「私への弾劾は後でいくらでも受ける!だから、今はアルディスを倒す事に協力してくれ!」
勇者たちに向けて叫ぶヘレストナ。
「ヘレストナ。お前が私たちを騙しているという可能性がある。だから、信用できない。」
カグヤはそう言い放ち、魔法を放つために魔力を高めを始める。
リツとナオヤはそれぞれアルディスの様子を伺いながらじりじりと迫る。
でも、とカグヤは続ける。
「今は緊急事態だ。こいつを倒すまでは協力はしてやる。だか、そのあとにしっかりと処罰は受けてもらう。そこの部下と共にな。」
「ああ。だが、処罰は私だけだ。事態がこうなったのは全て私のせいだからな。」
「いえ、それは認めません!不肖このテルクナロク、貴女の選ぶ道、共にゆきます!」
ヘレストナが言ったことにテルクナロクは慌てて反対した。
その様子を勇者たちは一瞥すると、目の前の敵に集中する。
「そんで?お前さんはそこのヘレストナをどうしようとしているんだ?」
「言っただろう、あの子に力を授けてあげるって。あの子は力を望んでいた。子が望むものを親である私が叶えてあげているだけなんだが。」
するとヘレストナは怒りを露に叫んだ。
「言ったでしょう、もう、力を望んでなどいないって。貴方は魔王を生み出して貴方の望む世界を造り出そうとしていたみたいだけれど、もう言いなりになどならない!私は貴方を親とは認めない!それどころか私の仲間とも認めなんかしない!」
言い終えるとアルディスはほんの少し顔を歪めた。
その顔は子に裏切られたという哀しみに見えたが、ヘレストナには思い通りにならなくて不快になっているようにも見えた。
それを見て感じたヘレストナは余計に憤る。
怒りに身を任せて魔法を放とうとするが、テルクナロクに止められる。
「…何故止める。」
「怒りに身を任せてはいけません。もう少し冷静におなり下さい。」
テルクナロクに諭され、ヘレストナは少し冷静になる。
「…ヘレストナ、その者たちは…勇者では。何故共にいるのだ?」
アルディスはと勇者たちを見ると眉をひそめる。
「勇者は我ら魔人の敵。そう教えたはず…何を考えている、ヘレストナ?」
「勇者は私たち魔人の敵?歴代の魔王たちが勝手に人界へ侵略し、それに人間たちが抵抗して勇者たちを呼び出した。人間たちは被害者であっても決して敵などてはない。」
ヘレストナが言葉を続けるうちにアルディスは段々と不快そうに顔を歪める。
それに、決めたんだ。とヘレストナは言う。
誰もが考えもしなかった言葉を。
アルディスの『親』という仮面を剥がす決定的な言葉を。
「私は魔王という立場を捨て、人間たちと生きると。人間たちと魔人たちの共生を結ぶと。たとえ、どれだけの時を掛けようとも。」
「フフフ…フッハハハハハ」
言い終えるとアルディスは突然、笑いだした。
「ハハッ…あろうことかそんなことを考えていたとは。子供の発想は面白いなぁ。でも…」
ヘレストナに過去に一切見せたことがない殺気を込めた鋭い視線をヘレストナに向ける。
「そんなことは絶対にさせるつもりはない。私はそんなことを望んでなどいないからな。」
ヘレストナ以外には一切視線を向けてはいない。
しかし、周りのはアルディスの威圧に動けない人たちがいる。
近くにいたスティも例外ではない。
「う…あぁ」
「な、何なんだコイツは…魔王とは似て非なる感じがする…」
周りが動けずに呻くなか、ヘレストナを睨むアルディスとアルディスを睨むヘレストナ、テルクナロク、そして勇者たち。
何十秒もの時間が過ぎた後、遂にアルディスが動き出す。
「ヘレストナ、私にはお前が必要だ。私がなんと言おうとお前が考えを曲げないことはわかっている。育ての『親』だからな。だから、力ずくでもお前を必ず従わせる。」
親という言葉を強調して言うアルディスに対してヘレストナは眉間にシワを寄せる。
そして無言で腕を天に向ける。
すると、ヘレストナを中心に魔方陣が現れる。
「これは…結界か?」
「魔法…思いっきりやれ!」
「魔王が私に指図するな!…いけっフラーザ!」
カグヤが叫ぶと彼女の手から黄金色の光線が飛び出る。
光線は真っ直ぐ、そして速くアルディスに向かっていく。
かなりの速さに回避は不可能だろう。
そして、光線はアルディスに、正確にはアルディスの顔に当たり、その衝撃に土が舞い上がる。
「…やった…か?」
「……」
カグヤの疑問にすぐ答える者はいない。
しかし、その疑問には言葉でなく砂ぼこりから現れたものを見ることで晴らされ、そして誰もが驚愕する。
「なにっ!?」
「…マジかよ…」
砂ぼこりが晴れたその場所にいたのは、
「…なんだい、今のは?まさか今のが君の全力の魔法だなんていわないよな。」
「そ、そんな…」
得意とするの魔法の直撃を受け、生きているどころか無傷で立っているアルディスを見てカグヤは気力を喪失してしまう。
それもそうだ、今の魔法はカグヤにとって一番強力である魔法だったのだから。
「彼に魔力耐性があったとはいえ、ここまでとは…」
アルディスの能力の一部を知っているヘレストナでさえも絶句する。
「さあ、どうするヘレストナ?」
「貴様…!ヘレストナ様に何を…」
激昂するテルクナロクの言葉は途中で霧散する。
アルディスが霞むほどの早さでテルクナロクの首に手を当てる。
「黙れ…ここでは貴様には発言権は無い。」
「…っ!」
テルクナロクは声を発しようとするが、アルディスが何らかの魔法を用いたのか口をパクパクと開閉させるだけで声が出なかった。
それを見た勇者たちは顔に出さなかったものの驚いた。
魔法耐性が強いだけのただの霊媒師であるのだと3人とも戦闘能力は低いと踏んでいたのだ。
周りにいた村人だけでなく、勇者、テルクナロクまでもがこの光景に絶望したとき、静かに声を発する者がいた。
「アルディス、やめろ…」
次回くらいからヒューマンライフを始めていきたいなぁ、と思っています。