「実はさ...明日、沼津に引っ越すんだよね...」
「「...え?」」
「だから明日からよろしく」
すると千歌は目を輝かせながら俺に言ってきた。
「奇跡だよ!薫君!曜ちゃん!この人にしよう!」
「うん!私もこの人なら大丈夫だと思うよ!千歌ちゃん!」
「な、なんだよ...」
「「私たちのマネージャーになってください!!」」
「...え?俺?いや、俺よりもっといい人いるだろ...」
「やっぱり...ダメですか...?」
「...分かった。やるよ。」
「ほんと!?やったよ~曜ちゃ~ん!」
「よかったね千歌ちゃん!」
「うん!」
千歌は曜に抱きついていた。
「青春だね~」
俺は1人、小さな声で呟いた。
「じゃあこの後ライブあるからついてきてね!」
ん?この後ライブ?俺は明日からじゃないの?
「...あの。ちょっといいですかね?」
「ん?どうしたの?」
千歌が不思議そうに俺を見ている。
「俺って明日からですよね?」
「え?何言ってるの薫君。今日からだよ?」
「...あ!用事思い出した!俺、明日引っ越しだからさ、ごめん!先帰ってるわ!」
そう言って俺は走ってその場を去った。
「あ!ちょっと~」
「大丈夫だよ!明日会えるから!千歌ちゃん、そろそろ時間だから行こ!」
「そうだね!行こ!曜ちゃん!」
「ふぅ~なんとか逃げ切った~よし準備するか」
俺は家に着いて引っ越しの準備をした。
~次の日~
「着いた~明日から仕事か...」
俺は沼津に着き、新しい自分の家にいた。スマホを付けると午前10時だった。
「少し早く着いたから散歩でもするか...」
そう言って俺は散歩を始めた。
しばらく歩くと見覚えのある後姿があった。
「あれ、曜だよな?」
曜は『十千万』と書かれた旅館の前に突っ立っていた。
「何してんの?こんなところに突っ立って?」
俺は曜の顔を覗きこんで問いかけた。
「...私、どうしたらいいいんだろう...」
「何悩んでんの?いつもの曜らしくないな」
ていうても会って2日しかたってないけど。
「俺でよければ...その悩み...聞きますよ?」
俺は少しカッコつけて曜に言った。
「何そのポーズ、全然カッコよくないよ」クスッ
曜は涙目のまま笑った。
「昨日ライブで投票数が0だったと...」
「...うん...それでね、千歌ちゃんに何て声をかければいいか分からなくて...
一番辛いのは私より千歌ちゃんのはずなのに...」
曜は泣きながら全てを話してくれた。
「お前は優しいなぁ。」
俺は片手で曜の頭を撫でながら言った。
「どうすればいいの...私...?」
「...ちょっと待ってろ。」
「...え?」
俺は旅館の中へ入っていった。
「すいませ~ん!千歌さんいますか~!」
すると奥から1人の女性が来た。
「あら~千歌ちゃんのお友達?」
「まぁ...佐藤薫です。」
「私は高海志満です~。千歌ちゃんは今部屋から出たくないって...」
「...そうですか。分かりました、ありがとうございます。」
俺は旅館を出た。
「どうだった?」
「千歌は今部屋から出たくないってさ。」
「そっか...」
曜はそう言って帰って行った。
「ふぅ~...よし、行くか。」
俺は一回深呼吸をして、また旅館へ入って行った。
「すいませ~ん!志満さん、ちょっと千歌の部屋まで案内してもらえませんか~!」
「分かったわ」
俺は志満さんに千歌の部屋まで案内してもらった。
「薫君、千歌ちゃんをお願いね...」
「分かりました。」
そう言って志満さんは一階へ降りて行った。
「...全部曜から聞いたぞ」
俺は千歌の部屋の前で座った。
返事はない。
「心配してたぞ、曜。」
「...曜ちゃん...が...?」
震えた声で返事が返ってきた。
「ああ。お前、今まで普通だ普通だって言ってるっぽいけどな、普通なんて人はいねぇんだ。」
俺は優しく、千歌に言った。
「...ううん...私は普通だよ...曜ちゃんみたいに可愛くて、運動もできないし...」
「じゃあ何でそんなに泣いてんだよ?」
「それは...ただ...」
「悔しいからだろ?始めて東京でライブして、失敗なんてしてないのに
投票数が0だったから悔しいんだろ?普通の人だったら泣いたりなんかしねぇよ。
でも、お前は自分が好きなものに涙を流せているんだぞ。」
「じゃあ...私は...なんなの...?」
「そうだな...夢追い人...とか?」
「何それ...」クスッ
千歌の部屋の中から少し笑った声が聞こえた。
「それと、1つ言っておく。悔しいなら、ちゃんと悔しいって言え。お前には『優しすぎる』友達が
いるだろ。」
「....ありがと...」
「あとはお前次第だ。」
俺はそう言って旅館を出て行った。
「青春だねぇ」
俺は小さく呟いて自分の家に向かった。
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