椚ヶ丘中学校。
全国屈指の名門校であり、ハーバード卒の完璧超人、浅野學峯が理事長を務める中高一貫校だ。
そんなすごい中学校に俺は運よく転校できた...できたのだが...
転校手続きで理事長室を訪れた時。理事長が来るまで待たされていたのだが、理事長室にお置いてあった様々な私物。それらへの好奇心でつい...
「遅れてしまってすまない、君が転入生の―――
ガシャン!...と、足元で何かが割れる音がした。ギギギ、と錆付いた機械のように声がした方へ顔を向けると...
―――来て早々だが、君のクラスはE組で決定したよ、おめでとう」
(――まさか表彰盾を落とすとはなぁ...)
そんなことを考えながら歩いていると、煌びやかな本校舎が見えてきた。
が、そこには入らず、その先にある山へ向かって歩いていく。
理事長から言われた"E組"。この椚ヶ丘中学校にはE組という劣等生、暴力沙汰を起こした生徒等が入れられるクラスで、本校舎から隔離された廃校舎で授業を受けなければいけなく待遇も最悪らしい。折角名門校に転校できたのに...辛いなぁ...
山道を登っていく内に、徐々に息が上がってきた。これから毎日この山を登るんだから体力つけるようにしないとな。
またしばらく歩くと開けた場所に出て、少し先に木造のボロい校舎が見えてきた。噂に聞いていたよりも綺麗だな、知り合いからは台風が来たら潰れそうな程だった、と聞いていたのだが。
「取りあえず教職員の方々に挨拶をしておこう。手続きは済んでいるはずだし」
ということで校舎に入って職員室へ向かう。途中でE組の生徒らしき人とすれ違ったが、まずは職員室だと考え軽い会釈だけに留める。
職員室に着き、ノックをして戸を開ける。
「失礼します」
そう言って軽く頭を下げると、中にいた筋肉質で整った顔立ちをした男性が近づいてくる。
「君が今日転校してきた藤原君か。来て早々申し訳ないが、少し話を聞いてもらいたいのだが、大丈夫か」
ええ、大丈夫です。と返すと、職員室の中にいた金髪の美女が男性に声をかける。
「ちょっとカラスマ。自己紹介くらいしたらどうなの?名前もわからないんじゃそのボウヤも大変でしょう。ねぇ?ちなみに私はイリーナ。イリーナ・イェラビッチよ。気軽にイリーナ先生でいいわ」
これからよろしくお願いします、イリーナ先生と返したら、何故かとても感動しているような顔になった。小声で「久しぶりにビッチ先生以外で呼ばれた...!」とか言っている気がするけど聞こえない。聞こえないったら聞こえない。
「自己紹介が遅れてすまない。私はE組の体育教師の烏間だ。単刀直入に言うが――――君にある怪物の暗殺をして欲しい!!」
え、と思わず口から声が出る。
暗殺?怪物?この人はただの体育教師じゃ?などの疑問が頭の中を埋め尽くす。
「成功報酬は百億円だ」
「やります。やらせてください」
即答だった。自分でも呆れるほどに。即答に戸惑いながらも、烏間先生は言葉を続ける。
「その怪物がどういう姿かは見てもらうのが早いのだが....む、来たか」
そう烏間先生が言ったすぐ後に、職員室の窓から強い風が入ってきた。思わず顔を腕で隠す。腕をどけると、2mを超える巨大な怪物が窓に座っていた。顔は黄色いゴムボールのようで、来ている服には三日月の刺繍が施された大きなネクタイ、服からは冒涜的な触手が何本も生えている。なんだこいつは。いあいあでふたぐんな
「こいつが君の暗殺対象である怪物だ。ちなみに君の担任でもある」
そう烏間先生が言うと、黄色いタコは俺の方へ近づいてきた。
「ヌルフフフフフ、初めまして藤原君。私がE組の担任である、殺せんせーです。君の暗殺、期待していますよ!」
...何がなんだかよくわからないが、取りあえず挨拶と自己紹介だけは返しておく。
「初めまして。本日E組行きになりました、藤原 葵と申します。これからよろしくおねがいします、殺せんせー?」
その後E組生徒に俺を紹介するために殺せんせーと職員室を出て、教室へ向かっていたのだが、向かう途中に殺せんせーのスピードがマッハ20ということを知った。
......マッハ20のタコを殺せって?
――――俺の暗殺教室が始まる。