StrikerS Sound Stage X After 作:宮永 悠也
X After(略称)、いよいよ今話で完結です♪
3話まではチンク視点のお話でしたが、この最終話ではドクター、スカリエッティの視点で描いてみました♪
このX Afterの最後を飾るのに相応しい内容になっているかと思います♪
では、どうぞご愛読宜しくお願いします♪
あとがきにもちゃんと作者なりの感想書きます♪
……扉が完全に閉鎖する。
独房外の照明が暗転し、私を照らす光は、独房内の小さなライトと、通信回線映像の青みがかった光だけになった……。
部屋の暗転したのを先駆けに、私はコルクが開いたままのワインボトルを再びグラスへと傾ける。
トクトクと注がれる赤い上質なそれは、かぐわしい香りを放ちながら私を魅了する。
先程とは違い、喉に少しずつそれを流し込むと、私は思わず笑みをこぼしてしまった。
それが、ワインの上質さによるものかと問われれば、間違いだと答えよう…。
これは、全く別の感情から来るものだったのだから…。
ウーノ「ドクター……。」
聞き慣れた声…、長く時を挟んでいたのがまるで嘘かのように、
私へ向けられた静かな声が耳に馴染む。
ウーノ…、私の可愛い最初の娘…。
ずっと私の傍にいてくれた、最も私に近しい存在。
スカリエッティ「何かな…?ウーノ…。」
グラスを揺らし、娘の言葉に応える…。
だが、聞かれるべき内容について、私にはいささか検討がついていた。
ウーノ「これで…、良かったのですね…。」
スカリエッティ「ふ…♪ああ…。満足しているよ…?私は…♪」
尋ねてくるべき質問を予想していたものだから、
私のそれに対する答えはいやに機械的なモノとなる。
表情さえも、機械のようにぎこちない笑みを浮かべて…。
だが、この答えに関して微塵の偽りもない。
私は、非常に満足している…。
クアットロ「そお…、ですかぁ?
クアットロはあまり納得出来ないですねぇ~……。」
ナンバリング4、4番目の私の娘、クアットロ…。
私を愛し、姉妹を愛し、その重さと同等に相反するものを嫌う可愛い娘。
その考え方や執着、理想への理念は、私にとても良く似ている…。
スカリエッティ「どうしてだい…?クアットロ…。」
クアットロ「だぁってぇ…、ドクターは何で許せたんですぅ…?
隔たれたとはいえ、私達は共に戦い抜いた仲間…。
それなのにあ~んなにあっさりと…。
その薄情さったら…、腹が立つのは当然ですよぉ…。」
クアットロらしい意見…。
相手の心情や感情に敏感な彼女には、どうしても納得出来ない部分だったのだろう…。
トーレ「受け入れろ…、クアットロ…。
私達とは、最早住むべき場所が違う…。
そう既に選択をしていたからこそあいつらは地上にいて、
我々はここにいるのだろう……?
それぞれが望んだ場所に……。」
クアットロ「そお…、ですけど…。」
3番目の娘、トーレ…。
私の記憶と意思を色濃く受け継いだ4人の中で、
唯一前線へと赴かせた娘。
冷淡な性格、優れた戦闘技術と命令遂行能力。
ナンバーズというくくりであれば、彼女が最も完成形態に近いと私は個人的に思っている。
妹達への人間的感情の配慮も怠らないと、いつかチンクに聞いたことがある。
それもあってか、特に私との記憶の共有があった訳ではなかった、
7番目の娘、セッテ…。
彼女は私ではなく、トーレに付き添うかのように、こちら側を選択した…。
最も機械的感情が強かった彼女のことだ…。
深い理由があった訳ではなかったのかもしれないが…。
トーレの影響が強かったことを、私は認めざるを得ない。
そういった人望の厚さ…、というものは私とは違った部分だろうね……。
スカリエッティ「ふ……。
トーレの言う通り、彼女達は自らが望む選択をした…。
機械的ではなく、感情の赴くままにね…。
私は、それがとても嬉しく思う…♪
そして…、、、彼女達は…、今回も正しい選択をした…。
それが、我々を救うことになったというわけさ…。」
クアットロ「???どういうことですかぁ?ドクター…?」
トーレ「選択をしただけではなく…、救った…?」
問いに答える。
だが、私には単純である選択ながら、彼女達が受け取るにはいささか驚愕するものかもしれない…。
スカリエッティ「もし…、彼女達が私の提案を呑み、ここから出られたとする…。そして、再び君達を集めて…、私がやるべきことは決まっていた…。」
クアットロ「……?」
ウーノ・トーレ「…………。」
スカリエッティ「私は……、
君達を……、廃棄するつもりだったよ……?」
トーレ・クアットロ「……!!?」
ウーノ「…………。」
当然……、映像越しでも難なく察せられる程、彼女達は驚愕した…。
だが、ウーノだけは違ったようだ…。
いつもと変わらぬ冷静な表情…、眉すらピクリとも動かさず、ただ口を閉じ、私の答えを受け取った…。
スカリエッティ「驚かないのかい…?ウーノ…。」
ウーノ「…はい。私の知るドクターなら…、そうするだろうと……。」
スカリエッティ「ん……。」
ウーノ「ドクターが選んだ道を、私達は共に歩んで参りました…。
私達の体、命は…、ドクターから頂いたモノ。
ドクターが私達を必要としない時が訪れたならば、私はそれに従います…。
ドクターが良しとせず、管理局へと下らなかった現在(いま)のように…。」
スカリエッティ「ふ…♪なるほど…♪素晴らしいね…、ウーノ…♪」
クアットロ「ウ、ウーノ姉様…!
しかし、ドクター…!私達の廃棄だなんて…!その…!」
スカリエッティ「言いたいことは分かるさ…♪クアットロ…♪
だが、これはやるべきこと…、いや、やるべきことだった…。
今となっては、そんなことをする必要も、実行することすら叶わないがね…♪」
クアットロ「う……。」
トーレ「だから…、救った…、と…?」
スカリエッティ「ああ…♪
私の夢は…、あの戦いで潰えた…。
しかし、叶いこそしなかったが、私は後悔など微塵もしていない…。
あの戦いには全てがあった…。
悲願だった夢…!
それを叶えるに相応しい絶対の力…!
そして、愛する娘達も…!
……それ故に、後悔などしていない…。」
ウーノ「ん……。」
スカリエッティ「あの時、私は私が持てる全てを世界にぶつけることが出来た…!
その先に得た結果が、これで良いものだったのかと問われれば、私は迷うことなく答えよう…!
とても……、満足だったと…♪
仮の話をするのは苦手だが、あの戦いに勝利していれば、私は望んだだろうね…。
さらなる夢を…、さらなる力を…、さらなる革命を…。
だが、私は敗北した…。
ならば…、これ以上に求めることなどあってはならない……。
夢を見ることも、新たな世界を瞳に映すことさえも……、私には贅沢すぎる……。」
クアットロ「ドクター……。」
スカリエッティ「敗者になって悔いることほど愚かしいことはない……。
だからこそ…、勝利者になった時の喜びは計り知れないのだよ……♪
また仮の話だが、ここから出て、私が全く新たな革命(ゆめ)を望んだとしたならば……。
先に言った通り、君達をそこへ連れてはゆけない…。
君達は、結果敗者となった私の夢の残骸であり、新たな夢への重荷でしかないからだ……。
なら、切り捨てるのがケジメというものだ…♪
これは科学者としての美学ではなく、親としての責任によるものなのだよ…♪」
ウーノ・トーレ・クアットロ「………。」
スカリエッティ「私は元からこんな人間だ…。
そんな私の為に共に歩んできた君達に、元の夢を捨て、新たな夢へと執着する私を見てほしくはない。
だから…、君達の廃棄を決定付けていた…。
私と君達は、ただ敗者としてここにいる…。
だが、チンク達は違う…。
彼女達は、私達と同じ敗者だが…、私達とは異なる…。
敗者になってもなお、彼女達は希望(ゆめ)を得ようとした…。
その真意が…、誤りでなかったかどうかを追及する為に、
私は選択を持ち掛けたのだよ…。」
トーレ「あ……、、、」
スカリエッティ「結果はこの通りだ……。
まさに、救ったというべきだろう……?
違うかな…?トーレ、クアットロ…。」
トーレ「……、そう…、だな。」
クアットロ「ん……。
全く…、ドクターは解りにくいんですからぁ…。」
スカリエッティ「ふ……♪
隔たれたとはいえ、親として放っておけないというのは…、案外悪いモノではない…♪
娘達の成長が垣間見れたのは嬉しかったよ…♪
ギンガ捜査官の言う通り、こんな機会はまたとないかもしれないからね…。
そこもチンクには感謝をするべきだ…♪」
ウーノ「そう……、ですね。」
クアットロ「ふん……。」
[ピー…、ピー…、ピー…!]
クアットロ「あら……。」
スカリエッティ「ふむ……、どうやら楽しい家族会議は終了のようだ…。」
トーレ「ああ……。
ドゥーエの追悼、立ち会えて幸運だった…。
セッテも断りさえしなければ共に…。」
スカリエッティ「彼女にも思うところがあるのだろう……。
もう少し気遣える時間を与えられれば良かったのだが…。」
トーレ「いや、ドクターの責任ではない…。
では、私は先に失礼する……。」
[パチン……ッ!]
スカリエッティ「おや……。」
トーレの通信回線がパチッと切れる。
言うべきことを端的に言い放ち、あっさりと切る様は、最後まで彼女らしかった。
クアットロ「あらら…。じゃあ、私も失礼します♪
ごきげんよう♪ドクタ~♪それにウーノ姉様♪♪
またお会いできることを願っています♪
ドクターのお話、と~っても刺激的でした♪
そんなドクターが私は大好きですので♪」
スカリエッティ「ああ…♪
また提示報告で身体検査の状況を聞かせてもらうよ…♪
今度は気を付けるようにしなければね…?クアットロ…♪」
クアットロ「うぅ…!?
体重の話はもういいじゃないですかぁ、ドクター!
ふん!もう知りません!
そ・れ・で・はぁ~、、、♪」
[パチン……ッ!]
独特の甘い声で別れを告げるクアットロ。
別れを惜しませない為に軽いジョークを挟んでみたが、
それも察した上で引いたかのように見えた。
やはり彼女は誰よりも聡明で、いつまでも可愛い娘だよ…。
スカリエッティ「さて、最後は君だけだね。ウーノ。」
ウーノ「はい……。」
スカリエッティ「あの戦いから1度も、君に感謝の言葉を伝えたことはなかった…。だが、それは他の姉妹にも伝えられていないままだ…。
だから今ここで君だけに伝えるというのは、贔屓になってしまうからね…。
伝えられないのが残念だ…。」
ウーノ「構いません…。
私は、ドクターが息災であれば、言うことはありませんから…。」
スカリエッティ「ふ…♪最近髪が伸びてきていてね…。
君に散髪をしてもらっていたのを思い出すよ…♪」
ウーノ「それは……。困りました……。」
スカリエッティ「ふ……♪
まあ、こちらにもそういった設備はあるから大丈夫なんだがね…♪
君に切ってもらえないのが、ただ単純に寂しいというだけさ……♪」
ウーノ「ん……。」
スカリエッティ「そろそろ時間が来る…。
また会えることを…、こうやって話せる機会が少しでもあれば…、と
願っている……♪
私も、君の息災を重ねて願うよ…♪」
ウーノ「はい……。ありがとうございます……。ドクター……。
また……、お会いしましょう……。」
スカリエッティ「ああ……♪」
[パチン……ッ……]
スカリエッティ「…………。」
最後の回線が切断される。
部屋は再び、元の薄暗さに戻り、私は孤独に取り巻かれる。
この孤独は、ワインの赤で満たせるものでは到底無い。
それでも注いであるグラスの中身を再び口へと運ぶ。
部屋の薄暗さにより、輝いていたロゼは、今ではどす黒い血の色を連想させた。
あの戦いで失った数多の命、流した血…。
私が憐れむことはない…。
ただ自分の娘の息災を願うだけ…。
自分の娘の命を尊ぶだけ…。
この暗い赤に願うのが私には丁度良いのだろう…。
叶わぬ夢などではなく、奪いたかった世界に対する嫉妬などでもなく、ただ、娘達の未来がそれぞれに望んだモノになるように…。
私は…、ただそれだけを願う……。
えー、StrikerS Sound Stage X After、
最終話までご愛読下さり、誠にありがとうございます♪
これにてこの物語は完結でございます♪
自分なりに初の挑戦ということもあり、のびのびと自分の書きたいものを書かせて頂きました♪
チンク視点の1~3話、そしてドクター視点の最終話。
この構成で終えたいと、この物語を思い付いてから考えておりました♪
StrikerSのドラマCDを聴いてから、このお話を書きたくなり、何とか形にすることが出来たことを大変嬉しく思います♪
今回の最終話は、ドクターの長台詞が個人的にお気に入りです♪
急展開だったりする描写もあったりしますが、そこはそれ…、スカリエッティらしい考え方だなぁ、と納得して頂ければ幸いです♪
最終話なので、あとがきがすごーく長くなってしまうのをお許しください( ̄▽ ̄;)
ここまでのお話しで気にしたことは、キャラがなるべく手持ち無沙汰にならないように…、というものでした。
ノーヴェ達、妹組は、少し台詞が少ないですが、今回の物語では重要な役割を言葉を発しなくても担ってくれていたりするので、作者的には十分だと感じております(笑)
物語の主体は、やはりドラマCDからの流れから来るものですが、キャラの話や元ネタについては沢山の媒体や資料から得ました。
コミックであったり、雑誌であったり、資料集であったりと…、沢山読み込んでなるべくキャラブレやストーリーの違和感がないように書かせて頂きました。
これでこの物語は終わりな訳ですが、これから先、またひとつ別のお話をなのは関係で考えておりますので、そちらも気長に待って頂ければと思います♪
では、とても長くなりましたが、ここであとがきを終了させて頂きたいと思います♪
感想やご質問などありましたら、遠慮無くコメントをして頂ければと思っております♪
それでは、またお会いしましょう♪
リリカルマジカル頑張ります♪