い、いやね?色々とあったんですよ……FGOのイベントとかぁ、新しく配信開始したゲームとかぁ……はい、ゴメンなさい。
なんにせよ、久々に書くとかなり違和感がありますね……今後はちょこちょこと書いて行きます!
では、どうぞ!
メルドさん立会の元、あの勇者天之河とやる事になった訳だが……
(やばい、技能に心当たりはあっても、使えるかどうか分からない……)
軽く試してみたが、礼装魔術はカルデアで用意されていた礼装の魔術が使用出来るようだ。『カルデア』、『カルデア戦闘服』、『魔術教会制服』、『アトラス院制服』、あともう1つある筈だが、何故か使えなかった。
ただ、これだけあれば確実に耐久は出来る。だが、今回の立会は耐久戦をする事じゃない。速攻で天之河を『倒す』事だ。
そう、周りを巻き込む事は許せない。だが、それは自分の考えの押し付けだ。だからこそ、うちの軍師が言っていた事を実行する。
『押してだめなら引いてみろ、引いてだめなら押してみろ。それでもダメならば、いっそ殴りかかれ。それが1番早い。まぁ、こんなものは策とも言えんがな』
そして、訓練所で俺と天之河は向かい合う。
「今回のこの試合、天之河対藤丸。立会は王国騎士団団長、メルド・ロンギヌスと……」
「この私、グレゴリー・ラプスーチンが行う」
……。
『『『はあっ??!!』』』
えっちょっまっ。
「ふむ、どうしたのかね、勇者様方」
「……言峰綺礼という名前に聞き覚えは?」
「ないが」
「……得意料理は?」
「ふむ、そうだな……。トゥフのマーブル仕立てといったところか」
ラプスーチン……恐らく、名前は一緒でもあいつとは関係ないだろう。何にせよ、今はこの立会に集中しよう……。
「お、おい藤丸君。あの神父は……」
「別人だ」
「いや、でも」
「別人、他人、そっくりさん」
うん、別人だろう。なんだか、得意料理が絶対に麻婆っぽい雰囲気をもの凄い醸し出していても、きっと無関係だ。
--ダカラマーボーハモウヤメテ。
「何故かなんとも言えぬ雰囲気を漂わせている所悪いのだが……試合を開始させてもらおう」
「あ、了解です」
そうして、神父の一声にて、改めてお互いに向かい合う。--エミヤは言っていた。馬鹿正直に相手の土俵で戦うのは、愚か者のする事だと。我らが軍師は言っていた。常に戦場を把握し、絶えず変化させよと。
「では、双方構えたまえ」
互いに剣を構える。天之河は真っ直ぐな剣筋で此方を見ている。剣術ではなく、剣道としての構えで。
--あぁ、それが嫌なんだ。何も知らない愚か者が。
「では……初め」
一直線に此方に向かってくる天之河を見据えて……剣を投げる。
「なっ!」
そして俺は、手を銃の形の様にして、幾度となく世話になった言葉を口にする。
「ガンド」
周囲で観戦していた騎士達も、ただ浮かれていたクラスメイト達も、その状態を理解出来なかった。彼等ははなから決めつけていた。「勇者にどのような職業であれ、勝てるものか」「剣道をやっていて凄く強い天之川君に藤丸君程度が勝てるわけないじゃん」と。
しかし、その空想は覆された。
「どう……なってるの?」
誰が口にしたのかは分からない。だが、それがその場にいた全員の心情を表していた。
試合が始まり直ぐに投げられた剣を見て、騎士達は笑った。自身の唯一の武器を捨ててどうすると。幾ら異世界からの勇者御一行であっても、見た目通り浅はかな思考しか出来ぬのだろうと。
しかし次の瞬間、投げられた剣を防いだ勇者天之川の動きが止まった。何がおきたと困惑するが、その答えは簡単であった。
「今の魔法は何……?」
そう、魔法だ。けれど、理解したくはない事だ。彼等からすれば、魔法とは詠唱をしてか、もしくは大規模な魔方陣等を使用して使うものだ。
しかし、異世界から来たばかりの勇者達が魔方陣も魔法のための詠唱も知っているわけがない。そして、使用されたと思われる魔法はたった一言の呪文と思わしき言葉で終わっていた。『ガンド』そんなワンアクションの呪文ではせいぜい種火が限界、相手の動きを止めることなんて出来ない筈なのだ。
そんな騎士達の思考なんて知らないと言わんばかりに、試合は進んでいく。
剣でどうにかいなしている勇者に対して、ただの一行の一員である藤丸リッカは……拳を奮っていた。
「くっ、いきなり武器を投げつけたり、動きを止めてくるなんて……汚いぞ藤丸君! それに、何故君は剣を使わない! これは試合だぞ!」
「はっ、知った事か。それも1つの戦法であり、戦術だ。そして、命がかかっている場面でも、お前は汚いと自身を殺そうとしてくる相手に言うのか? これは試合ではあるが、戦い方が定められているわけではない」
クラスメイト達からしても、この状態は想定外であった。武器を持っている上に、強いはずの天之川を、武器を持たず、ただクラスの隅で本を読んでいただけの藤丸が圧倒している……勇者天之川という存在に対して、信頼をしている……してしまった彼等からしたら、信じられない光景であった。
「くっ……はぁっ!」
「……っ!」
まともな一撃が腹部に入った。それを見て、流石の藤丸であっても、流石の一行の一員であっても、もう無理だろうとその場の全員が思った。
「今のはまともに入っただろう。そろそろ降参したらどうだい?」
肩で息を整えながら、天之川はそう口にする。
「これで分かっただろう。俺には力がある! 君も中々の力があって、それで勘違いしてしまったみたいだけど……だが、その力を人々を救うために使おう!」
クラスメイト達も、騎士達も、その言葉に賛同していた。だがしかし……、彼がその程度で折れるわけがない。
「……」
「さぁ!」
倒れている藤丸に対して手を差し出す天之川。それは正しく英雄譚の1遍の様で……。
「甘い」
即座に起きた藤丸に手を捻られ、腹に一撃を入れられ、吹き飛ばされなければそうなっていた。
「かっはっ……!」
「甘い、甘いぞ天之川。戦場では、命がかかった場所では、そんな甘い言葉は意味が無い」
壁に叩きつけられながらも起き上がる天之川を、藤丸は眺めている。もう終わったと思っていた観戦者達も呆然とする。ただ唯一、神父だけがニヤリと笑っていた。
「くっ……君はもう動けないはず……」
「そんな訳ないだろう。この程度なら、もう何度も受けたし、実際普通に耐える事は出来る」
--何処からか炎が舞い始めた。それに最初気がついたのは極数人。しかし、数秒すると全員が気がついた。藤丸が燃えていたのだ。炎が足元から這い上がり、その足を、その胴体を、その腕を、その顔を、全てを包んでいく。
唖然とする彼以外の全員を知らぬと言わんばかりに、燃え盛る。
そして炎から出てきた藤丸は一変していた。黒く黒く黒い。まるで騎士甲冑のなり損ないの様に、体の1部にのみ金属製の鎧を纏い、右手には龍を象った旗を掲げ、腰にも一振の剣を携えた姿に変わっていた。
そして、同様に変わっていた藤丸の金色の瞳に正面から見られた天之川は、動けずにいた。
「力があるから、力を扱えるから、そんな慢心や思い込みで人を救えたら世界はとっくに救われている。もう死んだ筈だ。もう動けないはずだ。そんな事、当事者じゃないお前にわかるわけが無い。警戒を怠れば直ぐに死ぬ」
一言一言が、改めて観戦者達に染み渡る。まるで浮かされていた心情から戻すかのように。
「力があればどうにかなるか? 知恵があればどうにかなるか? そんな訳が無い。人は簡単に死ぬが、人は簡単に生かすことはできない」
騎士達は改めて思い出す。人々を救うためにここにいるのだと。自分達の力でどうにかするために、日々努力しているのだと。それなのに、異世界からまだまだ若い子供達を無理やり連れてきて、戦わせようとするなんて、何様だと自身の浅はかさに自身を叱咤する。
「ゲームの様に人を救える訳では無い。だが、ゲーム以上に人は簡単に死ぬ。力があるから勝てる訳が無い。救ったとして、何かを必ず失う事になる」
生徒達も改めて現実を突きつけられる。この世界に浮かされていたが、元の世界の家族達はどうなった?こちらの世界で、自分達は生き残れるのか?彼等はようやく現実に恐怖する。
「1度それをしっかりと考えろ、理想に溺れる前に。周りを疑い自身の立場を築け、裏切られる前に」
藤丸は自笑するかのように笑い口にする。
「そんな甘い考え方だと、何時か必ず全てを失うぞ」
--一瞬で詰め寄った藤丸の旗による一撃で、天之川は気を失った。そして、この試合は騎士達が自らの戒めとして、生徒達が現実を直視した理由として、元の世界に戻った後も心の中に残った。
藤丸が試合の為の舞台から出ようとした瞬間、1度だけ後ろを振り向いた。そしてその視線の先には……酷く恨めしく正しく呪わんといった表情で教皇イシュタルが彼を見ていた。
彼はそれを無視して自身に割り当てられた部屋に戻っていく。強く、深く感じる事のできる復讐の聖女の気配を感じながら。
彼は藤丸立香ではない。藤丸リッカだ。
彼は凡人だ。だが普通ではない。
彼は理想を抱いていた、だが現実を見た。
彼は信じていた。だが--守った者に裏切られた。