俺の暗殺教室   作:鬼如月

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第9話 観光の時間

新幹線とバスを乗り継ぎ、日が暮れてきたころ。E組一同は宿舎である旅館に到着した。...酔いでグロッキーな殺せんせーを連れて。

 

 

「...一日目で既に瀕死なんだけど」

「新幹線とバスでグロッキーとは...」

 

と、旅館のソファーにグッタリと座り込む殺せんせーに思わず声を出す片岡と三村。

 

まったく殺せんせーは...と、それを尻目に自分の荷物を整理していると、なにやら困った様子の茅野と神崎の姿が目に入る。

 

尋ねるとどうやら神崎が修学旅行のしおりの内容をまとめた日程表を失くしてしまったらしい。

 

「神崎さんは真面目ですからねぇ。独自に内容をまとめていたとは感心です。...でもご安心を!先生手作りのしおりを持てば全て安心!」

 

とかなんとか殺せんせーはフォローしているが(フォローになってない)、それでも神崎の表情は浮かないままだ。

 

「確かにバッグに入れてたのに...どこかで落としちゃったのかなぁ...」

 

...まあ失くしちゃったものは仕方がないし、切り替えていこうぜ。

 

 

―――まあそんなこんなで一日目が終了した。

 

 

 

 

 

 

そして色々と大変だった二日目に入る――――

 

 

...修学旅行二日目。今日は班で自由に散策する日である....のだが.....

 

「京都に来たときくらい暗殺のこと忘れたかったよなー」

 

と愚痴を零す杉野に激しく同意する。今日、そして明日の班別行動では、それぞれの日に一度殺せんせーと観光場所を回るときがあり、そこで国が用意したスナイパーが暗殺を決行する...という計画らしい。

時間が惜しい今は修学旅行にも暗殺を組み込まなければいけないというのは解るのだが....解るのだが.....!

 

「折角の観光なんだからのんびりゆっくり回りたかったなぁ...!」

「そうだよなぁ!いい景色じゃんここらも。暗殺には縁の無い場所でさぁ」

 

と、思わず漏らした俺の呟きに同意する杉野。が、それは違うぞ杉野よ。そうでもないよ、と前を歩いていた渚が話に参加してくる。

どうやらこの先に何かがあるらしく、全員でその方へ進んでいくと、コンビニの前に何かが書かれている石碑を発見した。ってこれは...

 

「坂本龍馬...って、あの?」

 

奥田が驚き、カルマが説明をする。

 

「1867年、龍馬暗殺。『近江屋』の跡地ね」

 

いつの間にか開いたしおりを持って渚が得意気に話を続ける。

 

「さらに、歩いてすぐの距離に本能寺もあるよ。...当時と場所は少しズレてるけど」

 

「このわずか1kmぐらいの範囲の中でも、ものすごいビッグネームが暗殺されてる。知名度が低い暗殺も含めればまさに数知れず―――――――ずっと日本の中心だったこの街は...暗殺の聖地でもあるんだ」

 

「有名な人斬りである岡田以蔵等も、この京都の地で暗殺を行っている。つまり京都は暗殺にあふれている!すごい!」

「葵君...?」

 

あ、悪い悪い。とジト目でこちらを見てくる渚に謝っていると、杉野が納得したように声を上げる。

 

「...なるほどな~。言われてみればこりゃ立派な暗殺旅行だ」

 

...まあそれはそれとしてのんびり観光したかった...!

 

「もう諦めなよー」

 

嫌だ!

 

 

 

 

 

 

その後、渚一行は八坂神社を観光した後に甘味処に行き、パフェを食べて茅野と俺のテンションは最高潮にあった。

 

...自由観光の時間も後半を迎え、もう少しで殺せんせーがこちらの班にまわってくる刻である。

 

この後の予定としてはとりあえず暗殺場所の下見であり、そこのコースを決めた神崎に皆でついていく。どうやら祇園の奥の方へ進んでいくらしい。

 

奥へ入り、あっという間に静かになっていく街並みを見て茅野が感嘆の声を上げ、神崎に話しかける。

 

「へー。祇園って奥に入るとこんなに人気が無いんだ!」

「うん。一見さんお断りの店ばかりだから、目的も無くフラッと来る人もいないし、見通しがよい必要もない。...だから私の希望コースにしてみたの。暗殺にピッタリなんじゃないかって」

 

さすが神崎。確かにここなら人の目も少ないし、暗殺には絶好の場所だな...入り組んでいることで狙撃もしやすそうだし。本当に――――

 

 

 

「うってつけだ。なんでこんな拉致りやすい場所歩くかねぇ?」

「.....え...?」

 

背後から掛けられた声に気づき振り向くと、大柄な男が三人、こちらに近付いて来ていた。

見るからに不良っぽい服装、黒い学ランにアホそうな顔。...大方どっかの高校の修学旅行生か。

 

「...何、お兄さんら?観光が目的っぽく無いんだけど」

「オイオイオイオイオイ、どう見てもロリコンの変態野郎にしか見えないだろう?まあ見るからに仲良しこよししたいって話しかけたわけじゃあなさそうだしな...」

 

カルマが尋ねるのに重ねて煽りを挟んでいく。これで本当に仲良しこよししたいとかだったら恥ずかしいが恐らく...

 

「ッああ!?野郎に用はネェンだよ!黙って女置いてママのところに帰りやが....グハァ!?」

 

一番大きな男にカルマが蹴りを入れるのにあわせて傍にいたもう一人の不良の顎を蹴り上げる。

 

「ホラね渚君。目撃者いないとこならケンカしても問題ないっしょ」

「最悪烏間先生になんとかしてもらえばいいもんねー。国の力で」

 

「不穏だよ葵君!」

 

そのまま残る一人の鳩尾に肘鉄を食らわせてニッコリ笑って言えば、渚に怒られた。

いいじゃん別に.....ッ!?

 

「そーだねぇ!」

 

ゴッ...という音が響き、後頭部に鈍い痛みが入る。突然の衝撃で眩む視界でなんとかカルマの方を見ると、脇道から現れた高校生がカルマを後ろから殴っているのが見えた。....クソがッ!まだいたのかよ!?

 

「ホント隠れやすいなココ。おい、女攫え」

 

カルマを殴ったリーダー格の男が俺の後ろにいるであろう他の高校生に指示をする。ッ皆がヤバイ!

 

「ダアアアアッ!」

 

最後の力を振り絞り、後ろにいたやつに噛み付く。が、そいつは少し怯んだだけで、ゴミを払うように俺は吹っ飛ばされる。

 

「葵君ッ!?」

「シブテェガキだな....まあいい。早く攫え」

 

....高校生達が渚と杉野を殴り、女子を連れ去っていく。...もう意識が.....なく......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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