その日私は悪に変わった。   作:水戸 遥

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約2年間を開けて失踪していましたことを謝罪いたします。
今後はまた再開しますので何卒ご了承いただき、お許しください。


神崎・H ・アリア

キンジ視点...

 

 「やっとあのバカどもから解放された……」

 そうつぶやいた俺は自室のソファーでに体を沈め、夕焼けに染まった東京の空を窓越しに眺めていた。

 今年の1月から、この部屋に俺は一人で暮らしているのだが、本来は四人部屋のはずだった。

 それはなぜかというと、俺がしたことそして偶然相部屋になる探偵科(インケスタ)の男子がいなかったことが原因だ。

 まぁ、武偵校の変人どもがいないこの空間で自由気ままにそして平穏に暮らせることは俺にとってはかなり気分がいいものになっている。

(静かだ……)

まるで今朝起きたあの事件が、嘘みたいだ。

 あの件に関しては、セグウェイの残骸(ざんがい)鑑識科(レピア)が回収し、探偵科(インケスタ)も調査を続けている。

 ……だが、切った張ったが日常茶飯事の武偵校では、殺人未遂程度のことは流されてしまうのが悲しい現実だ。|強襲科でのドンパチに慣れすぎたせいと、アリアのことで丸一日振り回されていたせいもあり、被害者の俺もかなりスルー気味にしてしまっている。

 ただ引っかかるのはただのイタズラにしては手が込んでいるような気がしなくもないし、悪質すぎる点なんだよな。

 あの『武偵殺し(ぶていごろし)』――の模倣犯(もほうはん)は、爆弾魔だ。

 爆弾魔はこの世では卑劣な犯罪者の一種で、たいていターゲットを選ばない。無差別に爆発を起こし人々の注目を集めてから、世間に自分の要求をぶつけるのが一般的である。

 ピンポーン。

 となるとあれはたまたま俺のチャリがその道具として使われてしまったものなのだろうか。

 ピンポンピンポーン。

 それとも俺個人を狙ったものなのか。だが、だれが何の恨みで?

 ピポピポピポピピピピピピンポーン!ピポピポピンポーン!

 あーうっせぇ!!

 誰かがさっきから俺の部屋のチャイムを連打している。居留守を使おうと思ったがダメみたいだ。

 まったく。今日はいろいろあって俺は疲れてんだ。放課後ぐらい静かに過ごさせてくれよ……

 「誰だ……?」

 しぶしぶドアを開けるとそこには――

 「遅い!あたしがチャイムを押したら5秒以内に出なさい!」

 そう言って腰に両手を当て、赤紫色(カメリア)の釣り目をギンと釣り上げた――

 「神崎(かんざき)?!!」

 制服姿の、神崎・H・アリアがそこにいた。

 俺は漫画でよくある感じに目をこすり見開くが、やっぱりそこにいるのはアリアだった。

 なんで コイツが ここに?!

 「アリアでいいわよ」

アリアはケンケン交じりに歩きながら靴を玄関に脱ぎ散らかし、俺の部屋にとてとてと侵入してきた。

 「あ、おい!」

 俺はそれを止めるため手を伸ばしたが、ヤツの子供並みの身長のせいでするりと躱されてしまう。

 その手先にさらりとした長いツインテールがかすめただけだった。

 「待てよ勝手に……!」

 「そのトランクを中に運んどきなさい!ねぇ、トイレどこにある?」

 アリアは俺の話に少しも耳を貸さず、室内を見回した。そして目ざとくトイレを見つけたかと思うと小走りにその中へと歩みを進めていった。

 ……いかん。ここは武偵高(ぶていこう)。そして『武偵(ぶてい)』の語源はそもそも『武装()()』だ。

 つまり()けられたってことのようだ。

 「てか、トランクってどれだ?」

 訳も分からないまま周囲を見渡してみると、玄関にはアリアが持ってきたであろう車輪付きのちょっと小洒落(こじゃれ)たストライプ柄のトランクがそこにあった。

ちょっと待て。こんな女物のトランクが部屋の前にあるのを近隣の生徒に見られたら、後で何を言われるか分かったものじゃないぞ。

 「あんたここ、一人部屋?」

 トイレから出てきたアリアは、異様に重いトランクを引きずり入れる俺には目もくれず、部屋の様子をうかがっている。

 「まあ、いいわ」

 は?なにがいいのか。

 長いツインテールをたなびかせながらくるりと振り返ったアリアは。

 「――キンジ。あんた、あたしのドレイになりなさい!」

そう言ってきたのだった。




ここまでお読みくださり誠にありがとうございます。
今後は配信しながら小説を書いていきますのでよろしくお願いいたします。

おふざけ会を挟みつつ原作編進める感じでもいいですか?

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