでめげる俺じゃない。ミクは今朝、キッチンを使ってもいいですかと聞いた。俺はイエスと答えたものの、チョコレートは貰えなかった。ということはつまり、夕食はミクが作ってくれるということだっ!

 

…なんてことを期待していた時期が俺にもありました。

 

まぁ実際そんな都合のいいことはなく、結局俺が普通にカレー作っただけで終わったんだけどな。何故カレーか?今日は色々ガッカリが多すぎて疲れたから、簡単に作れるカレーにしたってわけですハイ。

しかし、今夜の夕飯はまた妙な雰囲気に包まれていた。まず、ミクが妙に元気がなかった気がする。食べた量もいつもより心なしか少なかった気がするし、食事中もため息を何度かついていた。そんで次に、里香がずっと…何ていうんだろうか、ソワソワしてた気がする。こう、落着きがないっていうか、いつもより少し口数が多かった気がする。コレがバレンタインの魔力か…なんてそれっぽいようで実は訳のわからない事を脳内で呟きつつソファーでゴロゴロしていると、噂をすればなんとやら、里香がキッチンの方から顔を出す。

 

「そういえばお兄ちゃん、今日チョコ貰えたの?」

「貰えてたらテンション上がって超豪華な夕食になってたよ」

「え~…じゃあもったいない事したな…」

「何が?」

「…ん、はいコレ」

 

何かを差し出されたようなのでそちらを向くと、里香が綺麗に包装された小さな箱を手渡してくる。…あれ、コレってもしかしてアレじゃね?

 

「…これチョコ?」

「…バレンタインでチョコ以外を渡す女の子がいるの?」

「いや知らねぇよ」

「うん、私も知らない」

「…まぁ、ありがとう。普通に嬉しいわ」

「ん、どういたしまして」

「ちなみに、コレ本命?」

「…調子に乗らないの」

 

さすがに怒られた。いや、まぁ初めてチョコを貰ったんだから少しくらいテンション上がってしまうのも許して欲しい。…初チョコが妹からって言うのも少し複雑なものがあるが。

 

「あぁ、だから『もったいない事した』って事か」

「そうそう、ご飯作る前に渡したら豪華になったんでしょ?」

「まぁ、過ぎたことは仕方がないだろ」

「ん~…明日お寿司とかにしない?」

「無茶言うな」

 

チョップをお見舞いして寿司を却下する。…まぁ、明日はちょっと豪華にしてもいいか。

 

♪ ♫ ♬

 

そしてその日の深夜。キッチンテーブルの上で里香のチョコレートを食べていると、階段を下りる足音が。以前ならミク以外にはありえなかったのだが、今は里香も二階に住んでいるのでどっちが降りてきたのかは目視するまで分からない。…まぁ里香は比較的早寝だし、こんな時間に降りてくるのなんて…。

 

「…マスター、起きてます?」

「あぁ、起きてるよ」

 

こいつしかいないわな。階段のほうに目を向けると、パジャマ姿のミクが。俺の姿を確認すると少し顔を赤くして(って言うか元からちょっと赤かった気がする)、ゆっくりと歩み寄ってくる。

 

「どうした?そろそろ寝ないと明日の朝飯に起きれないぞ?」

「…あの…こ、これっ!」

 

俺の目の前まで来たミクは一層顔を赤くして、今まで後ろに回していた両手を目の前に持ってきて俺のほうに勢い良く突き出す。両手の先には…サランラップで撒かれた、ハート型の茶色い物体。

 

「…チョコレート?」

「す、すみません、甘いもの嫌いなのはわかってるんですが…う、受け取って頂けないでしょうか…?」

「…いや、もちろん受け取るけど…俺嫌いなんて言ったっけ?」

「…え?だ、だって部屋で着替えてる時に『甘いもの好きじゃねーしっ!』って言ってませんでした?」

「…あれ聞いてたのかよ」

「ご、ごめんなさい、その時ちょうど部屋の前にいたので…」

 

なんだよ、リビングのほうに戻ったからてっきり聞こえないだろうと思って油断した…普通に恥ずかしいんだが。

しかし、話は見えてきた。要するに、俺が帰ってきたときにチョコレートを渡そうと思ったものの、部屋の前で俺が甘いもの嫌いとかアホな事叫んでるのを聞いてしまったと。…完全に俺の自業自得だよなコレ。そのせいで食事中あんなに元気がなかったのだと思うと少し申し訳ない気持ちになる。

 

「あ~そのだな…さっきの叫びはバレンタインに何も貰えなかった事への反抗というか、負け惜しみというか…ごめん。ホントは普通に好きだぞ、チョコレート」

「そ、そうなんですか、よかったです…じゃ、じゃあ、これ…」

 

未だ下を向いてチョコレートを突き出しているミクの手から、チョコレートを受け取る。手がまだ小さく震えているのは、室温とかのせいではないんだろうな…。

 

「…ありがと、大切に食べるよ」

「ど、どういたしまして…そ、それじゃ、私はもう寝ますからっ!」

 

俺がちゃんと受け取ったのを確認すると、ミクはダッシュで階段を駆け上がっていってしまった。…チョコを渡すのってそんなに恥ずかしいことなのだろうか?最近の若者はようわからん。…何を言っているのやら俺は、我ながらテンションがおかしいな。

貰ったチョコに視線を落とす。里香のと比べると形もボロボロだし綺麗に包装もされていないが、それが逆にミクの努力を物語っている気がする。…しかし、言っちゃなんだがあいつもバカだな。

 

「…男がバレンタインチョコを受け取らないわけないだろうに…」

 

そう呟いてからもう一度小さく二人にお礼を言い、二つの初チョコを心行くまで楽しんだ。




さてさて、今週は…今週「も」ですね、テストやら中間やらがあって結構きつかったので、特にイベントも何もないです。小説を期限内に書き上げるので精一杯ですよ…トホホ
というわけで、相変わらず何も書くことがない後書きですが、今回はこの辺でw ではでは~
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