ミクノポップ!!   作:YoShoki

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さてさて、一応宣言どおり日曜正午に投稿はできましたが…久しぶりに書いたので少し作風が変わってしまったかなぁと少しばかり懸念しているのですが、どうですかね?
まぁでもそこまで目立った変化は多分ないと思うので、とりあえずは最新話、お楽しみくださいw


第35話 お人好し

「あ゛ぁ゛~…」

 

あれから一週間近くが経った金曜日。放課後を告げるチャイムがなると同時に、俺はため息と共に机に突っ伏した。普段なら一週間が終わったことを素直に喜び伸びの一つでもするところだが、さすがに今自分が置かれている状況で、晴れやかな気分には到底なれない。

 

「ん~終わった~!海翔、カナ、帰ろ…って、カナどうしたの?」

 

一方対照的に机から勢い良く立ち上がった葵が嬉々とした声で俺達を呼ぶが、思いっきり脱力している俺に気付いて怪訝そうに尋ねてきた。海翔も葵の隣に並び、不思議そうな視線を向けてくる。

 

「ん、いや…ちょっと最近家がギスギスしててな…」

「え、ギスギス?嘘、あんたらが?」

「…ちょっと信じられないよね、いつもあんなに仲いいのに」

「まぁ色々あってな…」

 

もちろんその『色々』には俺の責任もあるのだろうが、どうにもそれ以外の要因もあるような気がしてならない。

 

「色々って?」

「色々は色々だよ」

「何よそれ、答えになってないじゃない」

「別にいいだろ、実際何が原因なのか俺自身もあんまわかってないし」

「ふーん…ちなみにギスギスって、具体的にどんな感じに?」

「具体的にって…まぁ空気が重苦しかったり、互いにちょっと余所余所しくなったり、会話が全然続かなかったり…まぁ色々」

「…さっきから『色々』ばっかりだねカナ」

「うるさいな、俺だって一杯一杯なんだよ…」

 

二人がジト目で俺を見ている。…何で俺だけが悪いわけじゃないのにそんな責めるような視線を受けなきゃならんのだ。それはあれか、実際の状況を見るまでも無く俺が悪いと決め付けてるのかお前ら。泣くぞ。

 

「ん~、でもカナ達が気まずいなんて、ちょっと想像できないよね…」

「そうねぇ…よしっ!」

 

話をしているうちにいつの間にかまた自分の席に座り込んでいた葵が、何かを思いついたのか掛け声と共に立ち上がった。俺は何事かと視線を向けたが、海翔は葵が何を考えているのか既にわかっているかのように不思議そうな顔をするわけでもなく、ただ苦笑だけを漏らした。

 

「これから私達でカナんち行って、原因を確かめようじゃないの」

「…はぁ?」

「あはは、絶対そう言うと思った」

 

葵の言っている意味が分からずに素っ頓狂な声を上げてしまった。というか海翔、やっぱり葵の考えてた事がわかったのな。エスパーかお前は。

 

「…何でそうなる?」

「いや、だから原因を確かめようって言ったじゃない」

「そうじゃなくて、何でお前がそんな事しに来るわけ?」

「だって心配じゃない、あんた達が険悪ムードになるなんて、ちょっとした大事件よ?」

「別に険悪って程じゃ…って言うか何だ『ちょっとした大事件』って、『稀に良くある』みたいな言い方すんな。あと、その理由もダウト、絶対面白がってるだろお前」

「しっつれいねぇ、私だって心配する事くらいあるわよ。…まぁ四割くらいは興味本位だけど」

「ふーん…」

 

四割ねぇ…まぁ普段葵がこういうこと言い出す時は八割が興味本位だから、今回は比較的本気で心配してるわけか。…俺達が気まずいってのがそんなに珍しいかねぇ?

…いや、珍しいか。考えてみれば里香が来て以来、小さなケンカくらいなら何度か経験したけど、こういう気持ち悪い感じでギスギスして、俺がこうやってこいつらの目に見えて参ってる状況ってのは今回が初めてかもしれない。なるほど確かに、そう考えるとこいつらが心配になる理由もわかるってもんか。…ちょっと申し訳ない気分になるな。

 

「まぁ別にお前らが来るのは構わないけど、結構本格的に気まずいから、付いてきてから後悔すんなよ?」

「大丈夫だよ、むしろいつも通りの雰囲気じゃないと僕達も深刻度がイマイチわからないしね」

 

海翔が俺に言う。今まで俺と葵の会話には入ってこなかったけど、やっぱりこいつも付いてくるつもりらしい。…お人好し共め。

 

「んじゃまぁ、そうと決まれば行くか?」

「そうね」

「うん」

 

俺が立ち上がったのを合図に二人も自分の鞄を手に持ち、俺たちは三人揃って教室を後にした。

 

♪ ♫ ♬

 

「ただいま~」

「「おじゃましま~す」」

 

俺に続いて、二人が家の中に向かって来訪を告げる声を発する。…数週間前まではすぐにパタパタと足音を鳴らしながらミクが出迎えていてくれたのだが、ここ一週間は今日のように返事が返ってくることはなかった。

 

「…誰もいないのかな?」

「んなわけないだろ、ミクは基本的にずっと家にいるし、里香の靴だってここに…って、あれ?」

 

俺は靴箱に入っている里香の靴の隣に、同じデザインの靴がさらに二組並んで置いてある事に気づいた。里香のと同じデザインという事はつまり学校指定の靴という事で、それが意味する事は…。

 

「あ、帰ってきた。おかえり~」

「先輩、お邪魔してます」

「げっ、お前ら…」

 

ミクの代わりに二階からバタバタと足音を響かせて俺たちの前に現れたのは、つい一週間前、俺にこの家の現状を作り出すきっかけの一つになってしまった事実を教えた鏡野姉弟だった。…いやまぁ、別にこいつらのせいでこうなったわけじゃないし、教えてくれた事自体には感謝しているのだが…別れ際「あんたなんか大嫌い」やら「せいぜい苦しめ」やら言われた二人なので、正直今は会いたくないと言うのが本音だったのだが。というか、この家の現状をあまり知られたくなかった。

 

「ちょっと、出会い頭に客に向かって『げっ』はないでしょ?」

「…何してんのお前ら?」

「学校で里香の元気がなかったので、ちょっと様子を見に来たんです」

 

あぁ、つまりこいつらも葵や海翔と同じようにお節介を焼きに来たわけね…。まぁありがたいっちゃありがたいんだが…何か複雑だ。

 

「里香は?」

「部屋にいるわよ、あんたが帰ってくる前にパパッと宿題でも片付けて置こうって話になって。ついさっき終わったところ」

「ふーん…ミクは?」

「え、ミクさんいたの?」

「いやいるだろ、靴だってここにあるし…会ってないのか?」

「俺達は会ってませんけど…」

「…そっか」

 

って事は、またいつも通り部屋に篭ってるわけね…。俺は軽くため息をついてから、とりあえず俺達の会話を黙って聞いていた二人をリビングへ招き入れる。んでもって、初対面である四人に軽くお互いを紹介してやる。

 

「葵、海翔、前に少し話題にした事あったろ。こいつらが里香の友達第一号と二号、鏡野鈴と蓮だ。そんで、鈴蓮、こいつらは俺の学校の同級生、海翔と葵だ。お互いに…まぁ、変な奴らだけど、悪い奴らじゃないから、仲良くしてやってくれ」

「鏡野蓮です、よろしくお願いします、えっと…葵先輩と、海翔先輩、でいいですか?」

「うん、よろしく、蓮君、鈴ちゃん。僕は海翔。で、こっちが…」

「どーも、あたしは葵。よろしくね。いやぁ、しかし予想以上にボーカロイドのリンレンにそっくりね…」

「…鈴です、よろしくお願いします。って言うか奏、あんたの言った『第一号』ってあたしとレンどっちの事?」

「え?いや、別にどっちの事でもないけど…」

「じゃあ第一号はあたしね、第二号はレンで」

「…別にどっちでも良くねぇか?」

「どっちでも良くない、超重要な問題でしょ!」

「…まぁなんでもいいけどな」

 

その割りに蓮は見るからにどうでもよさそうに海翔と葵と自己紹介を続けてるんだがな。んなことにこだわってるのはどうもお前だけみたいだが。口に出しては言わないけど、怒られるし。

 

「…それで?」

「あ?」

 

自己紹介も一段落したところで、鈴がジト目をこちらに向けた。相変わらずこいつのジト目はケンカを売られているような気分になって、思わず俺もケンカ腰に返事をしてしまった。

 

「いつの間に千歳家はこんなに居心地悪くなっちゃったわけ?」

「うぐっ…!」

 

こ、こいつ、的確に俺が嫌がる言い方をしてきやがるな…。

 

「そうねぇ、私達が前来たときも帰ってきたらミクと里香ちゃんが迎えに来てくれてたし…ホント何があったの?」

 

葵も鈴に便乗するように俺に聞いてくる。本当に心配しているような口調から察するに、予想以上に雰囲気が悪かったのだろう。だからそう言ったのに。

 

「…原因が100%わかってれば俺だって対処してるよ」

「その口振りからすると、100%はわかってないけど、数%はわかってるんだね?」

「…まぁ、一応」

「「…はぁ」」

 

その辺の事情はある程度察しがついているのであろう鏡野姉弟が、揃ってため息をついていた。それから今度は蓮まで俺にジト目を向け、無言のプレッシャーを与えてくる。

…そんな顔すんなよ、しょうがないだろ?相手の気持ちを人づてに聞いて、それを受け入れられないからって相手から話を持ちかけられるよりも前にこっちから切り出して振るなんて、鬼畜の所業である以前に失礼にも程があるってもんだろ。でも実際アイツの気持ちは知っちまってるわけだし、なかなか今まで通りに接するってのも難しいんだって、わかるだろ?

 

「そ、それはともかく…これからどうすんの?」

 

俺は止まってしまった会話を再開させるべく、新たな話題を切り出した。と、ちょうどその時。

 

「あの、お、お兄ちゃん…お帰り」

「っ!?」

 

背後から話題の当人である人物の聞きなれた声が聞こえて、驚いて勢い良く振り返ってしまった。そこには、階段を四分の三ほど下りたところで不安そうな顔で俺の事を見ている里香の姿があった。

 

「…ぁ…」

 

俺の過剰な反応を拒絶と感じたのか、里香が今にも泣き出してしまいそうな表情を一瞬だけ浮かべた。だがすぐに軽く頭を振って、再び俺に笑いかけてくれる。

 

「…お、お帰り」

「あ…あぁ、ただいま」

 

俺も笑顔で返事が出来た…と思う。しかし、俺達の会話はそれ以上続かず、里香は無言で玄関に向かった。

 

「里香…」

「あ、あの、私、お夕飯の買い物してこなくちゃ…」

「え、でも鈴と蓮が…」

「い、行ってきますっ!」

 

俺の話を遮るようにそう大きな声を張り上げると、里香は慌てたように家から飛び出して行ってしまった。その様子を呆然と見守っていた俺達だったが…一人だけ、誰よりも早く動き出し、俺の胸倉を掴んできた奴がいた。

 

「あ、あんた、里香ちゃんに何したわけっ!?」

「うぉ、あ、葵…ちょっと、苦しい…!?」

 

驚くべき速度で動き出した葵を見て、他の面子もハッと我に返り、葵と俺の現状を見て慌てて葵を俺から引き離す。乱れてしまった襟元を軽く直す俺を心配してくれる海翔と、怒っている…というより、取り乱している葵を落ち着けようと必死に説得する鏡野姉弟。

 

「だ、大丈夫、カナ?」

「お、おぅ、何とか…」

 

何とか服を元に戻して空気の通り道を確保してから葵のほうを見ると、向こうも少し落ち着いてきたようだった。俺は少し慎重になっている自分を自覚しながら、恐る恐るという風に葵に話しかける。

 

「あ、葵…?」

「ご、ゴメンねカナ、ちょっと暴走しちゃったみたい…」

「…どうしたんだ、急に?」

「ちょっとね…予想してたのより五倍は酷かったから、我忘れちゃったみたいで…ホント、ゴメンね」

「…俺は別に気にしてないよ」

 

「文句を言える立場でもないしな」という言葉を付け足してから、体の力を抜いて椅子の背もたれにもたれかかる。そこからはまた沈黙が空間を支配し、時計が時を刻む音だけが無機質にリビングに響いていた。数十秒間はそうしていただろうかという時、不意に葵が椅子から立ち上がる。俺は無意識のうちに防御体勢をとってしまったが、葵が向かったのは先にあったのは俺ではなく玄関だった。

 

「…私、里香ちゃんのこと探してくる。んでもって、何がどうなってるのか事情を聞いてくる」

「…」

 

「どうして」とは聞けなかった…いや、聞かなかった。どうしてそこまでしてくれるかくらい、鈍いといわれている俺にだってわかる事だ。だって、俺が逆の立場でもきっと同じようにしただろうから。だから、

 

「…里香が夕飯の買出しに行くとしたら、駅前のデパートにいる確立が一番高いはずだ」

「ん、オッケー」

 

俺は全力でこいつらの力を借りる事にした。靴を履き終えて玄関のドアノブに手を掛けたところで葵は動きを止め、こちらに振り返った。

 

「カナ」

「ん?」

「今回の騒動さ…あんたも言ってたけど、多分あんただけの責任でこうなったわけじゃないってのは何となくわかった」

「…」

「…でもさ、全部解決したら、一発殴らせて」

「…了解」

「ん、よし。それじゃ、行ってくるわ」

「おぅ、頼んだ」

「任せなさい」

 

葵は俺の返事に満足そうにニヤリと笑い、勢い良く外へと飛び出て行った。

 

「…さてと、俺も何とかしねぇとな…」

 

葵が開け放っていったドアが完全に閉まったのを見送ってから、俺は振り返って階段に向かって歩き出…そうとしたところで、海翔、鈴、蓮に止められた。

 

「先輩、どこに行く気ですか?」

「どこって…ミクの所」

「何をしにですか?」

「アイツが何で俺を避けるのかってのを聞きにだけど…」

「…はぁ、やっぱあんたバカね」

 

俺の返事を聞いた鈴が大きなため息をつき、偉そうに腕を組んで俺を睨みつけた。

 

「あたしはあんたが嫌い。だけど、今までの一週間こんな状況が続いてた中で、あんたが一度も行動を起こさなかったなんて思うほどあんたの事を見損なっているわけでもない。…きっとあんたはこの一週間、あんたなりに現状を打破しようと頑張っていた。違う?」

「…それは…」

 

その通りだった。俺だって原因がわからないながらも二人に歩み寄る努力をしていたつもりだったのだが、結果はこの通り。一週間たった今でも事態は全く好転していなかった。

 

「でも、出来なかったんでしょ?」

「…っ!」

「そう、あんた一人じゃ出来なかった。…あははっ、いい気味!あたし達の言った通り、苦しんでくれてるみたいで何よりだわ!」

「…何が言いたい?」

 

高笑いをする鈴を見て、少しずつイライラが募ってしまう。鈴の態度に対してではなく、自分自身の無力さを思い知らされているから、そして、早いところ行動を起こしたいのに意図のわからない言い回しを延々続けられて身動きが取れないからだった。

しかしそんな様子を見守っている蓮と海翔は、片やため息、片や苦笑と、相変わらずよくわからない反応をしていた。

 

「…はぁ、ホントあんたって察しが悪いわね」

「だから、何が言いたいかって聞いて…っ!」

「ミクさんには、あたしと蓮が話を聞いてくる」

「…はぁ?」

「…な、『何で』とか聞かないでよね。あたしだって…理由は良くわかんないんだから。でも…ほ、ほっとけないでしょ?」

 

そこで初めて、今まで偉そうに組んでいた手を下ろし、俺から目を逸らして呟くように言った。…えっと、よくわからんが、つまり…。

 

「…要は、協力してくれるって事か?」

「さ、さっきからそう言ってるでしょ!?」

「…何で?」

「だから聞くなって言ったでしょ!?こ、これは…そ、そう!里香のため!あんた達がいつまでもケンカしてたら里香が悲しむでしょ、だからよ!」

「わ、わかったよ、わかったからそんな必死にならんでも…」

「ふんっ、わかったならよし…行くわよレン!」

「はいはい…それじゃ先輩、行ってきます」

「…おぉ、任せた」

「任されました」

 

ドスドスと足音を響かせて階段に向かう鈴を見て苦笑を浮かべながら、蓮も鈴のあとを追った。俺はそんな二人を見送ってから、唯一この場に残った海翔に視線を向けた。

 

「…なんだか随分大事になっちまったな…」

「まぁ、かなり深刻っぽいしねぇ…。それにしても、鈴ちゃんのツンデレっぷりは凄いね」

「あいつはいつもあんな感じだけどな…はっ、って事はアイツもしかして俺の事…!」

「大丈夫それはないから」

「ですよねー。まぁ、もしホントにあったらそれはそれで困るから、安心っちゃ安心だけど。でもじゃあ何で手伝ってくれるんかね、里香が~ってだけが理由じゃないだろ?」

「…カナって本当に鈍感だよね」

「…なんだよ、じゃあお前はわかったのか?」

「多分だけど、葵ちゃんと同じ理由だよ」

「…そんなもんかね?」

「そんなもんだよ。…さて」

 

そこまで話したところで、海翔がリビングへ移動する。俺もそれに従い、海翔が座った反対側にあるソファーに腰を下ろした。

 

「それじゃ、僕達も話をしようか」

「…はっ、やっぱお前もそういうつもりか」

「当然でしょ?」

 

さも当たり前のようにそう言って、海翔は微笑を浮かべる。…ったく、本当に俺の周りにはお人好ししかいないんだなぁ…。

 

「…海翔」

「うん、なんだい?」

「…ちょっと、相談があるんだ」

 

まぁ、そういうことならせいぜい手伝ってもらうさ。礼を言うのは、全部解決してからだな。




3月14日。日本ではホワイトデーというカップル御用達の素敵イベントなのに、アメリカでは「π(パイ)の日(3.14だから)」とか言うくだらない日でしかないという現実。切ないのぉ…(´・ω・`)

そういえばこれ書いてる最中に気付いたんですが、前回投稿してからもう既に一回「日曜日の正午」って過ぎちゃってましたよね…(前回投稿が3月6日金曜日)。ごめんなさい全然気付いてませんでした(=ω=;)
ま、まぁでも今後は間違いようがないので、頑張っていきたいと思います!
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