ミクノポップ!!   作:YoShoki

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若干遅れちゃったかな…?申し訳ありません;

そして、ミクの日おめでとー!本当は今回だけは例外で昨日、3月9日に投稿しようと思ったんですが、残念ながら相変わらず時間不足で叶いませんでしたね…残念(´・ω・`)
さてさてそんなわけで、前回のカオスの翌日です。前回前々回共にカオスなほぼギャグ回だったため、今回は少し真面目な内容です。


第28話 ボーカロイドの在り方

…ピッ、ピピピッ、ピピピッ…

 

「…ぅん…」

 

耳元で騒ぐ目覚ましに叩き起こされ、重い体を引きずるようにして布団から這い出る。布団から体を完全に出してから、未だに騒いでいる目覚まし時計を殴りつけるようにして黙らせる。脳に酸素を送り込むべく大きな欠伸をしてから、何かいつもと違う気がしてあたりを見回し、ようやく気づく。

 

「…あぁ、そっか、旅行中だった」

 

ミクが我が家に来て以来ずっとソファーで寝ていたせいで、「起きて布団から這い出る」という行為に違和感を感じてしまった。…めんどくさくてもちゃんと布団で寝たほうがいいのかなぁ…。

体を起こしてもまだ襲ってくる眠気を伸びで追い払い、覚醒してきた頭で昨日の記憶を辿り…またドッと疲れる。

 

「…体を休めに旅行に来たのに、家にいるときより疲れるってどういうことだよ…」

 

誰にとも無く呟いてから、ため息を一つ。まぁ、過ぎてしまった事を考えても仕方ない。ぶっちゃけこれ以上思い出したくないし、昨日の出来事をすっぱり忘れるように努力する。そして気を取り直し、寝ているうちに肌蹴てしまっていた浴衣を適当に直してから部屋を出て居間を覗いてみる。幸い居間で寝ている二人の今日の寝相はそれほど悪くなかったらしく、ちゃんと布団の下で大人しく寝ている。

昨日の二の舞にならなかった事にホッとしてから、少し考えて着替えとタオルを片手に部屋を出る。せっかく温泉旅館に来たのだから、出来るだけ温泉に行っておきたいと思うのは至極当然の思考だと思う。…溜まりに溜まってる疲れも、午後に帰る前に出来るだけ落として行きたいし。

 

「…どうかこれ以上トラブルに巻き込まれませんように…」

 

部屋を出る直前、信じてもいない神に祈りの言葉を呟いた。

 

♪ ♫ ♬

 

「…ん?」

 

久々に心の底からゆっくり出来た一時からの帰り道、宴会室から盛大な拍手の音が聞こえた。他に客はいないものだとばっかり思っていたので少し意外だったが、考えてみれば母さんによると『この週末にたまたま予約がない』ってだけでその翌日からは普通に予約が入っていたのだろう。そう結論付けてそのまま通り過ぎようとしたその時、不意に宴会室から一組の男女が飛び出してきた。

 

「うわっ、と…」

 

危うく衝突しそうになるが、ギリギリブレーキが間に合い直前で止まる事に成功した。二人も俺の存在に気づいたらしく、慌てて俺から一歩遠ざかる。

 

「わ、す、すみません、大丈夫ですか?」

「こーらKAITO、よそ見してちゃダメでしょ?」

「めーちゃんが先に勢い良く飛び出したんじゃないか…僕はそれを慌てて追いかけただけで…」

「何か言った?」

「…何でもない」

 

出会って数秒で上下関係をはっきり把握できた二人組みには、見覚えがあった。女性のほうは鮮やかな赤いショートヘアの「ボーカロイド」、MEIKO。男性のほうは、MEIKOとは対照的な深い青の髪を持ったKAITO。二人共浴衣を着ている上に最後に見たのが数ヶ月前、ミクに他のボーカロイドシリーズを教えてもらった時だったので一瞬わからなかったが、二人がお互いの名前を呼んだあたりでピンと来た。旅行中に二度もボーカロイドに出会うとは…「ボーカロイド使いは引かれ合う」か…っていやいや、違う違う。何だボーカロイド使いって。

 

「それはともかく、次の仕事までもうちょっとあるし…一杯やりましょ?」

「え~…ダメだよ、お仕事の間にお酒は…。って言うかそれ以前にもっとこの人にちゃんと謝らないと」

「別にぶつかったわけじゃないから大丈夫でしょ?それに迷惑かけたのはあんたなんだから、あんたがちゃんと謝りなさい。じゃ、あたしは先に上がってるから~」

「あ、ちょっとめーちゃん!」

 

俺がアホな思考を巡らせている間にも、二人の会話はどんどん進んでいく。KAITOが慌てて静止するものの、MEIKOは軽い足取りでこの場を離れてしまった。…未だに事情が掴めない俺は、ただただ呆然とするしかない。

 

「あ~あ、行っちゃった…。お客さん、ごめんなさい。色々と失礼を…」

「あ、あぁいや、それは別にいいんだけど…ちょっと聞いていいか?」

「はい?」

「…なんでこんなとこにいるんだ?」

「…はい?」

「…悪い、今のは俺の質問の仕方が悪かった。やり直させてくれ」

「は、はぁ…」

「えっと…俺の間違いだったら悪いんだが…あんた、ボーカロイドのKAITOだろ?」

「え?あ、もしかしてお客さん僕の事知ってる人ですか?」

「…まぁ、ある程度は。ってことは今の赤い女の人はMEIKO?」

「はい、僕も彼女も、お客さんの言うとおり、ボーカロイドですよ。いつもの衣装じゃないのに、よくわかりましたね?」

「まぁ髪の色である程度はな。で、最初の質問に戻るんだが…」

「あぁ、たしかにボーカロイドがこんな所にいるのはおかしいですよね」

「いや、おかしいって訳じゃないんだが、ちょっと気になって。ボーカロイドでもやっぱ休暇ってあるもんなのか?」

「休暇?」

「いや、だってここ温泉旅館だし。休みに来たんじゃないのか?」

「あぁ…いや、あなたは少し勘違いをしているみたいですね」

「勘違い?」

「僕達はお客さんとしてここにいるわけじゃなくて、ここの従業員ですよ?」

「…」

 

…そういえば、KAITOは最初から俺の事を『お客さん』って呼んでいた。それにさっきこの場を去る前にMEIKOも、『次の仕事まで』とか言ってた気がする。…そうか、何かおかしいとは思ってたけど、二人がここで働いてるのならその二つの行動にも辻褄が合う。

って言うか逆にここまで明確なヒントがあってなぜ気づかない俺。

 

「…なるほど、良く考えればそれしかないわな。でも何でボーカロイドがこんな所で働いてるんだ?」

「んーそうですね…それはちょっとだけ長くなるので、歩きながらでも構いませんか?僕もめーちゃ…MEIKOの後を追わないと…さすがにこんな昼間からお酒を飲ませるわけには行きませんし」

「あぁ、迷惑かけて悪いな」

「いえいえ、久々に僕達のことを知ってる人に会えて僕も嬉しいですし」

 

というわけで、二人並んでMEIKOが去っていった方向に向かって歩き出す。歩き出してすぐ、KAITOが事情の説明を始めてくれた。

 

「お客さん、お名前を聞いてもいいですか?」

「あぁ、そっかまだ言ってなかったか。俺は千歳奏、よろしく。あと、敬語じゃなくてもいいぞ?そっちのほうが年上なんだし」

「そう?わかった、じゃあそうさせてもらうよ、ありがとう」

「…」

「…どうかしたの?」

「いや、『敬語じゃなくていい』って言って敬語じゃなくしてくれたボーカロイドはあんたが初めてだなぁって思って」

「…って事は、奏君が持ってるのはミクちゃんかな?それかルカさんか…」

「その『ルカさん』ってのは聞いた事ないな…でも、まぁ当たりだ。俺はミクを持ってる」

「なるほどね。さて、じゃあ早速本題に入るけど…奏君もボーカロイド持ってるなら、知ってるでしょ?ボーカロイドが歌以外にも結構色んな事できるって」

「…そうだな」

 

確かに、それは基本的には正しかった。『ボーカロイド』という名前の通り歌を歌うために生まれた彼ら彼女らは、実際それ以外のスペックも基本的には高いのだ。ミクだって料理は人並みに作れるし知識も人並み以上にあり、さらには掃除洗濯等の家事だってある程度万能にこなせる。「ボーカロイドとしてより、家政婦アンドロイドとしての方が万人に売れるのではないか?」と思ったことだって、正直二度や三度ではない。

 

「そんな僕達に目をつけたのが、ここの女将さん。ボーカロイドを従業員として働かせれば、人間の従業員を雇うよりも利益が出るんじゃないかって。ただ、もちろんタダ働きって訳じゃないよ?ちゃんとお給料だって自由に買い物が出来る分くらいは貰ってるし、お休みの日だってあるし」

「…なるほどね」

 

考えた事は、あった。例えばこういった旅館やレストランなどで、ボーカロイドを働かせるというのは、きっと俺だけでなく、ボーカロイドがアンドロイドという形で世の中に出回った時点で大多数の人物が考えたのだと思う。そうする事である程度電力代は喰うかもしれないが、人件費は大幅に節約できるだろうし。

ただ、ボーカロイドがある程度世に浸透して今であっても、ボーカロイドが働く店、というのは滅多に見ない。何故か?

 

「…いいのか?」

「え?」

「歌えて無くて、いいのか?」

 

そう。

実際この世の何割がそう思うかはわからないが、少なくとも俺がこの発想…ボーカロイドに働かせるという発想に至った時、一番最初に浮かんだ疑問。

『歌わせなくていいのか?』という、根本的な疑問。

ボーカロイドは、歌うために生まれてきて、歌うためにそれぞれのマスターの家で目を覚ます。しかし、その目覚めたマスターから、歌う事ではなく働く事を命令されたら、彼ら彼女らはどう思うのか?

…少なくとも、ミクは歌えない事を申し訳ないと思うと同時に、悲しんでいるように見えた。

聞くべき質問だったかどうかはわからない。ただ、KAITO達もミクと同じように、歌いたいのに歌えない環境にいる事をどう思っているのか、それだけを知っておきたかった。

…機嫌を悪くされても何もおかしくない質問だったと思う。しかし、俺の質問を聞いたKAITOは、少し考えた後に小さく微笑んだ。

 

「…奏君はまだちょっと勘違いしてるみたいだね。いや、僕が説明しなかったのが悪いから、勘違いって言うより誤解かな?」

「…誤解?」

「僕達は別に、歌えてないわけじゃないよ?」

「…え?いやでもだって、ここで働いてるって…」

「うん、まぁそこはほら、『交換条件』ってやつだよ。…よし、着いたね」

 

KAITOがそう呟いたのは、『従業員以外立ち入り禁止』と書かれたプレートの掛かっているドアの前だった。そのまま部屋の中に入っていってしまったKAITOを追うべきか一瞬だけ迷ったが、話の続きを聞くべくそのまま彼の後に続いた。

 

♪ ♫ ♬

 

「つまり、美咲に交換条件として『あたし達を歌わせる事』を約束させたのよ!」

「…めーちゃん、そこまではさっき僕が説明したよ」

 

部屋に入って一番最初に目に入ったのは、缶ビールを仰ぐようにして飲んでいるMEIKOだった。俺達が入ったときにはすでに何個か缶が散乱しており、飲んでいるのが数個目だということを示唆していた。…さすがに呆れるしかない。

しかしそれだけ飲んだにもかかわらず酔いはそれほど回っていなかったようで、部屋に入ってきた俺の事をKAITOに聞き、それにKAITOがある程度の事情を説明し、それを全て聞き終わったMEIKOから出てきた第一声が、上のそれだった。…どちらかというと直感で色々考える人なのだろう。ちなみに説明が無かったので定かではないが、「美咲」というのはおそらく女将さんの名前なのだろう。

 

「…要するにあれか、昼間はここで働く代わりに夜は作った曲を歌わせてくれって事か?」

「惜しいけど違うわ。私達にとっては家だけで歌うよりもっと有意義で、なおかつ美咲にとってもプラスになる方法を提案したのよ」

「…あぁ」

 

そこまで来て、ようやくピンと来た。だからさっき宴会室から出てきたわけね。

 

「つまりここで従業員として働く変わりに、宴会場で歌わせろって約束したって事か」

「正解!なかなか鋭いわね」

「まぁここまで色々ヒントを貰ってればな、さすがにわかるよ」

「そう。まぁでも、そんな感じよ。…さて、じゃあ今度はあんたの話」

「…え?」

「なんであたし達にそんな事聞いたの?」

「あ~…やっぱり聞く?」

「まぁ、少しは気になるしね」

「…だよなぁ。まぁ、こっちも話を聞かせてもらったし、こっちも話すよ」

 

俺は二人に、今のミクの現状をかいつまんで話した。細かいことはある程度省いたが、ミクが今歌えないこと、その事を気に病んでること、しかしどうしていいかわからない事などを軽く話した。

話を終えて、ふぅっと一息つく。そして二人を改めて見ると…何か、軽く顔面蒼白になっていた。

 

「…な、何か…ゴメンね?」

「ぼ、僕もさすがにそこまで深刻な状況だとは…」

「…いやいや、そんな深刻って言ったって、別に死ぬわけじゃないんだし…」

 

しかしこの反応を見る限り、やはりボーカロイドにとって「歌えない」というのは相当に辛いことなのだろう。…少なくとも、この二人を顔面蒼白にするくらいには。

 

「まぁ、何とかするよ。仮に、万が一なんともなら無くても、それを理由に俺があいつを捨てるわけでもあるまいし」

「…それだけ真剣に考えてくれる人がいるなら、あんまり心配しなくても大丈夫かな?」

「かもね。まぁでも、あんたももうちょっと歌に対して真剣に取り組みなさいよ、一回くらい作曲するとかさぁ」

「…善処するよ」

「そうしなさい。…っと、あたし達そろそろ次の仕事に行かないと」

「え?あ、ホントだ。じゃあ奏君、僕達はこれで」

「あぁ、色々とありがとな、参考になった」

「僕達はお話をしただけだから、別に何もしてないけど…まぁ、どういたしまして」

「ほらKAITO、早く行かないと間に合わないわよ!」

「うわわ、ちょっと待ってめーちゃん!」

 

予想以上に時間が切羽詰っているのか、慌しく部屋を出て行く二人。時間を取らせすぎた事を心の中で謝罪しながら、俺はさすがにもう起きてるであろう二人がいるはずの部屋に戻るのだった。




そういえば色々バタバタしててスルーしちゃってたんですが、いつの間にかユニークアクセす数が10000超えてました!ついでにちょっと前倒しになっちゃいますが、お気に入り登録数も200件…に近いです!皆様どうもありがとうございます!これからもこんな感じでダラダラやっていくと思いますので、お付き合いいただければ幸いです!
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