色々と報告や謝らなければいけない事は沢山あるんですが…と、とにかくまずは、何の事前通知も無しに一年近くも更新停止してしまいごめんなさい!
詳細に関しては後書きに書かせていただきますので、とりあえずは「ミクノポップ!!」最新話をお楽しみください;
「ここか…」
目の前に建っている建物の看板を見つめ、小さく呟く。何度か別の場所にある同じ名前の店には立ち寄ったことはあるので特に真新しい感想は無いが、強いて言うなら「ここにもあったんだなぁ~」くらいのものだ。俺は一応何度か住所を確認してここで間違いが無いことを確認すると、片手に持っていた地図を携帯に持ち替えてアドレス帳から名前を見つけ、その番号に掛ける。
『…あ、もしもし、どうしました?』
「いや、俺は店の前に着いたから一応知らせておこうと思って。お前らは今どこにいるんだ?」
『僕達もあと3分もしないで着くと思います。外で待っててもらってもいいですか?』
「あぁ、別に急がなくてもいいからな」
『ありがとうございます。それじゃ、切りますね』
「おぉ」
少し大げさすぎるくらい丁寧に断ってから電話を切る相手に少し感心しつつ、とりあえず壁に背を預け二人が到着するまでの3分間で少し今の状況を纏めようと思う。
今俺が電話をしていた相手は里香の友人である鏡野蓮。電話から声は聞こえなかったが、おそらく隣には双子である鏡野鈴も一緒に歩いているのだろう。
で、何故俺が二人の本来の友達である里香も連れずにあの二人を待っているかと言うと、事の発端は昨日の夜に遡る。ミクが葵と女子会をするとかでテンション上がって何故かそれを俺に自慢をしていると、里香の携帯に蓮から電話が掛かってきて、そこで何故か里香ではなく俺を『お茶会』とやらに誘ったのである。…まぁ、この辺の細かい経緯は前々回辺りを読んでもらえればわかると思う。
それはともかく、二人が何を考えて俺を誘ったのか、その魂胆がイマイチわからない。俺は単に仲のいい友達の兄貴ってだけであって、特に二人と親しいわけじゃない。…まぁ確かに蓮にはある程度懐かれてはいたと思うけど、鈴にはむしろ嫌われてたような気しかしないんだが…その鈴が俺とお茶会だなんて、一体どういう風の吹き回しなのだろうか。
「…あ、せんぱーい」
「お…」
何とか鈴が何を考えているのか推理しようと試みた矢先に、走りよって来る二人の金髪の少年少女。…これでさっきの「せんぱーい」っていうのを少女のほうが言ったならまだドキッとしそうなものだが、少年のほうに言われても特に何も嬉しくないよね。いやまぁ、鈴に先輩だなんて呼ばれてもそれはそれで不気味なものがあるが。
「すみません、お待たせしてしまって」
「いや、別に大した時間待ってないから問題ねーよ」
「…何男二人で恋人同士みたいな会話してんの、キモッ」
「はっ、たかがこれしきの会話が恋人みたいとか、わかっとらんなガキめ」
「なっ、何ですってぇ!?」
「り、リン!最初にケンカふっかけたのはリンなんだから、反撃されても自業自得だって!って言うかそもそも先輩に向かって失礼すぎるだろ色々と!」
「認めないわ、こいつが先輩だなんてあたしは認めない!そもそも同じ学校にすら行ってないじゃん!」
「ふむ、それは確かに一理あるかもな。…ちなみにお前ら、高校どこにするんだ?」
「え?い、一応里香と同じ学校に行くつもりだけど」
「ほぅ、って事は来年からはちゃんと俺のことを先輩って呼ぶわけだなお前は?」
「なっ、ま、まさかあんたあの学校の…!」
「来年は三年だ、文句無いほど先輩だろ?」
「ぐ、ぐぬぬ…!」
「ほ、ほらほら二人共!とりあえずお店に入っちゃいましょう、ね!?」
俺と鈴の一触即発な雰囲気を敏感に悟ったのか、慌てて蓮が仲裁に入ってきた。鈴はまだ不満そうにうなっていたが、確かにこのままだと話が進まないと理解したのか意外と素直に口をつぐむ。俺が軽く鈴に向かってドヤ顔を作ってやると、予想以上に憎々しげにこちらを睨みつけ、声には出さず『後で殺す』と呟いていた。…正直に言おう、結構怖かった。
♪ ♫ ♬
「で、結局お前らは何が目的で俺を誘ったわけ?」
店内に入って席に案内され、注文したものが届いてから俺は早速本題を切り出す。
「も、目的って…そんなに警戒しないでくださいってば」
「警戒もするだろ、俺を嫌ってる奴がわざわざ『一緒にお茶でもいかが?』なんて誘ってきたら…」
そう言いつつ恐る恐る蓮の隣に座る、もう一人の鏡野のほうに視線を向けると、鈴は相変わらず敵意むき出しで俺にメンチをきってる。…嫌われてるのは知ってたけど、正直ここまで嫌われてるとは思わなかった。何でこんなに嫌われてんだろ、そこまで執拗にからかったりした覚えはないんだが。
「…お前なんでそんな憎々しげに俺のこと睨んでるわけ?」
「自分の胸に聞いてみなさい!」
いや、聞いてみたけどわからなかったから直接聞いてみたわけで…。
俺が大きなため息をつきながら頼んだ炭酸飲料を口に運ぶ様子を見て、蓮が苦笑しつつも仲裁に入ってくれた。
「ま、まぁまぁリン、落ち着けって…」
「でもレン、こいつは里香のことを…!」
「まだそんなことわからないだろ?それを確認するために今日わざわざ来てもらったんだから、まずは落ち着いて話をしてみないとダメだって。その事はちゃんと家を出る前に念押ししたじゃんか」
「ぐ…そ、それはそうだけど…!」
「里香?何だ、里香がどうかしたのか?」
予想外のタイミングで里香の名前が出てきたことに驚いて、つい二人の会話を遮って聞いてしまった。いや、この二人が里香を呼ばないであえて俺だけと話すために俺をこんな所に呼び出した時点で、何かしら里香に関連することを、里香に聞かれないように話し合うために俺を呼び出したって所までは昨日の時点である程度予想は出来ていた。
でも鈴は今『こいつが里香のことを』と言った。つまり俺が里香に何かしらのことをしてしまい、二人はその事を言及するために俺をここに呼び出したことになる…のだが、俺は里香を苦しませるような事はもちろん、極力迷惑もかけないように努力していたつもりだ。…本人には『家族に気を遣うな』と偉そうに言っていた俺があいつに気を遣うのも本末転倒な気もするが、繊細なあいつを相手にするのに気を遣わないなんて無理な話だ。
「あ~…そうですね、そろそろ本題に入りましょうか」
俺のその言葉を聞いて、蓮が顔を少し引き締めた。…予想以上に深刻な問題なのかもしれない。俺も雰囲気からそう察して、姿勢を正して蓮の言葉を待つ。
「…先輩、里香が家に来てから今日までのこと、ザッとでいいので教えてくれませんか?」
「里香が来てからの事って…別にそれは構わないけど、どうしてだ?わざわざ俺を呼び出して聞かなくても、本人から直接聞けばいいんじゃ…」
「…はぁ。里香本人からも事情は大体聞いたわよ。だけどあたし達が聞きたいのは、あんたの視点なの。例えばあんたが初めて里香と会った時どう思ったか、どんな事を考えてたか…そういうことが聞きたくて、しょうがないからあんたを呼んだのよ」
俺の質問に、鈴が一つ大きなため息をついて俺に説明した。視線による攻撃も止めた所を見ると、大人しくしていたほうが話が進むと判断したのだろう。
それはともかく、なるほど俺を呼び出した理由はわかったが…また新たな疑問が浮かび上がる。『何故そんな事を聞きたがるのか』。
しかし今はそれを追及するよりも素直に話してやった方が早く理由がわかるような気がした。俺を見る二人の視線は真剣そのもので、からかうつもりはもちろん、興味本位などで聞いてるわけではないように思えた。だったらわざわざ事情を今全て説明してもらうより、とっとと情報を与えてやって、最後に結論と共に事態を教えてもらったほうが効率がいいだろう。
そう考えた俺は少しずつ思い出しながら、言われた通りザッと里香との初対面から今までの出来事を、その時の心境も加えながら二人に話し始めた。
♪ ♫ ♬
「…まぁ、こんな所か。とりあえず今日までで目立ったイベントは大体話したと思うぞ」
数十分後。初めて会った時いきなりそのネガティブっぷりに度肝を抜かれた事、何とか家に馴染んで欲しくて遠慮をしないで接した事など重要な事から、節分やバレンタイン、温泉旅行やその他の日常で起こったイベントを、教えても問題のない範囲で二人に話し終えた。二人もそれらの出来事のほとんどを里香から聞いていたらしく、どちらかというと俺の心境や考えなどを重点的に聞かれたので、教えたくない部分を除いてはほぼ全てを話した。
俺が喋り疲れた喉を休めている間、二人は無言でアイコンタクトを交わしている。「双子だけあってテレパシーとか使えるんだろうか」などとどうでもいいことを思い浮かべていると、ふと鈴が口を開いた。
「…やっぱり、そういうことなのかな?」
「まぁ、話を聞いてる限りだと、ほぼ確実だと思うけど…」
鈴の呟きを聴いた蓮が暗い雰囲気でそう返事をする。俺は未だに状況を把握できず、我慢しきれず二人に説明を
「お前らの要求には答えたぞ。今度はそっちが説明する番だ」
「…偉そうに。何であんたなんかに教えなきゃいけないのよ?」
「リン、何言って…」
「…いや、そうだな。里香が何か困ってる事があって、俺を知らないそれをお前らが知ってるんだったら、頼み方が間違ってるよな」
「え?」
その言葉にキョトンとする鈴をそのままに、俺は手に持っていた飲み物をテーブルに置いて、二人に向かって頭を下げた。
「なっ…せ、先輩っ!?」「ちょ、何やって…!?」
「頼む。あいつがどうして困ってるのか、教えてくれ。
「…」
「せ、先輩、もちろん教えますから、とりあえず頭上げてくださいって!下級生にそんなことすることないですって!」
今までの態度が態度だっただけに、俺が素直に頭を下げた事に二人共驚きを隠せないでいたらしい。特に鈴のほうは、未だに俺がそんな事をするのを信じられないのか絶句している。
まぁ、二歳も年下の相手に頭を下げるなんて、自分でもかっこ悪いとは思う。けどそんな恥を怖がって里香が困ってる原因を聞けないでいたら、里香を助けられない。そう思うと、『かっこ悪い』なんて意識は消し飛んで、気付いたら二人に向かって頭を下げていた。
「まったく、そういうことするから悪いんでしょ…」
「…どういうことだ?」
「…それを今から説明します。でも…今の話を聞いた後だと、多分先輩は動揺すると思うので…心の準備だけはしててください」
「…わかった」
蓮の言葉を聞いて、俺はあらゆる事実を受け入れる覚悟を決めて、顔を引き締めた。それを合図と受け取ったのか、鈴がゆっくりと口を開いた。
「さっきも言ったと思うけど、この前里香にこれまでの経緯を教えてもらったの。初めてあんたと会った時の事とか、あんたが遠慮無しにセクハラしてくる事とか」
「…そんな事まで話したのかあいつ…」
げっそりした顔でため息をつく。余計なことまでベラベラと…と一瞬思ったが、そんな事を後悔するのなら最初からするなという話だ。他に方法はいくらでもあっただろうし、自業自得だろう。
「その事については後で追求するとして…。とにかく、そんな風にあんたとの思い出を話してる時の里香が凄く楽しそうで、嬉しそうで…あたし、ちょっとからかってやるつもりで聞いてみたの」
「聞いたって?」
「…『そんなに奏の事好きなのか』って」
「…は?」
「…」
「…」
「…」
…非常に重苦しい空気が空間に漂う。俺の「は?」というたった一言で、これまで喋り続けていた鈴本人はおろか、隣で黙って話を聞いていた蓮でさえ視線を泳がせている。
…え、何、この空気。さっきまでのシリアスな雰囲気からマッハで遠ざかってるような気がしてならないんだが。だってこの話が行き着く先ってまず間違いなく…。
そんな俺の混乱を知ってか知らずか、鈴が意を決して先ほどの続きを口にした。
「そしたら里香の奴、あたし達が今まで見たことないくらいうろたえて、顔真っ赤にして…必死に誤魔化してたけど、多分あの反応からして…あいつ、あんたの事好きなんだと思う」
「…」
…まぁ、やっぱ話の流れ的に最終的な結論はそういう話になるわな。うん、悪い予感が的中した。
いや、だって…そりゃ好きだろ?
最初の頃はそりゃ強引で驚かれたかもしれないけど、一緒に買い物行ったときには面と向かって「ありがとう」って言われたし、その後も家族としてすっかり馴染んできてるし…そりゃまぁ好かれてるだろうな。むしろこれで嫌われてるなんて言われたらビックリだよ。
しかし二人は、依然として真剣そのものだった。鈴は気まずそう…というか、どちらかといえば苦しそうな顔で俯いているし、蓮も同じように辛そうな面持ちでこちらの様子を伺っている。
…これはどういう状況なんだろうか…?
「…えっと…わ、悪い…こういう時、どういう顔していいかわからないの…」
混乱している頭で必死に考えて、出てきたセリフがこれだった。
我ながら相変わらず残念な脳みそをしていると思うが、軽くユーモアを含んだ上で言っている意味が分からない旨を伝えようとするとこれがベストだと判断したのだった。…空気読めないってレベルじゃないな、これは怒られ…。
「…っ!ふざけてんのあんたっ!?」
「…ぇ…」
俺の台詞を聞いた鈴の怒号が、店内に響き渡る。怒られるとは予想していたが、ここまで激しく激昂するとは思わなかった。
「あんた何聞いてたの!?どういうことかわかってんの!?」
「『わかってんの?』って…だから、里香が俺を好きだってことだろ?俺は何でそれが問題なのかって聞いてるだけで…」
「…先輩、いい加減にしてください」
「え…」
反論しようとそこまで言ったところで、今まで始終無言だった蓮が口を開いた。その声は普段のように落ち着いてはいたが、明らかな怒りが込められていた。…他でもない、俺に対して。
「お、お前まで…」
「先輩が何を勘違いしてるかは、何となくさっきまでの話を聞いてれば察しは付きます。でも、さすがにここまでバカだとは思ってませんでした…」
「ば、バカって…?」
「…単刀直入に言います。里香の言う『好き』は、先輩の思ってる『好き』とは違いますよ」
「…は、ははっ、何言って…」
蓮の言う意味がわからなくて…いや、わかりたくなくて、笑って誤魔化そうとする。しかしそれを遮って、『パンッ』と乾いた音が耳を
「…茶化してんじゃ…ないわよ…っ!」
目尻に涙を溜めて、声を震わせて…自分がからかわれている時の何十倍もの怒気を孕んだ眼差しを俺に向ける。そんな彼女の様子に呆然としてしまった俺に対して、
「あんたが里香を家族として、妹としてしか見てないのは、さっきの話でもよくわかったわ…。でもね、だからって里香の『好き』に対してもヘラヘラ笑ってんじゃないわよ!里香はね…」
決定的な一言を、
「里香はね、家族としてじゃなくて、女としてあんたの事を好きになっちゃってんのよ!」
聞き間違えることすら出来ないよう、はっきりと口にした。
♪ ♫ ♬
「…俺達がその事を知るほんの少し前に、こんな事があったんです」
あれから十数分後。俺達三人は並んで帰路に付いていた。
飲食店であれだけの騒ぎを起こせば、当然他の客の迷惑なわけで…つまり何が言いたいかというと、鈴のあの一言のほぼ直後、俺達は追い出されてしまったのだった。
もちろんあれは鈴が悪いわけではなく、むしろあんなに言われるまでその事に気付けなかった俺が悪いわけなのだが、結果的に追い出される原因となってしまった鈴は蓮の隣で意気消沈してしまっている。
その後、話が終わったわけではないが、かといって他の店に入る気にもなれなかった俺達は、結局家に向かって歩きつつ話を続ける事にしたのだった。
「里香が教科書を忘れて、隣の席の男子…里田くん、って言うんですけど、そいつに見せてもらってたんです。そしたら授業の終わりに、里香が大きな声で『里田くん、本当にありがと!里田くんはいつも優しいから好きだよ~!』って…」
「…あの里香がか?」
「暗い頃の里香を一番よく知ってる先輩からしたら信じられないかもしれませんが、里香は学校では基本的に凄く明るいんですよ。クラスに馴染んでからは特に。だからクラスにも里香に注目してる男子は結構いるんです」
「そうなのか、全然知らなかった…」
「そりゃまぁ、自分の好きな人に『私はモテる』なんて普通は言いませんよ」
「…」
『自分の好きな人』という言葉に、思わず沈黙してしまう。未だに半信半疑ではあるが、二人があそこまで真剣になっていた以上、ほぼ確実にそうなのだろう。ただ、やはりどういう反応をしていいのかわからず、結局黙り込んでしまう。そんな俺の心境を察してか、俺の沈黙には言及せず蓮が話を続ける。
「そんなわけで、クラスのアイドル的な存在の里香の好き発言はクラス中の男子に衝撃を与えて、皆口々に里香に詰め寄ったんです。そしたら里香、多少慌てながらも『友達として大好きなだけで、そういう意味じゃない』ってキッパリ言い切ったんです」
「へぇ…成長したもんだなぁ…」
「ただ、先輩の事を聞いたときだけは、顔を真っ赤にしてうろたえた…」
「それで事の真偽を確かめるために、俺を呼び出して確認したわけね…」
「…一応言っておくけど、興味本位とかじゃなくて、純粋に里香の事を心配してだからね?兄弟間ってだけでも大変なのに、前に家に遊びに行った時あんたにそんな素振りは全然なかったから、実際の所どう思ってるのか確認してみたかったの、そこんとこは勘違いしないでよね。…まぁ、さすがにあそこまで意識してないとは予想だにしてなかったけど。話聞いてるだけでもピンと来たんだから、結構あからさまに好意向けられてるはずよね?」
「うっ…め、面目ない…」
「はぁ…まぁ、家族としてしか見てなかったら、家族間の好意だと思っても無理ないかもしれませんね、先輩里香が来る前は兄弟もいないって言ってましたし」
「…」
今思えば、思い当たる節はいくつもあった。バレンタインのチョコだってそうだし、極めつけは昨日の携帯の待ち受け画面と、あの時の慌てっぷり。今思えば…そういうことだったのか…。
「…で、これからどうするわけ?」
「…」
『何が?』なんて聞くまでもなく、里香の事だとわかった。こうして里香の本当の気持ちを知ってしまった以上、今までと同じように接するのは…否が応にも意識してしまって、正直きついかもしれない。でも、今まで里香が黙っていたと言う事は、里香は里香で何か思うところがあるのかもしれない。だから直接聞く事もできないが、かといってこのまま放っておくわけにも…。
「…わからん」
散々迷った挙句、曖昧な答えを返す。「妹が自分のことを好き」なんてこれからの生活を左右するといっても過言ではない事実を急に知らされて、動揺してて冷静な判断を下せないだけなのかもしれないが…例え冷静だったとしても、すぐには結論を出せない事だと思う。
そりゃまぁ素直な感想を述べるなら、嬉しくないはずがない。今まで好かれようと思ってやってきた事が、結果となって現れたと喜んでもいいと思う。…こうなってる以上ある程度やりすぎた気がしないでもないが。
しかし、俺の今までの行動はあくまで「家族の一員として」早く馴染んで欲しいと思って行動した事であって…それを超えて「異性として好意を向けられる」と言う状況になってしまうと…里香には申し訳ないが、困ってしまう、と言うのが正直な所だ。
何度も言うようだが、嬉しくないわけでは決してない。ただ、今までずっと努めて妹として接してきた相手がそれ以上の感情を俺に抱いていると知ってしまえば、やはり困惑してしまう。それに…
「ふぅ…どうしたもんかね…」
ため息を一つついて、誰にとも無く問いかける。隣を歩いている二人にも俺の呟きは聞こえていただろうが、二人も明確な答えを持ち合わせていないのか、返事は返ってこなかった。
♪ ♫ ♬
結局その後、俺たち三人は特に会話を交わすことも無くひたすら歩き続け、気付けば三人揃って俺の家の前に佇んでいた。
中に里香がいる、と思うと、彼女のいない所で特別なことを聞いてしまった罪悪感が湧き出てしまいなかなか家に入る気が起きなかったが、いつまでもここにいても仕方がない。意を決して玄関に手を掛けようとしたところで、
「先輩っ!」「奏っ!」
双子が同時に俺の事を呼び止めた。驚いて振り向くと、二人もお互いが俺を呼び止めると思っていなかったのか困惑していたようだったが、それも一瞬の事だった。お互いに小さく頷きあって、まずは蓮が口を開いた。
「俺達には、先輩が何を考えているか完璧にはわかりません。そしてもちろん、あなたがどういう結論を出すのかも…。俺達は先輩じゃないから、先輩がどんな結論を出しても口を挟む事はできません。でも…」
そこで言葉を切って、鈴に視線を送る。鈴もそれに頷いて、彼の言葉の続きを口にした。
「もしあんたの出した結論が里香を傷つけたら、あたし達はあんたを許さないからね!」
鈴は力強くそう言って、ビシッと俺に指を突きつけた。…俺は少しの間呆気にとられてそのまま突っ立っていたが、すぐに我に返って…二人の言わんとしている事に気付いて苦笑してしまった。
「ははっ…まぁ、せいぜい頑張るさ。俺は里香の兄貴なんだしな」
傍から見たら何とも不誠実な態度だと思われるかもしれないが、それが俺の本心だった。里香の事実を知ってなお、結局行き着いたのはその結論だ。
鈴の言葉から察するに、二人も俺の結論をある程度理解した上で励まし、激昂してくれたのだろう。結果的にはそれは俺の中の結論を決定付けて、それと同時に逃げ場を完全に潰した事になる。…二人の言葉は重く俺の心にのしかかり、しかしそれと同等の勇気を与えてくれた気がした。
蓮は俺の言葉を聞いて力無く頷き、鈴は目尻に涙を溜めながら俺を睨みつけ…やがて鈴が「フンッ!」と勢いよく俺に背を向け、
「私やっぱり、あんたのこと大っ嫌い!ほらっ、とっとと帰るわよレン!」
「あぁ、わかったよ。…それじゃ先輩、せいぜい苦しんでくださいね」
そう吐き捨てるように告げて、俺の前から姿を消した。俺はそんな二人を見送りながら「容赦ねぇなぁ」と力無く苦笑し、「…まぁ、実際かなり苦労する事になるんだろうけど…」と、深いため息と共に呟いてから玄関をくぐるのだった。
冒頭でも述べましたが、とにかくまずは謝罪から。
繰り返しになってしまいますが、何の事前報告も無く急にピタリと更新を止めてしまって、本当に申し訳ありませんでした。
様々な理由があったのですが(もちろん中には『単に遊び呆けてしまった』等到底言い訳にならないような理由も)、一番大きかった理由は「作者自身が今後の展開に疑問を持ってしまった」という事です。
というのも、この話を書いている最中で、「本当に今想定している終わり方がベストなのか?」といった疑問が頭に浮かんでしまい、自分でどうしていいのかわからなくなってしまったのです。
そこで急遽、一旦続きの執筆を完全にストップさせ、構成を練り直す事にしたのです。…今思い返せば、「その段階で活動報告等でその旨をお伝えしていればよかったのに」と執筆を再開してから激しく自己嫌悪に陥ったのですが…(=ω=;)
しかしこの長い休載の甲斐あって(?)、ようやく現在頭にある終わり方に自信を持つ事ができました。勝手に長期更新ストップをした挙句に今後の展開は休載前とほとんど変わっていないという、読者様方からしたら「オイふざけんな」と言われても仕方のないトホホな結果になってしまいましたが、今後はこれほど長い期間の更新停止は無いはずです。学校関連の多忙などで数週間程度の休載は例外としてですが。
今後の予定としてはとりあえず更新停止以前のように週に一回、毎週日曜日の昼ちょうどに更新を目指して行こうと思います。
自分の勝手で皆様に多大な迷惑をかけてしまったダメな作者ですが、今後もお付き合い頂ければ幸いです。それから、こんなに長い間行進が止まっていたにも関わらず、本編どころか言い訳がましい後書きまで最後まで読んでくれた読者様であるあなたに最大限の感謝を!ありがとうございます!
それでは、次回をお楽しみに!さて、書くぞ~!w