俺がマシュなのは間違いである 作:タユリ
転生した。
ある日普通に学校で授業を受けていたら、急に目の前が真っ赤になったと思ったら暗転し、死んでいた。
その後テンプレ的な感じで神様が現れて「君の事間違えて殺しちゃったからお詫びに転生させることにしたわ」と若干上から目線な感じで転生が決まったのだ。
残りの寿命100年分(俺は118歳生きる予定だったらしい)の分を使って、次の生に特典を与えられることになった。ただしガチャで中身は決まる訳だが。
ちなみに神様の声は『愛してるんだぁ君たちをぉおおお!』と言いそうな声をしていた。
『それじゃとっとと引いちゃって~!』
『は、はい…』
おっかなびっくり引いてみた所。
【マシュ・キリエライトなりきりセット】
『はい』
『いやはいじゃないんですけど』
出てきたのはマシュ・キリエライト…FGOのメインヒロインであり、円卓の騎士の一人、ギャラハッドに認められ、力を貰いデミ・サーヴァントとして活躍する片目隠れ眼鏡後輩系ヒロインである。
そう、女の子である。何度も言うが女の子なのだ。そして俺は男子高校生。流石に性転換は許容できない。断じて否である。
『俺性転換するの嫌なんですけど』
『それじゃ次の生、頑張ってね~』
『あの!?人の話を――――スヤァ…』
そんな感じで俺の死後は終わり、新しい生が始まった…始まってしまったのである。
「あの…大丈夫ですか?」
「…はい」
目を覚ましたら、赤い瞳に覗き込まれていた。
よく見たらそれは少年の様だ。真っ白な髪に赤い瞳、そしてまだ幼さの残る顔つき。ウサギみたいな少年だった。
俺はとりあえず起き上がって、ぼんやりとして働かない頭を手で押さえながら周囲を見渡した。
ここは…洞窟か?それにしては地面がやたら整っているし、ぼんやりと明るいが。
「…お…」
俺は、と言おうとして、自分の身体を見下ろした。
うん…まあ、そうだね。マシュだね。
いや、それにしては随分と小さい…これ、もしかして原作のマシュよりもかなり幼くなってる?マシュ・ロリエライトになってる?
髪の毛もロングヘアだし。何か色々と間違っている気がする。
…まあいいか(思考放棄)
「私は…どうしてここに?」
「えっと、ここで寝てたのを見つけて…大丈夫なんですか?」
「ああ、そうなのですね…すみません、お世話になってしまったようで」
「い、いいいいいいえ!全然、役に立って良かったです!本当!」
顔を赤くして距離を取る少年。うーん、初心。
って、まずは現状の把握からだな。まずここはどこだ。
「ここは一体どこなのでしょうか…」
「え?こ、ここはダンジョンだけど…」
「ダンジョン?」
首を傾げたら、信じられないものを見る目で見られた。
「し、知らないでここに入ってきたんですか!?も、もしかしてファミリアにも入ってなかったり…?」
「ファミリアって何でしょうか」
「ふぁー!?」
驚き過ぎて変な声を発する少年に俺は思わず引いた。
「す、すみません。ここって一般人は入っちゃダメでしたか?」
「ダメですよ!そんな…死んじゃってもおかしくないですよ!?」
「そうなのですか?」
ここ、結構危険な場所なのか?ダンジョンって言ってたし、それが俺がイメージするようなRPGに出てくるダンジョンと同じなら、確かに危険なのは分かるが。
だとしたら、ファミリアというのはダンジョンに潜るギルド的な奴か?
「ど、どうしてダンジョンに?」
「いえ…好きで来たわけではないのです。いつの間にかいたというか、気が付いたらいたというか…」
「…それって、どういう…?」
目を点にして首をかしげる少年。その目は汚れがなく、純粋に疑問に思っているようだ。
「どういうといわれても…そのままの意味です。私は、ここに来るまでの記憶がないようなので…」
これは嘘ではない。特典が決まり意識を失った後、いつの間にかこのダンジョンにいたのだ。
「ええええええええええ!?そ、それって…き、き、記憶喪失!?」
少年の反応は顕著で、目を丸くしてあわあわと手を動かして慌て始めた。俺はそれを見て、噴出してしまう。
「ちょ、な、なんで笑うんですか!?」
「いえ、私よりも慌てていらっしゃるようでしたので…」
「ぼ、僕がいうのも何ですが…笑う状況じゃないような気が…」
「そうですね」
うーん、記憶喪失ってわけじゃないんだが。まあそう言っといた方が色々と面倒もなくなるか。放っておこう。
「まあ…それよりも、これからどうしましょうか…」
「タフだ…」
ふ、タフじゃないと異世界転生なんてやってられないのだよ。それに考えなきゃいけない事が多いのだ。足踏みしてる暇はない。
何せ俺は…あのマシュになってしまったのだ。女の子だ。そして俺は元男子高校生。何故こうなってしまったし。
まあ、うん。女になっちまったけど、折角貰ったチートだ。できれば活用できるような事したい訳だが…ダンジョンがあるという事は、それにちなんだ職業とか普通にあるだろうし。
冒険者とか、なれるかな?
「とりあえず職探しをしなければなりませんね…」
「そ、そうですか…」
俺は立ち上がって、少年に頭を下げた。
「助けていただいてありがとうございました。私の名前はマシュ・キリエライトです。あなたの名前を教えていただけますか?」
「あ、えっと…ぼ、僕はベル・クラネルって言います!」
俺は笑顔でうなずいた。
「ベルさん、ですね。このお礼はいつか…あ、もう一つ教えていただきたい事があるのですが、冒険者とか、そこら辺の職業ってありますか?」
「冒険者でしたら、僕とかもそうですけど…」
「そうなのですか!?」
こんな子供でもできるのか!?いや、俺も今はロリだけど…。
「冒険者になりたいんですか…?」
「はい。私にはそれしかなさそうですので」
ぶっちゃけ言うと、この世界の教養もないし身分もないし、本当にそれしかなさそうなのだ。
「冒険者になる方法を教えていただけませんか?」
そう尋ねると、ベル君は何かを逡巡するような様子を見せて、その次に顔を赤くして、その次に目を食いしばって何かに葛藤して、その後決意したように口を開いた。
「あ、あの!それだったらいい話があるんですけど!」
「はい?」
どうやらこの世界の冒険者という存在は、割と特別な存在らしく…それを説明するためには、洞窟の外…迷宮都市オラリオの事について説明しなければならない。
ベル君の手引きにより洞窟の外から出たら、そこには中央に巨大な塔を携えた広大な都市が広がっていた。
そこが迷宮都市オラリオ。この世界で唯一、ダンジョンで栄えた都市だ。
そして、そのオラリオには神様が普通にいるらしい。何でも天界から娯楽を求めて下界…つまり、今俺がいるこの世界に降りてきたのだ。
神様は神としての機能を無くしている代わりに、ステイタスと呼ばれる不思議な力を人間に授ける事が出来る。そうして神様の下に集まった組織がファミリアというらしい。
神が授けるステイタスには差はないが、それでも優劣の差はあり、零細ファミリアから有名ファミリアまで、種類も冒険者ファミリアだけでなく、農業、商業、鍛冶など様々な種類があるのだそうだ。
そして。
「ぼ、僕の入っているファミリア…ヘスティアファミリアに入りませんか!?」
ベルの言ういい話、とはつまりそういう事。ちょうど空きがあるファミリアに紹介できるよという誘いだった。
「是非もないです。お願いできますか?」
「そ、そうですよね…団員僕一人だし、入りたくない…って、へ?入って、くれるんですか…?」
「はい。私にとっては渡りに船な提案だったので…ダメでしたか?」
「い、いやいやいや!入ってくれるのなら、とてもうれしいっていうか、なんていうか!」
ベル君も喜んでくれたようで何よりだ。
さて…俺がマシュなら、ここは一発決めておかなければ…。
「それでは、ベルさんは先輩という事ですね。よろしくお願いします、先輩」
「先輩!????!!?」
ベル君は目を丸くして顔を赤くした。
「な、なんで先輩!?」
「私にとっては冒険者の先輩ですので!」
「そしてなんでそんなに嬉しそうなんですか…!?」
しまった、マシュムーヴできたからうれしみを帯びてしまった。くっ…俺もまだマシュとして未熟者という訳か…!
「私は後輩なので、マシュと。それに敬語も必要ありません」
「いや…そ、それは…」
「…ダメ、ですか…?」
「ダメじゃないです!」
ふっ…チョロい。
「そ、それじゃあ…マシュ。拠点に案内するから…」
「了解しました、先輩!」
こうして、俺の冒険者人生は始まろうとしていた。
俺の…俺たちのマシュ人生はこれからだ!