戦国乙女/魔刻を絶つ者   作:蒼海グレンモルト

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第一話 決意

 松永の乱以降各地の戦火が収まる事なく日々激しさを増している。松永弾正久秀打倒を目的とした時には多くの戦国乙女達が力を合わせて戦ってきた、多くの人々が泰平の世が訪れると信じていたがそれは叶うことはなかった。

 

 僕は松永様に才能を買われ側近として雇われたが謀反と同時に捨てられてしまい故郷に帰ろうとしていたところをヨシテル様に「行く宛が無いのであれば力になってくれませんか?」と言われて主を変えたあちら側としては松永について色々聞きたかったのだろう…

 

 今では書状の管理や京の都内の警護に当たっている、御所や町では松永様に仕えていた事もあってか良からぬ噂を囁かれてる事も少なくはないが慣れと言うものは恐ろしく最初の1週間は来るものがあったがすっかり慣れてしまった。今も廊下ですれ違った侍女達が何かを言っていたが気にはしないしてはいけないと、そう思いながらヨシテル様の部屋の前に着いた。

 

 『ヨシテル様、本日分の書状をまとめたので目を通して頂きたく参りました。』

 

 そう言って部屋に入るとヨシテル様の姿はなく辺りを見回すと縁側の方で空を眺めていた。此方の気配に気付いてこちらを振り向いた。

 

「おや?(かい)、どうかしましたか?」

 

『その本日の書状のまとめたので目を通して頂こうと思いまして。いつもより数が多いので分かりやすくまとめておきました。』

 

「ありがとう、魁のお陰で私の仕事も随分と楽になりました。」

 

 書状を受け取り目を通して行くヨシテル様しかし読み進む毎に表情を曇らせていく

 

「川中島周辺の村々の被害やノブナガ殿の駿河への攻撃…はぁ松永を打ち倒しても戦はなくならいのですね。」

 

『松永様と言う共通の敵がいなくなったと言うだけで結局振り出しに戻ったと言う方が正しいかと。』

 

「やはり話し合いだけでは駄目だと言うのでしょうか…松永のやり方が正しかったというでしょうか。」

 

 ヨシテル様はどんどんと悪い方向へと考えている。僕としては毎度書状の確認の度にこうなってしまうのだ、これもヨシテル様が泰平の世を思えばこそなのだろうが少々どころか自分の身すら省みない方だ、松永の乱以降自暴自棄のケが出てきている。こちらとしても見ていられないほどだ。

 

『ヨシテル様!』

 

「えっ!?どうしました魁そんな大声をだして」

 

 驚くヨシテル様の前に座り書状を取り上げた

 

『確かに今は大変な時かもしれません。でもヨシテル様は一人ではないのです、義昭様とミツヒデ様それにユウサイ殿もいます。都にいる人々もヨシテル様を慕っているんです。なので一人で抱え込もうとしないで下さい、僕自身も出来る事は少ないかもしれませんが力になります。』

 

「ふふ、魁の思いは伝わりましたよ。ありがとう。」

 

 ヨシテル様を励まそうと必死になって言葉を出そうとし笑われてしまった。正直恥ずかしいと言うか、ヨシテル様が笑ってくれて嬉しいと言うか…顔が熱くなっているのがわかる

 

『申し訳ありません!一介の家臣の僕が出すぎた真似を』

 

「良いのですよ。ならば早速魁には聞きたいことが幾つかあるのですがいいですか?」

 

 どうぞと返事をした次の瞬間ヨシテル様は凛とした表情でこう言った。

 

「あなたと松永の関係を教えてもらえますか?」

 

『わかり、ました。僕と松永様は…』

 

 断ってしまえば先程の言葉は嘘になってしまう、ヨシテル様はそれを見越してこの質問をしたのか…いや深く考える事はやめよう

 松永様と初めてあったのは、2年前僕の故郷である羽後の山奥で出会った。賊の噂を聞きつけ調査に来た松永様とは、村を出て狩りをしている最中に出会った。

 

「少年つかぬことを聞くがここらで賊がいると言う話を聞かなかったか?」

 

『え?』

 

 それが松永様との出会いだった、その時に『ここいらに賊なんていない』っと言ったのを覚えている。あの時の松永様様は少々疑っていただろう、なにせ猪を担いだ子供が山奥に入ろうとしているのだから疑われて当然だ。そうして賊の噂の真意を教えるために村に連れていった、松永様もあの時は驚いていたなぁ…村長に事情を話し誤解は解けた。

 

 その後だった松永様に共にこの国の安寧のために幕府に来ないかと言われた、君には私や私の主に無いものを感じるのだ!だから頼む!って頭を下げてまでお願いしていた。でも、周りの人々は反対してた。元服も迎えていない13歳子供が村から出て国の為に働くなんて荷が重すぎるにも程がある。ただ村長や両親は違った地位や名誉等気にせずお前のやりたいことを見つけなさいって…

 

 『そんな感じで今に至るわけで、幕府についてからは松永様に付きっきりで政務を教えてもらいましたね。』

 

 「なんというか珍しいです。松永が頭を下げてまで貴方という人材を欲したのが…私が初めて見たときは義昭より少し年上の子としか見ていなかったのですが彼の目に狂いは無かったようですね、魁、貴方は十分に幕府の役に『違いますよ』」

 

 「へ?」

 

 『僕は、幕府の為だけではないですよ、松永様と最も親しいだけの関係の僕をヨシテル様や義昭様は受け入れてくれました。もしかしたら松永様の仇討ちのために謀反を起こしてしまう可能性があるかもしれないのに、いやする気はないのですが、だからお二人にはとても感謝しています。こんな疫病神に近い人間を置いてくれてありがとうございます。』

 

 たった少しの時間がとても長く感じる。風の揺れる音や鳥の鳴き声それすら鮮明に聞こえてくる静かな時間、今になって聞かれるとは思いもしなかった。

 

 でもヨシテル様は他の人とは違う、僕がここで再び働く事になってからはミツヒデ様やソウリン様等、沢山の人に松永様の聞かれたが僕の言う事に疑い、威圧的に接する人が大半だった。しかしヨシテル様は違う、こんな話をして疑う事もない草原の風のように優しいのだ。

 

『えっと…ヨシテル様?』

 

 感謝の言葉を言い頭を上げるとヨシテル様は涙を浮かべていた

 

「魁…私は、怖かったのです。松永が謀反を起こしたとはいえ、貴方にとっては家族のような存在のはずです。そんな彼を討ち取った私の事をとても恨んでいるだろうと思っていました。」

 

 松永様の犯した罪は許されないだろう、しかしあの方はこの国の未来を思ってこその行動だった。そもそも謀反以前に争い続けている他の方々も罪人として裁いても良いはずだが、だが他の方々もそれぞれの目的や信念を持っている、織田様は天下の為、伊達様は打倒オウガイ様、武田様と上杉様は…お互いの力比べを楽しんでいるのかも知れない。

 

『確かに松永様を殺されてしまった事に関しては複雑な思いです。でも…』

 

 言おうとした言葉を飲み込んだ、これを言ってしまえばヨシテル様との関係が壊れてしまう

 

  「貴方の考えを言って良いのですよ、私は失礼を承知で松永の事を聞いたのですから」

 

  『ヨシテル様は対話による和平を望んでいます。ですが…元来平和を唱えるものは強者が唱えてきたもので、松永様はこの事ヨシテル様に伝えたかったのです。理想を唱えるだけでは変えることは出来ないのです。』

 

「あなたもそう思うのですか、天下の為に民達が苦しんでも良いと言うのですか?」

 

『ではヨシテル様今の状況を考えてください、各国の将がそれぞれの目的で戦いをしているのです。僕が渡してきた書状には各国の状況を書いてヨシテル様も目を通しておられるでしょう、それに織田様や他の将達が戦を重ねていく度に兵力は増えていき最後には国全体で争いが起こる可能性があるのです。その時の被害は今の状態の比ではありません。まさしく地獄と言えるでしょう…』

 

「猶予は刻一刻となくなっていると言うのですか」

 

 静かに頷いた

 

「しかし、私は…どうすれば」

 

 消えてしまいそうな声で語りかけた。

 

『僕も…』

 

「魁?」

 

『僕も行きます、貴方と一緒に戦いと言う覇道を』

 

「良いのですか?貴方は兵ではなく政務として過ごしていたのです。戦いをしたことなどないのでは?」

 

 確かにここ2年は、政務を中心に仕事をしていたため実戦をしていないユウサイ様はヨシテル様の補佐、ミツヒデ様は各地の情報収集等、乱世を終わらせるために皆必死だもちろん僕も御所での政務の大半を引き受けている。松永様の側近と言う理由で白い目で見られているのに、前線に立ちたいなど言ったら、謀反を企んでるのでわと疑われてしまうと言う理由で政務に専念していた。

 

『ここに来てから武道の鍛練は怠ってはいません。』

 

 そう言うとヨシテル様は考え込んでこう言った。

 

「では、私と手合わせしましょう。勝たずとも力を見せて私の隣に立つに相応しいか見極めさせて下さい。」

 

『わかりました。』

 

「明日の昼に修練場に来て下さい、他の者には私が伝えておきますので。」

 

 はいと返事をしてそのまま部屋を後にしたが、突然ヨシテル様の悲鳴が聞こえて戻って来たのはまた別の話

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