USJ襲撃の日の夜
「消時ちゃーん!心配したわよ、もう!」
「そうだぞ、消時!お父さんもすごーーく、心配しんたんだぞ!」
帝が警察からの事情聴取を終え、家に帰ると母親の燎子と父親の消助が抱きついてきた。
「お父さんもお母さんも消時ちゃんの実力は知ってるし、信じているけど……消時ちゃんの身に何か有ったと思うと私達心配で、心配で、もう無茶はしちゃダメよ」
「あぁ、心配をかけて済まなかった、母さん、父さん。だが、心配をかけ無いというのは無理だ。ヒーローとは、自己犠牲の精神だからな」
そう言って抱きついていた母親と父親を剥がす。
「それに、この帝消時には夢がある。必ずヒーローの『絶頂』に辿り着くという夢が。そのために、無茶はこれからも多くなる」
「うぅ……あなた、消時ちゃんがこんなに立派になって、私……嬉しい」
「あぁ・・俺も嬉しいよ、燎子。よし!今日はお赤飯だな!田所さん、飛びっきり美味しいの頼むよ」
2人は消時の言葉を聞いて涙を流す。
「はい、旦那様。飛びっきり美味しいお赤飯を、料理長に用意させます」
使用人の田所も、綺麗な顔には出さないが感動しており、消助の言うことに賛同する。
「いや、赤飯を炊くようなことでは無いだろう。それより、今日は疲れた、もう寝る」
「お風呂はどうなさいますか?」
「明日の朝に入る」
自分の部屋に向かい、ベッドに入り、今日起こった事件の事に付いて思考を巡らせる。
ヴィラン連合か、厄介な連中が出てきたな。
それにしても、あの死柄木と言う男、まるで子供の癇癪の様に喚き散らしていた。
あんな男が、USJ襲撃の事を考えれるとは思えない。裏で誰かが操って要るのか?一体だれが?………『
いや、あいつはオールマイトが殺したはず、だが……生きていた……可能性は十分過ぎるな。
あぁ本当に、脅威と言うものは思いもよらぬ過去からやってくる………『
貴様が俺の前に立ちはだかるのなら、脅威というものは打ち砕かなくてはならない。
………必ず貴様を捕まえてやろう。
★☆★
2日後
「敵との戦いを生き延びて一安心と言ったところだろうが、まだ終わってねぇ」
相澤のその言葉でクラスは静かになる。
帝以外の生徒に緊張と恐怖が込み上げるなか、相澤は一呼吸置いて────
「────『雄英体育祭』が迫っている」
「「クソ学校ぽいのきたぁぁぁぁああ!!」」
入学当初から除籍を掛けたテストを行っていたA組に、学校らしい行事をやる、と言う言葉は大きな威力になる。
「ヴィランが来た後だってのに……よくやれるなぁ」
不安そうな表情を浮かべる峰田の言葉を、相澤は否定する。
「逆だ。───開催する事で盤石な事を示すつもりだ。警備も去年の5倍……何より、最大の『チャンス』を無くさせる訳にはいかん」
雄英体育祭とは、日本のビッグイベントの一つ。かつてはオリンピックがスポーツの祭典と呼ばれ全国が熱狂した。個性が発現したせいで、今は規模も人口も縮小し形骸化した。だから、日本に於いて今、『かつてのオリンピック』に代わるのが、『雄英体育祭』。全国のトップヒーローもスカウト目的で観に来る。生中継され、観客もそこらの体育祭の比ではない。
「年に一度……最大で3回きりのチャンス。時間は有限───焦れよ、お前等?」
その言葉に返事をする者はいない。だが、表情で皆の覚悟は確認できた。
★☆★
放課後
「何事だぁあ!!?」
ザワザワザワザワと、1-A組の教室前で別クラスの生徒が大量に集まり、大渋滞となっている。それもそのはず、自分達と年が変わらない学生が敵の襲撃に耐え抜いたのだ。興味を持つのは当然である。
「なぁ、帝ってどいつだ?」
「ほら、あのピンク色の髪で背が小さい可愛らし顔をした」
「へぇー、あんな奴がねぇー」
そして、その中でも特に帝が注目されていた。理由は知っての通り、入試主席、今回のUSJ襲撃の主犯格を1人で撃退し、耐え抜いた。
まず間違いなく体育祭で一番の障害になる。
「帝・・お前、めっちゃ見られてんな」
「あぁ、マジで邪魔だな」
「ちぃッ!糞がぁあ!」
帝ばかりに注目するのが気に入らない爆豪は、そう吐き捨てながら峰田の疑問に答えてやる。
「敵情視察だろザコ。敵の襲撃を耐え抜いた連中だもんな。体育祭の前に見ときてぇんだろ。……意味ねぇからどけモブ共」
「知らない人の事とりあえずモブって言うのやめなよ!」
「噂のA組、どんなもんかと見に来たが随分と偉そうだな。ヒーロー科に在籍する奴は皆こんななのか?」
人混みを押し退けながら、何処と無く気だるげな目に隈がついた顔の生徒が近づいてきた。
「こう言うの見ちゃうと幻滅するな。普通科にはヒーロー科落ちたから入ったって奴が結構多いんだ。知ってた?そんな俺らにも学校側がチャンスを残してくれてる。体育祭のリザルトによっちゃ、俺達のヒーロー科への移籍、あんたらにはその逆があり得る。敵情視察?少なくとも俺は、いくらヒーロー科とは言え調子に乗ってると足元ごっそり掬っちゃうぞって宣戦布告に来たんだけど」
「威勢だけは良いな」
「ん?」
帝はドアに近づきながらその少年に言う。
「爆豪のもの言いが悪いの事実だが、貴様程度に俺達の足元は掬えん」
「な?!何だと!」
「その身体つき全く鍛えていないな、鍛える必要がないのか、それとも意味がないのか、どちらにしろヒーローには、必ず己の肉体を使ってヴィランを捕らえる時が来る。身体を鍛えていない時点で貴様もう『失敗』しているのだ」
「失敗……ッ?!」
「あぁ、『失敗』だ。良いことを教えてやろう。真の『失敗』とは、開拓の心を忘れ、困難に挑戦する事に無縁の所にいる者の事をいう。正に……今の貴様の事だな」
「くそッ、何も知らない癖に……」
言い切られたその言葉に少年は顔を歪める。
「その通り、何も知らん。だがな、貴様のヒーローへの憧れはその程度のものなのか?」
「そんなわけ………ッ!」
「なら挑戦しろ困難に、『覚悟』を決めろ」
「!?………あぁ、何か吹っ切れた気がするよ。ありがとう帝」
帝の言葉を聞きどこか吹っ切れた顔になる。
「だけど、どうすれば……」
「知らん。だが、1つアドバイスをするのなら、自分が今できる事をすれば良い、とだけ言っておこう」
「帝、お前って………良い奴なんだな」
切島がそんな事を言ってきた。
そんな中、集団の後ろの方から誰かが出てきた。
「隣のB組のモンだけどよ!!敵と戦ったっつうから話聞こうと思っていたんだがよ!!だけど、話しを聞いてたら感動してよ!!もう何かどうでも良くなったぜ!!兎に角、俺達がいることも忘れんなよ!ヒーロー科はB組もいるんだからな!!」
じゃあな!!と言って自分のクラスの方向へ帰っていく。
「ちょ!鉄哲!はぁ、あいつ……言うだけ言って」
「お前は……拳藤、だったな?入試以来か、怪我は治ったのか?」
「あ、あぁ。あの時はありがとう///、まだ言ってなかったよな?確か」
拳藤と呼ばれた女生徒は顔を赤らめながらお礼を言う。
「気にするな、当たり前の事をしただけだ」
「いや、それでも、な?///」
その光景を見ていた上鳴と峰田が血涙を流しながら膝から勢いよく崩れ落ちる。
「なんで、あいつだけぇ!くそぉぉお!あんな可愛い子とぉぉ!羨ましいぃぃ!」
「モテ男は爆ぜろぉぉ!」
2人は床に拳を叩きつける
「じゃあな、拳藤」
「あ、あぁ。じゃあ、な」
拳藤との話しを終え、A組の前にいる集団を押し退け帰っていく。
そして、雄英体育祭まで時は加速する。
感想とか待ってます。