あ、それと今回は結構短いです。今後の話も基本的にこんな感じのゆる~く短い話が続いていく予定ですが、ご了承ください。
「ご馳走様でした、おいしかったです」
「おいしいっていう感想が世辞なのか、ちゃんと味覚があって情報を得た上で美味かったと言ってくれているのかが気になるが、とりあえずお粗末さま」
「味覚くらいありますよ、馬鹿にしないでください」
「どうだっ!」と言わんばかりにエッヘンと胸を張ったと思ったら、
「その味覚も信頼できるか不安ではあるがな。ネギを丸かじりするような味音痴だし」
「だからそんなことしませんってば!」
一瞬にして青筋を立てて怒声を発しつつ立ち上がり、
「いやだって取説に…」
「はぁ…もういいです、好きにしてください」
うなだれて諦めたように席に座りなおした。…本日何度目になるか分からないが、ホントにアンドロイドとは思えないほど表情豊かだな。というかむしろ普通の人間よりも感情の表現が上手い気がする。
「マスターは取説を過信しすぎです。他に何が書いてあったから知りませんが、私はネギが好物なんてことはありませんしアホでもありません。つまり、その説明書が間違ってるんですよ。…まぁ、だからといってネギが嫌いというわけでもないですが」
「取説を過信って…取説が信じられないなんてじゃあ何を信用すればいいんだよ」
とはいえ確かに、まだほんの数時間しか一緒にいないが、そんな素振りは見せない。が、だからといって説明書が間違っているとは思えない。だって説明書と食い違う製品なんて不良品じゃないか。
「…不良品、ねぇ…」
「?どうかしました?」
目の前でコップに入った水を飲み下している彼女を見る。歌が歌えないという予想外の出来事はあったが、この子が不良品だなんて思えない。自分のソフトウェアの使い方も熟知していたし、会話するにもまったく問題はない。
となると説明書と食い違ってしまっている理由は…。
「…ま、傷だよなぁ」
「だからさっきから何を一人でブツブツと言ってるんですか?ちょっと気持ち悪いです」
「やかましい。どうしてこうもいろいろと説明書と食い違ってるか考えてたんだ」
「なるほど…って、待ってください!さっきボソッと『不良品』とか言いましたよね!?それって私の事言ってたんですか!?た、確かに歌えない私なんて不良品かもしれませんが…でも、だからって本人の目の前で言うことないじゃないですかぁ!」
「お、落ち着けって!いや、確かに紛らわしい言い方をした俺が悪かった、ごめん!そうじゃなくて、何で説明書と違うことがこんなに起こってるのかなって思って、そういう意味での不良品だから!っていうかそもそも、不良品って言い方がいけなかったんだな、ホントにごめん」
「…ふんっ」
相当ショックだったのか、それとも気に障ったのか分からないが、とにかくミクは機嫌が一気に悪くなったような気がする。…口は災いの元とはこの事だ。
「…要するに私が普通じゃないって言いたいんですか?」
「比べる対象がいないから違うのかどうかは知らないけど…まぁ少なくとも説明書通りではないな」
「私は傷のせいだと思いますけど」
「奇遇だな、俺もそうだと思う」
あのディスクについていた傷のせいで、インストールされるはずだったデータ、たとえばあるかわからないが性格データとか好物データとか、そういうのが破損したとか書き換えられたとか、ただ単にインストールされなかったとかそういうオチじゃないだろうか。すでに歌えないというイレギュラーも発生しているので、十分にありえると思う。
「いいじゃないですか、世界でたった一人の私って感じで♪」
声を弾ませて言う。何かが嬉しかったのかそれともまったく別の理由なのかよく分からないが、どうやら機嫌は元に戻ったらしい。
「ソウデスネー」
「…なんで棒読みなんですか」
「棒読みなんかじゃないぞ、超心込めて言ってるぞ」
「…マスターって案外意地悪ですよね、ちょっとわかってきました」
…そうなのだろうか?自覚はまったく無いのだが、昔から「相当Sだよな」とか「底意地が悪い」とかよく言われるのでまぁそうなのかもしれない。確かに人をからかったりいじめるのは好きだけど。もちろん本気でいじめるわけじゃないぞ、単純に仲間同士のじゃれ合いの一環でという意味だ。本気で嫌がることはすぐにやめるように心がけてはいるので、その辺は誤解しないでほしい。
…というかそんな事より、
「…あのさ、その『マスター』って言うのやめないか?あとその妙に丁寧な言葉遣いも」
「え、『マスター』嫌ですか?」
「嫌ってわけじゃないけど、何かこそばゆいというかくすぐったいというか…。何となく対等でいたいって言うか…お前にも気楽に、楽しくやっていってもらいたいしさ。それにお前設定上は…何歳だっけ?」
「十六歳です、永遠の」
「自分で言うな。…まぁ確かにアンドロイドだからその通りなんだけど。まぁつまり俺とほとんど同い年だろ?だから敬語使う必要もないし、マスターなんて呼ぶ必要もないし」
「ん~…私は『マスター』って気に入ってるんですけどね。それが嫌なら…プロデューサーさんとか?」
「どうしてそうなる、単純に名前でいいだろ名前で」
「奏様とか千歳様とか?」
「いや敬称いらないから、普通でいいから」
「普通…。ミスター千歳は?」
「どうしてそうなる!?お前の『普通』の基準が分からんわ!…って」
ムキになって叫ぶと、ミクがくすくすと笑っているのに気がついた。そしてようやく俺も気付いた。
「…お前遊んでたな?」
「面白かったですよ、マスター♪」
…高性能すぎるのも考え物かも知れん。それともあれか、俺が単純すぎるのか。…できれば前者であってほしいと切に願う。
「真面目に、普通の呼び方出来ないのか?あと敬語も」
「別に呼んでも良いですけど、その場合は『奏ちゃん』って呼びますよ?」
「何故に!?」
「や、まぁ何となくなんですけどね。ほら、『奏』って名前何か女の子っぽいじゃないですか」
「…出来れば呼び捨て、もしくはさん付けなどが望ましいのですが」
「却下です♪」
即答された。あまりにも早かったので反論する事も忘れてしまった。
「まぁ呼び方も敬語もどっちでもいいじゃないですか、尊敬されてる感じで悪い気はしないでしょう?恨むならリンちゃんとかじゃなくて私を選んでしまった自分を恨んでくださいね」
そう言ってクスクスと楽しそうに笑い、改めて「ご馳走様でした」と挨拶をしてミクはダイニングを後にした。食器もきちんと流しへ運んでくれている。
話はまだ終わっていなかったのだが、笑っていたミクの顔を見ただけで、気が付くと何故か「…まぁいっか」なんて呟いていた。まぁ実際、それほどこだわる事でもないので構わないが。
一つ苦笑をもらして俺も風呂でも沸かそうと席を立った途端、
「そうそう、忘れてました。マスター」
廊下の角からミクが顔だけ覗かせて出てきた。
「何?」
「もしマスターって呼ばれるのとか敬語とかが本当に嫌なら、『命令』って形で私に止めろって言えば私は無しに従いますからね?私達ボーカロイドは基本的にマスターの『命令』には従わなきゃいけないので。もしマスターがそれを望むなら、あとでそうしてくださいね」
それだけを告げると、彼女は顔を引っ込めてしまった。
…要するに提案とか頼みじゃなくて「命令」すれば、あいつの意思を無視して『マスター』ってのも敬語も止めさせられると。
「…ま、論外だわな」
楽しくやっていきたいって言ったのに、意見無視して強引に何かさせるなんて意味がない…気がする。
「…アイツ風呂とか入るのかな?ま、さすがにそれはないか。いくら人間っぽいって言っても機械だし」
なんてことを呟きつつ、今度こそダイニングを後にする。
追記。
どうやらミクは風呂にも入るらしい。…ここまで何でも人間らしいとホントにただの人間だな、どうやって人間じゃないと判断すれば良いのだろうか。
いまだにこのサイトのシステムを理解しきれていないんですが、どうも私の小説を評価、というか採点?してくれた方がいらっしゃるのかな?もしそうなら、本当にありがとうございます!嬉しかったのと同時に、「私もまだまだ頑張らないとなぁ」と決意を新たにすることができました!
…というわけで、もし私なんかが書いてるこの小説を「しょうがねぇなぁ、評価してやるよ」と言って下さる心優しい方が他にもいらっしゃれば、是非評価をお願いします。感想なんかも心待ちにしているので、お時間に余裕がある方は是非!その場で数分狂喜乱舞した後に返信させていただきますw