セイシュンリハーサル   作:蒼井 綾

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息抜き、と言ったらあれですが短編を書いてみました。
よろしくお願いします。
メインは『From dawn to dusk.』なので、更新速度はあまり自信ありません。





図書館は寝る場所じゃない

 遂に迎えた高校最後の夏。

 義務教育ではないけれど、今では必然と誰もが通う3年間の高校生活に終止符を打つ最後の年。

 つい先日、私達はお世話になっていたライブハウス『SPACE』のファイナルライブを終わらせて完全に受験モードに切り替えたばかりだった。

 

 軽く背筋を伸ばして重たい腰を椅子から起こして、近くに置いていた鞄を取り、中に参考書やノートを入れていく。

 普段は家で勉強するかバンドメンバーと一緒にするのだけれど、今日は図書館でやりたい気分なのだ。

 

 

「お姉ちゃん、どこかに行くの?」

 

「あ、りみ。少しだけ図書館で勉強してくるね」

 

「うん、わかった」

 

「今日も有咲ちゃんのお家で練習?」

 

「うん!ライブが終わったばかりだけれど文化祭があるから、お姉ちゃんも勉強頑張ってね」

 

「ふふ、ありがとう。ポピパのライブ楽しみにしてるね」

 

 

 妹のりみと軽く会話を弾ませつつ、私は自分の部屋を後にしてお母さんに図書館で勉強してくる事を伝えてから玄関で靴を履く。

 今までならギターを背負っていたから靴を履き終えて、後ろに振り返っても大きいギターケースがあったけれど今は無い。

 代わりにあるものと言えば、参考書とノートがぎっしりと詰められた現実味溢れる鞄のみ。

 

 あの日々と少しだけ離れると考えると、しょうがないのだけれど何だか寂しいと感じる。

 

 

「遅くならないうちに帰ってきなさい」

 

「うん、わかってる。行ってきます」

 

「気を付けてね、お姉ちゃん!」

 

「りみも気を付けてね!」

 

 

 車の隣に止めておいてある自転車に駆け寄り、鍵を開けて重たい鞄を前のカゴに乗せる。

 何だか一気に肩が軽くなったせいで違和感を感じるけど、夏特有の暑さでやられてしまう前に涼しい図書館へ行こう。

 うちからさほど遠くなくて、ここら辺では大きいと有名な図書館へ。

 

 自転車を漕ぎ出せば、暑い日光は変わらないものの風が吹いて気持ちがいい。

 こんな風に思いっきり自転車に乗って自然を感じるのも、リフレッシュになるし時々走ろうかな。

 なんて思いながら、幾つもの曲がり道を過ぎて真っ直ぐと進んでいけば図書館が見えてくる。

 

 ここの図書館には中学生、高校生と約6年ほどお世話になっているからか受付のお姉さんとは顔見知り。

 作詞する時や楽器の本を見たくて借りたりしたのが多かったから、私が来るといつも音楽系の本を進めてくる優しい人。

 そして6年も通っていれば、お気に入りではないけれどこの図書館で一番人気が少なくて太陽の光がいっぱいに広がってる場所が一つだけある。

 

 そこが、私のお気に入りの場所。

 自転車を駐輪場に止めて鍵を閉め、入口を通ればエアコンが効いた涼しい風が外の熱で熱くなって汗をかいていた体をひんやりと冷ます。

 私は受付のお姉さんと目が合い、軽く会釈をしてから重たい鞄を持ってお気に入りの場所へと向かう。

 ただそこには、その席には既に先着がいた。

 

 しょうがない、図書館は公共の場だから今まで私一人だけ使えてたのが奇跡みたいなものだと思う。

 私は重たい鞄をテーブルに静かに置いてから隣に座ってもいいかを聞くために、群青色の表紙の本を読んでいる同い年ぐらいの男の子に話しかけてみた。

 

 

 

「…あの、お隣いいですか?」

 

「………。」

 

「……あの?」

 

「……え、あ、悪い。寝てた」

 

「…へ?」

 

「ここって気持ちいいよな、エアコンの風も効いてれば太陽の光もあるし寝るのに最適な空間」

 

「………。」

 

「アンタも寝に来たんだ?」

 

「違います」

 

「それは悪かった、んで何?」

 

「勉強したいので隣座ってもいいか確認を……」

 

 

 私がそう言うと男の子はポカーンっと口を開けたまま固まってしまう。

 そしてその数秒後、図書館だと言うのに大きな声で笑い出し始めた。

 すぐに図書館の方が来て一緒に私まで怒られてしまったのは、少々納得がいかないけれど。

 

 

「悪い、巻き込んだわ。でもアンタ律儀だな、いいぜ。座んなよ」

 

「…ありがとうございます」

 

「俺は寝てるから気にせず、どーぞ」

 

「……は、はぁ」

 

 

 確かにここは寝やすい環境ではあるんだろうけど、人が勉強してる隣で堂々と寝られるとこっちの集中力が切れてしまいそう。

 でも、私だって高校3年生で大学受験という最終学歴になる大切な受験を控えてるから勉強をやらないわけには行かない。

 

 隣で寝ているであろう男の子の事を一旦頭の外へと追い出し、参考書とノートを開いてシャーペンを走らせる。

 今解いてるのは数学、私の苦手分野の一つだ。

 

 

「何やってんの、それ」

 

「…え?大学受験の勉強です」

 

「ふーん、それって一般?」

 

「一応、でもまだ迷ってます」

 

「迷ってるってもう夏だぜ?」

 

「……海外の大学に行こうかなって迷ってて」

 

「へぇ、英語得意なのか?」

 

「凄くってわけじゃないですけど得意です」

 

「……大学受験ねぇ」

 

 

 何処か関係無さそうに言うけれど、私が見た限りじゃ同い年ぐらいだから彼も受験生じゃないのかな。

 だとしたら、こんな呑気に図書館を寝る場所にしてられない。

 先程あったばかりだと言うのに、私は多分同い年のはず……と思って小学校ぶりにお父さん以外の異性の人に勇気を出して話しかけてみた。

 

 

「受験勉強しないんですか?私の勝手な予想ですけど同い年な気がして」

 

「しない、俺スポーツ推薦」

 

「え、スポーツ得意なんですか!?」

 

「バスケだけ昔からやってる、あと敬語要らない」

 

「は、はい。じゃなくて、そうなんだ」

 

「そんで他に聞きたいことでもあるのかよ、そっちは受験勉強あるんだろ」

 

「あ、ううん。大丈夫、ありがとう」

 

 

 そっか、スポーツ推薦ならもう受験勉強っていう受験勉強をしないのかな。私には無縁の受験方法だから調べてさえいなくて分からないけれど。

 シャーペンを動かしながらチラッと見れば、彼は本から手を離して私の参考書を見てる。

 

 

 

「……えっと」

 

「悪い、初対面相手にやるもんじゃねぇな」

 

「ううん、驚いただけ。何かあった?」

 

「別に。良く集中してやってんなー程度」

 

「最終学歴だし、自分が行きたい所だから」

 

「ふーん」

 

 

 いや、興味があるのか無いのか微妙な反応をしないでほしい。

 私はとりあえず彼から目を離して、再び参考書に目を向けるけど苦手な分野なのもあって動きが止まる。

 あれ、これってどうやるんだっけ。

 

 

「ん」

 

「え?」

 

「この問題、上のこの方程式を最初に使って解いたら次の③に書かれてる方程式使う応用」

 

「…あ、ホントだ」

 

「ちゃんと読めよ、問題文の上に解き方のヒントとか普通に乗ってるぞ」

 

「……はい」

 

「しょんぼりしてないでさっさと解いちまえ」

 

 

 彼とは初対面のはず、だよね。

 一つ一つの言葉に刺があるわけじゃないけど、凄く馬鹿にされてる気がしてならない。

 でも、彼の言う通り落ち込んでないで早く1問でも解いていかないと。

 

 数学は確かに苦手な分野だけど全てができないわけじゃない。

 今解いてるのは高校2年でやった二次関数。これは得意だから自信あるし、ささっと終わらせて次に進もう。

 

 

「ストップ」

 

「え、何?」

 

「そこ間違えてる、3じゃなくて4だろ」

 

「え?どこ?」

 

「……はぁ、ルーズリーフとシャーペンくれ」

 

「…どうぞ」

 

 

 やっぱり上から目線な気がして、ちょっとムカつく。

 ルーズリーフとシャーペンを渡せば、私が最初に書いた式を書いてサラサラと問題を解いていく。

 偶に参考書に書かれてる方程式を間違えてないか確認して、私が間違えた部分は青ペンを使ってラインを引いてる。

 

 

「これがアンタが出した答え」

 

「うん」

 

「でも、ここ忘れてる」

 

「あ!」

 

「アホかよ、こんなんで大学受験って大丈夫か」

 

「……うるさい」

 

「へいへい」

 

「…返事は1回」

 

「へーい」

 

 

 初対面同士のはずなのに、前にもあったかのように会話してる私達。

 彼は、私の参考書から目を離すとまた本を手に取って読むのかと思えば表紙をぼーっと眺めてるだけ。

 本の中身は読まないんだ、変な人。

 

 

「読まないの?」

 

「俺の事気にする暇あったら、基本中の基本ぐらい解けるようにしてくれ」

 

「……わかりましたよっ」

 

「がんばれがんばれー」

 

 

 こんなにも棒読みの応援なんて聞いたことないと思う。

 とてつもなく棒読みで言われた言葉に、本当に変な人だと思いながら意識を切り替えてシャーペンを動かしていく。

 あれから3ページほど進んで、休憩しようかなと思って隣を見ると本を顔の上に乗せて天井を見てる男の子。

 え、何してるの。

 

 

「……キミ、何してるの」

 

「………んあ?呼んだ?」

 

「…まさか寝てた?」

 

「おう」

 

「…寝るなら中庭に設置されてるベンチで寝たら?」

 

「やだよ、あんなクソ暑いとこ」

 

「…図書館寝るところじゃないけどね」

 

 

 なんて、私が言い返せば無視して彼はボーッと今度は外を見てる。

 本当に変な人、それに上から目線なのは変わらないし。

 

 

「…んだよ」

 

「名前、教えてよ」

 

「個人情報漏えいを阻止するために拒否」

 

「学年!」

 

「拒否、つーか聞いてきた側が普通は言うんじゃねぇの?」

 

「…私は牛込ゆり」

 

「そうか、でももう会うとは限んねぇしな。諦めろ」

 

「フェアじゃないじゃん、スポーツやってるならフェアプレイの心を持ってるよね?」

 

「……ずりーぞ」

 

「何もずるくないです」

 

「……一颯(いぶき)

 

「フルネーム!」

 

「……はぁ、長谷川(はせがわ)一颯(いぶき)。学年はご想像でどーぞ」

 

「一颯くん、か。よろしくね」

 

「よろしく、牛込。二度と会わないだろうけど」

 

「牛込じゃなくて、ゆりって呼んで!それとそういうこと言わない」

 

「へいへい」

 

「返事は1回で十分」

 

「へーい」

 

 そして、一颯くんはまた本を顔に乗せて椅子によっかかれば完全に寝る体勢に入った。

 本当に変な人、あと図書館は寝る場所じゃなくて読書や勉強する所なのを一颯くんは覚えてた方がいいと思う。




初のゆりさん小説。
上手く書けるか不安ですが、暖かい目で見ていただければ。
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